普段何気なく飲んでいる牛乳。
実は牛から絞っただけのミルクは生乳といい、普段スーパーなどお店で買える牛乳には、成分が調整された牛乳や乳脂肪分を減らしたものなど様々な種類の牛乳があります。
牛乳は殺菌など様々な工程を経て、私たち消費者の手元に届きます。
今回は、牛から絞ったミルクがどんな工程を経て私たちのところまで来るのか、また流通している牛乳にはどんな種類があるのかをご紹介します。
牛乳の製造工程
牛乳は牛から絞っただけでは飲むことはできません。
流通できるようになるまで、殺菌などをする必要があります。
搾乳(さくにゅう)
牛からミルクを絞ることを搾乳といいます。
酪農家は一般的に1日2回ほど搾乳を行います。
ミルカーと呼ばれる搾乳をする機械で搾乳されると、バルククーラーと呼ばれる冷却貯乳槽で10℃以下に冷却され、保存されます。
集乳
牛から絞った生乳を農場から回収します。
生乳はもちろん生なので、冷やしたままタンクローリーで回収されます。
集乳する際には生乳の冷却温度、質などを調べながら回収していきます。
計量と受け入れ検査
工場に届いた生乳を計量します。
しかしすべての生乳を回収するわけではなく、生乳の成分を調べる乳成分検査、生乳に含まれる菌の数を調べる衛生的検査、生乳の風味を調べる官能検査など、10種類の検査すべてに合格した生乳だけを回収します。
清浄化
検査に合格した生乳には目には見えないほこりやゴミが入っています。
クラリファイヤーと呼ばれる遠心分離機やろ過機を使って、小さいゴミやほこりを除去します。
均質化
生乳に含まれる脂肪分は大きな粒子のため、放置するとクリームの層ができてしまいます。
クリーム化を防ぐために、ホモゲナイザーと呼ばれる均質機で、脂肪球を直径0.2から0.5μmほどの小さな粒子にします。
細かくすることでなめらかになり、飲みやすくなります。
殺菌
生乳には多くの菌が含まれています。
その菌をほぼ死滅させるために高温で温め、飲める状態にします。
殺菌ができたらすぐに10℃以下に冷却します。
充填(じゅうてん)
殺菌処理をした牛乳を容器に詰めていきます。
この作業は工場の中で一番清潔な部屋で行われます。
日付の印字・検査
賞味期限の日時を容器のパックに印字していきます。
その後、10℃以下で保存しながら、印字が正しくされているか、パック内に余計なものがはいってないか、牛乳の量が正しい量かなど検査していきます。
出荷
検査に合格した牛乳を出荷します。
牛乳の殺菌方法の違い
牛乳の殺菌方法は、食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」により、”保持式により摂氏63度で30 分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること”とされています。
保持式とは、生乳を一定の温度を保ちながらタンク内で撹拌し殺菌する方法です。
また連続式とは、タンクを使う保持式とは違い、熱されたプレートの間を通ることで一定の温度を保ち殺菌する方法です。
大きく5つの殺菌方法があり、どの殺菌方法で殺菌しても問題ありません。
低温殺菌(LTLT:Low Temperature Long Time)
低温殺菌ではすべての菌を死滅することはできません。
ですが、人間に有毒な菌は死滅するため、冷蔵庫で保管をすることにより一定の期間は安心して飲むことができます。
低温保持殺菌
低温保持殺菌とは、保持式で生乳を63℃から65℃の間で30分間加熱殺菌をする方法です。
連続式低温殺菌
連続式低温殺菌とは、生乳を連続的に65℃から68℃の間で30分間加熱殺菌をする方法です。
高温殺菌
高温殺菌も低温殺菌と同じように全ての菌を殺すことはできませんが、冷蔵保存することで一定の期間は安心して飲むことができます。
高温保持殺菌(HTLT:High Temperature Long Time)
高温保持殺菌とは、生乳を保持式で15分以上75℃以上で加熱殺菌をする方法です。
高温短時間殺菌(HTST:High Temperature Short Time)
高温短時間殺菌とは、生乳を連続的に15秒以上75℃以上で加熱殺菌する方法です。
超高温瞬間殺菌(UHT:Ultra High Temperature)
超高温瞬間殺菌とは、120℃から150℃で1秒から3秒加熱殺菌する方法です。
この加熱殺菌方法は、100度以上の熱でも死なない耐熱性胞子形成菌を、唯一殺せる加熱殺菌する方法です。
低温保持殺菌方法に比べて約1万倍ほど高い殺菌能力があります。
日本での主流の加熱殺菌法はこの超高温瞬間殺菌で、およそ9割がこの方法で加熱殺菌をしています。
