始めに
この記事では、ほとんどの野菜栽培では欠かせない「マルチシート」といった「農業用プラスチック」に注目した記事を書き進めていきます。農家にとって、上記の画像で紹介しているようなマルチシート(農業用プラスチック)は、農作物の収穫後はゴミとして処理しています。マルチシートに限らず普段の農作業のなかでも使い捨ての「農業用プラスチック(肥料袋や農薬容器など)」は多いと思います。
近年では地球温暖化による環境問題が世界共通の問題となっており、ここ日本でも、環境問題を意識した対策が多く取り組まれるようになりました。
【日本で取り組まれている環境問題への対策】
- リサイクル
- エコバックの推奨
- レジ袋の有料化
- 電気自動車の推奨 など
上記で紹介したように日本では様々な環境問題の取り組みがされていますが、一番最初に紹介した「リサイクル」は環境問題への取り組みの代表例であると思います。今回は「リサイクル」という言葉に注目して、農業で使用した「農業用プラスチック」はどのように「リサイクル」されて活用されていくのかについてまとめていきたいと思いますので、最後まで読んでいただければと思います。
【余談】「SDGs」について
農業用プラスチックの「リサイクル」について紹介していく前の余談として、最近では、「SDGs」という言葉をよく耳にするようになりました。「SDGs」とは人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべきことをまとめた目標を指します。
今私たちが生活している世界(地球)では貧困・紛争・気候変動・感染症といった様々な課題に直面しています。この先、こうした課題を改善していくために世界中のさまざまな立場の人々が話し合ったなかで出来た目標が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です。
「SDGs]の17の目標について
「SDGs」には、人権、経済、社会、地球環境といった様々な分野の課題を解決すべく、17の目標を立てています。具体的にどんな目標があるのかまとめてみると…
- ①貧困をなくそう
- ②飢餓をゼロに
- ③すべての人に健康と福祉を
- ④質の高い教育をみんなに
- ⑤ジェンダー平等を実現しよう
- ⑥安全な水とトイレを世界中に
- ⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- ⑧働きがいも経済成長も
- ⑨産業と技術革新の基礎をつくろう
- ⑩人や国の不平等をなくそう
- ⑪住み続けられるまちづくりを
- ⑫つくる責任つかう責任
- ⑬気候変動に具体的な対策を
- ⑭海の豊かさを守ろう
- ⑮陸の豊かさも守ろう
- ⑯平和と公正をすべての人に
- ⑰パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs17の目標 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会) (unicef.or.jp)
⑫「つくる責任つかう責任」について
上記のような17の目標を掲げています。この17種類の目標の太字で示した12番目に注目すると「⑫つくる責任つかう責任」とあります。ここを少し深堀していくと…
【12‐4】
2020年までに、国際的な取り決めにしたがって、化学物質やあらゆる廃棄物(ごみ)を環境に害を与えないように管理できるようにする。人の健康や自然環境に与える悪い影響をできるかぎり小さくするために、大気、水、土壌へ化学物質やごみが出されることを大きく減らす。
【12‐5】
2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。
というように、リサイクルや農業に直接関わってくるような内容も「SDGs」に含まれています。ここまで紹介したうえで、ここからは「農業用廃プラスチック」の活用(リサイクル)例についてまとめていきたいと思います。
12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会) (unicef.or.jp)
「農業用廃プラスチック」とは
「農業用廃プラスチック」の活用例について説明する前に「農業用廃プラスチック」とは何かについて説明していきたいと思います。
「農業用廃プラスチック」とは、農業生産活動に伴って発生したプラスチック類のことを言います。農業生産活動で使用されたプラスチックフィルムには以下のようなものがあります。
「農業用プラスチック」具体的には?
- ビニールハウス
- マルチシート
- 肥料袋
- ラップフィルム
- セルトレイ
- 農薬容器
- 育苗箱
といった物を使用した後のごみが「農業用廃プラスチック」に該当します。どれも農作業には欠かせないもので、現役農家の方であれば多くの方が使用しているものであると思います。
農作業で使用した「農業用廃プラスチック」は袋などにまとめ、農協(JA)や廃棄物処理業者に回収してもらう方法が一般的です。
ここまでが農家さんが行っている作業です。ここからはタイトルにもあるように「リサイクル」という言葉に注目して「農業用廃プラスチック」はどのようにリサイクルされ、どんなものに活用されているのかについて見ていきたいと思います。
「農業用廃プラスチック」の活用例について
ここまで「農業用廃プラスチック」には、どのようなものがあるのかについてイメージを膨らませるために7つの具体例を紹介しながら「農業用廃プラスチック」とは何かについてまとめていきました。
ここからは、前項で紹介したような使用済み又は使わなくなった「ビニールハウス」・「マルチシート」・「肥料袋」・「農薬容器」といった物は、リサイクルされるとどのような物になって再利用されるのか、どのようにリサイクルされるのかといったところをまとめていきたいと思います。
活用例(リサイクル後)一覧
「農業用廃プラスチック」のリサイクル後の活用例として、リサイクル後は以下のようなものに活用されます。
- 床材
- パレット
- 建築土木資材
- 燃料化
- 高炉原料材
- セメント原料燃化
- ガス化・油化
この一覧だけでは、なかなかイメージも沸きにくいと思うので、「農業用廃プラスチック」からリサイクルされる主要な活用例についてもう少し詳しくまとめていきます。
そもそも単に「リサイクル」といっても大きく分けて3つの種類に分かれていることを知っていますか?
