薬剤抵抗性とは?農業における危険性と防止策を徹底解説

あなたは「薬剤抵抗性」を知っていますか?

農業に携わっている人であれば「聴いたことはあるけどどのようなものかはあまり知らない」という方も多いのではないでしょうか?薬剤抵抗性は、今や農業の現場で問題とされている事項で、防止策や対策が求められているものになります。

そこで今回の記事では、薬剤抵抗性とはどのようなものか、農業における危険性と防止策などを解説していきます。

薬剤抵抗性とは

農薬は、作物の害虫や病気を防ぐために用いられる重要なものです。しかしながら、同じ農薬を使い続けると、その農薬が効かなくなる現象が起こることがあります。これを「薬剤抵抗性」といいます。薬剤抵抗性の問題は、農業においても深刻な課題となっています。

同じ農薬を使い続けるとその農薬が効かなくなる現象

農薬は、害虫や病気を防ぐために使われます。しかし、同じ農薬を使い続けると、その農薬が効かなくなる現象が起こります。これは、農薬に対する害虫や病原体が、農薬に対する抵抗力を獲得することで生じます。この抵抗力が高くなると、同じ農薬では害虫や病原体を殺すことができなくなります。

農業における薬剤抵抗性の問題性

薬剤抵抗性の問題は、農業において深刻な課題となっています。薬剤抵抗性が進行すると、害虫や病原体を効果的に駆除することができなくなり、収穫量の低下や品質の低下、農薬の使用量の増加など、様々な問題が生じます。また、農薬に対する抵抗力を持つ害虫や病原体が他の作物にも移動することがあるため、薬剤抵抗性は周辺地域にも影響を及ぼします。

薬剤抵抗性はなぜ起きるのか

農薬の使用量が増加するとともに、薬剤抵抗性が進行することが多くなってきています。薬剤抵抗性が起きる主な原因について、以下にまとめてみました。

細菌が薬剤に対して耐性を獲得してしまう

薬剤抵抗性の一つの原因は、細菌が薬剤に対して耐性を獲得してしまうことです。細菌は、環境中に存在する薬剤にさらされることで、生き残るために適応進化をすることがあります。その結果、細菌は薬剤に対して耐性を獲得し、同じ薬剤が効かなくなってしまうことがあります。

特定の農薬が効かない遺伝子を生まれつき持った生物が発生してしまう

薬剤抵抗性のもう一つの原因は、生物が生まれつき特定の農薬が効かない遺伝子を持っていることです。これは、生物の中に特定の農薬に対して抵抗力を持つ個体が発生し、その遺伝子が次の世代に引き継がれることで起こります。このような生物が大量発生すると、その農薬が効かなくなってしまうことがあります。

農薬が効かない遺伝子が次の世代にも引き継がれてしまう

薬剤抵抗性の原因の一つに、農薬が効かない遺伝子が次の世代にも引き継がれてしまうことがあります。これは、遺伝子の突然変異などによって、生物が農薬に対する抵抗力を獲得することがあります。そして、この遺伝子が次の世代にも引き継がれてしまうことで、農薬の効果が低下してしまうことがあります。

農業における薬剤抵抗性の現状

薬剤抵抗性は、農業においても深刻な問題となっています。特に、長期間同じ農薬を使い続けることで、薬剤抵抗性が起こりやすくなるため、農業においては異なる種類の農薬を交互に使用することが求められています。しかし、現状では、薬剤使用量が増加しているため、農薬の種類を変えることが難しい状況にあります。

薬剤使用量を増加させている

農薬は、農作物を守るために使用されます。しかし、農薬を使用すればするほど、薬剤抵抗性を持つ生物が増加し、さらに強い農薬を使用しなければならなくなるため、農薬の使用量が増加しています。このような状況は、農薬のコストがかさみ、環境への影響も大きくなることが懸念されています。

