農作物を育てる舞台である「畑」の力を十分に活用するに、
便利な道具である農業資材。
農作物を健康で栄養満点にするためにもうまく活用したいですね。
しかし、それぞれの資材についての違いをご存じですか?
今回は農業資材の肥料、堆肥、土壌改良材についての解説です。
土壌を豊かにしてくれる助っ人の農業資材。
知識を深めてより良く活用していきましょう。
目次
1.土壌改良の助っ人!違いは何?
2.肥料と堆肥!何が違うの?
2-1.肥料とは何か?
2-2.堆肥とは何か?
2-3.肥料と堆肥の違いとは?
3.土壌改良剤と堆肥!何が違うの?
4.話題の資材!バイオスティミュラントとは?
4-1.異常気象によるストレス
4-2.バイオスティミュラントとは?
5.まとめ
1.土壌改良の助っ人!違いは何?
野菜栽培において必要不可欠な三大要素(窒素・リン酸・カリウム)。
これらを補うために良く活用されるのが「肥料」です。
さらに、野菜栽培に必要不可欠な土の状態を、
向上するためには「堆肥」や「土壌改良剤」が活用されています。
農業において、よく耳にする言葉である
「肥料」「堆肥」「土壌改良剤」…。
さらに、最近注目を集めている「バイオスティミュラント」もあります。
パッと聞いただけでは
「似た様な物なんじゃないかな?」と思う人も多いでしょう。
肥料、堆肥、土壌改良剤のそれぞれの違いとはなんなのでしょうか。
知識を深めることも、農業をしていく上で重要なことです。
農作物が健康で栄養たっぷりに育つように、
知識を深めて、畑の状態を万全に整えましょう。
2.肥料と堆肥!何が違うの?
まずは、「肥料」と「堆肥」についての違いを解説します。
どちらも「肥」という漢字がついているため、
同じ様な資材に聞こえますよね。
それはあながち、間違った認識ではないのですが…。
両者には、どのような違いがあるのでしょうか?
それぞれ解説しましょう。
2-1.肥料とは何か?
まずは肥料についての解説です。
簡単にいえば、「植物に必要な栄養を補うもの」のことです。
肥料の目的は、「土壌中で不足しやすい植物の栄養補給」です。
〈肥料に含有されているもの〉
・窒素
・リン酸
・カリウム
これら植物の三大要素が主要成分として、含まれています。
肥料大きく分けて「化学肥料」「有機肥料」の2つがあります。
化学肥料は化学的に合成されたものです。
特長として、肥料成分の割合がバランスよく配合されていたり、
単一の肥料成分だけを用いることができる扱いやすさがあります。
さらには、即効性があります。
追肥など、足りない栄養分を補う際に使うのが良いでしょう。
有機肥料とは、油粕や魚粉、鶏糞など、
植物性または動物性の有機物(炭酸そのものを除く炭素を含んだ化合物)
これらを、原料にした肥料のこと。
土壌中でまずは微生物に分解されてから、その栄養が植物に吸収されます。
即効性はありませんし、微生物の活動によって肥料の効果が左右されることも。
そのため、扱いにくさを感じる場合もあるかもしれません。
しかし、土壌の状態を整えるのには適しています。
有機肥料は、元肥に使うのが良いでしょう。
なお、「化学肥料=悪」「有機肥料=善」というイメージが一部である様です。
もちろん、化学肥料を過剰に使用したり、
堆肥などを使わず、化学肥料のみを連用すれば、環境に悪影響が出ます。
化学肥料ばかり使用していると、土中の微生物が失われてしまい、
微生物によって成り立っていた土中の生態系が崩壊。
…さらには、土の保水力や保肥力を失います。
また、施肥し過ぎた化学肥料は、植物が吸収しきれません。
地下水に流れていき環境汚染にもつながります。
しかし、基準施肥量を守り、堆肥などの連用を心掛ければ大丈夫です。
環境に悪影響は及ぼさないでしょう。
化学肥料を使用によるメリットとしては、
作物を容易に増産できるということが挙げられます。
その一方、有機肥料では化学肥料の様な増産は非常に難しいのです。
〈化学肥料と有機肥料の性質〉
・化学肥料は 環境に影響を与えやすく、増産が簡単
・有機肥料は 環境に影響を与えにくく、増産が難しい
「化学肥料=悪」というイメージについては、
一旦これらの特徴や、背景を踏まえてから理解しましょう。
また、化学肥料は大量に使用すると環境を悪化させますが、
有機肥料も大量に使用すると環境を悪化させている実例もあるのです。
大切なことは、使用者のモラルの問題と言えます。
使い方を誤ってしまうと、化学肥料も有機肥料も環境悪化につながります。
使い方を守り、どちらを使うにしても適度な使用を心がけましょう。
正しい理解と臨機応変さが大切です。
2-2.堆肥とは何か?
