地産地消の意義と成功事例を知って、私たちの豊かな未来を考えよう!

近年、地域復興が叫ばれ続ける中で、

その動きは食の分野でも確実に広がっています。

そのうちのひとつが、日本政府も推奨している地産地消です。

今回は、地産地消が注目される理由と、

全国での成功事例をご紹介していきます。

地産地消とは?

地産地消とは「地域生産」と「地域消費」をつなげた略語で、

「地域で生産されるものをその地域で消費する」ことを指します。

特に「食」に対して使われており、農業や漁業と大きく関わる言葉です。

一昔前までは地産地消が当たり前の時代で、

地域で育てたり収穫したものの多くを、地元で売り買いしていました。

しかし、交通網の整備や生産技術の向上などで流通が活発になり、

さまざまな地域の食材が手に入るようになる代わりに、

地元の食材を口にする機会は徐々に減ってしまいます。

自分が住んでいる場所に関わらず、

全国の食材に手が届くようになったことは便利な反面、

生産者と消費者の繋がりが弱くなったり

各地の伝統的な食文化が薄れていくなどの、

マイナス面も見受けられるようになりました。

そのため、農林水産省は1980年代から地産地消への取り組みを開始し、

2001年に国内初のBSE(牛海綿状脳症)問題が発生したことをきっかけに、

食の安心安全に対する消費者意識が高まり、広く浸透するようになりました。

また、仏教用語からきている「身土不二(しんどふに/しんどふじ)」

の考え方にも通じるものがあり、

「長く暮らしている土地で作られた食べ物がもっとも身体によい」

という観点からも地産地消の価値が高まっています。

地域の特徴を活かした食生活や伝統的な食文化を守りながら、

人々の健康増進、生産者の利益確保、及び国内の農林水産業の発展など、

地産地消が果たす役割はとても重要です。

地産地消は生産から加工、販売までを一元化する6次産業化にも繋がるため、

今後も注目度の高い取り組みであることに変わりありません。

地産地消の取り組みが始まってから約40年が経過した現在、

国や自治体が一体となってさまざまな活動を続けた結果、

私たち消費者にも非常に身近な言葉として定着してきました。

今では直売所などでの農産物の販売だけでなく、

学校給食や福祉施設、観光施設、外食産業でも利用されています。

参考:農林水産省:地産地消(地域の農林水産物の利用)の推進

地産地消と6次産業化

地産地消の活性化には、6次産業化の推進を外すことはできません。

「1次産業」と呼ばれる農林水産業に従事する生産者が

「2次産業」の食品加工、「3次産業」の流通・販売などにも

関わることを6次産業化と言い、

「第1次産業から第3次産業までを集約し、

豊かな資源の活用と新たな付加価値を生み出す活動」を指します。

6次産業化によって農林水産業者の所得を増加させ、

地域産業の活性化に繋げる狙いがあります。

では、地産地消と6次産業化には、

具体的にどのような関係があるのでしょうか?

地産地消をより一層活性化していくためには、

まず地域内での食料生産を安定させた上で

地元の消費者が地域内の生産物に

興味や関心を抱く機会を増やすことが求められます。

6次産業化に向けた取り組みは、この2つの流れを後押しします。

2010年12月に公布、施行された

「地域資源を活用した農林漁業者等による

新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」

通称「六次産業化・地産地消法」でも、

各地域での農林水産物の利用を推進することが定められています。

それまでは、生産は農林水産業者、加工は加工業者、売るのは販売業者と、

それぞれの産業内で役割分担がされていました。

それに対し、農林水産業者が加工から販売までを一括して行い、

農閑期や漁閑期は加工や販売業務に費やすことで、

所得が向上したり、地域内での新たな雇用を生んでいます。

また、規格外の野菜や果物を利用して

漬物やジュースといった加工品も開発すれば、

貴重な生産物を無駄なく市場に流通させることができます。

地元産の商品バリエーションが増えることは、

地産地消を支援したい消費者にとってもうれしいポイントです。

このように、地産地消と6次産業化は密接な関係にあります。

地産地消とSDGs

地産地消は、近年注目されているSDGs(持続可能な開発目標)

