【農業次世代人材投資資金】計画的な制度の活用事例

助成金の活用

農業業界は高齢化が著しく進み次世代の担い手が不足しているのが現状です。

令和4年度の農業従事者数が122.6万人に対して65歳以上の人が86万人と半数以上を占める割合となっています。

平均年齢も68歳となっており、いかに農業業界が高齢化が進んでいるのか一目瞭然となる結果です。

農林水産省では、この状況を改善するべく農業の新規就農者を増やすために制度として研修期間から就農までを支援する支援や色々な制度の取り組みを行なっています。

そのうち農業次世代人材投資資金の活用として実際に支援を受けて現在就農されている人達の事例が紹介されています。

現在新規就農者を目指して制度を活用しようと検討している人はどんな活用が可能なのか気になるところだと思います。

この記事では、実際に制度を利用して就農している人達がどんな活用をして就農されたのかについて紹介していきます。

実際に活用した人達の内容ですので検討している人にとっては今後の参考になると思います。

ぜひ最後まで一読して下さい。

農業次世代人材投資資金とは

まず、農業世代人材投資資金とは何かについてです。

農林水産省では下記のように記載されています。

「次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)及び就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付します。」

参考、引用元:農林水産省「農業世代人材投資資金」https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html

つまり就農前と就農後合計5年間に対して資金を支援する制度です。

農業はゼロからスタートするには触れる機会が極端に少ないため新規参入が難しいのが現状です。

何よりも新規で何かをスタートする時に不安になるのが資金面だと思います。

しかし、この制度を活用することで研修期間の時期も資金を支援してもらえるため資金面の不安が軽減されます。

もちろんこの制度を利用するためには条件があります。

交付対象の7つの条件

資金の支援といっても指定した金額が支援してもらえるわけではありません。

金額と大前提の条件は下記のようになります。

「都道府県が認める道府県の農業大学校等の研修機関等で研修を受ける就農希望者に、最長2年間、月12.5万円(年間最大150万円)を交付」

このため年間最大150万が交付されます。

月に12.5万円交付されるのである程度の余裕はできるはずです。

さらに交付の条件として下記の7つは全て要件を満たしていないといけないので注意が必要です。

1.就農予定時の年齢が、原則49歳以下であり、次世代を担う農業者となることについての強い意欲を有していること

2.独立・自営就農または雇用就農を目指すこと 

3.親元就農を目指す者については、就農後5年以内に経営を継承する、農業法人の共同経営者になる又は独立・自営就農すること

4.都道府県等が認めた研修機関等で概ね1年以上(1年につき概ね1,200時間以上)研修すること

常勤の雇用契約を締結していないこと

5.生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと

6.原則として前年の世帯(親子及び配偶者の範囲)所得が600万円以下であること

7.研修中の怪我等に備えて傷害保険に加入すること

この7つを全て満たして、やっと交付となります。

資金を交付するのはあくまでも新規就農者を増やすためであり、交付目的の人がいないようにするためこういった条件になっているため違反した場合には返還しなくてはいけないので違反してはいけません。

活用した人達の事例の紹介

ここからは実際に農業世代人材投資資金を活用している人達について紹介していきます。

紹介するポイントとして、

1.資金の活用例

2.就農を目指したきっかけ

3.研修中の工夫やポイントはあったのか

4.就農に向けた動き

この4点について紹介していきます。

制度活用予定の人はどんな活用例があるのか参考になりますので、自身ならどう活用するのかを考えながら見て頂ければと思います。

参考、引用元:農林水産省「新規就農者の事例」https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/nougyou_shigoto2_2.html#hajime-2

次世代人材投資事業(準備型)

準備型の事例としてしっかりとした計画性で次世代人材投資事業の活用をしている人が農林水産省の『新規就農者の事例』で取り上げられていましたので紹介いたします。

準備型の事例

次世代人材投資事(準備型)の事例として「千葉 顕太郎さん」を紹介していきます。

研修先は農業大学

研修内容は水稲、野菜

1.資金の活用例

千葉さんの資金の活用は生活費、資材、機械の導入に資金を利用しています。

2.就農を目指したきっかけ

就農を目指したきっかけは祖父と父が農業を行なっていたため、小さい頃からの夢として就農を目指すことになったのがきっかけのようです。

3.研修中の工夫やポイントはあったのか

千葉さんは5つのことを研修中は意識して学ばれていたようです。

1.1年目で栽培の基礎2年目でその応用

2.農作業に必要となる大型特殊とフォークリフト、けん引を取得

3.栽培にどうやって機械を導入するか

4.卒業前から肥料の準備を行い、3月には種まきを実施、卒業後スムーズな農業経営に着手

5.制度の資金を生活費だけではなく資材や機械代に当てた

1〜5を研修期間中は意識して行なっていたため計画的に卒業後農業経営に着手することができています。

このようにいつに何をするのか逆算して研修に取り組むのと資金の使い方も計画的に検討することでうまく就農することができています。

4.就農に向けた動き

研修期間中は栽培における基礎の学習から免許の取得。

長期休暇を利用して担い手農家の手伝いを行い、全国大会のプロジェクトに参加などされています。

就農後は、水稲と長ネギ全般の作業を行いながら認定農業者に認定

就農5年目で5年間試行錯誤しながら模索してきた、水稲中心の作目体系に合わせた長ねぎの品種選定が終了し栽培に着手。また、機械の修理も自分でできるようになり経費削減として修理も自分で行っている。

