手間暇をかけた自家製のほうれん草を、せっかくなら最大限においしく食べたいですよね。
実は、ほうれん草は、収穫のタイミングや収穫方法、その後の保存方法によって、おいしさが変わります。
収穫のタイミングや正しい収穫方法をすることによって、ほうれん草の魅力である甘味やうま味を逃がすことなく楽しむことができます。
さらに、その後の手入れや保存方法をしっかりと行なうことによって、より長くおいしく自家製のほうれん草を満喫することができますよ。
この記事では、自宅で栽培したほうれん草のおいしさを引き出す、最適な収穫方法や保存方法について紹介します。
自家製ほうれん草の魅力を最大限に引き出し、おいしい食卓をお楽しみください。
おいしいほうれん草の収穫時期とは
ほうれん草の収穫は、その新鮮さと風味を左右する重要な要素です。
最適な収穫時期を見極めることで、より美味しいほうれん草を収穫することができますよ。
種まきの時期から判断する
ほうれん草は比較的生長が早く、種まきから2~3ヵ月で収穫が可能になります。
そのため、種まきをした時期から計算して、大体の収穫時期を把握することが大切です。
ほうれん草は主に、春に種を播いて夏前に収穫する『春まき』と秋に種を播いて冬に収穫する『秋まき』の2つの時期に栽培することが可能です。
ただし、品種によって収穫時期は前後するため、種袋の裏側を確認した上で判断することも大切です。
春まきの場合
春まきでは、基本的に3月頃に種を播き、5月頃に収穫です。
ほうれん草は基本的に暑さに弱く、25℃を超えると生育不良を起こします。
暑さに強い品種を選ぶことも重要ですが、ほうれん草の様子を見て、弱っているようであれば早めに収穫すると失敗を減らすことができます。
秋まきの場合
秋まきでは、基本的に9月後半に種を播き、11月から12月頃に収穫です。
ここ最近では9月でも真夏日になることが多いため、種まきの時期を10月や11月にずらして、年を越してから収穫しても、寒さに強いので問題なく育ちます。
そのため、初心者におすすめなのは秋まきです。
また、秋まきであれば多少収穫が遅れても枯れることはありません。
霜が降ることで、より甘味もうま味も増し、春まきよりも味が良いと言われています。
ただし、寒さが厳しい日が続くと葉先が枯れることがあるため、不織布をかけるなどの対策が必要です。
大きさや色から判断する
種まきの時期から大まかな収穫時期を把握することができますが、ほうれん草の生長には個体差がありますし、栽培する場所によっても生長する速度は変わります。
そのため、ほうれん草を実際に観察して、大きさや色からベストな収穫時期を判断しましょう。
目安となる特徴は以下の4つです
- 葉の大きさが10~15㎝程度
- 全体の大きさが20~25㎝程度
- 本葉が10枚程度
- 葉の色が濃い緑でつやがある
収穫の一番分かりやすい目安は大きさです。
葉が成長しすぎてしまうと、筋張ってしまったり、シュウ酸が増え、苦みやえぐみが増えてしまい、おいしさが半減してしまうので注意が必要です。
また、ほうれん草の葉の色は、収穫時期である鮮やかで濃い緑色から、時間が経つごとに色味が薄くなり、黄色っぽく変化します。
味や食感が落ちるだけでなく、見た目も悪くなるため、適切な時期での収穫を心がけましょう。
そのためにも、週に1回程度で問題ありませんので、定期的にほうれん草の様子を見に行くことが大切ですよ。
また、ほうれん草は同じ時期に種を播いたとしても、その成長には個体差があります。
すべてをまとめて収穫するのではなく、ベストな状態になったものから少しずつ収穫することで、おいしいほうれん草を長く楽しむことができますよ。
仮に、たくさん収穫してしまって食べきれない!という場合も、冷凍保存が可能なため、安心してベストな時期に収穫してください。
冷凍保存の方法についてもこの後に紹介させていただきます。
朝よりも夕方に収穫する
ほうれん草は収穫する時間帯で味が変化する野菜です。
収穫時間にベストなのは『夕方』です。
実は、ほうれん草に含まれる苦みやえぐみの元であるシュウ酸の量は、朝よりも夕方の方が少ないのです。
また、冬場に収穫する場合は、朝だと霜が降りていて茎や葉がしなびたようになってしまっているのも、収穫の時間帯に向かない理由のひとつです。
