農業法人の運営、よくある失敗と対策

農業法人の運営、よくある失敗と対策

業法人は、複数の農家が共同で経営を行う法人です。
近年、農業経営の効率化や規模拡大を目的として、農業法人の設立が増加しています。

しかし、農業法人の運営にはさまざまな課題やリスクが伴います。そこで今回は、農業法人の運営でよくある失敗と、その対策についてまとめてみました。

まず農業法人の失敗には、大きく分けて以下の2つがあります。

経営面での失敗
事業計画の策定不足
資金計画の誤り
人材不足
経営管理の不備
法務面での失敗
法人登記の不備
税務処理の誤り
労務管理の不備

これらの失敗を防ぐためには、事前にしっかりとした準備が必要です。

経営面での失敗を防ぐための対策

経営面での失敗を防ぐためには、以下の対策をしておいたほうがよいでしょう。

事業計画の策定
農業法人の目的や目標を明確にする
生産品や販売先を検討する
経営資源(人材、資金、設備)を把握する
収支計画を立てる
資金計画の作成
事業計画に基づいて、必要な資金を算出する
資金調達の方法を検討する
人材の確保
農業法人の規模や事業内容に応じた人材を配置する
人材育成計画を策定する
経営管理の徹底
経営状況を定期的に把握・分析する
問題点があれば、迅速に対応する
法務面での失敗を防ぐための対策

法務面での失敗を防ぐためには以下について確認しておきましょう。

法人登記の正確な手続き
登記事項を正確に記載する
必要な書類を揃える
手続きの期限を守る
税務処理の正確な実施
農業法人の税務に関する知識を身につける
税理士などの専門家に相談する
労務管理の徹底
労働基準法などの労働法令を遵守する
従業員の労働環境を整える

農業法人の設立手続きの流れ

農業法人を設立するには、以下の手順で手続きを行います。

  1. 事前準備

農業法人を設立する前に、以下の事項について検討・準備が必要です。

農業法人の目的や目標
生産品や販売先
経営資源(人材、資金、設備)
収支計画

また、農業法人の種類(株式会社、合名会社、合資会社、農事組合法人)や定款の記載事項についても、検討する必要があります。

  1. 定款の作成

定款とは、農業法人の基本的なルールを定めたものです。定款には、以下の事項を記載する必要があります。

商号
本店所在地
目的
役員の氏名
資本金の額

定款は、2通作成し、公証役場で認証を受けます。

  1. 役員の選任

農業法人には、必ず代表取締役がなければなりません。また、必要に応じて、取締役や監査役などの役員を選任します。

役員の選任は、定款で定められた方法で行う必要があります。

  1. 資本金の払込

農業法人の設立には、法定資本金の払い込みが必要です。法定資本金は、株式会社で100万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で3万円です。

資本金の払い込みは、定款で定められた方法で行う必要があります。

  1. 設立登記

定款の認証、役員の選任、資本金の払い込みが完了したら、法務局で設立登記を行います。

設立登記には、以下の書類が必要です。

定款認証済書
役員の就任承諾書
資本金の払い込み証明書
登記申請書

設立登記が完了すると、農業法人が正式に成立します。

  1. 事業開始

設立登記が完了したら、事業を開始することができます。

事業開始前に、農業委員会への届出や、農業協同組合への加入などの手続きが必要となる場合があります。

各手続きの注意点

各手続きにおいては、以下の点に注意が必要です。

事前準備
農業法人の設立は、決して簡単ではありません。事前にしっかりとした準備を行うことが重要です。

定款の作成
定款は、農業法人の基本的なルールを定めたものです。記載漏れや誤りがあると、後々トラブルに発展する可能性があります。

役員の選任
農業法人の役員は、農業法人の経営を担う重要な存在です。慎重に選任するようにしましょう。

資本金の払込
資本金の払い込みは、農業法人の設立の要件です。期限内に必ず払い込みを完了しましょう。

設立登記
設立登記は、農業法人の設立を公にするための手続きです。必要な書類を揃え、期限内に手続きを完了しましょう。

簡単にまとめると、農業法人の設立手続きは、以下の6つのステップで行うことができます。

事前準備
定款の作成
役員の選任
資本金の払込
設立登記
事業開始

各手続きにおいては、注意点をしっかりと理解した上で、手続きを進めるようにしましょう。

農業法人の設立にかかる費用

農業法人を設立するには、以下の費用がかかります。

定款認証手数料
定款認証手数料は、株式会社で3万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で9,000円です。

