A重油というものをご存じでしょうか?
普段から使っている方もいれば、そうでない方もいると思います。
普段から使っていないと、耳馴染みもありませんよね。
でも実は、A重油というものを私たちは身近に私用しているのです。
そこで今回はA重油について詳しく解説していこうと思います。
少しでも「気になる!」と思った方は、最後までお付き合いください。
A重油とは?
A重油とは、原油の常圧蒸留によって底から得られる残油を処理して得られる、重質の石油製品です。
軽油90%に少量の残渣油を混ぜたものとなります。
ガソリン、灯油、軽油より沸点が高く重粘質であることから重油と名付けられています。
●性質
A重油の色は生産施設にもよりますが、半透明の黒色か黄色です。
比重は0.82~0.95程度、発熱量は10,000~11,000kcal/kg程度です。
●規格品質
A重油の種類は硫黄分により、1号及び2号に細分されます。
1号は、硫黄分(Sulferサルファー)が0.5%以下とされ、LSA重油(Low Sulfer A Fuel Oil )とも呼ばれています。
また、低硫黄のLSA重油はメーカによっては0.1A(出光興産)とも称されることがあります。
2号は、硫黄分が0.5%以上2.0%以下とされ、HSA重油(High Sulfer A Fuel Oil)とも呼ばれています。
●用途
低硫黄のLSA重油は、ビル・ホテル・寮・病院・学校の暖房・給湯用、食品工場の加熱用、クリーニング工場のプレス・温水供給に運用されるボイラーに多く用いられており、農産物用のビニールハウスのボイラー、温風暖房でも使用されています。
高硫黄のHSA重油は、低硫黄のLSA重油を特に必要としない非自動車用ディーゼルエンジン、工場、病院、学校、ビルなどの小・中規模ボイラーの燃料などに用いられています。
メリットとしては、重油は火力が強いため、大きなエネルギーを生み出す際に役立ちます。
そのためビル・ホテル・病院の暖房や工場の加熱・ボイラーなど、規模の大きいところで使われているのです。
このようにA重油は、実は自分たちが知らなかっただけで、身近なところで使われています。
A重油のことがわかったところで、同じ分類でもあるガソリン、灯油、軽油についてもご説明します。
ガソリン
ガソリンは、クルマを動かすための燃料としてもっとも身近なものとして知られています。
ガソリンは石油製品のひとつで、原油を精製して作られます。
タンカーで産油国から運ばれてきた原油は、製油所の加熱炉で約350℃に加熱され、蒸気(石油蒸気)になって蒸留塔に送られ、沸点によって石油製品に分類・抽出されます。
ガソリンは沸点30-180℃で、残りの重たい油が、重油やアスファルトになります。
ガソリンの特徴は、揮発性の高いこと(揮発性が高いので、「揮発油」ともいわれる)です。
常温中では気体になりやすく、引火点はマイナス40℃以下で、非常に引火しやすく、引火すると爆発的に燃え広がるので、その爆発力の高さが、エンジン出力の向上に都合がよく、熱エネルギーの機械エネルギーに変換するシステム=「エンジン」の燃料として、もっとも重宝されるようになりました。
灯油
原油の常圧蒸留におけるナフサと軽油の間の留分で、比重0.76~0.82、沸点150~270℃の油です。
以前はおもに灯火用に用いられたので、このように呼ばれています。
灯油はJIS(ジス)(日本工業規格)により1号と2号の2種類に分けられます。
1号はいわゆる白灯油であり、灯火用および暖房・厨房(ちゅうぼう)用燃料に用いられます。
原油の常圧蒸留により分け取った灯油留分を水素化脱硫処理により硫黄(いおう)分を0.0080%以下にしたものであり、無色の油です。
2号はいわゆる茶灯油であり、石油発動機用燃料、塗料用溶剤、洗浄用などに用いられます。
硫黄分は0.50%以下と定められているので水素化脱硫を省略し、原油の蒸留により得られる灯油留分をそのまま用いることもあります。
灯油は比較的安全で取扱いも容易であり、しかも安価であるため、日本においては家庭暖房用燃料として石油ストーブなどを中心に需要が増大してきましたが、原油中の灯油留分は原油ごとにほぼ一定であるため、灯油だけを多量に生産することはできません。
軽油
石油製品の一つです。
重油に比べて沸点が低いことから軽油と呼ばれています。
各種炭化水素の混合物で、沸点は200~550℃の範囲、引火点は50℃以上、比重0.79~0.85の間です。
色は原料の石油により異なり、無色又は淡褐色です。
軽油には軽質軽油と重質軽油があり、前者は石油の常圧蒸留において灯油ののちに留出する沸点約200~340℃の留分です。
