かいよう病、という病気をご存知でしょうか?
名前も症状も知らない、という方も大勢いると思いますが、その症状を目にしたことがあるという方もいるかと思います。
そこで今回、かいよう病をピックアップして、どんな病気なのかや、特徴や原因、対策など色んな事に対して掘り下げて行こうと思います。
ですので、どんな病気なのか知りたい、という方は最後までお付き合いください。
かいよう病とは?
細菌性の病気です。
病原菌は葉の気孔のほか、強風による葉の擦れ、ハモグリガによる食害跡などの傷口から雨水などを伝って侵入します。
発生時期は4~10月ですが、特に5月ごろに風を伴う降雨が続くと被害が広がりやすいです。
また初夏からミカンハモグリガの発生が多いと食害跡からの感染が助長されます。
かんきつ類では果実、葉、枝にできる褐色でコルク状の病斑が特徴です。
かんきつ、うめ、トマトなどに発症しやすい病気になります。
かいよう病になった果実は市場価値が下がり、多発すると樹を枯らしてしまうため最重要病害の一つとして扱われています。
〜ミカンハモグリガとは?〜
ミカンハモグリガは「エカキムシ」や「ジカキムシ」とも呼ばれています。
葉に絵を書いたような被害がでることからこの名前があるようです。
かんきつ類だけに寄生し、他の植物に寄生することはありません。
日本の他、東南アジア、オーストラリア、南アフリカ、中東地域に分布しています。
1993年アメリカのフロリダ州でこの害虫が発見されました。
ミカンハモグリガは若い葉に主として寄生加害し、時には若い枝や果実(幼果)にも寄生加害します。
加害をされても枯死したりすることはなくそのまま成長しますが、生育初期に食入をうけたり、1枚の葉に多数の虫の食入があると、葉の成長は妨げられ、変形したり、萎縮した葉となってしまいます。
この害虫による被害は主として夏秋葉の被害であるので成木では、あまり問題となりません。
しかし、苗木や幼木では夏秋葉の被害は樹の発育に大きな影響を及ぼすので最大の害虫といえるでしょう。
また、ミカンハモグリガの食害痕はかいよう病の発生と密接な関係があります。
かいよう病菌はかんきつ類の葉や果実の傷口から侵入するのですが、ミカンハモグリガの食害痕はかいよう病菌の侵入口を提供していることになるからです。
台風が襲来する秋口の食害痕にはかいよう病が発生しやすくなり、台風の襲来によって激発した例がよくあります。
夏から秋にかけての(夏秋梢)ミカンハモグリガ防除は秋のかいよう病の発生に大きな影響を与えるのでかいよう病の発生が少しでもみられる園ではミカンハモグリガの防除を必ず実施しておくことが大切です。
原因とその特徴(症状)
●伝染源
最初の伝染源は3月上旬から4月上旬にかけて2年生枝に発病する潜伏越冬枝病斑です。
潜伏越冬枝病斑の多少は初期の果実発病に影響します。
二次伝染源は葉、果実、新梢の病斑で、生育期の果実発病に大きく影響します。
●伝染方法
病原細菌は伝染源の病斑から雨滴によって飛散します。
傷口や気孔から侵入して感染し糸状菌類に比べ短時間で増殖します。
●多発条件
3月下旬から4月下旬の主感染時期に強風雨が多くなると被害が増加します。
一度多発するとその後数年間発生しやすいです。
風当たりの強い園、排水不良で乾きにくい園で発生しやすいので要注意です。
〜特徴(症状)〜
先述した通り、葉、緑枝、果実に発生します。
春葉の病斑は、はじめ円形、淡黄色、水浸状の斑点で、のちに拡大して、中央部がコルク化して粗造となり、その周囲0.5mm幅が水浸状、さらにその周囲にかなり広い黄色のハローを生じます。
葉裏の病斑部もコルク化し粗造となるが、淡褐色の盛り上がったかさぶたとなります。
夏、秋葉では、ミカンハモグリガの食害や風ずれなどの傷口から侵入することが多いので、一般に傷口に沿った形の病斑の集合となりやすいです。
葉柄も侵されやすく、激しく落葉します。
果実、緑枝では、はじめ水浸状濃緑色の病斑ができ、のちにコルク化して淡褐色の盛り上がったかさぶたとなります。
対策や効く薬剤
〜対策〜
①防風対策のため、防風垣、防風ネットなどを設置します。
②発病枝はできるだけ剪定、除去します。
特に、夏秋梢の発病枝は除去しましょう。
③春先の感染を防ぐため、発芽前に薬剤散布を行います。
④強風を伴う風雨や台風の襲来が予想される場合は、事前に薬剤散布を行いましょう。
⑤感受性品種栽培園あるいは既発園での薬剤防除は、発芽前防除に加え、5月下旬(花弁落下直後)に1回、6月下旬(梅雨期)に1回、8月中旬~9月下旬(秋霖期)に1~2回行います。
なお、多発園では、開花前防除(5月上旬)など適宜防除回数を増やします。
⑥ミカンハモグリガの防除を行います。
⑦強剪定による夏秋梢の多発生を避けましょう。
〜薬剤〜
