農業をされている方々で輪作について知らない方はまずいらっしゃらないでしょう。
1種類の作物を、同じ畑や田んぼで育て続ける「単作」は、農作業が単純なため収穫量や生産性も高いですが、デメリットとして農作物の病気発生率や害虫発生の危険性がありますね。
他にも同時に複数の作物を育てる混作、交互に違った作物を同時に育てる間作がものもありますが、今回は輪作について深く掘り下げてみようと思います。
現役農家さんへ向けての内容となりますが、新規就農を始めた・農業を始めてみたいという方へも参考となればと思います。
輪作とは?
輪作とは農業で行われる作法で、「同じ土地」に対して「別の性質」のいくつかの種類の農作物を「数年に一回」のサイクルで栽培する栽培方法で、連作障害を防ぐためにとても重要な対策方法です。
連作障害とは農作物の生育不良や枯れたりすることで、「ナス科」や「アブラナ科」などの特定作物を、一つの畑や田んぼなど「同じ場所」で長期間、何年間も栽培し続けることで発生します。
この連作障害の原因は、栽培した野菜や肥料などによって土壌のミネラルバランスが崩れたり、特定の農作物を好む病害虫が発生するのが理由となっています。
輪作の特徴って何?
輪作について分かったかと思いますので、続いて輪作の特徴についてご説明します。
輪作の大きな特徴は、複数種類の作物を数年おきに場所をローテーションして栽培することが大きな特徴です。
連作障害を避けるには同じ種類の野菜を避ければいいとは一概に言えず、同じ科に属する野菜の場合でも連作障害が発生します。
例えばナス科には「トマト」「ナス」「ジャガイモ」などがありますが、違う種類の野菜ではあるけれども「同じ科」の野菜なので、連作障害となりうるということになります。
これは、「トマト栽培の後」に「ナス栽培を始める」という場合ですね。
ナス科のほかにもウリ科、マメ科、アブラナ科が起こりやすい作物とされていますが、カボチャ・ネギ・玉ねぎやサツマイモなどの野菜は連絡障害が起こりにくい・連作障害が出にくい野菜となります。
輪作をすることによるメリット・デメリット
輪作の特徴から、メリットとデメリットも見えてきました。
まずはメリットはどのようなものとなるでしょうか。
メリット1 連作障害を避ける
上述したとおり、連作障害を避けることができます。
連作障害が起こると、次回から育てる作物のために土壌を改善するという工程が追加されてしまいます。
ただでさえ農業の仕事は多いので、土壌改善のために時間と労力を割く必要が出てしまいます。
メリット2 雑草の抑制ができる
輪作をすることによって、特定種類の雑草を抑制することができます。
雑草であってもいずれかの「科」には属します。
以下の表で主な作物・雑草の科をまとめました。
メリット3 土壌の改善・多様化
休耕という、数年に一度は何も作物を育てずに畑や田んぼを休ませる期間を作ることで、雑草が生えて土壌中のミネラルや微生物のバランスを整えます。
雑草は生えたままほっといて問題ありません。
雑草が生える=害虫が植えると思う方は多いと思いますが、逆に天敵が増えるというメリットの方が大きく、害虫のみが大発生することのリスクが低減されます。
しかし、雑草によって風通しが悪くなったり見栄えが良くない場合は刈ってしまっても構いません。
雑草が枯れて土に戻って分解されるというサイクルによって、土壌が良くなっていきます。
クローバーを植えることでも土壌の回復や害虫の天敵を増やすとも言われています。
メリット4 減農薬での栽培ができる
定期的なローテーションを行う輪作では、特定の害虫が定着しにくくなるため農薬を減らすことができます。
もちろん、絶対に害虫がいなくなるわけではないので完全無農薬で大丈夫、というわけではありません。
また、作物によって吸収される栄養素・ミネラルや量は異なるのでアンバランス化を避けることで害虫発生がある程度抑制されます。
土壌バランスが良くなる・安定化するため、化学肥料の減量も可能となるでしょう。
次にデメリットを洗い出してみましょう。
デメリット1 複数種類の作物が必要
「この畑は毎年ナスだけ」や「トマトに特化した農家を目指す」といった場合でない限り、輪作では複数種類の作物を育てる必要があります。
そのため、栽培面積の分配や収穫量のバランスを計算したうえで栽培したり、数年ごとに移動するために細かい管理が必要になります。
デメリット2 栽培の手間がかかる
デメリット1と重複しますが、栽培品目が増えればその分手間が増えます。
トマトやナスには大きくなってくると支柱を使って添えてあげる必要などがあります。
このように、メリットとデメリットを洗い出してみても、メリットの方が大きいといえるでしょう。
輪作の事例について
輪作には相性の良い組み合わせがあるため、代表的な相性の良い組み合わせなどをご紹介します。
組み合わせやローt-ション、主な科とその作物をまとめました。
ローテーション
まずはローテーションから。
下記図のような順番が参考となるでしょう。
