せっかく育てた農作物が、なんだか元気がない…。
農作物の病害による被害です。
これではとても市場に出荷できない…苦労も水の泡…。
…そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
農作物の品質や味に多大なる悪影響を及ぼす病害。
その原因となる病原菌は、空気中や土の中に数多く存在しています。
病原菌の活動がアクティブになれば、植物に被害が及びます。
病原菌の生育に適した条件が揃ってしまえば、危険性が高くなります。
そんな厄介な病害から農作物を守るのに便利なアイテム。
それが「殺菌剤」です。
今回は、殺菌剤について着目します。
農作物を守るのに適した正しい殺菌剤の選び方を解説していきましょう。
目次
1.殺菌剤の効果とは?
1-1.野菜が病害に遭う原因
1-2.殺菌剤の効果とは?
2.殺菌剤の正しい選び方
3.正しく使おう殺菌剤
4.殺菌剤以外の病害防止
4-1.米のとぎ汁
4-2.重曹
4-3.牛乳
4-4.食酢
4-5.木酢液
5.まとめ
1.殺菌剤の効果とは?
1-1.野菜が病害に遭う原因
野菜が厄介な病害に犯されてしまう…。
病害に遭えば、野菜は食べれる状態ではなくなります。
当然、市場に出荷することができなくなります。
まずは、何が原因で野菜が病害に遭ってしまうのでしょうか。
原因の一つとしては…、
農地が「病原菌が生育しやすい環境条件」になっていることが挙げられます。
病原菌の活動がアクティブになれば、健康な植物の抵抗力でも敵わなくなります。
つまり、病害を予防のためには…
「病原菌が好まない生育環境をつくること」が鉄則になります。
農作物を病害から守るためにも、殺菌剤などを使いお手入れしていきましょう。
1-2.殺菌剤の効果とは?
まず、殺菌剤とはなんでしょうか。
「殺菌剤」
引用元:日本大百科全書(ニッポニカ)
病原微生物を殺滅または生育阻止する効果をもつ薬剤。一般に、感染予防を主目的として医療用に使用する場合は消毒薬とよばれることが多い
読んで字の如くではありますが、農薬として使われる場合、
農作物を病害から予防または防除するために用いる薬剤と言えます。
〈殺菌剤の主な効果〉
①予防効果
②治療効果
それぞれ解説しましょう。
①予防効果
あらかじめ、病害自体を予防することができます。
農作物や農作物周辺に撒くことで、病原菌が植物に棲みつくのを阻止することが可能です。
例えば殺菌剤には、病原菌の生体成分に影響を及ぼすものがあるのです。
子の成分により、病原菌が生きるのに必要なアミノ酸やタンパク質などの合成を阻害。
病原菌の成長や増殖を抑制することができます。
病原菌がうまく生育することができなければ、
当然、アクティブに活動することはできなくなります。
農作物への感染防止をすることができます。
さらに、病原菌の細胞壁を破壊する殺菌剤もあります。
細胞壁が破壊されると、細胞が破裂してしまい、病原菌は死滅してしまいます。
〈主な予防殺菌剤の種類〉
- ダコニール
- オーソサイド水和剤など
これらが、代表的な予防殺菌剤です。
農作物の葉の表面に付着している病原菌や、
空気や土から飛んできた病原菌から農作物を守る効果があります。
②治療効果
すでに病原菌に冒されている農作物に対して、治療を働きかける効果です。
それ以上病害が進行しないように、病原菌を抑制する効果があります。
代表的な効能として「メラニン生合成阻害」。
病原菌の中には、植物に侵入する際菌糸を伸ばして侵入するものがいます。
しかし治療効果のある殺菌剤の効果により、
病原菌のメラニン生合成が阻害されると、菌糸は侵入不可になるのです。
つまり、病原菌に冒されている農作物の感染を抑制することが可能になるのです。
〈主な治療殺菌剤の種類〉
- ベンレート水和剤
- サプロール乳剤
- トップジンM水和剤
などが挙げられます。
農作物がすでに病原菌で冒されている場合、
すでに植物内に侵入している病原菌に効果的なのが、このタイプの殺菌剤です。
2.殺菌剤の正しい選び方
農作物を病害から守るためにも、殺菌剤は非常に便利です。
しかし、それぞれの状況に応じて選んでいく必要があります。
ここでは、殺菌剤を選ぶ際のポイントを解説しましょう。