食中毒の原因になる菌や、耐熱性胞子形成菌を死滅させることができ、また短時間で多くの生乳を殺菌することができます。
ですが、牛乳の成分を壊すことはありませんし、栄養価に変化もありません。
牛乳の種類
牛乳は食品衛生法の「乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)」に基づいて、使用している原材料や成分などで分類され、容器に表示されています。
牛乳
牛乳とは原材料が生乳100%で、均質化されたのち加熱殺菌をされたものをさします。
乳脂肪分は3%以上で、無脂乳固形分は8%以上、菌は5万以下とされています。
無脂乳固形分とは、牛乳から水分以外の全栄養分と乳脂肪分を抜いたものをいいます。
特別牛乳
特別牛乳とは、特別に許可を受けた牧場で作られた牛乳で、一般的な牛乳より、乳脂肪分などの成分が多く含まれています。
特別牛乳の乳脂肪分は、3.3%以上、無脂乳固形分は8.5%以上、菌は3万以下とされています。
成分調整牛乳
成分調整牛乳とは、生乳から乳脂肪分、水分、ミネラルなどの一部を除去し、含まれている成分を調整した牛乳のことをさします。
成分調整牛乳の無脂乳固形分は8%以上、菌は5万以下とされています。
低脂肪牛乳
成分を調整した成分調整牛乳のうち、乳脂肪分を0.5%か以上1.5%以下にした牛乳のことをさします。
低脂肪牛乳の乳脂肪分は0.5%以上1.5%以下、無脂乳固形分は8%、菌は5万以下とされています。
無脂肪牛乳
成分を調整した成分調整牛乳のうち、乳脂肪分を0.5%未満にした牛乳のことをさします。
無脂肪牛乳の乳脂肪分は0.5%未満、無脂乳固形分は8%、菌は5万以下とされています。
加工乳
加工乳とは生乳やバターなどの乳製品を原料に、乳成分を増やしたり、乳脂肪分を減らしたりした牛乳のことをさします。
乳飲料
生乳もしくは乳製品を主な原料として、乳製品以外のものを加えた牛乳のことをさします。
カルシウムやビタミンなどの栄養分を強化したものや、コーヒーや果汁を加えた牛乳です。
乳飲料の菌は3万以下としています。
牛乳パックの工夫
実は牛乳の容器のパッケージにはさまざまな工夫が施されていることをご存じでしたか?
視覚障害を持っている方のためや、より長く安全に牛乳を楽しんでもらえるようになど、色んな方に対する工夫が牛乳の容器のパッケージにはあります。
例えば視覚障害者の方が、どの紙パックが牛乳か触って判断できるように、パックの上の部分に切り込みを入れたり。
ちなみに切り込みが入っていない方が、注ぎ口になっています。
牛乳を長持ちさせるために、容器を厚めの紙を使って作ったり、遮光性のあるコーティングやインクをつかって、光酸化を防いだりしています。
また紙パックだけでなく、瓶などはどちらもリユース、リサイクルが行われているのでとてもエコな容器です。
瓶は何度も洗って使ったり、リサイクルできる素材で作られています。
紙は日本は諸外国に比べ、紙をリサイクルして再生紙として使うリサイクル率がおよそ65%と高いことで知られています。
おいしく牛乳を楽しむには
ここまで牛乳がどう製造されているのか、どんな種類があるのかご紹介してきました。
ここからはその牛乳をよりおいしく楽しむためのポイントをいくつかご紹介します。
おいしく飲める期限
牛乳の容器には賞味期限が印字されています。
皆さん、少しでも先の日付のものを選んでいませんか?
牛乳は開封したら2日ほどで飲み切るようにしましょう。
持ち運びかた
牛乳は温度があがると衛生的にも味も悪くなります。
もし牛乳をもって移動することがある場合、なるべく10℃以下になるように保冷剤などを使いましょう。
また帰宅したらすぐに冷蔵庫に入れましょう。
保存方法
紙パックや瓶のふたは毎回しっかり閉めましょう。
キムチなどにおいが強くうつりやすいほかのものからは、話して保管するとにおい移りもしません。
容器に口をつけないこと、容器の中に手をいれないことも衛生的に重要なポイントです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なんとなく買っていた牛乳ですが、実は多くの種類に分けられます。
また安全に私たち消費者の手元へ届けるために、酪農家や製造工場、運搬担当まで安全を考えて日々作業をしてくれています。
今後、スーパーなどで牛乳を買う時、乳飲料を買う時、ぜひパッケージを見てみてください。
本記事が牛乳を製造している方たちへの関心のきっかけになれば幸いです。
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