【極秘】土壌のアップデート!微生物で潜在能力解放!

農業の基本として「土づくり」があります。
土壌が豊かであれば、農作物を元気にしてくれる微生物がアクティブに動いてくれます。

畑にとって、土壌の豊かさとは「人間で言えば体力」の様なものです。
健康で元気な畑にするためにも、土壌を豊かにする秘訣を解説しましょう。


目次
1.農業の基本!土壌を改良!
2.微生物の力を借りよう!

2-1.多様多種な微生物が大切
2-2.生態系のバランス
3.土壌アップデート!微生物の生態!

3-1.微生物活用で抵抗力アップ!
3-2.有効な微生物とは?
3-3.各微生物の生態
4.農業においての土壌
5.まとめ



1.農業の基本!土壌を改良!

最近では、SDGsにおいても「持続可能な農業」が提唱されています。
可能な限り環境に負荷を与えない「循環型農業」が注目を集めています。

「循環型農業」とは化学肥料や農薬に頼らず、自然の生態系に近い状態で行う農業。

化学肥料や農薬の使用量を控えることで、環境負荷を軽減するだけでなく、
持続性の高い農業生産の実現をしていこうという目的の方法です。

そして、「循環型農業」にとって「土づくり」は重要な要素です。

土壌の性質は農地の生産力に関係しています。
かつては土壌微生物が落ち葉や糞尿などの有機物を分解し、
それが作物の肥料となっていたのです。

その一方で、化学肥料は即効性があります。
効率よく植物に栄養を与えることができるというメリットがあります。

しかしその栄養分は分解されることなくそのまま植物に吸収されてしまうため…
土壌微生物はエサを失い、死滅していくというデメリットがあります。

「化学肥料等を慢性的に使ってきた土壌」と「控えてきた土壌」とでは、
土壌の生物学的性質に大きな差が生まれてくるのです。

化学肥料等の利用で土壌中の生態系バランスが崩壊してしまうと、
病原菌や病害虫が繁殖しやすくなります。
それらの害を防ぐために、さらに化学肥料や農薬を使い続ける…。

化学肥料などを過信して使えば、
このような負のサイクルが出来上がってしまうのです。

循環型農業を実践する土に整えるためにも、
「微生物の力を借りる」ということは有効な方法です。

土壌を豊かにして、循環型農業を実践していきましょう。



2.微生物の力を借りよう!

2-1.多様多種な微生物が大切
まずは、微生物の特性をよく知ることからスタートしましょう。
土壌中には多種多様な微生物が存在します。

共存しているものもあれば、拮抗しているものもあります。
これらの微生物が「多種多様」に存在している…ということが大切です。

土壌と微生物の関係を理解しやすいものに「連作障害」があります。
連作障害は、同じ作物を同じ場所で作り続けることで生育不良や収量の低下が起こる障害。

土壌中の微生物は、植物の根から分泌される養分をエサにしているのです。
多種多様な微生物が土壌にいれば、「その作物を好む有用微生物」と「病害の原因となる微生物」が拮抗し合うという状況になります。

しかし同じ作物を続けて育てると、
土壌中の微生物は、「その作物を好む微生物」ばかりに偏ってしまうわけです。
何が問題なのかというと、「その作物を好む微生物」が有用微生物だけとは限らないわけです。

下手をすれば、病原菌の密度が高くなってしまう可能性もあります。


2-2.生態系のバランス
微生物の生態系のバランスが重要性…これをわかりやすく、
身近な微生物に置き換えてみましょう。

例を挙げれば、腸内細菌。
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌と呼ばれる菌がいます。
「善玉」「悪玉」の名前なので、善玉が多い方が良いと思われるかもしれません。

