土壌は農作物を育てる上で土台となる部分です。
何年もの間、土壌を放置すると栄養がなくなったり、病原菌が発生してしまう可能性もあります。
また、それを知らずに農作物を育てていると作物自体が病気になってしまう可能性もあり、結果的には思うように作物が育たず、経営を圧迫することもあります。
しかし、土壌の改善といっても何をしたら良いのでしょうか?
そんな時に大切なのが、太陽熱を利用した土壌の消毒です。
本記事では、太陽熱を利用して土壌を改善する方法を詳しく解説していきます。
土壌の基礎知識について
土壌の性質について知っておくべきなので、知っている方も多いかと思いますが土壌の知識について解説します。
土壌というのは農作物を育てる上で基盤の役割であり、農家さんのスタートは土壌作りから始まります。
初めは土壌に栄養があるため、作物もぐんぐん成長していきますが何年もの間放置していると土は硬くなり痩せていき、作物の生育も悪くなってきます。
また、土壌というのは農作物を育てていると、雑草が生えたり、病原菌などが生まれている可能性もあります。
そうなってしまった場合、農作物というのは元気に育つことができません。
しかし、農作物を育てるためにはこの問題を解決しなければなりません。
この問題解決の方法として「土壌消毒」があります。
土壌消毒の方法にはいくつか方法がありますが、地中の中までしっかり殺菌するのは難しく基本的に農薬を使用しての殺菌になります。
ただし、農薬というのは人や環境に少なからず害を与えるものであり、大量に使用することは「農地法」で禁止されています。そこで環境に優しくお金もかからない天然エネルギーを使う方法として「太陽熱」を使用した「土壌消毒」の方法があります。
ではどうやって「太陽熱」を使用して土壌消毒を行うのか?を解説していきます。
太陽熱を利用した土壌消毒とは?
太陽熱消毒は言葉の通り太陽熱エネルギーを利用した消毒方法です。
太陽の熱により地温が上昇し病原菌や雑草の種子を死滅させる防除技術です。
この防除技術は近年普及した方法ではなく、昭和の終わり頃には確立された技術でした。
また、宮崎県などの高温地帯では暑すぎて栽培できない間に、ビニールハウスを閉め切って中の気温と地温をあげて病原菌や雑草を死滅させる「蒸し込み」という技術もあります。
なぜこの方法を使用するのか?
農薬の方が確実に殺せるのならば農薬を使用した方がいいのでは?と思う方もいるかと思います。
実際に、最も土壌消毒効果があった農薬として「臭化メチル」というものがありました。
しかし「臭化メチル」は地球温暖化に繋がる温室効果ガスにあたるとして使用禁止になり、現在は「土壌燻蒸剤」などがあります。
しかし、これらの農薬も禁止はされていないものの、土の中にいる良い微生物まで殺してしまうという問題もあります。
また、独特の匂いを発生させ、近隣の住宅地にも迷惑がかかるなどの問題もあります。
その点、太陽熱消毒は自然エネルギーであり土中にいる微生物も殺さないで消毒ができます。また農薬を使わないため農薬のコストを削減でき環境にも優しい最善の方法と言われています。
太陽熱を利用した土壌消毒方法
太陽熱を利用した土壌の消毒方法を紹介します。
まず土壌消毒に適している方法は1年で最も暑い7月〜9月上旬と言われています。
冬だと効果はほとんど期待できないので注意が必要です。
また、太陽熱を利用した消毒期間は3週間程度必要になってきます。地中の温度を55〜60度以上に保てるのであれば2週間程で大丈夫です。
それでは手順について紹介します。
①全体を耕起し、畝立てを行う
全体を良く耕し、畝立てをします。畝とは野菜を育てるために畑に土を盛り上げた部分を指し、種や苗を植える場所です。
この時石灰窒素を使用すると1〜2℃の地温上昇が期待できます。
②湛水を行う
地中への熱を伝わりやすくするため、畑全体に十分な水を与えます。水はけの悪い土壌でも圃場容水量以上を目標にします。
湛水する場合は畝が沈むまで入れます。
③地表面をビニールで被覆する
十分に水を与えるとビニールフィルムで地表面を被覆します。
専用のフィルムでなくてもできます。またビニールを被せたあとは重石などを置いて風などに飛ばされないようにします。ここで土を使うのはNGです。消毒前の土が残ると汚染されてしまいます。また穴や隙間がないようにしましょう。
④ビニールを除去し、播種・定植を行う
晴天が続けば2週間、通常は3週間で消毒作業は終了になります。ビニールを除去し2〜4日ほど干します。土壌表面を干す際は土壌表面が完全に乾かないように注意しましょう。
また消毒後に耕転を行う際は、掘り起こす深さに注意しましょう。
深く掘りすぎると、消毒できていない土が出てくる可能性があり土壌が汚染される可能性があるためです。
太陽熱による土壌消毒のメリット・デメリットを紹介
太陽熱を利用する消毒方法にはメリットばかりではありません。
