「サトイモ」は子孫繁栄の縁起物としておせちに使われるなど、昔から日本人との関わりが深い人気の野菜です。
サトイモはねっとりほくほくとした食感がおいしいだけではなく、調理法によって食感が変わるため、他に変わりのきかない食材の一つです。
また、免疫力を高めるムチンやガラタン、老廃物を排出する食物繊維やカリウムなど、高い栄養価を持っています。
汁物だけではなく、甘じょっぱい煮物やほくほくのグラタンなど、和食だけではなく洋食にも合うため、さまざまな楽しみ方ができます。
魅力が多いサトイモですが、野菜の栽培経験がない方でも簡単に栽培することができる初心者におすすめの野菜のひとつです。
しかし、サトイモ栽培に合った環境に整えてあげないと、小さいイモになってしまったり、イモが割れてしまったりと、失敗する可能性も十分にあります。
この記事では、栄養満点で縁起も良い「サトイモ」の栽培方法について紹介します。
また、上手に育てるコツや、初心者におすすめの品種などについても知ることができますよ。
「初心者だけどサトイモを育ててみたい。」
「サトイモの栽培で失敗したので成功するコツを知りたい。」
「いつか収入につなげるために稼げる野菜を栽培したい。」
という方は、ぜひ参考にしてください。
サトイモは子孫繁栄の縁起物
サトイモは、サトイモ科サトイモ属の根菜類で、原産地は東南アジアです。
日本には稲作よりも前の、縄文時代に伝わったとされる歴史のある野菜です。
また、江戸時代まで主に食べられていたイモ類だったとされています。
サトイモは中心に大きな親イモがあり、そこから子イモ、さらに孫イモと増えていくことから、子孫繁栄の縁起物として親しまれています。
お正月のおせちには筑前煮や含め煮として食べられており、私たちの食生活に深く関わっている野菜であるといえます。
サトイモは儲かる野菜のひとつ
下の表は農林水産省の品目別経営統計のデータから労働時間あたりの収益(時給)が高い順に並べたものです。
労働時間あたりの収益(時給)ランキング:
順位 | 品目 | 所得(万円) | 労働時間(h) | 時給(円) |
1 | キャベツ | 18 | 90 | 2000 |
2 | レタス | 23 | 133 | 1729 |
3 | ミニトマト(施設) | 203 | 1488 | 1364 |
4 | サトイモ | 26 | 192 | 1354 |
5 | メロン | 29 | 221 | 1312 |
サトイモは栽培期間が長いものの、手間がかからない点から、稼げる野菜の4位にランクインしました。
また、一定の需要があり、販売単価が高めなのも稼げる要因のひとつだといえます。
サトイモの栽培難易度とは
栽培難易度★★★☆☆(やや簡単)
サトイモは栽培期間が180日間とやや長く、温度や湿度を適切に保つことが必要な野菜です。
しかし、栽培の手間はかからず、病害虫にも強いため、野菜栽培初心者でも育てることが可能です。
サトイモ栽培の4つのコツとは
サトイモは栽培期間が長く、栽培環境を整えてあげないとうまく育ちません。
そのため、初心者にはやや難しい面も存在します。
しかし、ポイントを押さえながら栽培することでおいしいサトイモを収穫することができますよ。
ここでは、成功に導くサトイモ栽培のコツを4つ紹介します。
高温多湿な環境で育てる
サトイモは高温性の植物なので、日当たりの良い高温多湿の環境を好みます。
低い温度では腐りやすいので、低温障害には注意が必要です。
また、乾燥するとサトイモは痩せて小さくなったり、「割れイモ」や「くびれイモ」などの生理障害を起こしてしまいます。
梅雨明けの7月中旬~9月にかけて急速に生長するため、特にこの時期にはサトイモの株の周りが常に湿っている状態になるように、しっかりと水やりをする必要があります。
土寄せが重要
サトイモを育てる大きなポイントが「土寄せ」です。
土寄せとは、株元に土を盛ることをいいます。
生育してくると親イモから子イモがつき、この子イモが地上に出てきてしまうことがあります。
地上に出てしまうとイモの部分が肥大しないため、土をかぶせて生育を促します。
土寄せをすることによって、新たにイモが太るスペースができるため、肥大が進みます。
土寄せをせずイモが光に当たると、緑色になって味にもえぐみが出てしまうので、この作業は忘れずに行いましょう。
土壌を酸性にさせない
サトイモは酸性に弱く、最適pHが6~6.5と高いことが特徴です。
栽培するには酸性が強くない畑を選んだり、土に石灰を混ぜこんだりといった工夫が必要になります。
連作障害に注意する
サトイモは「連作障害」を起こします。
毎年、同じ場所に同じ科の野菜を栽培することを「連作」といいますが、連作をすると生育障害や病害虫が発生しやすくなります。
3年以上同じ場所でサトイモを栽培すると連作障害が起きるため、注意が必要です。
