農業を行う上で、頼りになるのが農業資材の存在です。
肥料、堆肥、土地改良材…。
様々な農業資材がありますが、
新しい資材として注目されているのが「バイオスティミュラント」です。
今回は、バイオスティミュラントについて解説します。
目次
1.新しい農業資材!バイオスティミュラントとは?
1-1.バイオスティミュラントの意味
1-2.バイオスティミュラントと他の素材の違い
2.異常気象!農作物への影響
3.非生物的ストレスの軽減
3-1.バイオスティミュラントの役割
3-2バイオスティミュラント製品
4.世界と日本の事情
4-1.世界のバイオスティミュラント事情
4-2.日本のバイオスティミュラント事情
5.まとめ
1.新しい農業資材!バイオスティミュラントとは?
1-1.バイオスティミュラントの意味
「バイオスティミュラント」を英語表記すると「Bio Stimulants」。
実は、ヨーロッパで作られた造語なのです。
「Bio」は生物、「Stimulants」は刺激(剤)。
つまり、バイオスティミュラントを日本語に直訳すると「生物刺激剤」。
刺激といえば、お菓子でシゲキックスなんて商品もありますし、
炭酸やピップエレキバンなどのビリビリっとくる刺激を、
思い浮かべる人も多いでしょう。
ここでいう「生物を刺激する」というのは、
植物に与えることによって、様々な作用をもたらして、
植物の能力と農作物の価値を向上させる…ということになります。
つまり、バイオスティミュラントは「生物に刺激を与える資材」なのです。
1-2.バイオスティミュラントと他の素材の違い
農薬でも、肥料でも、土壌改良材でもない。
それでいて植物の能力と農作物の価値を高める資材、バイオティミュラント。
肥料、堆肥、土壌改良剤との違いはあるのでしょうか。
・肥料、堆肥、土壌改良剤
異常気象で発生した病害虫被害や生育阻害などを解決
・バイオスティミュラント
抵抗力の強い作物を育成する
人間の例で置き換えてみましょう。
肥料、堆肥、土壌改良剤が周囲の環境を整備する「ドクター」ならば、
バイオスティミュラントは「サプリメント」や「漢方薬」と言えます。
ちなみに、「バイオスティミュラント」という名前もあり、
新しく発明された物の様にも思えてきます。
しかし、日本で古来から良く使われていた「ぼかし肥料」。
これも、バイオスティミュラントだと言われています。
ぼかし肥料は米ぬかや油かすなどに、
土やもみがらを加え発酵させたものです。
これ自体が直接植物の栄養になるわけではありません。
ですが、植物の根が強くなるなどの効果があるのです。
2.異常気象!農作物への影響
最近、猛暑やゲリラ豪雨、台風や暖冬など、異常気象が多発していますね。
農作物に対する影響も大きくなっているのです。
バイオスティミュラントは、
そんな異常気象に対応する資材として期待が高まっています。
異常気象は、農作物の最大収穫量に対して多大なる悪影響を与えています。
本来であれば、農作物は種の時点で、
収穫時の最大収穫量が遺伝的に決定しています。
それが、生物的ストレスや非生物的ストレスにより、
本来、収穫できるはずだった収量が、減少してしまうのです。
その他にも、農作物の生育を阻害したり、病害虫による被害。
これらの要因としては植物にかかるストレスが関係しています。
農作物にかかっているストレスは大きく二つに分けられます。
〈農作物にかかっているストレス〉
・生物的ストレス
雑草、病害虫など
・非生物的ストレス(別名 環境ストレス)
高温・低温、乾燥など
このうちの非生物的なストレスによる収量減少を軽減すること。
それが、バイオスティミュラントの役割と言えます。
気候変動やそれに伴う土壌の変化によるダメージを緩和して、
植物の成長促進をサポートすることができるといわれています。
3.非生物的ストレスの軽減
3-1.バイオスティミュラントの役割
「農薬」は害虫や雑草、菌に直接的に働きかけるものです。
それに対して、バイオスティミュラントは、
異常気象を始めとする高温・低温・乾燥や酸欠、塩ストレスなど。
これら非生物的ストレスを緩和します。
「肥料」は植物が直接吸収する栄養素を供給する技術。
その一方で、バイオスティミュラントはその肥料の吸収を助ける働きをします。
「土壌改良材」は土壌に物理的・生物的な変化を与える技術です。
それに対して、バイオスティミュラントは植物の生理状態をより良好にします。
従来、農薬・肥料・土壌改良材。
これらの技術は、農業生産の向上のために使われてきました。
バイオスティミュラントは3つの技術を補完する技術とも言えます。
3-2バイオスティミュラント製品
日本でも多様なバイオスティミュラント製品が販売されています。
どの様な種類があるのか、解説しましょう。
分類方法として活性成分、資材の起源、作用や効果などがあります。
今回は、わかりやすく「資材の起源別=素材は何か」6分類で解説します。
①腐植酸
植物や動物の遺体が、微生物により分解・集積・重合。
その結果、土壌中に生成される暗色高分子有機物が腐植物質。