との関連性も非常に深いと言えます。

SDGs (Sustainable Development Goals)とは、

国連に加盟する全ての国や地域が協力し合い

2030年までに達成するために掲げた国際目標で、

2015年に国連サミットで採択されました。

「地球上の誰一人取り残さない」ことを原則とし、

社会・環境・経済の3つを軸に、17個の目標を掲げています。

地産地消はSDGsの達成に大きな貢献が期待される取り組みであり、

関連性のある目標は17個中なんと半数を超える10個以上にも及びます。

具体的には以下が挙げられます。

目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに

目標8  働きがいも経済成長も

目標12 つくる責任、つかう責任

目標13 気候変動に具体的な対策を

目標14 海の豊かさを守ろう

目標15 陸の豊かさも守ろう

目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

例1:目標12「つくる責任、つかう責任」

・6次産業化を通じて食品ロスやゴミの削減に努める

・各地域内で生産から消費、廃棄までを行い、輸送時の二酸化炭素排出量を抑える

例2:目標14「海の豊かさを守ろう」目標15「陸の豊かさも守ろう」

・海産物も農産物も地域で消費する分のみを生産し、過剰な消費を抑える

・土地や環境に過度な負荷をかけず、貴重な資源を保護する

このように、地産地消は世界が抱える

エネルギー問題や環境問題に深く関わっています。

地産地消の成功事例

地産地消の取り組みは、直売所や商品加工から学校給食など

さまざまな形態で実施されています。

ここで、全国各地の素晴らしい活動の中から成功事例をご紹介します。

子どもたちに給食で感動を与えたい!

生産者の想いを込めたふるさと給食

北海道足寄町の小中学校、高等学校では、

2017年度から毎年ふるさと給食月間を設け、

町産食材を豊富に使用した給食を提供。

地元の生産者と食材を直接取引することで、

新鮮で低価格の仕入れが可能になっています。

また、給食センターが学校や生産者と連携し、

生徒への食育活動も推進するなど、

生産者と子どもたちとの交流の場を設けています。

その他、給食センターのウェブサイトで調理過程や生産者の紹介を行ったりと、

幅広く情報発信をしています。

参考:農林水産省「学校給食の取り組み」

士幌町の魅力を凝縮!

地域と住民に愛される空間づくりで販売UPに繋がった直売所

2017年の道の駅ピア21しほろのリニューアルに際し、

地元農産物の利用拡大に向けた取り組みを株式会社 at LOCALが行っています。

地元農家の自家用野菜を「おすそわけ」というスタイルで販売する

「農家のおすそわけ野菜市」が、観光客や地元客に人気となりました。

出荷農家数は16軒から28軒へと拡大し、

農産物を無駄にせず売り切る販売方法を取っています。

また、JA士幌町のじゃがいも「ホッカイコガネ」を使用した

じゃがいも大福は道の駅の看板商品となり、

2017年の発売開始から10万個以上を販売。

士幌高等学校と連携した商品開発も行っており、

獣害を受けた作物の可食部を加工するなど、

フードロスの削減にも積極的に取り組んでいます。

参考:農林水産省「直売所の取り組み」

日本初の「純国産パスタ」で

農地を守り、雇用を守り、地域を守る

兵庫県加古川市の農事組合法人八幡営農組合では、日本初のデュラム小麦品種「セトデュール」を栽培し、7年をかけて商業ベースでの生産に成功。生産した小麦は地域の工場で製麺し、栽培から製麺までを加古川市で行った「加古川パスタ」のブランド化に取り組んでいます。加古川パスタは地元レストランなどでの販売に加えて、給食用のパスタとしても出荷。小麦の生産体制の確立と地域雇用を創出しています。