初心者におすすめのサトイモの品種とは
サトイモにはいくつか種類があります。
ここでは、サトイモの種類の特徴と初心者におすすめの品種について紹介します。
サトイモは、子芋のみを食べる「子芋専用種」、親芋のみを食べる「親芋専用種」、親芋と子芋の両方を食べる「親子兼用種」に分かれます。
それぞれ味わいが異なるのでいくつか育てて楽しむのもおすすめです。
ここでは、初心者におすすめのサトイモの品種を紹介します。
土垂(どだれ)
土垂はサトイモの中で最も一般的な品種といえます。
日本全国で栽培可能であり、子芋と孫芋を収穫する子芋専用種です。
晩生種で貯蔵性が高く、一度に多くの量を収穫できるため、初心者におすすめです。
サトイモらしいぬめりが特徴で、煮物や汁物など幅広い料理に活用できます。
収穫時期は10月~12月頃です。
石川早生(いわかわわせ)
大阪府にある石川村(現在の河南町)が原産地の品種です。
早生品種であり、夏頃から収穫が始まります。
子芋は比較的小ぶりで、煮物によく合います。
収量も多く作りやすい品種です。
セレベス
インドネシアのセレベス島(スラウェシ島)から伝わってきたとされます。
親芋と子芋の両方を食べる親子兼用種です。
赤い芽が特徴で、形がよく大きいサトイモを収穫することができる上に収穫量も多いです。
ホクホクとした食感でぬめりが少ないため、煮崩れしにくく煮物におすすめです。
収穫時期は9月~11月頃です。
八つ頭(やつがしら)
八つ頭は親芋と子芋が一体化している親子兼用種です。
名前に末広がりの「八」が入っていることから縁起物としておせち料理にも使われています。
ホクホクとした食感で粘り気が少なくしっとりした食感で、栄養価も他のサトイモよりも高いです。
収穫時期は11月~1月頃です。
サトイモの栽培時期
サトイモは種イモを植え付けて栽培します。
品種によって栽培時期は異なりますが、一般的に種イモの植え付けは4月、芽出し植えだと5月です。
収穫は10月~11月ですが、夏ごろに収穫する早生種も存在します。
栽培期間は180日前後と、葉物野菜などの他の野菜と比べるとやや長めです。
サトイモは寒さに弱いため、気温が十分暖かくなってから植え付けをして、霜が降りる前に収穫しましょう。
種イモの準備
種イモは、栽培時期になると種苗店やホームセンターで販売されます。
40~60gくらいの大きさで、ふっくらと良く太っていて傷がなく、芽の付いているものを選びます。
発芽しているものは、そのまま植え付けることができます。
発芽の遅れが心配であれば、芽出しをしてから植え付けましょう。
また、芽出しは、プランターなどに野菜用培養土を入れ、種イモの芽を上にして置き、土をかぶせてたっぷりと水やりをします。
換気用の穴をあけたビニールをかけて、日当たりのよい場所に置き、土が乾いたらたっぷりと水やりをします。
植え付け準備
畑で栽培するときは、日当たりと風通しの良い場所を選びます。
植え付けの2週間以上前までに苦土石灰100g/㎡を全面にまいてよく耕します。
1週間前に完熟堆肥2kg/㎡、化成肥料100g/㎡をまいて深く耕します。
植え付け前までに、幅70~80㎝、高さ10㎝~15㎝の畝を作り、表面を平らにします。
植え付け
サトイモは寒さに弱いので、十分に暖かくなってから植え付けをします。
また、サトイモ栽培のポイントは水分です。
種まき前に土が乾燥しているなら、あらかじめかん水しておきましょう。
マルチをすると草が生えにくくて良いですが、サトイモには土寄せ作業が欠かせません。
マルチをするときは植え付けにマルチをかぶせて、マルチの端を固定せず、土寄せが終わった後に固定しましょう。
植え付けの時にマルチを取り除いて、敷ワラなどに交換しても土の乾燥を防ぐことができます。
芽の部分を上にして種イモを並べたら、ウネの両脇の上部を削って、土をかぶせ、表面を軽く手で押さえたら植え付け完了です。
この時、かぶせる土は約10cm弱、ウネの高さは約10cmです。
株間は45~50㎝程度にします。土が湿っている場合は、植え付け後の水やりは必要ありません。
手入れ
【水やり】
下葉の葉柄が大きく反り、全体的に葉が巻いて裏側が見えてきたら水分が不足している状態です。
サトイモは乾燥に弱いため、水分不足の際には水やりを行ないましょう。
畑の場合は、自然の降雨で足りるため、基本的に水やりの必要はありません。
梅雨明け以降は乾燥に注意し、降雨の無い日が続いた場合は、週に1~2回水やりをします。
真夏の水やりは、朝か夕方の涼しい時間帯に行います。
【土寄せと追肥】
土寄せは6月に1回、7月の梅雨明けまでにもう1回行います。
同時に追肥1回25g/㎡(一握り程度)をウネの上面と肩口に振って土寄せをしていきます。
小さい芽が出ていたら親イモの芽を1本を残し、あとは土寄せの土で埋め込みましょう。
収穫
