目次
1.『農業 虎の巻!新規就農者が知っておくこと三選』
2.『知の章』〜農業の種類と初期投資を知ろう〜
2-1.耕種農業の種類と特徴を知ろう
3.『実践の章』〜育てやすい作物を育てよう〜
3-1.葉物野菜(小松菜、ホウレンソウ)
3-2.根菜類(ジャガイモ、タマネギ)
3-3.果菜類(キュウリ、ミニトマト)
4.『経営の章』〜長く続く経営のポイント〜
4-1.農業で稼ぐためのポイント
4-2.農業経営で見落としがちなポイント3つ
5.まとめ
『農業 虎の巻!新規就農者が知っておくこと三選』
“いつかは…農業をしてみたい”
“都会を離れて田舎で生活してみたい”
“実家が農家じゃないから何していいかわからない”
将来、就農を考えている人にはそんな悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか?
何事にも、まずは万全の準備をすることが肝心です。
一言に農業といっても広い業界ですし、育てる作物の種類も数多くあります。
新規就農を考えている場合、「どの作物を栽培するか?」というのは特に重要なポイントとなります。
本記事では、新規就農を目指す人の向けに、最初に押さえておくべき三つのポイントを解説しました。
・農業の種類について
・農業初心者におすすめの野菜
・農業経営に関するポイント
ご一読いただければ農業への最初の一歩を踏み出せると思います。
『知の章』〜農業の種類と初期投資を知ろう〜
まずは、農業という業界についての全体像を解説していきましょう。
農業は主に5つの業界に分けることができます。
・管理,補助的経済活動を行う事業所
・耕種農業
・畜産農業
・農業サービス業
・園芸サービス業
各業種の特徴を、解説していきます。
・管理,補助的経済活動を行う事業所
農業経営を推進するために、人事、経理、広報などの管理用務を行う事業所です。
出荷・販売の管理や輸送などの支援業務も入ります。
農業といえば、「農作業」のイメージは確かに強いですよね。
しかし、農業経営をサポートする仕事も数多くあるのです。
・耕種農業
耕種農業とは、田畑を耕して植物を育てる農業のこと。
対象となっている農作物は、米や麦などの穀物、大豆などの豆類、野菜や果物、花きなど広範囲にわたります。
作物ごとの分類も入れればより細分化されます。
栽培内容としては…まず、米を育てる稲作。
畑で農作物を育てる畑作があります。畑作はさらに屋外で野菜や果物を育てる露地栽培、ビニールハウスなど屋内で育てる施設栽培などに分けられます。
また、天然のタケノコや、マツタケを収穫することは耕種には含まれていません。
ですが、下刈り程度の管理のみでなく施肥を行っている場合は栽培とみなし耕種農業の一種ということになります。
初期コストでみると、施設栽培がもっとも高く、次に稲作、比較的低いのが露地栽培と果樹栽培になります。
・畜産農業
畜産農業は、動物を育てる農業。
牛・豚・鶏・羊などを育て、その肉や卵、牛乳などを出荷します。
養蚕や養蜂なども畜産農業の一種。
種付け用や実験用、ペット用の飼養も畜産農業ということになるのです。
卵や牛乳の場合は一年を通して出荷可能ですが、肉類は育てるまで時間がかかるため、計画的な生育・出荷を考えておいた方が良いです。
例を挙げると、牛肉として出荷できるようになるまで2年かかるのであれば、肉用牛の生産農家はそれを見越した子牛の仕入れや育成を行う必要があります。
・農業サービス業
穀物、野菜、果樹などの作物に関して、栽培から出荷までの作業を、一部請け負う仕事。
たとえば、育苗をする育苗センター、共同選果・選別を行う農産物出荷組合、人工授精や受精卵移植を行う畜産の人工授精業などが該当します。
・園芸サービス業
築庭、庭園樹の植樹、庭園・花壇の手入れなどを請け負う仕事。
たとえば、植木業や造園業、樹木医などが該当します。
「耕種農業の種類と特徴を知ろう」
育てる農作物や育て方などによって、耕種農業を6種類に分け、それぞれの特徴について解説します。
