物価の高騰問題。
農家にとっても他人事ではなく、農業資材なども価格が上がっています。
少しでも利益を多くするためにも、コストダウンを図ることは大切なことです。
今回は、農薬のコストダウンとしても注目されているジェネリック農薬。
雑草の対策として用いられるジェネリック除草剤を中心に、
農薬のコスト削減について解説してきます。
1.コストダウンを狙え!ジェネリック農薬
はじめに、農薬の現状について解説しましょう。
現在「農薬」は農業におけるコストダウンの課題にもされています。
農薬はその薬効の開発されればすぐに実用化されるわけではありません。
人間や家畜に有害ではないか、作物へ薬害は起きないかなど…。
様々な影響への実験の末、審査に合格したものが実用化されます。
そんな中で、注目されている農薬が「ジェネリック農薬」です。
これは特許が切れた有効成分を使った農薬。
有効成分や効能は先発品と同じですが、開発費のコストを下げることができます。
コスト削減に役立つと注目されています。
2.ジェネリック農薬とは?
「ジェネリック?薬とかでも聞いたことがあるような…。」
という方もおられるでしょう。
“ジェネリック医薬品”という言葉が一番有名な例だと思われます。
ジェネリック医薬品とは、新薬と同じ有効成分でつくられた医薬品。
後発の薬品になりますが、厳しい基準や規定にクリアさえすれば、
開発も短期間にできて費用を抑えることが可能になるのです。
その結果、「価格を安く抑えることができる」
という医薬品となります。
有効成分は新薬と全く同じ。
しかし、形状や色、添加物などを変更することができます。
もちろん変更できる点は薬の効き目に影響しない範囲と定められています。
つまり、価格を抑えて新薬と同様の効果を得ることができます。
ジェネリック農薬もこれと同様のことが言えるのです。
2016年には「日本ジェネリック農薬協議会」がJA全農にて設立。
生産コストを低減する目的でジェネリック農薬の導入・普及が促進されてきました。
JA全農に関しては、すでにジェネリック農薬を同等品よりも安く提供しています。
しかし、日本でも普及はまだまだ浸透していないのが現状です。
農林水産省の発表によれば、
世界の農薬市場の30%程度はジェネリック農薬とも言われているのです。
解説するジェネリック除草剤もその一種と考えてください。
3.ジェネリック除草剤の効果とは?
除草剤として有名な商品に「ラウンドアップ」があります。
これに含まれている特許成分であるグリホサートは特許の期限が切れているのです。
しかし、同等の成分と効能をもったジェネリック除草剤がすでに登場しています。
有名なものには「サンフーロン」や「エイトアップ」があります。
有効成分や除草剤としての効果は同じです。
ゆえに、通常通り除草剤として活用することができます。
しかし、ジェネリック除草剤には注意が必要なものもあります。
一部のジェネリック除草剤の中には、
農薬登録を取得していない商品も存在するとも言われているのです。
農薬登録が完了していない農薬を、
農耕地に利用することは禁止されています。
ジェネリック除草剤を使用する際には注意が必要です。
農薬を利用する際には、ジェネリックに限らずに要確認です。
農薬登録内容やその効果・薬害、安全に使用する上での注意など、
必要事項は十分に確認しましょう。
使用方法を誤れば、環境や農作物にも悪影響がありますし、
無自覚に使ってはいけない農薬を使ってしまうこともあります。
さらに、どの農薬においても言えることですが、
除草剤を撒く際に使用する器具の点検も十分にしておきましょう。
万が一機器が故障するなど、農薬に身近に触れる必要が出た場合も、
薬害を起こさないためにも十分な注意をしましょう。
4.除草剤の種類!
4-1.使用上の注意
除草剤自体の種類についても、要注意です。
どんなに優れた製品でも、メリット・デメリットがあります。
例えば、即効性のある除草剤「パラコート系」。
この除草剤は、即効性があることが大きなメリットです。
ですが、デメリットとして強い毒性があることが挙げられます。
十分に理解して、使い方も注意をしましょう。
さらに、農作物を食べる消費者側からしてみれば、毒性の強い除草剤を使ったならば、残留していないかも気になるポイントです。
厳しい審査の上で登録されているので、残留性のないものがほとんど。
ではあるのですが、それはあくまで正しい使用法においての話です。
基準以上の量を使えば、残留する可能性はあります。
使用方法については十分注意しした上で、
消費者側の気持ちも汲み取れることを大切にしていきましょう。
4-2.除草剤の種類
「土壌表面処理除草剤」と呼ばれるものは、雑草を予防することができる除草剤です。
この除草剤は、雑草が生えてくる前に撒く必要があります。
その一方で、稲や芝によく用いられるのが「選択制除草剤」。
これは特定の植物にしか効果がないのです。
注意点としては、除草剤が作用する植物と作用しない植物を把握しておくこと。
誤って使うことで育てたい作物が除草されてしまう可能性もあります。
使用上の注意は注意深く確認しましょう。
「アミノ酸系除草剤」は比較的低毒性の除草剤です。
しかし雑草の根までしっかり枯らすことができるのです。
比較的扱いやすい除草剤と言えるのではないでしょうか。
4-3.ジェネリック除草剤をゲットせよ!