〈殺菌剤を選ぶポイント〉
- 病原菌の種類を理解しておく
- 殺菌剤の特性、効果を理解しておく
- 用途や使用方法に応じたものを選ぶ
殺菌剤に限った話ではありませんが、薬剤にはさまざまな種類があります。
病害虫の種類や被害状況も多種多様です。
そのため、それぞれに合った薬剤があるというわけです。
病害の種類を特定する前に、もし誤った薬剤を使用してしまえば…。
狙った効果が出ないこともありますし、
その強力な殺菌力によって、農作物に薬害が出る可能性もあります。
「戦に勝つためには敵を知ることから」と孫子の兵法にもあります。
病害防止をするためにも、敵である「病原菌、病気」について理解しましょう。
さらに、殺菌剤の使用方法にも注意しましょう。
殺菌剤をそのまま使用できるのか、水で薄める必要があるのか…。
使い方を誤れば農地に悪影響になる可能性もあります。
使用する際には、殺菌剤に記載されている使用濃度で利用しましょう。
効果をアップさせたいからといってあまり薄めなかったり、
コストを削減したいからと多めの水で薄めたりすることは厳禁です。
記載されている濃度でないと効果を発揮しないと考えましょう。
選び方のポイントを参考に正しく選ぶこと。
さらに、記載されている正しい使用方法で使いましょう。
3.正しく使おう殺菌剤
殺菌剤を利用する際、発生するかもしれない問題があります。
それは同じ殺菌剤を使い続けることで発生する「薬効の低下」です。
農業において厄介な存在に、薬剤耐性をもつ菌の存在があるのです。
しかし、決して「同じ殺菌剤を使い続けた結果、菌が薬剤耐性を持った」
というわけではないのです。
薬剤耐性菌は突然変異によってたまたま発生するのです。
ですが、同じ殺菌剤を使い続けると、耐性をもっていない菌だけがいなくなります。
結果、耐性菌のみが生き残る状況になります。
そうなると、殺菌剤を撒いているにも関わらず、
耐性菌を選択しているという本末転倒な結果になるのです。
殺菌剤を使用する時の注意点として、
違う薬効のある殺菌剤をローテーションで散布するのがおすすめです。
違う系統の殺菌剤を撒けば、
「Aという殺菌剤に耐性のある菌をBという殺菌剤で防除する」ことが可能です。
ただしここでも注意点があります。
殺菌剤によって「混用可否」など注意事項が記載されています。
ローテーション散布は効果的ではありますが、
混用してはならない殺菌剤を使用してしまっては意味がありません。
事前に殺菌剤の特性、効果を知り、
殺菌剤に記載された禁止事項を誤って行わないよう注意が必要です。
農作物が病害被害に遭うと、品質が低下したり収量が減少したりと色々厄介です。
ですが病害被害を早々に解決したいからといって、
むやみやたらに殺菌剤を撒くのは厳禁です。
必ず原因を突き止め、正しい用途の下で使用することが必要です。
4.殺菌剤以外の病害防止
殺菌剤による病害防止について解説しました。
殺菌剤以外にも、病害防止をする方法はあります。
ここではその一部をご紹介します。
殺菌剤と併用して農作物を病害から守りましょう。
4-1.米のとぎ汁
米のとぎ汁は農業にとって有用な微生物のエサになる成分を含んでいます。
そのため、土壌改良や病原菌に対する静菌力を向上させるものとして活用されます。
米のとぎ汁は、米ぬかが薄く溶けた水のことです
米ぬかには炭水化物や油分、タンパク質、ビタミンやミネラルなど、
有用微生物が好む成分が、豊富に含まれています。
米ぬかにつきましてはこちらの記事もご覧ください。
「【畑をアップデート】畑の助っ人!米ぬかの効果 三選」
これらの有機物を土壌の微生物は餌として活用します。
しかし、これらの有機物を利用するのは有用微生物だけとは限りません。
使い方を誤れば、病原菌が増殖する可能性もあることは注意しましょう。
さらに、土壌中に過不足なく窒素があれば問題ないかもしれませんが、
微生物が有機物を分解する際、植物の生長に欠かせない窒素が利用します。
これにより土壌中の窒素が減少し、植物が育ちにくくなることもあります。
米のとぎ汁を活用する場合には、
与える回数を工夫したり(毎日ではなく3日に1度など)、