薬剤使用量を減らすためには、薬剤を使わない農業技術の開発が必要です。例えば、防虫ネットや土壌改良剤の使用、有機肥料の施用など、農薬を使用しない代替技術の開発が求められています。

薬剤抵抗性が出やすい農薬

薬剤抵抗性が出やすい農薬として、低薬量で効く農薬が挙げられます。低薬量で効く農薬は、薬剤を少量使用できるため、低コストで済み、環境にも優しいというメリットがあります。しかし、低薬量で効く農薬を長期間使用することで、薬剤抵抗性が発生するリスクが高くなります。

低薬量で効くということは、わずかな量が作用点にくっついただけで十分な効果を示すということなので、作用点の農薬との結合部分が変異しただけで抵抗性が発現してしまうことになります。また、体内に入る農薬の量も少ないので、解毒されてしまう可能性が高くなります。

薬剤抵抗性の広がり

薬剤抵抗性が農業において問題視される理由の1つに、その広がり方が挙げられます。一旦薬剤抵抗性が発生すると、その抵抗性を持つ細菌や害虫が繁殖し、広がっていくため、広範囲で農薬が効かなくなることがあります。

また、農薬を使用した地域と使用していない地域との間で、抵抗性のある細菌や害虫が広がることがあります。農薬を使用した地域では薬剤抵抗性を持つ生物が繁殖し、その生物が他の地域にも広がることで、使用していない地域でも薬剤が効かなくなることがあるため、薬剤の使用には慎重が必要です。

薬剤抵抗性の防止策

薬剤抵抗性は、薬剤の使用によって生物が獲得するため、その防止には薬剤の使用を減らすなどの対策が必要です。ここでは、薬剤抵抗性を防止するための代表的な対策を紹介します。

農薬のローテーション散布を行う

同じ農薬を使い続けることで、その農薬に対する抵抗性を持つ生物が増えていくため、薬剤のローテーション散布を行うことが効果的です。ローテーション散布とは、同じ作物に対して複数の異なる農薬を交互に使用することで、薬剤抵抗性を持つ生物の発生を防ぐ方法です。

適正な薬剤の使用

薬剤の使用量や頻度を適切に調整することも、薬剤抵抗性の防止につながります。過剰な使用は、薬剤抵抗性の発生を促進することが知られています。そのため、適正な使用量を守り、薬剤の使用期間や頻度をしっかり管理することが大切です。

また、薬剤の効果が低下してしまう前に、生物の発生を予測して適切なタイミングで農薬を使用することも重要です。

総合防除の実践

薬剤抵抗性を防止するには、総合防除の実践が重要です。総合防除とは、化学的手法だけでなく、生物学的、物理学的手法を組み合わせた総合的な防除法のことを指します。総合防除を実践することで、単一の手法に頼らず、複数の手法を組み合わせて病害虫を防除することができます。これにより、単一の手法に頼ることで発生する薬剤抵抗性を防止することができます。

例えば、農薬に頼らずに、天敵を利用した害虫防除や、植物の育成環境を改善することで、病害虫が発生しにくい環境を作り出すことができます。また、薬剤散布と同時に、植物の生育状況を確認し、植物の健康状態を管理することも大切です。植物の健康状態が良好であれば、病気や害虫に対する抵抗力が高まり、薬剤を使用する回数を減らすことができます。

薬剤抵抗性の監視

薬剤抵抗性を防止するためには、薬剤抵抗性の監視が必要です。薬剤抵抗性が発生した場合には、早期に発見し、適切な対策を取ることが大切です。薬剤抵抗性の監視を行うことで、薬剤散布による病害虫の減少や効果の低下を検証することができます。