参考:農林水産省「令和2年度地産地消優良事例集」

「三方(生産者・流通業者・学校給食)よし」の

食材納入システムを構築

学校給食に地域の農産物を最大限に活用する

「食材納入システム」を構築した静岡県富士市の取り組み。

これにより、地元で生産された食材の流通状況を把握しながら、

農産物を給食の食材として安定的に供給することが可能になりました。

成功ポイントは農産物の納入時に市場を通すことで、

特定の農家や業者に負担がかからないこと。

今ではこの仕組みが生産者にとってはPRの場となり、

流通業者にとっては安定した取引先の確保、

 学校給食にとっては安心して地場農産物を注文できるという

「三方よし」のシステムとして定着しています。

参考:農林水産省「平成24年度 地産地消優良活動表彰 農林水産大臣賞 

会津の落花生で地域産業を活性化

2010年に「会津豆倶楽部」を発足し、

会津の産業を活性化する取り組みを行っている株式会社おくや。

会津地方では1980年代まで

栽培した落花生を全て関東圏に出荷していたため、

地元では使用されていませんでした。

そのことを知った豆菓子の卸事業をしていた同社は、

地元の落花生を使用するため「会津の落花生」の栽培を復活。

栽培した落花生を加工し、付加価値を付けるなどして

「会津の落花生」のブランド化を推し進めました。

「会津豆倶楽部」のメンバーは、発足当初の20名から80名に増加。

栽培面積も2haから20haと10倍にも広がっています。

商品開発、製造を地元企業と行うことで会津の特産品を産み、

地域全体で産業に貢献しています。

参考:株式会社 おくや

地域全体を巻き込んだ循環型農業

700頭の足利マール牛の飼育を行う長谷川農場。

発端は地元でワイン用に絞ったブドウの

大量の果皮や種(マール)の処分が課題となっていたこと。

それらを長谷川農場で乳酸発酵させて牛の餌にしたところ、

牛肉の質を良くすることに成功し、

地元のワイナリーからマールを仕入れ

堆肥をワイナリーに還元するという循環型農業を開始。

さらに、地元生産者から主に牛の餌である稲藁を仕入れ、

堆肥を畑に還元する取り組みを行うことで、

地域全体を巻き込んだ事業展開を行っています。

この循環型農業の取り組みをきっかけに、

「とちぎ霜降高原牛」や「日光高原牛」から「足利マール牛」と改名し、

地元のオリジナルブランド牛として販売するようになりました。

参考:株式会社 長谷川農場

SDGsで地域に愛される持続可能なセレクトショップ

2021年1月にオープンした「gourmet STORE(グルメストア)」は、

日本初のSDGs達成を目標とした食のセレクトショップで、

石川県内の企業と連携して地産地消に取り組んでいます。

例えば、農福連携(※1)として

株式会社愛昴が運営する「米ライフ」と連携し、

地元産のメンマやジンジャーシロップを販売しています。

メンマは地元農家の竹林で採れた地元産のたけのこで、

主に規格外のものを使って就労支援施設で手作りされています。

また、地元ブランド「加賀れんこん」の

生産販売を行っている「どろんこファーム」が

規格外品を使った「加賀れんこんちっぷ」を販売をしています。

商品は品質にこだわった小ロットの生産で、

一般には流通しない地域に根付いた運営を行っています。

※1)農福連携とは障害者等が農業分野で活躍することを通じ、

自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みのこと

(農林水産省農福連携の推進より)

参考:gourmet STORE

まとめ

6次産業やSDGsとの関連性から注目度が増している地産地消は、

これからの社会において非常に大切な取り組みです。

世界を外側に広げていくのも良いですが、

敢えて仕組みをスモール化してその地域ならではのものを

楽しむスタイルも必要だと感じました。

地産地消の活性化で、これからの私たちの生活が

より豊かになることに期待したいものですね。

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