資本金の払込
農業法人の設立には、法定資本金の払い込みが必要です。法定資本金は、株式会社で100万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で3万円です。

設立登記費用
設立登記費用は、株式会社で15万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で9万円です。

その他費用
その他費用としては、以下のようなものがあります。

  • 定款の作成費用
  • 役員の就任承諾書の作成費用
  • 資本金の払込証明書の作成費用
  • 登記申請書の作成費用
  • 登記申請の代行費用

定款認証手数料

定款認証手数料は、公証役場で定款の認証を受ける際に、支払う費用です。定款には、農業法人の基本的なルールが定められています。

定款認証手数料は、株式会社で3万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で9,000円です。

資本金の払込

農業法人の設立には、法定資本金の払い込みが必要です。法定資本金は、株式会社で100万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で3万円です。

資本金は、農業法人の経営基盤となる重要な資金です。資本金の払込方法は、定款で定められた方法で行う必要があります。

資本金の払込は、株式会社の場合は、現金、銀行振込、小切手などの方法で行うことができます。合名会社・合資会社・農事組合法人の場合は、現金、銀行振込、出資物件の提供などの方法で行うことができます。

設立登記費用

設立登記費用は、法務局で設立登記を行う際に、支払う費用です。設立登記には、以下の書類が必要です。

  • 定款認証済書
  • 役員の就任承諾書
  • 資本金の払込証明書
  • 登記申請書

設立登記費用は、株式会社で15万円、合名会社・合資会社・農事組合法人で9万円です。

その他費用

その他費用としては、以下のようなものがあります。

  • 定款の作成費用
  • 役員の就任承諾書の作成費用
  • 資本金の払込証明書の作成費用
  • 登記申請書の作成費用
  • 登記申請の代行費用

定款の作成費用は、定款の作成を専門家に依頼する場合に発生します。

役員の就任承諾書の作成費用は、役員の就任承諾書の作成を専門家に依頼する場合に発生します。

資本金の払込証明書の作成費用は、資本金の払込証明書の作成を専門家に依頼する場合に発生します。

登記申請書の作成費用は、登記申請書の作成を専門家に依頼する場合に発生します。

登記申請の代行費用は、登記申請を専門家に依頼する場合に発生します。

農業法人の設立にかかる費用の総額

農業法人の設立にかかる費用の総額は、以下のとおりです。

株式会社:159,000円~
合名会社・合資会社・農事組合法人:99,000円~
上記の費用は、あくまでも目安です。定款の記載内容や、資本金の額、設立登記の代行の有無などによって、費用が変動します。

農業法人の設立を検討している方は、事前に費用についてしっかりと確認しておきましょう。

農業法人の運営方法

農業法人の運営は、以下の3つの要素に分けることができます。

経営戦略の策定
経営管理
事業活動

経営戦略の策定

農業法人の経営戦略とは、農業法人の目的や目標を達成するために、どのような事業を行うのか、どのような経営資源を活用するのか、などを明確にしたものです。

経営戦略を策定するためには、以下の事項について検討する必要があります。

農業法人の目的や目標
生産品や販売先
経営資源(人材、資金、設備)
競合他社
市場環境

経営戦略を策定する際は、以下の点に注意が必要です。

現状を正確に把握する
将来の展望を明確にする
具体的な目標を設定
実現可能性を検討する

経営管理

経営管理とは、農業法人の経営状況を把握し、目標達成に向けて適切に経営資源を配分するプロセスです。

経営管理には、以下の要素が含まれます。

財務管理
営業管理
生産管理
人事管理
情報管理

経営管理を行うことで、以下の効果が期待できます。

経営状況の把握
目標達成に向けた意思決定
経営資源の有効活用
経営リスクの低減

事業活動

事業活動とは、農業法人の目的や目標を達成するために、実際に行う業務です。

事業活動には、以下のようなものがあります。

農作物の生産
農作物の販売
農業機械の管理
農業施設の管理
農業労働者の雇用

事業活動を行う際は、以下の点に注意が必要です。

経営戦略に沿って行う
経営資源を有効活用する
法令や規制を遵守する

農業法人の運営は、経営戦略の策定、経営管理、事業活動の3つの要素をバランスよく行うことが重要です。

それぞれの要素をしっかりと理解し、適切に行うことで、農業法人の経営を成功へと導くことができます。

農業法人の運営でのポイント

経営戦略の策定をしっかりと行う
経営戦略は、農業法人の経営の方向性を示すものです。経営戦略をしっかりと策定することで、経営の目的や目標を明確にし、経営資源を有効活用することができます。