続いて、堆肥について解説します。
堆肥は簡単にいうと「土を改良するもの」の事を言います。
〈堆肥の主な原材料〉
・植物(わら、枯れ草、枯れ葉など)
・家畜糞(鶏ふん、牛ふんなど)
これらを堆積して発酵させたのが「堆肥」なのです。
完熟した堆肥を土に混ぜ込むと、
土壌中の植物の生育に役立つ有用微生物が増加したり、
土壌中の通気性や排気性も良くなります。
堆肥により、土壌の状態が物理的にも生物的にも良くなるのです。
畑の有用微生物が増えることにより、
農作物を病害虫から守れるなど多くのメリットがあります。
有用微生物についてはこちらの記事をご覧ください。
(【畑の医者】農作物を病気から守れ!有用微生物を増やせリンク)
2-3.肥料と堆肥の違いとは?
さて、まとめると肥料と堆肥の違いはなんでしょうか?
それぞれの特長を端的に言うと…。
・肥料:植物を良くする
・堆肥:土を良くする
ということになります。
ですが、「肥料取締法」を見ると「堆肥」は「特殊“肥料”」に分類されているのです。
肥料取締法では、肥料を「特殊肥料」と「普通肥料」の2つに大別している。「特殊肥料」とは、魚かすや堆肥等、農林水産大臣が指定したもので、「普通肥料」とは、特殊肥料以外のものをいう。
引用元:肥料取締法
つまり、分類としては「肥料(堆肥を含む)」という分類にされています。
ですが、両者には「用途の違いがある」ということになりますね。
3.土壌改良剤と堆肥!何が違うの?
それでは、残りの土壌改良材について解説します。
土壌改良材は簡単に言うと「土を改良するもの」のこと。
使う目的は「耕作に適した土にすること」と言えます。
土壌の物理的、化学的、生物学的な性質を改良するために使われます。
土に栄養を与えるだけに留まらず、
土の通気性や保水性を向上させたり、
微生物を増加させるということもあります。
ここまで聞くと、堆肥と似ている面がありますよね。
先ほど「土を改良するもの」として紹介した「堆肥」は、
いわば「土壌改良剤の一種」ということができます。
堆肥は土壌の物理学的、生物学的な性質を改良するものなのです。
堆肥中に含まれる微生物によって土が団粒構造になります。
さらに、通気性や保水性に優れた土になることにより、
植物が育ちやすい土壌に改良することができるということになるのです。
4.話題の資材!バイオスティミュラントとは?
4-1.異常気象によるストレス
昨今注目されている農業資材のひとつに「バイオスティミュラント」があります。
近年、猛暑やゲリラ豪雨、台風や暖冬など、異常気象が多発しています。
これによる農作物に対する被害も多くなっています。
バイオスティミュラントは、
そんな異常気象に対応する資材として期待が高まっています。
異常気象は、農作物の最大収穫量に対して多大なる悪影響を与えています。
本来であれば、農作物は種の時点で、
収穫時の最大収穫量が遺伝的に決定しています。
それが、生物的ストレスや非生物的ストレスにより、
本来、収穫できるはずだった収量が、減少してしまうのです。
その他にも、農作物の生育を阻害したり、病害虫による被害。
これらの要因としては植物にかかるストレスが関係しています。
農作物にかかっているストレスは大きく二つに分けられます。
〈農作物にかかっているストレス〉
・生物的ストレス
雑草、病害虫など
・非生物的ストレス(別名 環境ストレス)
高温・低温、乾燥など
このうちの非生物的なストレスによる収量減少を軽減すること。
それが、バイオスティミュラントの役割と言えます。
気候変動やそれに伴う土壌の変化によるダメージを緩和して、
植物の成長促進をサポートすることができるといわれています。
4-2.バイオスティミュラントとは?
バイオスティミュラントは簡単に言えば
「植物自体の状態を整えるもの」ということができます。
先ほど解説してきた、肥料、堆肥、土壌改良剤。
これらでは、異常気象に対して歯が立たない…
というわけではないのですが、以下の様な違いがあります。
・肥料、堆肥、土壌改良剤
異常気象で発生した病害虫被害や生育阻害などを解決
・バイオスティミュラント
異常気象に対応できる強い作物を育成する
人間の例で置き換えてみましょう。
肥料、堆肥、土壌改良剤が周囲の環境を整備する「ドクター」ならば、
バイオスティミュラントは「サプリメント」や「漢方薬」と言えます。
ちなみに、「バイオスティミュラント」という名前もあり、
新しく発明された物の様にも思えてきます。
しかし、日本で古来から良く使われていた「ぼかし肥料」。
これも、バイオスティミュラントだと言われています。
ぼかし肥料は米ぬかや油かすなどに、
土やもみがらを加え発酵させたものです。
これ自体が直接植物の栄養になるわけではありません。
ですが、植物の根が強くなるなどの効果があるのです。
5.まとめ
今回のテーマは「肥料、堆肥、土壌改良材の違い」でした。
農業を行う上で、農業資材には助けてもらう場面も多いでしょう。
深く知識を深めていけば、農作物に適切な資材を使うこともできるでしょう。
バイオスティミュラントにも注目したいですね。
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