①稲作の特徴
稲作とは、日本の主食である米を農作物とする耕種農業。
日本では、水田稲作が主ですが、畑で育つ陸稲(りくとう)という種類の稲も存在します。
日本で栽培されている米の品種は900以上。
有名な米ブランドである、コシヒカリやササニシキなどは代表的な品種のひとつ。
各地の気候や時代のニーズに合わせた品種改良が行われ、毎年さまざまな新しい品種が見られるのも米の大きな特徴です。
稲作は、米を収穫した後も土づくりや苗づくり、田おこしなど、1年間を通した農作業があります。
現在、米の流通は自由化されており、ネットショップを通じた販売などで生産者独自のブランドをアピールして直売するケースも多くなってきています。
②畑作の特徴
畑作は畑で農作物を栽培することです。
しかし、ここでは広い圃場(ほじょう)でつくられることが多い米以外の麦やトウモロコシなどの穀物、大豆やエンドウマメなどの豆類、イモ類などの栽培を畑作として分類しました。
これらの作物は、そのまま農作物として出荷されるだけではなく、加工されて出荷されるものも多くあります。
③露地栽培の特徴
屋外の畑で作物を育てることを露地栽培、育てた野菜を露地野菜と呼びます。
特に、寒さに強いダイコンやニンジンなどの根菜、白菜、キャベツ、レタスなどの葉物野菜は露地野菜の代表的な作物。
キュウリやトマト、ピーマンなどの野菜も露地栽培はできますが、高温を好み寒さに弱いため、栽培できる期間が限定されてきます。
露地野菜の栽培は、ビニールハウスなどの施設が不要な分、初期投資額が少なく済むことがメリット。
さまざまな品種にチャレンジできるため、耕種農業の中でも農業初心者にも挑戦しやすい種類です。
④施設栽培の特徴
ビニールハウスやガラス製の温室などが代表される、屋内施設で作物を育てることを施設栽培といいます。育てた野菜を施設野菜と呼びます。
代表的な作物は、トマトやナスといった野菜や、イチゴ、メロンなどの果物です。
本来は、ビニールハウスは保温を目的に作られました。
ですが、現在では保温のみならず、気温や湿度、光量など、作物の生育に適した条件を人工的に調整可能になっています。
天候に左右されず安定した品質で栽培できることは、施設野菜の特徴といえます。
ただし、温室を建てるなどの初期投資額、温室内の環境を保つための光熱費といった営農費用は、露地野菜に比べて高額になるということを覚えておきましょう。
⑤果樹栽培の特徴
果樹とは、木に実る果物類全般のこと。
ほとんどの場合は1年に1回収穫期を迎え、農繁期と農閑期がはっきりしています。
代表的な果樹は、ミカン、リンゴ、ブドウなどになりますが、クリや梅なども果樹に含まれています。
農作業としては、木に水や肥料を与え、病気や害虫から守る手入れが主な作業。
最近では、単に出荷するだけでなく、ブランドフルーツとして販売したり、収穫した果物を加工品として販売する6次産業化など、バラエティ豊富な展開が広がっています。
⑥花き栽培の特徴
花屋やホームセンターに並ぶさまざまな花や観葉植物を栽培する花き栽培も、耕種農業の一種。
「花き」とは、観賞用の植物を指し、切り花、鉢もの、花木類、球根類、花壇用 苗もの、芝類、地被植物類のことを言います。
家庭用はもちろん、贈答用、冠婚葬祭用、地域や商業施設の緑化として用いられるなど幅広い用途があります。
「畜産農業の種類と特徴を知ろう」
畜産農業は、育てる動物によってさまざまな種類に分かれます。ここでは4種類に分け、それぞれの特徴について解説します。
①酪農の特徴
酪農は、牛やヤギなどを飼い、その乳をそのまま販売したり、乳を加工した乳製品を製造販売したりする畜産農業の一種。
農業の中でも、年中安定して商品を出荷可能なため、就農1年目でも安定した収入を得やすい点が大きな特徴。
しかし、その一方で搾乳施設や広い牧場の確保など初期コストが高くなります。
準備できる自己資金が少ない場合は、独立就農は厳しくなります。
作業としては、搾乳や牛舎の清掃、餌やりなど、年間を通じて切れ目なく作業があります。