こちらをもとに、グループ一覧をまとめました。
季節毎のグループ一覧です。
グループは可食部毎に分けており、葉を食べる作物は葉ものグループ、実を食べる作物は実ものグループ、根や芋の部分を食べる作物は根ものグループとしました。
連作した方が良い物や、ローテーションの中に入れると後述する相性の悪いものが入るものは連作グループとしています。
葉ものグループ
葉ものグループにはコマツナ、ミズナ、シュンギク、キャベツ、ルッコラ、レタスなどが入ります。
葉もの作物にはアブラナ科の作物が多く含まれ、アブラナ科の作物はアオムシなどのチョウやガの幼虫に食べられるため、キク科のレタスやシュンギクと相性がいいです。
実ものグループ
トマトやナス、ピーマン、キュウリが入ります。
こういった作物は連作障害が出やすい作物なので要注意。
ラッカセイやインゲンなどのマメ類もこのグループですが、基本的にはウリ科とマメ科、ナス科とマメ科という風に組み合わせていきます。
例外はウリ科に属するカボチャで、栽培には広い面積を必要とし連作障害も出にくいため、連作グループとしています。
根ものグループ
ダイコンやニンジン、カブといった根菜類やサトイモ、ショウガなどです。
サトイモとショウガは相性が良く、同じ場所に隣同士に植えるのがいいでしょう。
サツマイモは連作できるため、連作グループに入れています。
連作グループ
ネギ、トウモロコシ、サツマイモ、カボチャなどの連作できる作物と、例外的にナス科のジャガイモもが入ります。
後述しますが、ジャガイモは他のナス科の作物とは相性が悪く、また実ものグループと根ものグループの両方にナス科が含まれているためナス科の連作障害が出やすくなっています。
ジャガイモは連作すると特定の土壌病害虫が発生しやすくなりますが、ネギを組み合わせることで病害虫発生を抑制するとこが可能となります。
同じ場所で春にはジャガイモ、秋にはネギ、そしてまた次の春にはジャガイモというように、ネギとジャガイモを交互に植えていくことで連作・輪作ができるようになります。
代表的な組み合わせ
「科」と主な作物の一覧です。
ナス科と合わせる
トマト・ナス・ピーマン・じゃがいもは全てナス科に属し、これらと相性が良いのは、アブラナ科・ウリ科・イネ科です。
ナス科の後に、ブロッコリーやキャベツやネギを組み合わせるという順番が例として挙げられます。
アブラナ科と合わせる
アブラナ科のコマツナ・キャベツ・ブロッコリー・ハクサイ・大根・カブ。
アブラナ科と相性が良いのは ユリ科・マメ科のため、アブラナ科の野菜の後に枝豆やインゲンやネギを組み合わせるという順番が例として挙げられます。
ウリ科と合わせる
ウリ科のキュウリ・スイカ・かぼちゃは、イネ科・ユリ科と相性がよく、ウリ科の後にトウモロコシやネギやタマネギが植える作物としていい例となります。
コンパニオンプランツ
輪作に関連する手法として、近接する作物同士で良い影響が発生するコンパニオンプランツを組み合わせる方法があります。
マリーゴールド
「植物の医者」とも言われるマリーゴールドには線虫をに対しての忌避、防虫効果があると言われています。
アブラナ科全般の他、キュウリやジャガイモとも相性がいいです。
アブラナ科
アブラナ科の作物はモンシロチョウが害虫となることが多いので、モンシロチョウを遠ざける効果のあるレタスなどのキク科がコンパニオンプランツになります。
トマト・キュウリ
トマトやキュウリにはネギを含むネギ類全般がおすすめ。
ネギ類の根が病害虫に対しての忌避効果があります。風よけとなるキュウリはトウモロコシを植えるのも良いでしょう。
相性の悪い組み合わせ
隣接するといい効果のでる作物の組み合わせがあるということは、逆の組み合わせというものもあります。
想定した結果とならない場合はもしかすると相性が悪い組み合わせの結果なのかもしれません。
キュウリとインゲン
キュウリとインゲンを組み合わせると、虫がつきやすくなったり、線虫による甚大な被害が出る可能性があります。
そのため、キュウリとマメ科の組み合わせは避けたほうが無難です。
ジャガイモとキャベツ
組み合わせ相性の悪い作物が多いジャガイモ。
特にキャベツがその中でもトップとされています。
理由としては、キャベツが「生育阻害物質」を出すためにジャガイモの生育を妨げてしまいます。
次点に上がるのがナス科の作物全般で、こちらも注意しましょう。
まとめ
輪作は連作障害を避けるための最適な農業方法です。
先人から長々と受け継がれてきたものと、研究者によって判明した知識が組み合わさって、連作によって引き起こされる現象が解明されたために現代の農業技術に生かされています。
これを無視して一度でも連作障害を発生させると、もとに戻すための労力の方が多大にかかってきます。
輪作の方法をあらかじめ決めておくことで、何の作物をどこに植えるか、ということが明確になり、農業計画が立てやすくなるでしょう。
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