さらに、ほうれん草は収穫してから時間が経つにつれてどんどんおいしさが逃げて行ってしまう野菜。
夕方に収穫してそのまま夕飯に出せば、おいしさが逃げることなく、新鮮でおいしいほうれん草を食べることができます。
これらの理由から、ほうれん草は夕方に収穫した方がうま味がぎゅっとつまっていておいしいと言われています。
栽培してみて感じた収穫時期による違いとは
筆者も実際に収穫してみましたが、栽培時期をすぎると色味が薄くなっていき、黄色くしなびた葉が出てきました。
黄色い葉はおいしく食べることができないので、その場でちぎって捨てるしかないので、もったいないですよね。
寒さ対策でほうれん草に不織布をかけていたため、ほうれん草の様子が良くわからず、気が付いたら収穫時期を過ぎていたものも出ていました。
週に1度は布を外して中のほうれん草の様子を見るべきでした。
また、栽培時間に関しては、やはり朝は霜の影響でしなびてしまい、葉や茎が切れやすいと感じました。
そのため、夕方に収穫したものの方が、シャキッとしていておいしく感じたので、やはり夕方に収穫するのがおすすめです。
ほうれん草の 正しい収穫方法とは
ほうれん草を正しく収穫することによって、葉や茎を傷つけることなく、おいしく新鮮なまま食べることができますよ!
ハサミで収穫する
ほうれん草は抜き取らず、一本ずつハサミで根本を切り取りましょう。
包丁を使うことも可能ですが、刃こぼれをしてしまったり、まだ収穫する時期ではない周囲のほうれん草も一緒に切り取ってしまうことがあります。
また、抜き取ると、手に押されて葉が潰れて傷ついてしまったり、根本が抜けず、葉の途中で切れてしまうこともあります。
そのため、初心者はまずキッチンバサミや、家庭菜園用のハサミを使って切り取るのがおすすめです。
根本も一緒に切り取る
ほうれん草の収穫のポイントは『根本』も一緒に切り取ることです。
ほうれん草の甘味やうま味は根本の部分につまっています。
そのため、葉の部分だけ収穫して根本は取らないということはないようにしましょう。
実際に収穫してみた
筆者も実際に収穫をしてみました。
ほうれん草は地面にくっついて生えているため、しっかりと根の部分を手で持ち上げることで、切りやすくなります。
根が少し見える程度にほうれん草を軽く上にあげて、そのまま根本を切り取ります。
ポイントは、葉の部分にはなるべく触らずに、茎や根本のみを触るようにすることです。
そうすることで、葉が切れたり、折れることなく、きれいな状態で収穫することができますよ。
ほうれん草がおいしくなる収穫後の手入れとは
ほうれん草を収穫したら、その後の手入れもおいしさを維持する鍵となります。
まず、収穫したほうれん草はなるべく早めに処理しましょう。
遅れると栄養価やおいしさが減り、鮮度も低下してしまいます。
収穫したほうれん草は土や汚れがついている可能性があります。
食べた時に『ジャリ』っと口の中に砂が入るとせっかくのおいしいほうれん草が台無しです。
優しく水で洗い、汚れを取り除きます。
特に根本部分には汚れがたまりやすいので、注意して洗いましょう。
ほうれん草のおいしさを保つ保存法とは
ほうれん草は収穫後はなるべく早く食べるのがベストですが、
「調理する時間がない」
「たくさん収穫できたのですべてを消費できない」
「せっかくなら少しずつ長く楽しみたい」という方も多いはずです。
大切に育てたほうれん草を、なるべく長く、おいしく、無駄なく楽しみたいですよね。
ここでは、ほうれん草のおいしさを保ちながら長期保存する方法を紹介します。
冷蔵と冷凍の違いを理解し、自分に合った保存法を試してみましょう。
冷蔵保存の方法
保存期間:7~10日程度
炒め物など、ほうれん草のシャキシャキ感を残したまま保存したい場合は冷蔵保存がおすすめです。
通常は3日程度でしなしなになってしまうほうれん草ですが、ちょっとしたひと手間で新鮮さを長くキープできますよ。
やり方は以下の通りです。
- 水洗いをして水気を切ったら、軽く濡れたキッチンペーパーや新聞紙などでほうれん草を包みます。
- ビニール袋に入れて密封します。
- 根元を下にし、立てた状態で冷蔵庫の野菜室に保存します。
ほうれん草は横向きに寝かせて保存すると鮮度が落ちてしまうため、必ず立てましょう。
