農作業死亡事故は0にならない??課題と解決策について

日本では毎年農作業中に死亡するという事故が発生しています。
年々減少傾向にありますが、いまだに0にはなりません。

農林水産省が発表した令和3年の農作業による死亡事故の人数は242人となっています。
減少傾向にあるとお伝えしていますが毎年200人以上の方が亡くなっているという事実を受け止めると同時に「なぜ死亡事故が発生するのか」を原因を知る必要があります。

本記事では農作業が毎年なぜ起こるのか?課題や解決策について詳しく解説していきます。

農作業死亡事故の統計

農作業死亡事故は、日本だけでなく世界中で深刻な問題となっています。
国や地域によって統計は異なりますが、農業は労働者の安全性が特に重要な産業であるためこれらの事故は注目されています。

前述しましたが、日本では令和3年の死亡事故の人数は242人となっています。

では世界ではどのくらいの人が亡くなっているのでしょうか?
国際労働機関(ILO)の報告によれば、年間で発生する農作業関連の死亡事故は約170,000件に上ると推定されています。これは、毎日約470人が農作業に関連した事故で命を落としていることを意味します。また、重傷を負ったり、労働能力を失ったりする労働者の数も非常に高いとされています。

毎日470人が亡くなっているというのは、かなりの数字とわかるかと思います。
こうした死亡事故はなぜ起こるのでしょうか?
原因について解説していきます。

農作業での最も一般的な死亡原因

農作業での最も一般的な死亡原因は、機械関連の事故と言われています。
実際に日本で令和3年に起こった農作業中の死亡事故の人数242人のうち171人が農業機械による死亡でした。
以下に具体的な要因をいくつか挙げます。

トラクターの転倒:トラクターは農作業において頻繁に使用される重要な機械ですが、不適切な操作や地形の変化により転倒することがあります。
転倒時には、トラクターが労働者を押し潰したり、車両の上に乗っていた労働者が転落するなどの危険があります。

機械の故障:農作業に使用される機械や装置の故障は、重大な事故を引き起こす原因となります。
例えば、刈り取り機や除草機の部品が破損し労働者が怪我をする可能性があります。

誤操作:農業機械の操作ミスによる事故も頻繁に報告されています。操作手順を正確に理解していない場合や、疲労や集中力の欠如によってミスが生じることがあります。

落下や溺れる:農作業中には高所での作業や水辺での作業が必要となることがあります。
作業中に転落したり、水中で溺れる事故が発生することがあります。

化学物質の暴露:農薬や農業化学物質の取り扱い時に、適切な保護装備が使用されずに労働者が暴露されることがあります。
これにより、中毒や呼吸器疾患が引き起こされる可能性があります。

これらの要因以外にも、農作業中に動物による攻撃や鉄骨や鋸などの作業道具による怪我も発生することがあります。

農作業死亡事故を防ぐ解決策

農作業死亡事故を0にするには様々な取り組みを行なっていく必要があります。
実際にどのような方法があるのか見ていきましょう。

農作業者の安全教育と訓練の重要性

まずは農作業者の安全教育と訓練で死亡事故を減らすことができます。
農作業死亡事故の予防において極めて重要です。以下にその重要性を説明します。

まず第一に、安全教育と訓練は労働者の意識を高める役割を果たします。
農作業は潜在的な危険が多く、労働者はそれらのリスクに対して正確に認識し、適切な安全対策を講じる必要があります。安全教育は、労働者にリスクに関する情報を提供し、危険な状況を避けるための知識やスキルを身につけさせます。

第二に、安全教育と訓練は労働者の技能と能力を向上させます。
農作業には機械操作や特定の作業手順が必要ですが、これらを正確に理解し適切に実施するためには訓練が欠かせません。労働者が作業機器や農具を適切に扱い、リスクを最小限に抑えるための技術を習得することは不可欠です。

さらに、安全教育と訓練は労働者の自己保護意識を醸成します。
事故を予防するためには、労働者自身が安全に対する意識を持ち、主体的に行動することが重要です。安全教育は労働者に危険な状況の識別や危険を回避するための行動を教え、安全意識の向上に寄与します。

最後に、安全教育と訓練は労働者の健康と福祉を保護します。農作業には身体的な負担やストレスが伴うことがありますが、労働者が正しい姿勢や動作を学び、体のケアや労働環境の改善に関する知識を持つことで、労働者の健康状態を維持することができます。

総括すると、安全教育と訓練は農作業者の意識向上、技能向上、自己保護意識の醸成、健康保護につながります。
死亡事故を0にするには徹底した教育と訓練が必要と言えます。

農作業場での危険要因とその管理方法

次に農作業での危険要因を認識しておき、その危険要因をどう管理していくかの方法を知る必要があります。

農作業場にはさまざまな危険要因が存在します。
例えば、機械の使用に伴う転倒や圧縮、切断などの危険、高所作業に伴う落下の危険、農薬や農業化学物質による中毒や呼吸器疾患の危険、動物による攻撃や噛みつきの危険などです。

