現在、農業業界では少子高齢化の影響で担い手不足が深刻化しています。
「農業って大変そう…」とそもそも農業を始めることに壁を感じている方。
「農業のノウハウがわからない…」とネットの情報を見た方。
農家の方々にお話を聞いて農業を始めてみたけど、上手く育たない、収穫のタイミングがわからない、枯らしてしまったなど、挫折してしまった方。
色々な問題を抱えてる方がいると思います。
こうした問題から、農業を諦めてしまったという人も多いのではないでしょうか。
そんな農業の壁を破るCPS(Cyber-Physical System)というものがあります。
CPS(Cyber-Physical System)とは農業や車などの課題解決のための新たなテクノロジーのことで、担い手不足が問題となっている農業に貢献するとして注目を集めています。
では、今回はCPS農業について紹介していきたいと思います。
CPS農業の概要
ではまず最初に、SPC農業の概要について触れていきましょう。
CPSとIot
CPSとは、Cyber-Physical Systemの頭文字を取った略称です。
「フィジカルシステム=現実世界」で、現実世界(Physical)にあふれているさまざまな情報をAIなどがデジタル世界(Cyber)で処理し、「経験や勘」に頼っていた部分を効率化して産業の活性化や社会問題の解決を図っていくものです。
簡単に言うとCPSとは、現実世界の情報を取得し、情報処理を行い、その結果に基づいて現実世界を操作しようとするもの。
自動運転技術、交通システム、スマートホーム、エネルギーシステムなどがCPSが活用されている代表例です。
CPSは、IoTよりさらに一歩進んだ技術として、農業や自動車などの分野での活用が期待されています。
このIoTとは、Internet of Thingsの略称で、日本語で言えばモノのインターネットのこと。
コンピューターだけでなく、スマートフォンやタブレット、家電など、『モノ』がセンサーを備えたデバイスとなり、膨大な情報がインターネットを介して伝達されることです。
外出先でも温度調整をしてくれるエアコン、自動で掃除をしてくれる掃除機などがその代表例です。
では、IoTとCPSの具体的な違いとは何なのかということを次に紹介します。
CPSとIoTの違い
CPSとIoTの違いは、IoTがクラウドなどのサイバー空間に“つながること”を強く意識しているのに対し、CPSは、サイバー空間上での分析・解析および現実世界へのフィードバックまで含めていることです。
つまり、情報を取得し伝達するまでがIoTの領域であり、その情報を処理し、その最適な結果に基づいて現実世界を操作するまでがCPSの領域なのです。
もちろん、どちらも優れた科学技術あるとこに変わりはないですが、情報を処理した上にアウトプットをしてくれる分CPSのほうが優れた技術であると言われています。
CPS農業とは、そんな優れた科学技術を生かした次世代型の新しい農業なのです。
CPS農業の特徴
それでは次に、CPS農業の特徴について紹介していきましょう。
CPSは、分析機能、栽培ナビゲーション機能、さらには農業の経験や勘などノウハウに基づいたAIによる遠隔制御機能を搭載しています。
施設内が一定の温度に達した際に窓を開閉するという単純な制御ではなく、栽培している作物の生育ステージ、糖度の高低や形の大小といった栽培の方向性、地域特有の栽培ノウハウなどを学習したAIが、栽培的視点で現在すべき作業の制御を判断します。
つまり、作物の情報やノウハウをすべてデータ化し、AIが何をすべきかを自身で判断して作物を育てることができるのです。
そしてそのデータを数値化し「見える化」することで、自宅にいながら作物の状態を見ることができるのも特徴の一つです。
CPS農業における3つのメリット
続いて、CPS農業における3つのメリットについて紹介してきます。
設置工事が不要
CPS農業を行う上で必要になる設備は、設置が簡単かつ安価であり、通信設備の設置工事が不要です。
一つの機器から自動制御化が可能で、自動制御機能はクラウド上にあるため、別途園芸施設に制御盤をおく必要がなくなります。
つまりCPS農業は、必要対効果がとても高いと言えるでしょう。
「農業を始めたいけどノウハウが分からない」、「費用を抑えたい」と感じているい方からしてみれば、CPS農業はとても始めやすいものであると言えるのではないでしょうか。
農作業管理を簡潔に
これまで農業は、農家の方々の勘や経験を頼りに行われていました。
勘や経験に頼る農業にももちろん良い面はあるのですが、正確性にかけてしまう、言語化できていないなど、欠点も多いのが玉に瑕と言ったところ。
そこで導入されたのが、CPS農業です。
言語化できない農家の方々の勘や経験、知識をCPSがデータ化し、明確な根拠の基に農作業を行うことができるようになったのです。