また、時間がたつと、ビタミンCなどの栄養が減ってしまうため、なるべく早めに食べきるのがおすすめです。
冷凍保存の方法
ホウレンソウは冷凍することで、より長い期間の保存が可能になります。
収穫後に食べきれない分は、早めに冷凍保存することでおいしさや鮮度を残したまま保存することができますよ。
冷凍したほうれん草は、グラタンやスープ、お浸しや炒め物など、何に調理してもおいしく食べることができます。
生のまま刻んで保存
保存期間:1ヵ月
ホウレンソウの水分を取り除き、4㎝程度に刻んだあと、ジップロックなどの保存容器に空気を抜いて保存します。
解凍方法:
凍ったまま調理が可能です。
解凍するとしなっとするのでそのまま食べることも可能ですが、えぐみが気になる場合は、軽く茹でましょう。
茹でてから冷凍
保存期間:1か月
ホウレンソウを硬めに茹でたり湯通しした後、水気をしっかり絞って冷凍容器に入れ、冷凍保存します。
冷凍したホウレンソウ同士はくっついてしまうため、一回に使う分ごとをラップやジップロックで小分けに保存するのがおすすめです。
解凍方法:凍ったまま調理するか、自然解凍させます。
ほうれん草の基本の栽培方法とは
ここでは、ホウレンソウの栽培方法について紹介します。
ホウレンソウは栽培期間が短いので、植え替えがいらず、簡単に育てることが可能ですよ。
栽培方法について詳しくはこちらの記事で紹介しているので、参考にしてください。
1.土づくりと畝づくり
種まきの1〜2週間ほど前に、土づくりを進めます。
堆肥を2kg/㎡、深さ20~30cmを目安に土を十分に耕して、土壌とよく混ぜ合わせましょう。
畝幅は70~80cm、畝の高さは10~15cmで作ります。
詳しくはこちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
2.種まき
畝に15~30㎝ほど間を空けて2条の溝を作りましょう。
溝の深さは1㎝ほどです。
溝に1㎝間隔で種をパラパラっとスジ播きします。
土を被せて軽く押さえて、たっぷり水を与えましょう。
3.間引き
種まきをしてから1~2週間後の芽が出そろったタイミングで3㎝くらい間を空けて間引きします。
その後、本葉3枚くらいのときに5㎝くらいの間を空けて2度目の間引きをしましょう。
4.手入れ
水やり
種まき後にたっぷり水やりをやった後は、それほどこまめに水やりをする必要はありません。
晴れの日が続いて、畑が乾燥している時のみ水を与えましょう。
除草
大きくなる前には、雑草が目立つこともあります。
全てを取り除く必要はありませんが、ほうれん草の芽を押しのけるような大きな雑草はきちんと抜き取りましょう。
また、抜き取る時も、ほうれん草の芽の周辺にある土や根を持ってかれないように慎重にぬき、必要であれば、土を寄せてください。
追肥
ホウレンソウの追肥は様子を見て与えてください。
畑栽培では20~30g/㎡を条間にまき、土と軽く混ぜてから土を寄せてください。
また、肥料を与えすぎると肥料やけを起こして生育不良につながるため、注意が必要です。
寒さ対策
秋まきで栽培するときは冬を越すこともあります。
12月末の霜が降りる前に寒さ対策をしましょう。
不織布を全体にかけてあげれば問題ありません。
できればトンネルにしてあげるとホウレンソウの生長の邪魔をしませんが、2回目の間引きが終了していれば軽くかけてかけてあげるだけでも大丈夫です。
不織布がない場合は、笑や落ち葉など、ほうれん草が直接外気に触れないような工夫をしましょう。
5.収穫
ほうれん草は、草丈が程度20㎝、本葉10枚程度の大きさになったものから収穫していきます。
詳しくは、今回紹介した『ほうれん草の 正しい収穫方法』を参考にしてみてください。
ほうれん草の連作障害には注意
ほうれん草を育ててみると、手間がかからず栽培期間が短く、手軽に育てられることが分かります。
また、自家製のほうれん草の濃いうま味や甘味を知り、そのおいしさに感動する人も多いはず。
「秋まきに挑戦したから次は春まきでやってみようかな」
「また作ってみたい!」
という方は、ほうれん草の『連作障害』に注意しておきましょう。
連作障害について知っておくことで、失敗も無く、またおいしいほうれん草を収穫することができますよ。
連作障害とは?
