農業と環境問題…。
農業は大自然を相手に恵をいただく仕事です。
切っても切れない関係とも言えます。
農業を行っている中で、無自覚に環境を傷つけているケースも多くあります。
SDGsにおいても、環境に配慮した持続可能な農業をゴールの一つとして掲げています。
今回はマイクロプラスチック問題に着目しました。
ご一読いただき、持続可能な農業への歩みを考えましょう。
目次
1.要注意!マイクロプラスチック問題!
2.代替施肥技術で脱被覆肥料
2-1.化学合成緩効性肥料の活用
2-2.硫黄コーティング肥料の活用
2-3.ペースト肥料の利用
2-4.流し込み肥料の利用
2-5.ドローンの活用
3マイクロプラスチック流出防止!対策
3-1.浅水代かき
3-2.流出防止ネット設置
4.持続可能な農業へ…
4-1.食料自給率アップへの協力
4-2.有機JASマークの商品を購入
4-3.農泊体験
4-4.農業体験
5.まとめ
1.要注意!マイクロプラスチック問題!
農業に関係している環境問題。
その問題の一つである「マイクロプラスチック」が注目されています。
さて、マイクロプラスチックとはなんでしょうか。
海洋などの環境中に拡散した微小なプラスチック粒子。厳密な定義はないが、大きさが1ミリメートル以下、ないしは5ミリメートル以下のものを指す。海洋を漂流するプラスチックごみが紫外線や波浪によって微小な断片になったものや、合成繊維の衣料の洗濯排水に含まれる脱落した繊維、また研磨材として使用されるマイクロビーズなどが含まれる。
出典元:小学館 デジタル大辞泉
「海洋を漂流するプラスチックごみ」
「合成繊維の衣料の洗濯排水に含まれる脱落した繊維」
「研磨材として使用されるマイクロビーズ」
これらの言葉からイメージすると、
「農業と関係あるかな?」と思われるかもしれません。
しかし、農業においても生産資材としてプラスチックが使用されています。
その中でも被覆肥料※の被膜殻。
これが、「海岸に漂着するマイクロプラスチックになっている」ことが判明したのです。
※樹脂などの被膜に覆われた肥料。肥料成分がゆっくり溶け出すため、長期にわたって効果が持続する。(出典元:小学館 デジタル大辞泉)
農業における、プラスチック問題解決のための対策には…。
- 使用済み農業用フィルムの適正処理
- 生分解性できる素材を用いた生産資材の利用促進
これらの対策が考えられます。
被覆肥料の被膜殻流出を防止する「代替施肥技術」も対策の一つです。
2.代替施肥技術で脱被覆肥料
環境問題の一つ「マイクロプラスチック問題」。
この問題の引き金にもなっている被覆肥料。
被覆肥料に代わる肥料を使うことにより、問題発生を防止する方法。
それが、「代替施肥技術」です。
代替する肥料にはどのようなものがあるのでしょうか。
それぞれ解説していきましょう。
2-1.化学合成緩効性肥料の活用
化学合成緩効性肥料とはなんでしょうか?
それは、窒素成分を多く含む尿素の溶解の抑制のために、
別の物質と化学反応させて作られた肥料のことを言います。
土壌中で、加水分解反応や微生物による分解反応を受けることによって、
無機態窒素が生成されます。
〈化学合成緩効性肥料の種類〉
- ウレアホルム
- IB
- CDU
- グアニル尿素
- オキサミド
化学合成緩効性肥料 | 内容 | 備考 |
ウレアホルム | 尿素とホルムアルデヒドの化合物 | |
IB | 尿素とイソブチルアルデヒドの化合物 | 名称はIBの他、イソブチルアルデヒド縮合尿素、イソブチリデンジウレア、IBDU |
CDU | 尿素とアセトアルデヒドの化合物 | 名称はCDUの他、アセトアルデヒド縮合尿素、シクロジウレア、クロトニリデン二尿素 |
グアニル尿素 | 石灰窒素を加水分解して生成したジシアンジアミドを硫酸やリン酸存在下で加水分解させて生成したグアニル尿素硫酸塩(GUS)とグアニル尿素リン酸塩(GUP)のこと(出典元:緩効性肥料-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA) | |
オキサミド | シュウ酸ジエステルとアンモニアを原料として合成された化合物 |
土壌中でゆっくりと分解されていきます。
そのため、肥効は緩効的に働きます。
2-2.硫黄コーティング肥料の活用
硫黄コーティング肥料は緩効性肥料の一種です。
プラスチックではなく、硫黄で肥料成分をコーティングしているのが特徴です。
先ほど紹介した、化学合成緩効性肥料と硫黄コーティング肥料。
これは、一般的な被覆肥料と比較すると、
「精密な溶出コントロールができない」というデメリットがあります。
しかし、代替案として注目を集めています。
2-3.ペースト肥料の利用
ペースト肥料とはなんでしょうか?