ジェネリック農薬は、2016年1月では4成分、67銘柄が登録されています。
まだまだ多いとは言えませんが、今後拡大はしていくでしょう。
購入自体は、農業系の器具を取り扱っている店やネットショップなどでも買えます。
手に入りにくいというわけではありません。
ネットショップでの購入がやりやすいとも言えます。
先述した「エイトアップ」や「サンフーロン」。
これらは、ジェネリック除草剤の代表的ブランドとも言えます。
ジェネリック農薬の開発は、農薬メーカーが市場状況やブランド競争、開発コストなどを鑑みて決定されます。
今後、農家さんの方からも生産コスト削減のため、積極的にジェネリックを取り入れたいという声も多くなるでしょう。
浸透するのはこれからのジェネリック農薬・除草剤。
普及すれば、圧倒的にコスパは良くなるでしょう。
5.有機栽培でもOKな農薬
5-1.農薬は安全面でも選ぼう
農家にとって、コストをいかに削減するかは大きな課題です。
ジェネリック除草剤をはじめとしたジェネリック農薬。
コスト削減に期待されてもいますが、農薬はコストだけが大切なわけではありません。
ここでは、農薬を選ぶために大切なことを解説しましょう。
消費者の食の安心・安全志向が向上している背景もあります。
化学農薬への不安感、有機・無農薬栽培への関心も高くなっています。
しかし、消費者の勘違いとして「有機栽培は無農薬である」というイメージがあります。
実際の現場では、有機栽培には「化学的に合成された物質」ではなく
「生物または天然物由来」の認可のとれた農薬なら使用することができます。
完全無農薬栽培は、コストや手間もかかりますし、まだまだハードルが高いと言えます。
農薬は使用上の注意を守って、正しく使えば畑を守るための心強い味方になります。
使用頻度や量も基準を守れば、自然の分解作用により弊害は起こりません。
正しく理解して使用しましょう。
5-2.有機栽培における農薬
有機栽培において、農薬を利用する場合も出てくるでしょう。
その場合は、消費者の不安を取り除きやすい農薬の選択が大切です。
有機栽培において使える農薬には、「天然無機物」を利用した物もあります。
自然界にある硫黄や銅を利用した農薬です。
代表的な「石灰硫黄合剤」は特徴的な硫黄臭があります。
しかし、殺菌・殺虫作用があります。
ただ、硫黄の香りが苦手な消費者もいるので、使用に抵抗がある人もいるでしょう。
食品原料の農薬もオススメの方法の一つです。
消費者にもやむを得ない利用を納得してもらえる農薬ではないでしょうか。
代表的なものは「気門封鎖型薬剤」と呼ばれるもの。
これは海藻のネバネバしている成分やなたね油、でんぷんなどを利用した薬剤。
虫の呼吸器官である「気門」を塞ぎ、窒息死させる効果があります。
病害虫予防よりも、害虫が発生した時の対策として便利です。
また土壌に棲む微生物由来の農薬も登場しています。
細菌の1種であるバチルスチューリンゲンシスの持つ殺虫性結晶タンパク質を活用した殺虫剤。
土壌中に存在する糸状菌トリコデルマ菌の殺菌力、および病害菌との競合力を利用した農薬。
バチルス属であれば、私達にも身近な「納豆」を利用した微生物肥料もあるので、
消費者の農薬への抵抗感を和らげてくれるでしょう。
5-3.酢とアルコールで予防も可能
比較的規模の小さな農園で農作物を栽培するというケースであれば、大規模な農薬を撒く必要は薄いでしょう。
有機栽培に利用できる農薬ではなく、市販されている食用米酢とアルコール度数35度以上の焼酎。
これで病害虫予防をすることもできます。
酢にもアルコールにも殺菌作用があります。
これらをそれぞれ300倍になるよう希釈して、葉にまんべんなく噴霧。
これによって、病害虫予防を行なうことができます。
もし消費者の志向に徹底的に寄り添うのであれば、食品由来というより食品そのものを利用した防除方法も良い方法です。
5-4.薬剤耐性との向き合い
ただし農薬は非常に便利です。
しかし、農薬の使用タイミングを誤ったり、多用しすぎることは禁物です。
それにより薬剤体制をもつ病害虫が発生することがあるのです。
せっかく農薬を撒いても効果がないのでは意味がありません。
病害虫が発生する初期段階で防ぎきることを徹底しましょう。
病気が多発してからの散布は、耐性菌発生リスクアップにつながります。
そのため農薬散布はあくまで予防として活用しましょう。
化学的防除以外の方法でも病害虫を発生させないように工夫しましょう。
もし農薬を利用する場合には、散布時期にも注意しましょう。
夕方の散布は散布ムラが出来やすくなり、高岡が薄くなります。
農作物に対する薬害リスクも向上するため、気温の低い朝方に散布しましょう。
気温が高くなってきた時に薬剤が早く乾くようにすることが大切です。
朝方の散布によって薬害発生リスクを低く抑えることができます。
除草剤に限らず農薬は、雑草対策や病害虫対策にはなくてはならない存在です。
しかし、コスト削減のことも考慮しなければいけないジレンマがあります。
「ジェネリック農薬」の存在はコスト削減にはつながりますが、まだまだマイナーな存在。しかも、その商品数の少なさはネックにもなっています。
ですが、有機栽培において「自然または天然物由来」であれば、認可された農薬を使用することは可能です。
その上で、他の手段も併用していきましょう。
バランスを考えつつ、豊かな畑にするための工夫をしていきましょう。
5.まとめ
今回のテーマは「ジェネリック除草剤とコストダウン」についてでした。
物価高も高騰していますし、農家にとってもコスト削減は他人事ではありませんね。
もちろん、コスト削減することばかりに注目してしまい、肝心の安全性が欠けてしまえば、農業の質が落ちます。
化学的な手段のみならず、他の方法も併用して豊かな農業を実現しましょうね!
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