その腐植物質のうち、酸とアルカリの両方に溶けるものが「フルボ酸」、
酸には溶けずアルカリのみに溶けるものが「フミン酸」。
②海藻抽出物多糖類
世界的にはバイオスティミュラント製品の約3分の1を占める中心的な起源物質。
沿岸地域では古来より農作物に良い影響を与えるとして活用された歴史がある。
③アミノ酸・ペプチド
アミノ酸とは、有機物の一種。タンパク質の構成要素です。
ペプチドとは、複数個のアミノ酸が結合した化合物。
バイオスティミュラント製品に使用されているアミノ酸とペプチド。
農工業副産物や植物源(農作物残渣)、
動物排泄物から加水分解されて得られている物が数多い。
④ミネラル・ビタミン類
ミネラルとは直訳すると「鉱物」。
有機物以外の地質由来成分であり「カリウム」「リン」「カルシウム」などがある。
植物の生育に必要な成分の17種は特に「必須元素」と呼ばれる。
いくつかは微量でも機能し、「微量要素」と言われているが、
一方のビタミンは、生物の生育に必要な微量物質であって、
その生物自身が体内で十分に合成できない有機化合物」のこと。
⑤微生物
バイオスティミュラントとして使われる微生物は、
農業生産において、有効活用されやすい。
植物との「共生菌」であるケースが多い。
⑥その他
その他として、「動植物抽出物」や「微生物代謝物」など。
現時点での分類は以上ですが、今後も増えていく可能性はあります。
これからのバイオスティミュラントの展開に期待したいですね。
4.世界と日本の事情
新しい農業資材「バイオスティミュラント」。
世界の農業においてはどのように活用されているのでしょうか。
また、日本での展開はどうなっているのでしょうか。
それぞれの状況を解説します!
4-1.世界のバイオスティミュラント事情
バイオスティミュラントの本場はヨーロッパ。
2011年にEBIC(The European Biostimulants Industry Council)が発足。
それ以降、世界をリードしています。
近年、SDGsが注目されています。
農業においても持続可能な農業を実現するという目標が、
掲げられています。
高い環境負荷を与えてしまう農薬を無くしていこうという動きがあります。
簡単に言えば、農薬の新規開発が難しくなってきているのです。
農薬の新規登録には、安全性の証明が要求されます。
さらに厳格な安全基準の設定や開発コストの高騰…。
新規農薬の開発においては、技術者も慎重になっています。
本来であれば、農薬とバイオスティミュラントとは相互に独立。
さらに、共存・併用してこそ大きな相乗効果が期待できるのです。
「農薬=悪」というイメージは極論とも言えます。
しかし、バイオスティミュラントにより植物自体の抵抗力を強化。
農薬の使用量を減らしていこうという動きは加速は予想されます。
アメリカにおいても、バイオスティミュラントが徐々に存在感を高めています。
バイオスティミュラントの世界市場はおよそ2000~3000億円。
今なお農薬と比較すると遥かに小さい規模といえます。
ですが、その成長率は年率15%…飛躍的な拡大をしているのです。
バイオスティミュラントの成長は興味深いですが、何事もバランスと言えます。
農薬に代表される科学的な手法と共に、臨機応変に活用しましょう。
4-2.日本のバイオスティミュラント事情
日本のバイオスティミュラントの市場規模は、
100~200億円市場であると推定されています。
実は、現在バイオスティミュラントの定義が法律などで確定されていないのです。
そのため、この数値は推測と言えます。
日本におけるバイオスティミュラントの普及状況を見てみましょう。
バイオスティミュラント普及のための協議会があります。
日本バイオスティミュラント協議会
日本バイオスティミュラント協議会が設立されたのは、2018年1月。
当時はまだ、バイオスティミュラント自体の認知がされていませんでした。
現在では、協会の会員企業数は86社の大所帯。
賛助会員には農業ビジネスを生業としていない企業も多数。
業種を超えてバイオスティミュラントの動向に注目が集まっているのです。
しかし、バイオスティミュラントはまだ日本においては明確な定義がないのです。
今後の課題としては、明確な「規格化・標準化」。
さらには、「品質」「効果」「安全性」が要求されています。
有効成分や原料などの「品質」を明確に表示して、
いつ、どのように使用すれば、どの様な「効果」を得ることができるのか
使用者である農業生産者と消費者、そして環境に対する「安全性」があるか。
安心して使うことのできる農業資材としての確立。
これこそが、今後のバイオスティミュラントの普及の鍵となるのではないでしょうか。
5.まとめ
今回は新しい農業資材「バイオスティミュラント」についての解説でした。
近年多い、異常気象。農業への影響も計り知れませんよね…。
バイオスティミュラントをうまく活用して、
非生物的ストレスに負けない健康的な農作物を育てていきましょう。
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