『連作障害』とは、同じ場所で続けてほうれん草を栽培することによって引き起こされる問題のことです。
たとえば、土壌中の栄養素の枯渇、病気や害虫の発生、収量と品質の低下など、様々な面でその影響が起きる可能性があります。
どんな影響が起きるのか、いくつか紹介します。
土壌中の栄養が無くなる
ほうれん草は栄養を多く必要とする作物であり、同じ場所での続けての栽培により土壌中の特定の栄養素が無くなってしまいます。
特に窒素、リン、カリウムなどの栄養素が不足すると、ほうれん草の成長が妨げられ、大きくなることが難しくなります。
土壌中の害虫と病気の発生
ほうれん草を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中に特定の害虫や病原体が蓄積しやすくなります。
これにより、害虫や病気が発生しやすくなり、ほうれん草が被害を受けやすくなります。
収量と品質の低下
連作障害によって土の環境が悪くなり、栄養不足や病気の影響を受けたほうれん草は、収量が低下し、品質も低くなります。
葉の色が悪くなり、風味や栄養価が減少する可能性があります。
土壌の微生物バランスの崩れ
ほうれん草の連作は、土壌中の微生物のバランスを崩すことがあります。
土壌中の微生物は根の健康や栄養循環に重要な役割を果たしており、連続して同じ植物を育てることでこれらの微生物が減少し、土壌の生態系が乱れる可能性があります。
連作障害を避けてほうれん草を栽培しよう
ほうれん草の連作障害を避けるためには、前回とは違う場所で栽培することや適切な土壌管理が必要です。
一度ほうれん草を育てた場所には、1~2年ほどあけてから、また栽培するようにしましょう。
また、ほうれん草を栽培した後には、キク科の野菜を育てるのがおすすめです。
レタスやゴボウなどがキク科になりますが、初心者でも育てやすいのはサニーレタスやベビーリーフなど。
ほうれん草を収穫した後の春先から栽培可能で栽培期間も短いのでおすすめですよ。
土壌の健康を維持しながら、家庭菜園を楽しみましょう。
まとめ
育てやすく栄養価も高い野菜である『ホウレンソウ』のおいしさを無駄なく楽しむための『収穫方法』と『保存方法』について紹介させていただきました。
同じほうれん草でも、収穫のタイミングや収穫方法によって、おいしさが変わります。
また、適切な保存方法を知ることで、ほうれん草を長く楽しむことができますよ。
ぜひ、今回紹介した方法を参考に、自家製のおいしいほうれん草をたっぷり楽しんでください。
また、「新鮮なおいしいほうれん草をまた育てたい」といった際には、連作障害に注意が必要です。
栽培場所を変えるなどの工夫をして、失敗することなく、ほうれん草栽培を楽しみましょう。
「みんなで農家さん」では、農業に関する情報だけではなく、初心者に向けた家庭菜園に関する記事も多く紹介しています。
今後も実際に野菜を栽培していく様子を紹介していくので、興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。
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