経営管理を徹底する
経営管理は、経営状況を把握し、目標達成に向けて経営資源を配分するプロセスです。経営管理を徹底することで、経営の健全性を維持し、経営リスクを低減することができます。

事業活動を効率化する
事業活動を効率化することで、経営のコスト削減や生産性の向上を図ることができます。ICTやAIなどの技術を活用して、事業活動の効率化を図ることが重要です。

従業員の育成に力を入れる
農業法人の経営を成功させるためには、従業員の育成が欠かせません。従業員のスキルアップやモチベーション向上を図ることで、経営の持続可能性を高めることができます。

農業法人の税務の種類

農業法人の税務は、以下の3つの種類に分けることができます。

法人税
所得税
消費税

法人税

法人税は、農業法人の事業所得に対して課される税金です。法人税率は、2023年8月31日時点で、23.2%です。

農業法人の法人税の計算方法は、以下のとおりです。

法人税額 = 課税所得 × 法人税率
課税所得は、農業法人の事業所得から、青色申告特別控除や欠損金の繰越控除などを控除したものです。

所得税

所得税は、農業法人の役員や従業員に対して課される税金です。所得税率は、2023年8月31日時点で、給与所得者の場合、5%~45%です。

農業法人の役員や従業員の所得税の計算方法は、以下のとおりです。

所得税額 = 総所得 × 所得税率
総所得は、給与所得や退職所得、事業所得などの合計所得です。

消費税

消費税は、農業法人が販売する農産物や農業関連サービスに対して課される税金です。消費税率は、2023年8月31日時点で、10%です。

農業法人の消費税の計算方法は、以下のとおりです。

消費税額 = 課税売上高 × 消費税率
課税売上高は、農業法人が販売した農産物や農業関連サービスの売上高のうち、消費税の対象となる部分です。

農業法人の税務上のメリット

農業法人の税務上のメリットとしては、以下のようなものがあります。

青色申告特別控除
青色申告法人である農業法人は、青色申告特別控除を受けることができます。青色申告特別控除は、事業所得から65万円を控除できる制度です。

農業経営基盤強化準備金制度
農業法人は、農業経営基盤強化準備金を積み立てることができます。農業経営基盤強化準備金は、農業経営の改善や拡大に役立てることができます。

減価償却費の加速償却
農業法人は、農業機械や建物などの減価償却費を加速償却することができます。加速償却は、通常の償却期間よりも短い期間で減価償却を行うことができる制度です。

農業法人の税務上の注意点

農業法人の税務上の注意点としては、以下のようなものがあります。

青色申告特別控除の要件
青色申告特別控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告書を提出する
  • 帳簿を正しく記帳する
  • 税務調査に協力する

農業経営基盤強化準備金の積み立ての要件
農業経営基盤強化準備金を積み立てるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 貸借対照表の資産の部に「農業経営基盤強化準備金」勘定を設置する
  • 積み立てた準備金は、農業経営の改善や拡大に役立てなければならない

減価償却費の加速償却の要件
農業法人が減価償却費を加速償却するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 農業機械や建物などの取得価額が1億円以上である
  • 取得した農業機械や建物は、事業の用に供するものである