ここからは「農業用廃プラスチック」のリサイクル(活用例)について詳しく見ていくうえでは欠かせない3種類のリサイクルについて紹介しながら、上記で紹介した活用例の一覧は、3種のリサイクル方法のなかのどれに当てはまるのかについてまとめ、「農業用廃プラスチック」の活用(リサイクル)例の知識を深めていきましょう。
3種のリサイクル方法から見る農業用プラスチックの活用例
リサイクルは手法ごとに「マテリアルリサイクル」・「サーマルリサイクル」・「ケミカルリサイクル」の3種類に分類されます。
マテリアルリサイクル【床材・パレット・建築土木資材など】
「マテリアルリサイクル」とは廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法です。リサイクルの一番定番のスタイルといっても過言ではないと思います。
マテリアルは英語で「物」という意味があり、文字通り、物から物へとリサイクルすることを意味しています。同じ物へのリサイクル、違う物へのリサイクルどちらも「マテリアルリサイクル」に含まれます。
活用例の一覧でも紹介した「床材」・「パレット」・「建築土木資材」などは農業資材という物から「床材」などの新しい物へ生まれ変わるリサイクルを「マテリアルリサイクル」といいます。
サーマルリサイクル【燃料化】
「サーマルリサイクル」とは、廃棄物を焼却する際に発生する「熱エネルギー」を回収して、利用するリサイクル方法です。
ごみの中には、リサイクルが困難なもの(汚れているもの、悪臭がするものなど)や分類や仕分けに膨大な労力を要するものもあります。
こういったごみは、原料として利用するのではなく、燃やして熱エネルギーとして回収することで「リサイクルをした」とすることを「サーマルリサイクル」といいます。
前項で紹介した「農業用廃プラスチック」の活用(リサイクル)例の一覧で紹介した「燃料化」は、この「サーマルリサイクル」に当てはまります。
活用例の紹介のなかで「高炉原材料」・「セメント原料燃化」・「ガス化・油化」を紹介しました。これも燃料化に似たリサイクルとなっているため、サーマルリサイクルに分類されますが、呼び方が違っていて、「フィールドストックリサイクルシステム」と呼ばれています。
この「フィールドストックリサイクルシステム」についても少し紹介していきます。
フィールドストックリサイクルシステム
活用例の紹介のなかで「高炉原材料」・「セメント原料燃化」・「ガス化・油化」を紹介しました。ここで紹介した3つの活用例は「フィールドストックリサイクル」と呼ばれます。
この「フィールドストックリサイクル」は前項で紹介した燃料化の「サーマルリサイクル」に似たリサイクル手法となっていて、新たなリサイクルシステムと呼ばれています。
ケミカルリサイクル
最後に紹介する「ケミカルリサイクル」は、廃棄物を化学合成により他の物質に変え、その物質を原料にして新たな製品を作る方法です。
具体的には、廃プラスチックを溶かして水素や二酸化炭素などの合成ガスを生み出し、水素やアンモニアの製造に再利用したり、二酸化炭素から炭酸ガスやドライアイスを作り出したりすることが挙げられます。
このように単にリサイクルといってもリサイクル方法は色々で様々な物や物質、燃料に再利用されています。
最後に
ここまで、余談として今世界中で人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべきことをまとめた目標「SDGs」を意識した取り組みが行われているよ!ということを説明していきました。
そして、そこから農作業で出るごみ「農業用廃プラスチック」のリサイクルでの活用例に注目して「農業用廃プラスチック」はどのような物にリサイクルされていくのかについて見ていきました。
単にリサイクルと言っても、リサイクルにも様々な手法があり、再利用される物も様々だということが分かったのではないでしょうか。
こうした記事を通して、リサイクルで再利用されている物には、意外と身近なものがたくさんあるという発見ができたかと思います。是非普段リサイクルにあまり関心がなかった人がいたのなら、この記事を通してリサイクルについて関心を持っていただけたら幸いです。
また、現在農業に従事している人、これから農家になろうと考えている人がいたのであれば、自分が農作業で使用した資材がリサイクルされて別の物に生まれ変わるということを自覚しながら、ごみの処理や分別をしていただけたらと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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