【農薬】農薬の安全性評価、登録の流れを解説!

農家にとって、農作物の病害や害虫からの被害から守るためにも、
様々な対策をとる必要があり、一般的によく使われるのが「農薬」です。

しかし、「農薬=悪」という誤った偏見も広がっています。
ですが、農薬は使い方を守れば、非常に便利な道具と言えます。

なぜかといえば、農薬は厳しい審査を通過したものだけが実用化されているのです。
今回は農薬に対する安全評価に対しての解説をします。

ご一読いただければ、農薬とのより良い関係を見直せると思います。


目次
1. 農薬によるリスクとは?
1-1.農薬の正しい認識
1-2.農薬に対するイメージとは?
1-3.農薬は本当に危険なのか?
2. 農薬は悪?という偏見

2-1.農薬よりも危険なもの?
2-2.農薬に対する偏見の原因は?
3. 農薬における安全性評価
3-1. 農薬の登録制度とは?
3-2. ポジティブリスト制度
3-3. 残留農薬についてのリスク評価
4. 農薬登録のプロセス
5.まとめ




目次
1. 農薬によるリスクとは?

1-1.農薬の正しい認識
「農薬=悪」という誤ったイメージが広がっています。
もちろん、過剰な使用などは環境にとって悪影響を与えますし、
農作物にとっても弊害が起きる可能性はあります。

農薬が悪影響や弊害を与える原因は「農薬の誤った使い方」にあります。
正しい使い方をすることができれば、農薬は非常に便利な道具です。

誤ったイメージを改めるためにも、
農薬の実際について知っておきましょう。


1-2.農薬に対するイメージとは?
農薬は農林水産省に登録されたものだけが製造・輸入・販売できます。
使用基準については「農薬取締法」によって厳しく規制されているのです。
安全性評価に対しても厳しい評価基準が設けられています。

ですが、消費者の農薬に対するイメージは「不安」という意見が多くみられます。

国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」が実施した、
1,000人に対するアンケート調査「有機農産 物と農薬に関する消費者意識調査」によれば、
斑点米の原因であるカメムシの防除の農薬使用に対するアンケートの結果は以下の通りです。

  • 農薬をかけない方法があるなら、そういうお米でも選びたい 47%
  • 茶碗1杯に2~3粒混じっても農薬をかけない方がいい 39%
  • 見た目も大事で農薬をかけてもいい 14%

以上のような結果が出たのです。

旧来は、形の揃った野菜にニーズがありました。
しかし、昨今の消費者は「見た目より安全」に意識を向けているのです。

人が摂取しても問題ないかどうかをチェックし、使用基準にも厳しい規定がある農薬。

しかしそれでも、リスクが全くないとは言えません。

〈農薬使用によるリスク〉

  • 接触や吸入による皮膚や眼、呼吸器への悪影響
  • 食物を摂取によって起こる悪影響
  • 輸送中の事故
  • 誤飲、誤食等

などなどのリスクは考えられます。


1-3.農薬は本当に危険なのか?
農薬が悪者にされている背景には、「化学的な手段に対する反発」もあると思われます。

農薬に限らず、化学的手段の行き過ぎが起こした弊害は数多くあります。
しかし実は、有機肥料なども過剰に使ってしまえば弊害が起きるのです。

農薬においても、誤った使い方をしなければ、
自然環境の持っている力により分解されていくのです。

さらに、現実的な問題としても完全無農薬の農業は手間とコストもかかり、
まだまだハードルが大きいというのが現実なのです。

バランスを考えて賢く優しい農薬の使い方をしていきましょう。




2. 農薬は悪?という偏見

疑問


2-1.農薬よりも危険なもの?
食の安全において、果たして農薬のみが悪なのでしょうか…?
消費者の農薬に対するアンケート結果、
さらに食品安全の専門家のリスク認識をすり合わせてみましょう。