薬剤抵抗性の監視は、以下のような方法で行われます。

・定期的なフィールドワークによる病害虫の発生状況の調査

・病害虫の感受性を調べる実験

・薬剤抵抗性遺伝子の検出

これらの方法を組み合わせることで、薬剤抵抗性の監視を行うことができます。

農薬のローテーション散布のポイント

薬剤抵抗性の防止策の1つである農薬のローテーション散布について、より具体的なポイントを紹介していきます。

作用性の異なる薬剤を選択する

農薬の種類は多岐にわたり、それぞれの農薬には異なる作用性があります。農薬をローテーション散布する際には、作用性の異なる薬剤を選択することが重要です。例えば、殺菌剤と殺虫剤を交互に使用するなど、薬剤の作用性を変えることで、薬剤抵抗性を防ぐことができます。

同じ作用性の農薬が続かないように散布の計画を立てる

同じ作用機序を持つ農薬を連続して使うと、薬剤抵抗性の発生が促進されます。そのため、同じ作用性の農薬を続けて使わないように散布の計画を立てることが重要です。特に、薬剤の半減期が短い場合は、散布の間隔を短くするなどして、農薬の効果を維持することが必要です。

天敵に影響の少ない薬剤を使用する

薬剤抵抗性の問題に取り組む際には、農薬を使用しない方法も重要ですが、農薬を使用する場合には、天敵に影響を与えないような薬剤を使用することが望ましいです。天敵は、害虫を天敵の一種である肉食性昆虫やクモなどで駆除することで、害虫被害を軽減してくれる存在です。しかし、農薬を使用することで、天敵も害虫と一緒に減ってしまうことがあります。

そこで、天敵に影響を与えにくい薬剤を使用することが重要となります。例えば、フィピロン、クロロネブなどの薬剤は、天敵に対して比較的安全であることが知られています。また、ニコチノイド系の農薬には、ミツバチなどの受粉昆虫に対して有害であるものがあります。そのため、受粉昆虫に影響のない農薬の使用が望まれます。

薬剤抵抗性の課題と展望

薬剤抵抗性には様々な対策方法がありますが、まだまだ課題が多いのが現状です。ここからは、薬剤抵抗性の課題と展望について解説します。

薬剤の多様化が必要

農薬のローテーション散布は、薬剤抵抗性の発生を抑制するために重要な手段です。しかし現状では、ある特定の作用機序を持つ農薬が続けて使用され、その結果として薬剤抵抗性が発生するという問題が残っています。そのため薬剤の多様化が必要です。現在のところ、農薬の多様性が不足しており、農薬メーカーの研究開発による新しい農薬の開発が求められています。

総合防除の普及が課題

総合防除は、様々な防除手段を組み合わせて病害虫を管理する手法です。薬剤抵抗性に対して、総合防除は非常に効果的な手段となります。しかし、現在総合防除に対する理解が不十分であり、普及が進んでいません。農業関係者に対する総合防除の啓蒙が必要と考えられます。

まとめ

薬剤抵抗性は農業にとって深刻な問題であり、適切な対策が求められています。薬剤抵抗性が引き起こされる主な原因として、同じ農薬を長期間使用し続けることが挙げられます。そのため、薬剤抵抗性を防止するためには、農薬のローテーション散布、適正な薬剤の使用、総合防除の実践、薬剤抵抗性の監視が必要です。

農薬のローテーション散布においては、作用性の異なる薬剤を選択し、同じ作用性の農薬が続かないように散布の計画を立てることが重要です。また、天敵に影響の少ない薬剤を使用することも推奨されます。

しかし、薬剤抵抗性の対策には課題があります。一つは、農薬使用に頼りすぎた農業のあり方を改め、環境にやさしい農業の実践が求められることです。また、薬剤抵抗性を引き起こす生物が多様化していることや、新しい農薬の開発に時間と費用がかかることも課題の一つです。

将来的には、薬剤抵抗性を克服するために、新しい農薬の開発や生物学的制御技術の発展が期待されています。しかし、それだけでは解決できない問題であり、農業従事者や消費者、研究者などの協力が必要です。

薬剤抵抗性は、農業においてだけでなく、医療や環境問題にも影響を与えています。今後も薬剤抵抗性対策に取り組み、持続可能な農業の実践が求められます。

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