しかし、これにも理想的なバランスがあるのです。
2:1:7という比率。これを維持することが大切なのです。

近年の研究によれば、善玉菌にも働きの悪い菌がいたり、
悪玉菌や日和見菌の中に「体によい働きをする菌がいる」とも言われています。

つまり、言葉の響きからイメージしがちな、
「善玉菌が多い=良い」「悪玉菌が多い=悪い」というわけにはいかないのです。

他にも、顔や体にできるニキビ。
微生物の生態系のバランス崩壊が原因で、できるのです。

ニキビの原因菌と言われるアクネ桿菌は毛穴や皮脂腺に存在し、
プロピオン酸や脂肪酸などを作り出し、肌を弱酸性に保つことで、
皮膚につく病原菌の増殖を抑制してくれます。

普段は肌を守る側にいるアクネ桿菌。
しかし、エサとなる皮脂の分泌量が増えたりすると増殖し、
炎症を起こしてしまって、その結果がニキビ!というわけなのです。



3.土壌アップデート!微生物の生態!

3-1.微生物活用で抵抗力アップ!
土壌中の病害虫を取り除くための方法として、
農薬などを利用した土壌消毒が一般的かと思います。

しかし、微生物を活用することで、
土壌病害の主な原因である病原菌を退治するだけではなく、
土壌の状態を整備することができます。

その結果、農作物がもつ病害への抵抗性アップにもつながっていくのです。
どのようにすれば微生物を活用することができるのでしょうか。

大まかな流れとしては、「土壌還元消毒」と呼ばれる方法に似ています。

〈土壌還元消毒の手順〉
①微生物のエサとなる有機物と水を大量にまく
②土壌中を還元状態にする
(ある物質が酸素と結びつく、あるいは水素を奪われる「酸化」とは逆の状態)
③酸素を必要とする病原菌を死滅させる

これに対して、微生物を活用した土壌改良は、
「大量の有機物と水を畑にまく」代わりに、
「土壌改良に有効な微生物を投入時期をずらしてまく」のです。

これによって、病原菌を死滅させるのみではなく、
土壌中のpHや物理学的特性をも整備することができます。


3-2.有効な微生物とは?
それでは、どのような微生物をまけば良いのでしょうか?
微生物は数多く存在しますが、今回ご紹介する有効微生物は三つです。

・バチルス菌(枯草菌)
・乳酸菌
・放線菌

さらに、投入する順番があります。
「バチルス→乳酸菌→放線菌」という順番です。

土壌改良を成功させるポイント。
それは、「それぞれの微生物の特性を理解する」
「各微生物にとって最適な環境になるように水分や温度を調節していく」
ということなのです。


3-3.各微生物の生態
それでは、各微生物の生態を解説しましょう。
それぞれの特徴を理解して、土壌のアップデートに活躍してもらいましょう。
投入する順に「役割」と「散布の流れ」を解説します。

①バチルス菌
〈バチルス菌の役割〉
・病原菌の殺菌
・土壌の物理学的特性を整える

〈散布の流れ〉
1作物残渣、元肥、バチルス菌資材を畑に投入し、耕す
2.バチルス菌のエサとしてアミノ酸液肥を加える
3.フィルムなどで被覆し、水分が逃げないようにする

従来の土壌還元消毒では、有機物とともに水をまきます。
しかし、この方法では1,の後に畝を立て、

「土を握ったとき、形が崩れない」かつ、「そこから水が出ない」
という程度の水分量を保つようにしましょう。

水分が逃げないように覆うと、バチルス菌の生育が旺盛になったとき、
その発酵熱で内部がサウナ状態になります。

バチルス菌は高温に強いため、耐熱性のない病原菌だけが殺菌されるのです。
バチルス菌の働きにより団粒構造が形成され、土の状態がフカフカに!