すると、実は農薬よりもリスクの高いものはたくさんあります。

例を挙げると、
「健康への影響に気を付けなければならないと考える項目はどれですか?」という設問。
これに対して、以下の項目が設定されました。


〈健康への影響上、気をつけたい19項目〉

  • 病原性微生物
  • 残留農薬
  • 食品添加物
  • カビ毒等
  • 食品容器等からの溶出化学物質
  • ダイオキシン類
  • 自然界の金属元素(カドミウム等)
  • フグ毒・きのこの毒等自然毒
  • BSE(牛海綿状脳症)
  • アクリルアミド等
  • 動物用医薬品の畜産物への残留
  • タバコ
  • 偏食や過食
  • アレルギー
  • 飲酒
  • 輸入食品
  • 健康食品・サプリメント
  • 遺伝子組み換え食品

「選択肢(19項目)の中から気を付ける必要があると思うものを、その必要性の大きい順に10個選んでください」という設問です。

この質問に対して、注意の必要性が大きいと考えられた答え。
それには以下のような差が出ました。


一般消費者

  • 病原性微生物
  • 残留農薬
  • 食品添加物
  • カビ毒等

食品安全の専門家

  • タバコ
  • 病原性微生物
  • 偏食や過食
  • アレルギー


いかがでしょうか。
農薬はリスクが全くないとは言えません。
しかし、「農薬=害悪」というわけでもないのです。
使い方を守り、正しい知識を持って使えば危険性を低くすることができます。

消費者に農薬の安全性や使用意図を伝えるよう心がけること。
これにより、消費者の農薬に対する不安を軽減することが可能です。



2-2.農薬に対する偏見の原因は?
「農薬=悪」という誤ったイメージ。
このような偏見が広まった原因とはなんでしょうか?

〈農薬が過度に不安視されてしまう理由〉

  • メディアやネットの偏向情報
  • 情報量の不足
  • 情報理解力の不足

これらの影響が考えられます。
特にマスメディアは情報源として大きな影響力はいまだに大きいです。
いまだに薬局などで「テレビで特集されました」というポップがあれば、
一時的とはいえ、売り上げアップにつながっているのです。

しかし、誤情報を流してしまうというケースは数多くあります。

情報番組などにおいて、誤情報を放送して後に謝罪ということは数多くあります。
根拠や出典なしに「農薬は危険」といった文言が拡散されるケースは多いのです。

さらに、このような情報が人々に到達した場合、
専門知識や情報が不足していれば、
その情報を鵜呑みにして信じてしまうケースも多いでしょう。




3. 農薬における安全性評価


3-1. 農薬の登録制度とは?
農薬には、国からの登録制度が設けられています。
農薬の登録制度とは、国(農林水産省)に登録されたものだけが、
製造・販売・使用等できる制度。

農林水産省に登録されたもの以外は使用することができないのです。


〈農薬登録までのプロセス〉

  • 農薬の品質や安全性についての試験成績を農林水産大臣に申請
  • 申請した内容をもとに食品安全委員会にて「一日摂取許容量」が設定
  • 「一日摂取許容量」をもとに厚生労働省にて残留農薬基準等が設定

などなどを、さまざまな機関を通じて、審査を受けます。

農薬の品質面や消費者に対する安全面など、
あらゆる角度から評価され、ようやく製造・販売・使用等につながるということです。



3-2. ポジティブリスト制度
ポジティブリスト制度とは、
農薬等が設定した基準値を超えて残留している、
農作物や食品の製造・輸入・販売を原則禁止にするための制度のことです。

