水稲の中干しとは?管理方法を解説

稲の成長における重要なステップとされている中干しをご存知でしょうか?
水稲は生育の際に適切な方法で水管理をする必要があります。この水管理を怠ると水稲の品質に悪影響を及ぼします。
その品質を向上するために大きな効果を発揮するのが「中干し」です。

本記事では中干しの具体的な効果と、水管理の方法について詳しく解説していきます。

水稲の中干しとは?

中干しとは、水稲栽培において広く行われている水管理作業で、一時的に水田から水を抜いて干すことをいいます。
水は常に張っているわけでなく、土壌を乾かす必要があります。

土壌を空気に触れさせることで還元状態から酸化状態に切り替え、根の発達を促したり過剰な分げつを抑制したりすることが主な目的です。また、病害虫の発生を抑えたり、稲の強化を図るためにも行われることがあります。

中干しは多くの効果があり、適切な時期に適切な方法で行うことで米の品質向上や収量が向上します。

水稲のメリット・デメリット

水稲にはメリットもあれば、デメリットもあります。
どちらもしっかり認識し、中干しの作業を行いましょう。

メリット

まず、苗の根の発達が促進されるため、稲がより強健に成長し、風や雨による倒伏のリスクが低減します。
また、病害虫の発生を抑え、農薬の使用量を削減できるため、環境への負荷が軽減されます。
さらに、中干しによって稲の間隔が均一化され、光の利用が最適化されるため、収量が向上する効果も期待できます。
中干しは農家の知恵と経験に基づく伝統的な手法でありながら、持続可能な農業を追求する現代農業にも適応可能な手段として注目されています。

デメリット

まず、中干しによって稲が一時的に半乾燥状態になるため、水分ストレスを受ける可能性があります。
これにより、稲の生育に影響を与え、一時的に成長が停滞することがあります。
また、中干しのタイミングや管理が適切でない場合、病害虫の発生リスクが増加することもあります。さらに、中干しは労力と時間を要する作業であり、農家にとって追加の作業負担となる可能性があります。特に大規模な農場では、効率的な中干しの実施が難しい場合もあります。
そのため、地域や気候によって中干しの効果や適応性が異なることを考慮し、適切な管理が求められます。
最適な条件で行えば中干しは有益な手法ですが、誤った管理やタイミングによって逆効果になる可能性もあるため注意が必要です。

中干しの3つの効果

ここからは中干しの3つの効果について解説します。

有害ガスの発生を抑える

水稲の中干しは、水田に水を一時的に引かないため、水中での有機物の分解が抑えられます。これにより、有機物の腐敗に伴うメタンガス(CH4)の発生を減少させる効果があります。
メタンガスは温室効果ガスであり、地球温暖化に寄与する要因の一つです。
中干しによってメタンガスの排出量が削減されることで、水稲栽培の環境負荷を低減することが期待されます。

根の活力が高まり、耐倒伏性が向上

中干しにより、稲が一時的に半乾燥の状態になることで、根の発達が促進されます。
根がより深く広がり、強健な根系が形成されるため、耐倒伏性が向上します。
これによって、強風や激しい雨による稲の倒れを防ぎ、作物の被害を軽減できます。また、健全な根系は栄養の吸収を助け、植物の生育をサポートする役割も果たします。

土壌が固まることで収穫の作業性が向上

中干しによって、水田の土壌が一時的に乾燥し、固まる効果があります。これにより、収穫時に泥濘(でいじょう)やぬかるみが減少し、農作業の作業性が向上します。
泥濘が少ない状態で収穫作業を行うことで、機械の動きや作業効率が改善されるばかりでなく、収穫物の品質も向上する可能性があります。
また、作業時の泥濘対策にかかる手間や費用を削減できるため、経済的な利益も期待できます。

中干しの基本手法とタイミング

ここからは中干しの基本とタイミングについて解説していきます。
先程も記述しましたがタイミングや方法を間違うと悪影響を及ぼしますので、しっかりと認識しておきましょう。

基本手法

水を引かない:田植え後に水田に水を引かずに放置します。水位は稲の葉の長さによって決定されますが、一般的には5〜10cmの水深で行われます。
タイミングの管理:中干しのタイミングは稲の成長状況と気候によって異なります。通常、田植え後約7〜10日目に実施します。