発酵させて有用微生物の数を増加させてから使用しましょう。
米のとぎ汁で作る乳酸菌エキスが紹介されています。
4-2.重曹
重曹はカビによって引き起こされる、うどんこ病に効果があるとされています。
ただし、使用する際にはいくつか注意が必要です。
重曹には、キュウリうどんこ病やカンキツ緑かび病など、
数種の植物病害を抑制する効果があります。
しかし、植物体上で結晶化して葉焼けの原因となったり、
ニガウリにおいては防除効果はあるものの、
重曹を散布した後、葉が壊死するといった薬害が発生するという報告もあります。
使用する際は、水で800倍に希釈しましょう。
散布後、重曹が結晶化して葉が白くなってしまった場合には、
葉焼けが起きないよう水で流しましょう。
さらに、人体への害はありませんが、
目に入ると結膜炎を起こす場合があります。
散布する際はメガネやゴーグルをつけて使用しましょう。
4-3.牛乳
牛乳はアブラムシの殺虫効果があります。
原液か少しだけ水で薄めた牛乳をアブラムシにスプレーしましょう。
牛乳は乾くと固まり、アブラムシの気門(呼吸器)を塞ぎます。
アブラムシが窒息死するので、葉に張り付いて死んだアブラムシを水で洗い流しましょう。
牛乳スプレーを散布する際には、天候や時間帯にも注意。
必ずよく晴れた日の午前中に行いましょう。
曇りの日に散布すると、乾きにくいので無効になるばかりか、
乾かずに残った牛乳が腐敗してカビが生えたりします。
臭いが気になる場合は、片栗粉でも代用可能です。
水で溶かした片栗粉を散布しましょう。
こちらも乾いて固まるとアブラムシの気門を塞ぎます。
片栗粉で代用する場合も、散布するのはよく晴れた日の午前中に行いましょう。
4-4.食酢
食酢の効果には窒素過多の解消、うどんこ病などの病気予防が挙げられます。
根から吸収された窒素は葉で有機酸と合体し、アミノ酸になります。
有機酸が不足すると、窒素が余り、植物は窒素過剰になります。
さらに、窒素のやりすぎや天候不順などでも窒素過剰が発生します。
そんな時、食酢を葉面散布すると、
酢に含まれる酢酸や有機酸が植物の窒素消化をサポートします。
4-5.木酢液
木炭をつくる際に生じる水蒸気を冷やし回収した液体のことです。
いわば樹木の濃縮液とも言えるこの木酢液。
有機酸やアルコール、フェノール類、ビタミン、ミネラルなど…。
200種類以上の成分が含まれており、木酢液の原液はpH2.8~3.2と強酸性です。
そのまま利用してしまうと、
育てている農作物にも影響が及んでしまいます。
そのため、100倍以上に薄めて利用するのが一般的です。
ちなみに市販品を購入する場合には、ワインレッドで透明なものを選びましょう。
濁りや沈殿物が見られるものは避けた方が良いでしょう。
価格ではなく状態を見て購入するのがポイントです。
販売されている木酢液の中には透明で黄色いものもあります。
しかし、これはお風呂やお肌につけるのに効果的なものなのです。
農薬としての効果は期待できません。
木酢液の効果は、植物そのもの以外にも間接的に影響を及ぼすため、
化学農薬と比較すると適切な説明をすることができないという面があります。
しかし病害虫が減るため、減農薬や無農薬栽培に取り組みやすくなります。
この理由には有用微生物の存在があります。
原液のpHでは病害菌だけでなく、
有用菌も殲滅してしまうほどの殺菌作用をもつ木酢液。
希釈することで適正なpHとなれば病害菌、有用菌ともに繁殖は可能となります。
しかし木酢液に含まれる有効成分は有用微生物のエサとなります。
病害虫と比較して有用微生物の方が優先的に繁殖ができる環境となるのです。
木酢液自体が抗菌・殺菌作用を持つ訳ではありませんが、
植物自体が元気な状態になれば、病害虫もなかなか近寄ることができないのです。
人の健康管理に似たものがありますね。
5.まとめ
今回は、「殺菌剤の選び方」についてでした。
農地のパフォーマンスをアップするためにも、殺菌剤をうまく活用しましょう。
他の素材も併用することにより病害から農作物を守り、
栄養たっぷりの健康な農作物を育てていきましょうね。
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