これらの危険を管理するためには、以下のような方法が重要です。

リスク評価と管理計画の策定:農作業場での危険要因を特定し、リスク評価を実施します。
その結果をもとに、危険の予防や制御のための管理計画を策定します。これには、安全手順の策定、適切な設備や装置の選定、危険な場所の識別や対策の実施などが含まれます。

安全教育と訓練:農作業場の労働者に対して、危険要因への適切な対処法や安全な作業手順についての教育と訓練を行います。労働者が危険を認識し、正しい行動を取るための知識とスキルを身につけることが重要です。

個人保護具の使用:労働者に対して適切な個人保護具の使用を指導し、提供します。例えば、安全ヘルメット、保護眼鏡、耳栓、手袋、安全靴などは、機械作業や農薬散布などの際に労働者を保護するために必要です。

定期的な点検とメンテナンス:農作業場の機械や装置は定期的に点検とメンテナンスを行う必要があります。これにより、故障や不具合を早期に発見し修理することができます。また、作業環境や作業道具も定期的に点検し、安全性を確保します。

コミュニケーションを取る:農作業を複数人でやる場合にはコミュニケーションを頻繁に取ることが重要です。
農機具を動かしているときに近くに人がいないかを確認し、農機具で作業する際は作業する旨を伝えるなどコミュニケーションを頻繁に取ることが大切です。

農作業事故防止の政府・団体の役割

政府や団体は、農作業事故防止のために重要な役割を果たしています。以下にその取り組みについて詳しく解説します。

まず、政府は法律や規制の策定と施行を通じて農作業の安全性を確保します。
労働安全衛生法や労働基準法などの法律を制定し、農業労働者の権利と安全を保護します。また、農業に特化した安全基準やガイドラインの作成を行い、労働者と農業事業主に対して遵守を求めます。

政府は教育と訓練プログラムを推進し、労働者に安全な作業方法を教えます。
農作業者への安全教育キャンペーンやトレーニングセッションの提供、安全マニュアルやガイドブックの作成・配布などを通じて、労働者の意識を高めます。

さらに、政府は監督と監査を通じて農作業場の安全を確保します。労働基準監督官や労働安全衛生検査官が作業現場を定期的に監査し、安全基準の遵守やリスク管理の実施を確認します。違反が発見された場合には是正措置を求め、適切な処置を取ります。

団体や組織は、農業労働者の利益を代表し、安全な労働環境の確保に取り組みます。労働組合や農業労働者団体は、労働条件や安全基準の向上を求めるための声を集約し、政府や雇用主との協力を図ります。また、農業関連の業界団体や専門組織は、安全ガイドラインの策定や最良の安全実践の共有を通じて、農作業者の安全をサポートします。

政府は法制度の整備、安全教育の推進、監督と監査の実施を通じて農作業事故防止に取り組むことで事故を防ぐことができます。

農作業現場の安全対策における最新の技術とイノベーション

最後に農作業死亡事故による農機具の最新技術について解説します。
近年ではスマート農業の流行により死亡事故を減らすための工夫が農機具にも施されています。

ドローン技術

ドローンは農作業現場での監視やマッピングに活用されます。
農地の点検や病害虫の早期発見、畑の状態モニタリングなどを行い、作業者の安全性を向上させます。また、遠隔操作による農薬散布や種まきなど、労働者の危険を軽減する自動化作業にも応用されています。

センシング技術

IoT(モノのインターネット)やセンサー技術を活用することで、農作業現場での安全性を向上させることが可能です。土壌の湿度や栄養状態、気象条件などのデータをリアルタイムで収集し、農作業者が安全な環境下で作業を行えるよう支援します。また、労働者の身体的な状態を監視するバイオセンサー技術も進化しており、疲労やストレスの管理に役立ちます。

ロボット技術

農作業現場での重労働を自動化するために、ロボット技術が導入されています。自律型農業ロボットは、収穫作業や草刈り、除草、植物の水やりなどを行い、作業者の負担を軽減します。
また、人間との共同作業を可能にするコラボレーティブロボットも開発されており、労働者の安全性を高めると同時に生産性も向上させることができます。

仮想現実(VR)および拡張現実(AR)

VRやAR技術は、農作業者の安全訓練や教育に活用されます。危険な状況や環境をシミュレーションし、作業者がリスクを認識し対処法を学ぶことができます。
また、ARを使用して作業手順や警告を表示し、作業者にリアルタイムの情報提供を行うことも可能です。

まとめ

本記事では農作業中に死亡事故が発生する要因と解決策について解説しました。
農作業のおける死亡事故を0にするには1人1人の取り組みと意識改革が必要です。

農作業に慣れてくると注意散漫になりがちですので、慣れてきた時こそ気を引き締めて農作業を行いましょう。
また万が一農作業中に事故が起きてしまった場合の対処法も事前に勉強しておきましょう。

また「みんなで農家さん」では農業に関する様々な情報を掲載しております。
農業従事者からこれから農家を目指す方まで役に立つ情報が掲載されていますので、ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後までご覧いただきありがとうございました。

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。