バチルス菌のエサであるアミノ酸液肥は、
従来の土壌還元消毒でよく用いられる米ぬかよりも早く分解されるのです。

そのため、スムーズに次の行程に進むことができます。
ちなみに、エサがなくなったバチルス菌は芽胞(増殖に適さない環境になった際に形成する特殊な細胞構造。熱や乾燥などに強い)となり、休眠状態に入ります。

ここで次の微生物の散布に進んでいきましょう。


②乳酸菌
〈乳酸菌の役割〉
・土壌pHを下げ、病原菌の密度を減らすこと

バチルス菌投入から14〜20日後に乳酸菌の出番がやってきます。

〈散布の流れ〉
1.乳酸菌資材をエサ(砂糖)とともに水に溶く
2.畝の上に散布する

乳酸菌の生育に最適温度は20〜35℃。
バチルス菌を散布した14〜20日後に、
被覆を外した後ならちょうど最適な温度になっているでしょう。

乳酸菌はその名の通り「乳酸」を生成します。
これらの生成により土壌中のpHが下がり、病原菌の密度を減少させることができます。

乳酸には抗菌作用もあります。
ちなみに、pHが下がると乳酸菌自体も死にます。


③放線菌
〈放線菌の役割〉
・病害虫の抑止

〈散布の流れ〉
乳酸菌投入から2〜4日後、放線菌資材を畝の上に散布

これまで活躍してきたバチルス菌や乳酸菌の死骸。
これらが、なんと放線菌のエサとなります。

土壌病害の原因として悪名高い糸状菌(カビ)やセンチュウに効果的なのがこの放線菌。
キチナーゼという酵素が、糸状菌の細胞壁やセンチュウの卵を構成するキチンやタンパク質を分解します。このキチナーゼを生成する土壌中微生物の代表こそが放線菌なのです!

さらに、放線菌が、乳酸によって下がっていた土壌中pHを上げることで、酸性に弱い微生物もアルカリ性に弱い微生物も抑制が可能です。


4.農業においての土壌

土壌改良方法を解説いたしました。
ちなみに、日本酒を造る際も同じような微生物の遷移がみられます。

例を挙げると、伝統的な「生酛造り」があります。

糖質をアルコールに変える「酵母」は、日本酒を造る上で重要な微生物です。
しかし、野生の雑菌に淘汰されやすい「弱い微生物」と言えます。

ただ、酵母には「酸に強い」特性があるのです。
このため、「乳酸」か「乳酸菌」を添加することで酵母だけを増殖することが可能です。

「生酛造り」では、酒造中の乳酸菌、自然に存在する乳酸菌を取り込み、
酵母に最適な環境に整えていきます。

蒸米をすり潰す「山卸し」という伝統的な作業を行うプロセスで、
「硝酸還元菌→乳酸菌→酵母」という遷移が生じるのです。

硝酸還元菌が生成する亜硝酸、乳酸菌が生成する乳酸。
これらによって、野生の酵母など雑菌とされる微生物の増殖を抑制することができます。

酵母の増殖は抑制されます。
しかし、その間に米の糖化が進行するのです。
酵母が増殖するために、「必要なエサの準備」が整っていくのです。

乳酸濃度が高まると硝酸還元菌が死滅。
さらには、米の糖化、pHの低下により乳酸菌も死滅を開始します。

結果的に、「日本酒造りに役立つな酵母だけが生き残る」…という流れになるのです。

いかがでしょうか?
実は、日本酒造りも微生物同士の拮抗や共存を活用したプロセスなのですね。

なお、「微生物を活用した土壌改良」は化学肥料や農薬を利用する方法と比較すれば、
即効果を期待することはできません。

さらには、土壌の環境や病害虫の種類によって、差が生じてきます。
今回、解説した流れを全てやらなくてもいい場合もあります。
または、改良までに時間がかかったり…

つまり、結果に関してはケースバイケースなところはあります。
しかし、安易に農薬に頼ることで起きるデメリットも存在します。

その他にも、周囲の環境への配慮や、「循環型農業」の実現の観点からも、
農薬に関して、控えていく意識向上は大切になってきます。


5.まとめ

今回は「微生物を活用した土壌改良」の解説でした。

もちろん、農薬などの手段も便利な方法です。しかし、デメリットもあります。

なるべくなら控えていく方が良いでしょうし、そんな時に役立つ方法、
それが「微生物を活用した土壌改良」です。

未来にも持続可能な農業をしていくための知恵として役立てていただければ幸いです。


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