農業法人の税務は、複雑な部分も多いため、専門家に相談することをおすすめします。

農業法人の運営で失敗しないためのポイント

農業法人の運営は、決して簡単ではありません。事前の準備や対策をしっかりと行わないと、失敗してしまう可能性もあります。

そこで、農業法人の運営で失敗しないためのポイントを、以下にまとめました。

  1. 経営戦略をしっかりと策定する

農業法人の経営戦略とは、農業法人の目的や目標を達成するために、どのような事業を行うのか、どのような経営資源を活用するのか、などを明確にしたものです。

経営戦略をしっかりと策定することで、経営の方向性を明確にし、経営資源を有効活用することができます。

  1. 経営管理を徹底する

経営管理とは、経営状況を把握し、目標達成に向けて経営資源を配分するプロセスです。

経営管理を徹底することで、経営の健全性を維持し、経営リスクを低減することができます。

  1. 事業活動を効率化する

事業活動を効率化することで、経営のコスト削減や生産性の向上を図ることができます。ICTやAIなどの技術を活用して、事業活動の効率化を図ることが重要です。

  1. 従業員の育成に力を入れる

農業法人の経営を成功させるためには、従業員の育成が欠かせません。従業員のスキルアップやモチベーション向上を図ることで、経営の持続可能性を高めることができます。

  1. 法令や規制を遵守する

農業法人の経営においては、農業法や農業協同組合法などの法令や規制を遵守することが重要です。法令や規制を遵守することで、経営上のトラブルを回避することができます。

これらのポイントを押さえることで、農業法人の運営で失敗するリスクを低減することができます。

また、農業法人の運営で失敗しないためには、以下の点にも注意が必要です。

経営資源(人材、資金、設備)を十分に確保する
競合他社や市場環境を把握する
経営リスクを適切に管理する

農業法人の運営は、常に変化する環境に対応していく必要があります。経営状況を常に把握し、経営戦略を柔軟に見直していくことが重要です。

農業法人の運営でよくあるトラブル

農業法人の運営では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。ここでは、農業法人の運営でよくあるトラブルを、以下の3つのカテゴリーに分けて解説します。

  1. 経営面でのトラブル

事業計画の不備
資金繰りの悪化
人材不足
経営管理の不徹底

  1. 法務面でのトラブル

法人登記の不備
税務処理の誤り
労務管理の不備

  1. 自然災害などによるトラブル

天候不順による生産量の減少
自然災害による被害

  1. 経営面でのトラブル

農業法人の運営で最もよくあるトラブルは、経営面でのトラブルです。具体的には、以下のようなものがあります。

事業計画の不備
事業計画は、農業法人の経営の方向性を示すものです。事業計画が不備であると、経営の目標や手段が明確化されず、経営の失敗につながる可能性があります。

資金繰りの悪化
農業法人の経営には、多額の資金が必要です。資金繰りが悪化すると、経営が継続できなくなる可能性があります。

人材不足
農業は、人手不足が深刻な問題となっています。人材不足が深刻化すると、生産量の減少や品質の低下など、経営に大きな影響を与える可能性があります。

経営管理の不徹底
経営管理とは、経営状況を把握し、目標達成に向けて経営資源を配分するプロセスです。経営管理が不徹底であると、経営の健全性が損なわれ、経営リスクが高まります。

  1. 法務面でのトラブル

農業法人の運営においては、農業法や農業協同組合法などの法令や規制を遵守することが重要です。法令や規制を遵守しないと、行政処分を受けるなどのトラブルが発生する可能性があります。

具体的には、以下のようなものがあります。

法人登記の不備
株式会社や合名会社、合資会社、農事組合法人を設立する際には、法務局で法人登記を行う必要があります。法人登記の不備があると、法人の成立や資格の喪失などのトラブルが発生する可能性があります。

税務処理の誤り
農業法人は、法人税や所得税などの税金を納めなければなりません。税務処理の誤りがあると、過少申告や脱税などのトラブルが発生する可能性があります。

労務管理の不備
農業法人は、労働基準法などの労働法令を遵守する必要があります。労務管理の不備があると、労災や紛争などのトラブルが発生する可能性があります。

  1. 自然災害などによるトラブル

農業は、天候や自然災害の影響を受けやすい産業です。自然災害などによるトラブルが発生すると、生産量の減少や品質の低下など、経営に大きな影響を与える可能性があります。

具体的には、以下のようなものがあります。

天候不順による生産量の減少
農作物の生産には、適切な気候や気温が必要です。天候不順が続くと、生産量の減少や品質の低下など、経営に大きな影響を与える可能性があります。

自然災害による被害
台風や洪水などの自然災害が発生すると、農作物や農業施設などに被害が発生する可能性があります。自然災害による被害が発生すると、経営が継続できなくなる可能性があります。

農業法人の運営では、これらのトラブルを防ぐための対策を講じることが重要です。

まとめ

農業法人の運営は、決して簡単ではありません。事前の準備や対策をしっかりと行わないと、失敗してしまう可能性もあります。

農業法人の運営でよくある失敗は、以下の3つのカテゴリーに分類することができます。

経営面での失敗
法務面での失敗
自然災害などによる失敗

経営面での失敗としては、事業計画の不備、資金繰りの悪化、人材不足、経営管理の不徹底などが挙げられ、法務面での失敗としては、法人登記の不備、税務処理の誤り、労務管理の不備などが挙げられます。

自然災害などによる失敗としては、天候不順による生産量の減少、自然災害による被害などでしょう。

これらの失敗をなるべく防げるように事前準備ができるといいかと思います。

事業計画を綿密に策定する
資金繰りをしっかりと管理する
人材育成に力を入れる
経営管理を徹底する
法令や規制を遵守する
自然災害への備えを整える

また、トラブルが発生した場合は、迅速かつ適切に対応することも重要ですよ。

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