搾った生乳をそのまま牛乳として出荷するほか、ヨーグルトやチーズ、バターなどに加工して販売していくのが一般的です。
②肉用牛生産の特徴
肉用牛生産とは、牛を扱う畜産のうち、食用の肉牛を扱う畜産農業の一種。
肉牛の品種には、黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種、ホルスタイン種、交雑種があります。
ブランド牛など、品質が高く評価されることで、高い収入を得ることも期待できます。
肉用牛生産では、子牛を産ませて育てる「繁殖」と、子牛を購入し育てる「肥育」の2種類の工程があります。
それぞれを専門に行う牧場もあれば、両方を一貫して行う牧場もあります。
繁殖は主に人工授精のため、雌牛の発情期を見逃さないよう、注意深い観察が求められます。
③養豚の特徴
食用となる肉豚や、豚の繁殖や品種改良などに用いられる種豚(しゅとん)を生産することを養豚といいます。養豚には3種類の形態があります。
・子取り経営 繁殖用の豚を飼育→交配により生んだ子豚を飼養→市場へ出荷する経営
・肥育経営 子豚を買って肥育→食肉用としてと畜場へ出荷する経営
・一貫経営 繁殖から肥育まで、一貫して行う経営
現在では、繁殖から肥育までを行う一貫経営が主流となっています。
肉豚は、生後約180日で出荷可能となるため、肉牛よりも早いサイクルで収益が得られるのがメリットでもあります。
ソーセージやベーコンなどの豚肉加工品を製造し販売する6次産業化の動きも活発です。
④養鶏の特徴
養鶏は、卵の生産と鶏肉の生産の2種類に分類されています。
卵を生産するために飼養する鶏は採卵鶏、肉を生産する鶏は食用鶏と呼びます。
養鶏は、大規模化した経営を行っているところが多く、数万羽から数十万羽をケージで飼うのが主流となります。
『実践の章』〜育てやすい作物を育てよう〜
農業のさまざまな種類を解説しました。
比較的スタートしやすいと思われる野菜栽培のが野菜栽培です。
ここでは、ビギナー向けのおすすめの農作物を紹介します。
・葉物野菜(小松菜、ホウレンソウ)
・根菜類(ジャガイモ、タマネギ)
・果菜類(キュウリ、ミニトマト)
それぞれ、おすすめの理由について解説いたしましょう。
「葉物野菜(小松菜、ホウレンソウ)」
葉物野菜は、家庭菜園でもおなじみの野菜。
全般的に栽培期間の短い野菜なので、挑戦しやすいのが特徴。
種まき後に間引きと追肥を行い、成長すればそのまま収穫することができるのです。
小松菜やホウレンソウは年中収穫でき、露地野菜として育てられるというのも、初心者向きなポイントと言えます。
特に小松菜は暑さや寒さに強く、連作障害も起こりにくいのも嬉しい葉物野菜です。
「根菜類(ジャガイモ、タマネギ)」
根菜類の中でもジャガイモやタマネギは栽培しやすい作物。
比較的天候の影響を受けにくく、失敗することが少ないことも、初心者におすすめな理由です。
「果菜類(キュウリ、ミニトマト)」
キュウリやミニトマトは、初夏から秋にかけて露地栽培で作れる果菜。
こちらも、家庭菜園でも定番の初心者向けの野菜ですね。
キュウリは、栽培してから収穫までが短期間なのも嬉しい。人気野菜です。
ミニトマトは、乾燥した土地でも成長しやすい特徴があります。
そのため、ビギナーでも育てやすいでしょう。
『経営の章』〜長く続く経営のポイント〜
「農業の種類」と「ビギナー向けの作物」を把握しました。
次は具体的に何を栽培するかを決めていく…とその前に大切なことが。
それは農業経営をどう展開していくのか?ということです。
農業でどのようにして収益を得るのかを計画しておくことで、どんな農産物を扱うのが良いのかも決まってきます。
それでは、主に野菜を生産する場合の稼ぐためのポイントと、つい見逃しがちなポイント、労働時間の目安などについて考えていきましょう。
「農業で稼ぐためのポイント」
農業で稼ぐためのポイントは主に以下の3つに絞られます。
・顧客ターゲット決定と農作物の選定