先述した「農薬の登録制度」にあるように、
厚生労働省は農薬や飼料添加物等について残留基準を設定しているというわけです。

基準値以下であれば、自然の持つ分解作用によって、
分解されてしまうため、危険性を低くすることができます。

基準値を超えてしまえば、分解作用に追いつかなくなる可能性があるので、
使用は禁止されているということなのです。




3-3. 残留農薬についてのリスク評価
残留農薬等が認められる農作物や食品の製造・輸入・販売。
これを「原則禁止」するポジティブリスト制度を紹介しました。

ここからは残留農薬のリスク評価がどう行われているのかを解説しましょう。

〈農薬のリスク評価〉

  1. 動植物を使用した、試験農薬の吸収、代謝、排泄の試験
  2. 実験動物を使用した、毒性の有無、強さの試験

の大きく2つに分類されます。
1,であれば、土壌や水分でどのように農薬が分解されるのか、
残留量がどれくらいで減少していくのかを調べることができます。

2,の場合は生体を用いることで、人への危険性を予測したり、
発がん性や遺伝子等への影響を調べることができます。

このような厳しい審査を受けて、農薬は実用化に至るわけです。

しかし、公的な機関への信用自体が落ちているという問題もあります。
省庁や地方自治体等の公的機関が障害者雇用の水増しをしていたことや
大学の裏口入学や入試操作が発覚したり、企業の品質不正が発覚したり…。

数多くのスキャンダルが起きているのも事実です。
公的な認定を受けていたとしても「信用できない!」となるのは無理もない面があります。

つまり、消費者が「農薬=害悪」とイメージしてしまうのも仕方がない面もあります。

生産者はそんな消費者の不安を取り除く取り組みも必要です。
農薬の使用意図や背景を理解し、誠意をもって農業を営みましょう。


不安を抱えた消費者から問われた際には、
真摯に答えることができれば、彼らの不安軽減にもつながるでしょう。




4. 農薬登録のプロセス


農薬はどのような審査を受けて登録されるのかを解説しましょう。

〈農薬審査の大まかな流れ〉

  1. 申請を受けた農林水産省が、農薬の登録可否を問う検査指示を出す
  2. 提出された試験成績をもとに検査機関(FAMIC)が総合的に検査
    品質が適正か否か
    毒性の有無
    農作物や土壌に対する残留性など
  3. 検査機関が農林水産省に結果を報告
  4. 農林水産省が農薬登録可否を決定


検査機関であるFAMICから、あらゆる視点から検査されます。
厳しい基準をクリアして、登録許可が降りるという流れです。

明確なプロセスを通じて、
農作物を守り、人体に悪影響がない農薬に認可が降りるのです。

〈FAMICで行われる検査〉

  • 農薬の薬効
  • 薬害
  • 安全性
  • 製品の性質

これらについて検査が実施されます。

消費者が一番関心あるであろう「安全性の検査」においては、

  • 農薬を使用する人への安全性
  • 農薬が使用された農作物を食べた場合の安全性
  • 農薬が散布された環境に対する安全性

これらに関する検査が行われています。

もちろんFAMICだけが安全性の確認を行うわけではありません。
まずは、登録申請者、すなわち農薬の製造者や輸入者が、
信頼できる試験機関に依頼します。

登録を申請する農薬の品質や安全性を確認するための試験結果等を整備します。
そして、FAMICに提出するという流れなのです。

FAMICはその結果から総合的に判断してから、
上記の安全性について検査を行います。

提出する試験成績は、薬効、薬害、毒性、残留性の4項目。

特に毒性については、重視されて調査されます。

急性毒性(短期間に多量の農薬を摂取した場合の毒性)や、
慢性毒性(少量だが長期間に農薬を摂取した場合の毒性)を調査するもの、
動植物体内で農薬が分解される経路等を把握するもの、環境への影響など…。

幅広く試験が実施されるのです。


5.まとめ


今回の解説は、「農薬の登録制度」についてでした。
農薬に対する偏見、農家にとって向き合うべき問題です。

食に対する意識が高くなるのは良いことでもあるのですが、
イタズラに不安を煽っている偏見は改めていくべきでしょう。

農薬についての正しい知識を身につけて、
食に対する安心感を広げていくことも立派な農家のお仕事です。

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