やはり農薬を使うメリットもありますので、メリット・デメリットを理解し有効的に活用しましょう。
ここからは太陽熱による土壌消毒のメリット・デメリットについて解説します。
メリット
自然環境に良い
太陽熱を使用した土壌消毒の最大のメリットは自然環境に良いことです。先程も解説しましたが農薬を使う土壌消毒は環境に悪く、臭いなども発し、次の作物にも付着するリスクも否定できません。
しかし自然エネルギーを使用することで臭いを出すこともなく次の作物の生育に影響が出る事もありません。また日本では農薬を使わない無農薬野菜というのも推奨されていますので消費者にも安心して作物を提供する事ができます。
コストがほとんどかからない
太陽熱を使用するということは基本的にお金はかかりません。もしお金がかかるすれば土壌に被せるビニールくらいの料金です。一方農薬を使用すれば農薬のコストがかかってきますので費用面でも優しいと言えます。
雑草などを刈るための労力軽減
太陽熱を使用すると雑草の種子なども死滅する事ができます。夏場に雑草が生えていたりするとその雑草を刈る作業も農家の仕事ですが、猛暑の中で雑草などを刈り取るのは相当な労力がかかります。
太陽熱を利用する事で他の仕事に専念する事ができます。
デメリット
季節・気候に左右される
太陽熱を利用するという事はある程度の暑さが必要になります。もちろん冬などに太陽熱を利用しての土壌消毒は不可能です。
また気候にも左右されるので北海道などでは夏場でも涼しい日が続くケースもあります。
そういった場合は土壌消毒の効果が低減されます。
また夏場に行う土壌消毒は消毒中作物をその場所では育てられません。
作物によっては夏場に生育して秋から〜冬にかけて育てる作物もあります。
収穫量が減るなどのケースもありますので、計画的に行う必要があります。
ムラが出てくる可能性がある
太陽熱は常に日が照らされている訳ではありません。雲が太陽にかかる可能性もありますし天候も常に晴れている訳ではありません。数日天候が悪い場合もあります。
また周囲の環境によっては朝は太陽が当たるが、夕方は建物に遮られて日が当たらない可能性もあります。
逆に農薬は散布してしまえば気候、季節に関係なく土壌消毒をすることが可能です。
農薬に比べて効果は薄い
やはり、太陽熱を利用する方法は農薬を使うより効果が薄いと言えます。
もちろん、適切に行えば太陽熱でも効果は十分でますが、農薬であれば多少の間違いがあっても効果は出やすいと言えます。
太陽熱土壌消毒のデメリットを解消する温度計とは?
先程のデメリットで述べた太陽熱の土壌消毒には天候に影響を受けるといったデメリットを覆す事例を紹介します。
この方法は昔から使われてきた方法を効果的にアップグレードするとして注目され「陽熱プラス」と言われています。
太陽熱土壌消毒は効果が出ない方もいれば効果が出る方もいます。
「陽熱プラス」はこの不安を取り除く技術で地温を見えるようにし合理的に判断する為の考え方やツールを提供する事です。
とにかく地温を測りましょうという事です。
太陽熱消毒というのは期間ではなく地温の高さが重要です。
この地温を測るための温度センサーがあり、1万円台で購入できます。こうしたセンサーを使えば効果を見ることができます。効果が見えるということはビニールを被覆した後でも温度を測ることができるので不安解消に繋がるということです。
また「陽熱プラス」の実践方法について解説します。
まず地温を測り40℃以上有効積算地温を指標にして太陽熱消毒効果を判断します。
地温はハウスなら15cm、露地なら5cmで計測します。
また、積算地温を確保するためには被覆に使うフィルムに隙間が生じないようにすることがポイントです。
陽熱プラスでは先に資材を施し、畝立てをした上で太陽熱消毒をして定植します。
こういった方法を用いることで太陽熱消毒の不安を取り除くことができます。
【一部引用】:https://agri.mynavi.jp/
まとめ
本記事では、土壌の改善方法として太陽熱を使用した方法を紹介しました。
土壌というのは作物を育てる基盤となるため、必ず土壌消毒は行うべきです。
農薬を使用しての土壌改善も効果的ですが、環境やコストを考えれば太陽熱消毒はかなりオススメの消毒方法です。
そして注意するべき点は、土壌消毒は計画的に仕事に支障が出ないように行うことが大切です。
また「みんなで農家さん」というサイトでは土壌改善の方法だけでなく農業に関する情報が掲載されています。
日々情報は更新されていますのでぜひブックマークなどお願い致します。
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最後まで閲覧いただきありがとうございました。
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