・価格決定権を握れる売り先を計画する
・地域選び
・顧客のターゲット決定と農作物の選定
農業に限らず重要なポイントに、顧客のターゲット決定があります。
「小さな子供のいる専業主婦向けの作物」
「自炊派の独身女性向けの作物」
自分の作物を購入してほしい顧客層を明確にイメージしましょう。
設定したターゲットの欲しがる野菜はなんなのかを考えていきます。
・価格決定権を握れる売り先を計画する
農作物をどうやって売るのか、販路開拓をどうするかも重要なポイント。
仲介業者が多い販売方法だと、その分どうしても農家の取り分が減少します。
また、小売業者が価格決定権を握っている場合は、農家の考える価格設定などができません。
作物のブランド、品質などに自信がある場合は、ネットショップなどを活用して消費者に直接販売する方法もあります。
・地域選び
農業をする地域の設定も重要なポイントです。
同じ農作物でも、地域によっては価格が変動するからです。
例を挙げると、同じネギでも京都で栽培する「九条ネギ」や群馬の「下仁田ネギ」などは、ブランド野菜としてより高い利益率を出すことも可能なのです。
「農業経営で見落としがちなポイント3つ」
農業経営を考えるうえで、見落としがちなポイントは以下の3点です。
・経費の計算
・労働時間と収益
・栽培方法の決定
・経費の計算
農業でもお金の問題は大切なポイントです。
農業経営を考える際に、意識が向きがちなのは初期コスト。
しかし、見落としがちになりますが、実際に営農した際に発生する毎月のコストも重要なポイントなのです。
把握が疎かになると、資金繰りが悪化して、農業継続が困難になってしまいます。
とはいえ、なかなかイメージがわかない場合もあるでしょう。
その場合は、新規就農した先輩がどのような資金繰りをしているのか事例を探すのも良い方法です。
ちなみに、農研機構が提供している「新規就農指導支援ガイドブック」を参考にしてみるのもオススメです。
ガイドブックを参考に、営農計画の作成や資金管理のセルフチェックをすることも可能です。
栽培方法も初期コストに大きく関係してきます。
あいまいにせず、はっきりしておきたいポイントです。
施設栽培の初期コストは露地栽培の2倍以上にもなるのです。
露知栽培か、施設栽培課か。
どちらにするか迷っている場合は、まず資金計画を立てて施設栽培が可能かを確認しましょう。
・労働時間と収益
ビギナーでも取り組みやすい露地野菜と施設野菜です。
労働時間自体にはあまり差はありません。
しかし、屋外での作業となる露地野菜のほうが体力を要求されます。
幅広く作物を栽培し続けるケースには、ほぼ毎日誰かが働いていることになります。
人員の確保と無理のない労働になるようシフトの設定が重要になります。
収益面では、就農1年目の平均売上高は露地野菜で161万円、施設野菜では343万円。
農業所得で生計が成立している度合いの平均では、露地野菜は17.2%と全体で最も低く、施設野菜は34.7%(2016年度)。
新規就農した人の半数は約5年で生計が成立するようになります。
しかし、残り半数は農業のみでは生計の目処がつかないという調査結果もあるのです。
初期コストがある程度かかっても露地野菜に比べて収益性が高いことは、施設野菜のメリットと言えます。
露地野菜は、初期費用を抑えられますが、収益面で少し劣ります。
露地野菜を選ぶ時には、他の収入源との兼ね合いも考えておきましょう。
『まとめ』
今回は、新規就農を考えている方向けの知っておいてほしいポイントをお話しました。
一言に「農業」と言っても業種、作物の種類、経営のポイントなどを押さえておくと、計画が立てやすくなります。
農業の世界も日々、進化をし続けています。
稼ぎ続けている農家さんは情報収集にもアクティブな方が多いです。
有効な情報をキャッチするアンテナは常に立てておきましょうね。
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