CPS農業は、田畑に機器を設置し、気温や湿度、水温などの情報を計測し「見える化」します。
それらの情報を、インターネットを通じてタブレットやPC、スマホ画面に表示するIoT領域をクラウド上で処理。
これにより、経験や勘が不要に頼ることなく、AIが適切な行動を選択し、農業の経験が浅い人や経験がない人でも適切な方法で栽培が出来たり、農業設備の遠隔操作によって農作業を軽減したりすることができます。
CPSは、少子高齢化で担い手不足が深刻となっている農業の未来を劇的に変える可能性を秘めているのです。
シュミレーションが容易
現実世界では困難かつコストがかかってしまうモデリングやシミュレーショであっても、CPS農業は、現実世界と仮想空間を一体化させることで仮想空間上に農場などを再現し、これまで困難と思われていた作業をいとも容易に行ってくれます。
CPSを活用することで、試作や様々な研究やなどを時間やコストをかけずに行うことができるのです。
CPS農業の事例
では最後に、実際にSPC農業の事例について紹介していきます。
e-kakashi
e-kakashiとは、田んぼや畑に設置した子機が、気温や湿度、水温などの情報を計測し、インターネットを通じて、タブレットやPC、スマホ画面に表示し「見える化」するIoTのもう一歩先を進んだ技術のことです。
e-kakashiは、農業のノウハウ、環境、水やりなどの作業記録、葉数などの生育記録、収穫量などをデータ化。
そして植物科学という科学的根拠をもとに「今何をすべきか」を判断し、アシストします。
具体的には、収穫適期や病害虫の発生予測をアラートでお知らせし、収穫適期に必要な人員を配備。
さらには、最適なタイミングでの一斉防除などを可能にしたり、日中の気温が一定以上になったなど栽培のリスクを警告するとともに、水をかけ流すなどの対処方法を知らせてくれます。
農業の「今」「これまで」「これから」がわかる『e-kakashi Navi』は、環境データの閲覧アプリで農場の変化を容易に把握することが可能。
収穫適期予測における資材や人員の配備を計画的や、収穫タイミングの最適化に役立てることができるようになったのです。
一方、農業版BIツール『e-kakashi Analytics』は、チーム向けのツールで、簡単に自分の見たい画面作りができ、決定要因の分析や営農指導の効率化に貢献してくれます。
さらに、分析した結果を知見として蓄えることができます。
作業・育成記録と高度なタスク管理ができる『e-kakashi Note』は、「どの作業をいつ実施するか?」など予定日をフィールドごとにスケジュールし、行っていない作業も一覧で確認できる便利な作業管理ツール。
これにより、作業漏れや重複の帽子、さらには茎数や葉数などの生育記録も可能となったのです。
ちなみに、電子栽培ごよみが作れる『e-kakashi Recipe Studio』は、栽培のポイントを生育ステージごとにまとめた「電子栽培ごよみ」のこと。
マイレシピを作り、他の人とも共有が可能です。
このように、e-kakashiは様々な独自のサービスがあり、「農業のナビ」として農業に大きく貢献しています。
いちご農園のはたしょうファーム
「はたしょうファーム」さんは、滋賀県愛知郡でイチゴの栽培を行っている農家さん。
ここでは、CPS農業を導入しイチゴの栽培をスマホ操作により行うようになったとことです。
「はたしょうファーム」は、ハウスの環境データや気温調整もスマートフォンによる遠隔操作で行い、ハウスの環境を数値化しています。
今までは、温度計などのアナログ測定器でデータを測定・管理していたものが、CPSを導入したことで、様々なデータをデジタルで測定・管理することができるようになり、遠くにいながらも圃場の状況を確認することができるようになったのです。
さらに、窓の開け締めなどの操作もスマートフォン一つで行うことができます。
12月ごろからイチゴの販売、3~5月にイチゴ狩りも行っているそうなので一度足を運んでみてはどうでしょうか。
まとめ
CPS(Cyber-Physical System)は、情報処理を行い、その結果に基づいて現実世界を操作するというシステムであり、今後の農業に大きく貢献する可能性を秘めた新たなテクノロジーです。
遠隔操作による農場の確認、操作を可能とし、さらに作物の状態を見える化することができます。
安価で農作業を軽減してくれるCPSは、農業の経験が浅い人、または農業の経験がない人でも簡単に始めることができ、深刻化している担い手不足を解消することが期待されているのです。
これからさらに化学技術が発達していけば、今の我々には想像もつかないような画期的な技術が産まれるに違いありません。
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