収穫までの日数は品種により異なりますが、収穫適期になると外側から葉茎が黄〜褐色に変化します。
収穫は、晴天が続いて土が乾いている状態の日に行います。
また、霜が降りてからの収穫は貯蔵中に腐敗しやすくなるので注意しましょう。
地上部の茎を10㎝ほど残して切り、株元から少し離れた場所にスコップを入れて株の周りを掘り起こします。
掘り出したサトイモは、土を落として親イモと小イモに分けて、風通しの良い場所で半日ほど乾かします。
長期保存する場合は、親イモから子イモを外すと傷口から腐ってしまうので、塊のまま保存します。
病害虫とその対策方法
サトイモは病気の心配はほとんどありませんが、害虫被害は対策が必要です。
アブラムシ、ハスモンヨトウが発生することがあります。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。
2〜4mm程度の小さな虫で、繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。
見た目にも悪いので、発生初期に見つけたら落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハスモンヨトウは蛾の一種で、サトイモを食害するのは幼虫です。
6月頃から幼虫が葉を食い荒らし、サイズは大きめで4cmほどになるため見つけやすい害虫です。
見つけ次第捕殺して被害が広がらないようにしましょう。
家庭菜園では木酢液を散布して病害虫対策をすることがありますが、サトイモは酸性に弱いため、使用は避けましょう。
サトイモの魅力と楽しみ方とは
サトイモの魅力のひとつはその栄養価の高さです。
サトイモ特有のぬめり成分は、ムチンやガラクタンと呼ばれるもので、消化吸収を助け、免疫力を高める効果があります。
また、サトイモにはカリウムや食物繊維が豊富に含まれています。
カリウムは、体内のナトリウムを排出する働きがあり、高血圧の予防に効果があります。
食物繊維は、コレステロールや腸内の老廃物を排出し、動脈硬化などの予防効果があるとされています。
また、サトイモはさまざまな料理に活用できます。
ほんのり甘く主張しない味であるため、汁物や煮物などの和食から、グラタンや揚げ物などの洋食にもよく合います。
食感のバリエーションが多いのもサトイモならではの魅力です。
煮るとねっとり、揚げるとほくほく、ゆでるとねばっとした食感になります。
ぜひ、サトイモを収穫した後は、自分好みに料理をして楽しんでみてください。
まとめ
子孫繁栄の縁起物として日本人と深い関わりのある「サトイモ」の栽培方法のコツとその魅力について紹介しました。
サトイモは他の野菜と比べて栽培期間が長いものの手がかからず、野菜栽培の経験が浅い初心者にもおすすめの野菜です。
ただし、高温多湿な環境に整えてあげることや、土壌が酸性に傾かないように土づくりをしっかりすること、土寄せをしっかりすることなどのポイントを押さえることが重要です。
はじめて家庭菜園に挑戦するという方も経験者の方も、今回紹介した内容を参考にサトイモの栽培にぜひチャレンジしてみてください。
また、サトイモは稼げる野菜でもあります。
夏に収穫できる早生種から冬に収穫できる晩生種まで、ずらして栽培することで長期間に渡って収穫することも可能です。
サトイモ栽培に慣れたら自分で販売し、収入を得ることも検討してみてはいかがでしょうか。
「みんなで農家さん」では、家庭菜園についてさらに詳しく知ることができるだけではなく、もっと大きな規模でやってみたいという方や、収入につなげてみたいという方にとって、必要な情報を知ることができます。
興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。
参考文献:
市川啓一郎著「タネ屋がこっそり教える 野菜作りの極意」一般社団法人 農山漁村文化協会発行,2021年
林重孝著「有機農家に教わる もっとおいし野菜のつくり方」社団法人 家の光協会発行,2011年
参考サイト:
里芋(サトイモ)の育て方! 栄養や効能から栽培のポイントまで、すべて教えます | GARDEN STORY
サトイモ(里芋)|基本の育て方と本格的な栽培のコツ|農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]
サトイモ栽培のちょっとしたコツ、教えます | 営農情報 | 農と食のこと | JA町田市 (ja-machidashi.or.jp)
里芋(サトイモ/さといも)の育て方・栽培方法 | 野菜の育て方・栽培方法 | 初心者向け野菜の育て方情報サイト! (xn--m9jp4402bdtwxkd8n0a.net)
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