薬剤による防除では、予防剤として銅剤を散布し、発病初期にバリダシン液剤5やマイシン剤を散布するのが効果的と考えられます。
●銅剤
特徴
・無機銅剤(塩基性硫酸銅)であり、糸状菌病害から細菌性病害まで幅広い病害に有効です。
また、野菜類登録を有しているなど多くの作物へ適用を有します。
・耐性菌出現リスクが低く、既存剤に対する耐性菌に対しても有効です。
【使用時の注意事項】
銅剤は「無機銅」と「有機銅」に分かれます。
両方とも細菌性病害や糸状菌病害に防除効果を発揮しますが、効果の高さに違いが見られます。
どちらも予防効果のため、病害の発生前に予防的に防除を行いましょう。
また、銅剤は「薬害が発生しやすい!」と思われがちですが、「有機銅剤」は化合物にすることで「無機銅剤(水酸化第二銅・塩基性塩化銅・塩基性硫酸銅)」よりも銅イオンが溶け出しにくくなり、薬害の発生が軽減されます。
それぞれの銅剤の特徴を把握した上で使用しましょう。
●バリダシン液剤5
特徴
・散布後茎葉に吸収され、導管内の細菌の増殖をユニークな作用機構(糖代謝系酸素阻害)で抑制します。
・液剤タイプなので作物への汚れの心配がありません。
・結球後期までの防除が可能です。
※はくさい・たまねぎ防除では、収穫3日前まで使用できます。
・高温時の散布でも薬害の心配がほとんどありません。
・ユニークな作用機構により、耐性菌出現の心配はほとんどありません。
・低コスト防除剤です。
【使用時の注意事項】
薬害の心配がほとんどなく、安全性が高い薬剤です。
また、対象作物の生育ステージや温度条件など、いろいろな条件下でも作物への影響が少ない薬剤です。
ただし、登録外作物のトマトやきく(秀芳の力等)には薬害が出ることがありますので、かからないように注意しましょう。
他の抗生物質剤とは全く異なる作用機構です。
すでに確認されている他の抗生物質剤耐性菌に対し、交叉耐性は示しません。
液剤なので、作物への汚れの心配がほとんどありません。
●アグリマイシン-100
特徴
・ストレプトマイシンにオキシテトラサイクリンを配合した複合抗生物質製剤です。
・作用性の異なる2種類の抗生物質の共力作用によって広範囲の植物性細菌病を的確に防除できます。
・オキシテトラサイクリンはストレプトマイシン耐性菌に対しても有効で、耐性の獲得を遅延させます。
・効果が長期間にわたって持続します。
【使用時の注意事項】
石灰硫黄合剤との混用はさけ、また、ボルドー液と混用する場合は、使用直前に混合するようにしましょう。
本剤の使用により、薬害としてクロロシス(黄化現象)を生じることがあります。
特に高温多湿時には薬害を生じやすいので、留意の上散布してください。
かいよう病の野菜や果物
かいよう病について知ったところで、次はかいよう病にかかった野菜や果物が食べられるのか、気になりませんか?
かいよう病にかはかりやすい野菜や果物を1つずつ取り上げていきたいと思います。
レモン
かいよう病にかかったレモンは皮がところどころ茶色く変色しているので見た目は悪いですが、食べても体に害が出ることはありません。
皮を取り除けば果肉は無事であることがほとんどです。
「病気のレモン」という印象がありますが、毒性や副作用はないので安心しましょう。
みかん
かいよう病は柑橘類に多く見られるものですが、食べても体に害のあるものではないので、みかんの場合も食べることができます。
キウイ
キウイにおいてもかいよう病が見られることがありますが、キウイの場合も食べることができます。
トマト
トマトの場合もかいよう病にかかっていても食べることができます。変色した箇所は美味しくありませんので、取り除いて食べましょう。
このように、かいよう病にかかっても基本は全て食べることができます。
気になる方は、変色した部分を取り除いて食べるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
かいよう病について少しでも理解を深めることができましたでしょうか?
かいよう病、という名前を知らないだけで、実は何度か目にしたことがあるかもしれませんね。
また、かいよう病だから、と丸ごと捨てるのももったいないです。
食べられないところだけ捨てて、なるべく食べるようにすることでSDGsにも繋がります。
SDGsとは「持続可能な開発目標」、つまり簡単に言うと「世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界のみんなで2030年までに解決していこう」という計画・目標のことです。
一人一人が意識すればSDGsに繋がりますので、こういった小さなことから実践していきましょう。
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