今後の目標としてスマート農業に向けてドローンの活用、省力化と設備等の経費の削減を目指すとしている。また、湿田地帯のため、転作の飼料用米の作付け割合を増やすことを目標として農業に取り組んでいる。

この方が農業を目指すきっかけになったのは身内の影響からですが、制度の活用によって研修から就農までの資金の使い方から計画性がしっかりされていると思います。

就農に向けた動きでも記載していますが、研修期間から就農そして今後の目標までが現在の農業業界の動きに非常にリンクして活動されていること。

研修終了後を考え事前に準備をしていたことが就農にどれだけ意欲があるのかが伝わってきます。

次世代人材投資事業(経営開始型)

次に経営開始型では、元々農業の経験がない方が農業経営を開始するために制度を活用している事例がありましたのでそちらを紹介いたします。

就農を検討している人の中には、元々農業に関わったことがない人もいると思いますので参考になるかと思います。

経営開始型の事例

次世代人材投資事(経営開始型)の事例として「長谷川 愛子さん」を紹介していきます。

営農類型:露地花き・露地野菜

1.資金の活用例

生活費と農業機械等への設備投資として活用

※その他の制度利用として

青年等就農資金や新規就農機械補助(市単補助)を活用。

 上記の補助事業を活用し、今までの経営を行ってきている。

2.就農を目指したきっかけ

前職は農業と関係のないウグイス嬢や婚礼司会をされていた。

元々草取りが好きであることがきっかけになり、地元『茨城県笠間市』でできる仕事として『農業』を始めることを決意し農業を始めることを決断をされています。

3.経営発展のポイントはあったのか

経営を開始し現在順調に行えているのには何に気をつけて行っているのか気になるところかと思います。

長谷川さんは4つのポイントを注意しながら経営されているようです。

1.研修を受けた先進農家さんの助言を受けながら経営を行っている。

2.地域の農業者や農地中間管理機構から空いている農地の情報を収集し、 経営面積の拡大を図っている。就農2年目で約2ha以上の経営面積 を確保している。3年目も新たに面積を拡大する予定である。

3.市内の飲食店等に自身が生産した農作物を片手に営業を行い、販路の拡大に取り組んでいる。

4.現在、農業委員も務めており、笠間市の農業に積極的に関わっている。

このポイントは非常に参考になるポイントが多いと思います。

まず、研修先からの助言をきちんと受けている点は一人では経営が難しいことからも研修後も助言をもらえるほど意欲があったことがわかります。

また、空いている農地の確保として情報収集を行い経営拡大を早期から検討しているのが先を見て動いているため非常にすごいことだと思います。

4.経営の動きと今後の展望

就農1年目で経営を開始。ここで農業機械や施設等を経営開始型の資金等を活用して導入

就農2年目で2年目中盤で農業収入 500万円以上(農産物の 販売売上げ)を達成

雇用 3名の確保に法人を設立されています。

就農3年目の現在経営規模拡大を図りながら、雇用者のために労働時間の削減を考えていく方針で経営を継続。

今後の目標として農業年商1億円を目標に掲げており、目標実行のため、経営面積は模索されている最中のようです。

長谷川さんは元々農業とは関係のない職から農業の経営を開始されています。

しかし、経営開始から今後の目標に経営発展のポイントからも分かるようにどのようにして経営をうまく行っていくのかをきちんと考えていることがわかります。

農業では36協定などの労働基準法が適用されません。

しかし、就農3年目の段階で雇用者を含めて労働時間の削減も検討されている点、今後の目標のため土地の確保をしっかりと情報を集めて動かれている点は農業をやりたいと行動に実行できる点と繋がり非常にすごい人だと思います。

このように、農業を本気でやりたいと検討している人にとっては前職が関係なくても経営を頑張ればできる見本になるのではないでしょうか。

まとめ

現在農業を検討している人にとっては実際に活用して就農と経営を開始されている人の事例からも今後自分自身が活用した際の指標にはなったと思います。

今回紹介させて頂いたお二人はともに制度をうまく活用して農業に就農されています。

何よりも制度の資金を計画的に考えていることはもちろんですが、就農前から就農後までのプランもきちんと計画されている点が就農から現在離農していない要因なのではないでしょうか。

農業は年収や今までの生活とは違った形になりやすい職業です。

そのため、目先のことだけを考えているだけでは継続するのが難しいのが現状です。

実際に新規就農された人が5年以内に3割の人が離農されています。

制度も5年と長年月をかけて資金を支援しているのは農業に確実に就農して定着してもらうことを前提としているからです。

今回の記事では制度の活用例を実際に活用した人を紹介させて頂き、自身が制度を活用した際のイメージには繋がったと思います。

制度を利用するかを検討している人は資金の使い道を計画してぜひ制度の活用と就農を目指して頂ければと思います。

参考、引用元:農林水産省「農業世代人材投資資金」https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html

参考、引用元:農林水産省「新規就農者の事例」https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/nougyou_shigoto2_2.html#hajime-2

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