タイミングの理由

根の成長を促進:中干しにより、稲の根がより深く広がり、強健な根系が形成されます。これによって、稲が倒れにくくなり、栄養の吸収が向上します。
病害虫の抑制:水を引かないことで、一部の病原菌や昆虫の発生を抑える効果があります。
適切な株間距離の確保:中干しにより、稲の間隔が均一化され、光の利用が最適化され、光合成が促進されます。
ただし、中干しのタイミングは気候や栽培地域によって異なるため、農家の経験や判断力が重要です。また、気温が高い時期や乾燥が進行中の場合は、中干しによる水分ストレスが稲に負担をかける可能性もあるため、慎重に実施する必要があります。地域や条件に合わせて適切なタイミングと手法を選び、中干しを効果的に活用することが重要です。

中干し前と後の水管理方法について

稲は水の管理で大きく品質が異なる植物です。
そこで水稲の水管理について中干し前と後で解説します。

中干し前

中干し前は水深1~3cm程度の浅水で分げつの発生を促進し、深水にしないようにします。
深水にすると分げつ不足や根域の減少を引き起こすため、注意が必要です。
定期的に水田に入り、根傷みの原因ともなるガスが発生していないかチェックします。

中干しの開始時期にもよりますが、中干しまで浅水管理を続ける場合は、1~2回、晴天時に土の表面が乾かない程度に落水し、通排水をすると同時にガス抜きする「田干し」を行ってください。

中干し後

中干し後の水管理は特に注意が必要で、長期の乾燥により酸化状態に慣れているため、いきなり水を入れると酸素不足により根腐れなどが発生する可能性もあります。

すぐに水を入れず、入水してさっと水を走らせる「走り水」を行い、水稲を水に慣らすことが大切です。

2回ほど走り水を行った後、自然に水が減って田面の足跡などに残っていた水がなくなる頃に入水を行います。

その後、2〜3日かけて稲の成長を促し、徐々に水を増やし浅水へ移行します。

農家が実践する中干しの秘訣とノウハウ

農家が実践する中干しの秘訣とノウハウは、豊かな経験と知識に裏打ちされた重要な要素です。
その一部を紹介します。

地域の気候に合わせたタイミング:地域の気候条件によって中干しのタイミングが異なります。気温や湿度、降水量を考慮し、苗の成長段階に合わせて適切な時期を見極めることが大切です。

正確な水位管理:中干し後の水位管理は精密な調整が必要です。苗の葉の長さや地盤の状態を基準にして、適切な水深を保つことで、根の発達を促進し、耐倒伏性を高めることができます。

適切な株間距離の確保:株間距離を均一に保つことで、光の利用が最適化され、収量が向上します。植え付け時に苗を均等に配置することが重要です。

病害虫対策:中干し後に発生する病害虫の対策が必要です。農薬の適切な使用や生物農薬の導入など、病害虫の発生を抑える手段を活用します。

農家の経験と知恵の活用:中干しは長年の経験による農家の知恵が重要な要素です。現地の農家の知識を尊重し、地域固有の中干しのノウハウを取り入れることが効果的です。

これらの秘訣とノウハウを実践することで、農家は中干しの効果を最大限に引き出し、収量や品質の向上に貢献します。持続可能な水稲栽培において、中干しは農家の実践力と知識が不可欠な要素となっています。

中干しにおける地域差

最後に世界の中干しの方法などについて解説します。

中干しは世界の水稲栽培において広く行われている栽培手法ですが、地域差と文化的要素によりその方法や意義は異なります。
気候や土壌条件、農業の伝統、文化的背景などが中干しの実践に影響を与えます。
例えば、熱帯地域では雨季と乾季が明確に分かれているため、中干しは病害虫対策や苗の成長をサポートする重要な手法として実践されます。一方で、温暖な地域では水稲栽培において中干しを必要としない場合もあります。

また、地域の農業文化によっても中干しの実践が異なります。
特定の地域では伝統的な中干しの手法が受け継がれており、農家の経験と知恵が重視されます。一方で、先進技術の普及により新たな中干しの手法が導入される場合もあります。

世界の水稲栽培事情を探ることで、中干しの多様性と地域に合った最適な実践方法を理解し、持続可能な水稲栽培を実現する上で重要な示唆を得ることができます。
地域固有の文化や環境に即した中干しの実践が、地域農業の発展と食料安全保障に寄与すると考えられます。

まとめ

本記事では中干しについて詳しく解説しました。

中干しは効果的に行うことで大きな品質向上や収量の増大などを望むことができます。
一方、中干しを失敗すると稲が枯れてしまうなどの問題も生じます。

なんとなく行うのではなく、しっかりと知識をつけて中干しを行いましょう。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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