窒素、リン酸、カリなどの原料肥料を粉砕し、廃糖蜜アルコール発酵副産物を加えて分散させ、ペースト状にした肥料で、肥料取締法上は液状複合肥料の一種である。
ペースト肥料であれば、肥料そのものに被膜殻を使用しません。
そのため、マイクロプラスチックが発生しないのです。
ただ、専用田植え機の導入が必要になります。
しかし、メリットとして田植えと同時に、
正確な位置に正確な量を土壌中に施用することができます。
そのため、施肥効率が向上し、施肥量削減にもつながるのです。
2-4.流し込み肥料の利用
流し込み肥料とは、なんでしょうか?
まず、固体または液体の肥料を水口にセットします。
そして、水とともに肥料を流し込む方法のことを言います。
ただし、圃場が均平であるなど一定の圃場条件が必要になります。
メリットとしては。追肥を大幅に省力化することができます。
大区画の水田におすすめの方法です。
2-5.ドローンの活用
大幅な省力化と時間短縮に貢献できるのが、ドローンの活用。
ドローン購入コストが生じるという面はありますが、
メリットとして、追肥のタイミングや施肥量の調節がしやすい点や、
ムラのない施肥が可能になることなどがあります。
ドローンはスマート農業の一環としても注目されています。
環境問題解決にもつながりますし、導入してみるのもいいでしょう。
3マイクロプラスチック流出防止!対策
被覆肥料を使用する際に実践する時に、
併せて行いたい水田流出防止策を2つ解説いたします。
3-1.浅水代かき
水田からの流出が発生する時、それは主に代かき時です。
浅水代かき(湛水深をできるだけ浅くして行う代かき)を行えば、
流出防止にもつながります。
〈浅水代かきのメリット〉
・マイクロプラスチックや肥料成分、汚濁水の流出防止になる
・田面が確認しやすく、均平が取りやすい
3-2.流出防止ネット設置
物理的な流出防止策も効果的な方法です。
流出防止ネットは、100円ショップで購入できる製品のみで作れます。
お手軽にできる対策なのは嬉しいですよね!
〈流出防止ネットの材料〉
- 玉ねぎネット(ネットの網目は2mm以下)
- BBQ用の網
- クリップ
- 園芸用支柱
以上の4つで組み立てることができます。
引用:全国農業協同組合連合会(JA全農)公開 流出防止策のチラシ
他には目の大きな柵を用意し、
ネットにゴミや雑草が詰まるのを防止するため、
その柵をネットの外側に立てることが推奨されています。
上記対策についてはYouTubeでも動画が公開されています。
プラスチック被膜殻流出防止対策
流出防止ネットの制作手順が動画で紹介されています。
動画であれば、具体的になにをすればいいのか?が、
わかりやすいので嬉しいですよね。
ぜひチェックしてみてくださいね。
4.持続可能な農業へ…
SDGsをはじめとする国際的な動きとして、「持続可能な農業」が掲げられています。
農業は大地から恵みをいただく仕事です。
大自然を相手にすることが前提ですので、
当然、環境問題とは切っても切れない関係と言えます。
従来の科学技術に偏った方法だけを継続していれば、
大きなツケを払うということも出てくるでしょう。
現代においても、ゲリラ豪雨や暖冬、酷暑などの異常気象が起きています。
「マイクロプラスチック問題」は氷山の一角に過ぎません。
農業において、無配慮から起こる環境破壊は数多くあります。
もちろん、人間側の身勝手なエゴは向き合うべき課題でもあります。
しかし、人間には環境を良くして解決していく力があります。
持続可能な農業に向けて、個人でできることを解説します。
4-1.食料自給率アップへの協力
食料自給率とは、国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標のこと。
自給率アップすることにより、輸入への依存を減らすことができます。
〈食料自給率アップ5つの行動〉
- 今が旬の食べ物を選択すること
- 地産地消を積極的におこなう
- 栄養を考え、しっかりとバランスの取れた食事をおこなう
- 食品ロス(食べ残し)を減らす
- 自給率向上を図る取り組みを、支援する
まずはできることから実践していきましょう。
4-2.有機JASマークの商品を購入
有機JASマークというものがあります。
化学的につくられた肥料・農薬を使用せずに、
農産物や加工品、有機農産物と同様に作ったエサを食べさせ、
自由に育った家畜の卵や乳、肉と認証されたマークです。
〈有機JASマークの商品の商品を買うメリット〉
- 消費者は安心感を得られる
- 厳しい審査基準からの認証なので安心
購入する商品を選ぶことで、
有機野菜の市場拡大にもつながります。
4-3.農泊体験
農泊とは、全国の農山漁村において、
伝統的な生活体験をしながら地域住民と交流できるシステム。
農泊を通じて地域特有の農業や漁業を経験できます。
子供連れから大人まで多くの事を学ぶことができるのも嬉しいですね。
さらに、地域食材を堪能できるのもメリットです。
誰でも農業×SDGsを身近にできるのは大きな魅力ですね。
4-4.農業体験
老若男女人気が高くなっている農業体験。
食の大切さや食と農の繋がりを知ることができるので人気です。
農業への理解を促す効果もありますし、
食品ロスの軽減につながることにも期待が高まっています。
5.まとめ
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