通常の石油製品としての軽油は、軽質軽油と、これを水素化脱硫した脱硫軽油とを調合したもので、自動車や鉄道用などの高速ディーゼルエンジンの燃料に主として用いられます。
ディーゼル燃料の重要な性質は、着火性を表すセタン価であり、高速ディーゼル燃料としてはセタン価40~60のものが用いられます。
重質軽油は、石油の常圧蒸留において軽質軽油ののちに留出する留分と、常圧蒸留残油の減圧蒸留において最初に留出する油です。
重質軽油またはこれを水素化脱硫したものは、常圧蒸留残油と調合され重油となります。
また、分解ガソリン製造のための接触分解および水素化分解の原料としても用いられます。
軽油のそのほかの用途としては、機械の洗浄用、陶磁器用バーナー燃料、溶剤などがあります。
なお、軽油は石油の蒸留で得られるほか、減圧蒸留残油(ストレートアスファルト)の熱分解による石油コークスの製造の際に副生します。
石炭の液化油およびオイルサンドまたはオイルシェールからの合成石油を原料として製造することも可能です。
原油
A重油、軽油、灯油、ガソリンの特徴がわかったところで、「原油」という言葉がよく出てきたと思います。
そこで原油について軽く説明させていただきます。
原油は、油田から採掘したままの状態で、精製されていない石油のことを指します。
埋蔵状態としては、油田(地下)、オイルシェール(地下の頁岩に含まれます。)、オイルサンド、レークアスファルト等がありす。
特に2000年代になってタイトオイル (一般にシェールオイルと呼ばれる) を水圧破砕法で取り出す技術がアメリカで開発され、「シェール革命」と言われるほどの産出量になっています。
Aがあるということは?
ここからは補足となりますが、A重油があるということは、BやCもあるのでは?と考えた人もいるかと思います。
まさにその通りで、B重油やC重油も存在します。
重油はその性質によってA重油、B重油、C重油に分けられており、3つの分け方はJIS規格K2205(日本工業規格)(外部リンク)によって決められています。
品質の高い順にA重油>B重油>C重油となっています。
ちなみにJIS規格ではA重油=1種、B重油=2種、C重油=3種となっていて、A重油は硫黄分により1号・2号、C重油は動粘度によって1号・2号・3号に分けられています。
つまり6種類の重油があるということなんですね。
次に、A重油とC重油の違いについて見ていきたいと思います。
B重油はAとCの間だと考えていただければと思います。
●粘着度
動粘度は「mm2/s」で表され、高ければ高いほど粘り気があります。
A重油は20以下でC重油は1号で250以下なので、C重油のほうが粘り気があります。
これによって、バーナーで噴霧するときに、A重油、B重油では加熱は必要ありませんが、C重油は80℃以上まで予熱してやる必要があります。
さらに、配管を通して燃料を輸送する場合にもC重油は20℃~30℃以上に保温しないと固まります。冬場はこの温度を下回ることがあるため、C重油の配管には電気や蒸気を用いて保温してやる必要があります。
●灰分
灰分は燃えた後に残る灰の量を表し、高ければ高いほど灰が多いです。
灰分はA重油が0.05以下、C重油は0.1以下となっており、C重油のほうが燃えた後の灰が多いといえます。
灰が多いと、ボイラーの伝熱面などに付着し、ボイラー効率を低下させる割合が高いので定期的にスートブロア(スス吹き)をしてやる必要があります。
●硫黄分
硫黄分は環境面やエネルギーコストに関係してきます。
A重油の1号は0.5以下、C重油は3.5以下となっておりC重油のほうが硫黄分が多いといえます。硫黄分が多いと、燃焼後に環境汚染の元凶となるSOxが発生しやすくなります。
また、排ガスの熱回収を行う際には低温腐食のリスクも増加します。
ここまで見ると、同じ重油でもA重油のほうがはるかに扱いやすいということがわかります。
それでもC重油が使われていることもあるので、どれほど価格に差があるのか、それはおおよそで見ていくと大体A重油よりC重油のほうが25%程安いのです。
このような価格の違いから、A重油とC重油では使われ方が変わってくるのですね。
まとめ
A重油について少しでも理解を深めることができましたでしょうか。
A重油なんて使ったことがない!と思っていた人も実は学校など身近なところで使われていて、驚いたかと思います。
実際に、A重油以外にもそういったものが多く私たちの周りに溢れています。
こういった機会に周囲のものに目を向けてみてもいいかもしれませんね。
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