子どもの健やかな成長のためにも、バランスの良い健康的な食事を取って欲しいですよね。
しかし、野菜が苦手な子どもは多く、「野菜を食べてくれない!」と悩んでいる親は全体の約半分もいるという調査結果もあります。
子どもが野菜を嫌いな理由として、「野菜のことが良く分からないから怖い」ということが挙げられます。
そんな、子どもの野菜嫌いを改善する方法として、「家庭菜園」があげられます。
実際に幼稚園で野菜を栽培したことによって子どもの偏食が改善したという研究結果もあり、農林水産省も食育の一環として農業体験を勧めています。
もちろん、ただ家庭菜園をするだけで子どもの野菜嫌いが治るというわけではありません。
子どもが家庭菜園に興味を持つためには、親が楽しむことがなによりも大切です。
そのため、親が無理なく楽しめるような、初心者向けの栽培方法や野菜選びが必要になります。
筆者も実際に自宅の庭で子どもと家庭菜園をやってみた結果、高い食育効果があると感じました。
この記事では、子どもと家庭菜園をやってみた筆者が、家庭菜園の持つ食育への効果について紹介します。
実際にやってみて感じた、子どもと家庭菜園をする際に注意する点や、おすすめの野菜についても知ることができますよ。
「子どもが野菜を食べない!なんとかしたい!」
「家庭菜園は食育の効果があるって聞くけど、実際はどうなのかな?」
という方は、ぜひ参考にしてみてください。
子どもが野菜を食べない理由とは
『食べる』ことは生きる上で必要不可欠であり、子どもの成長のためにも「バランスよく食べて欲しい」と思う親がほとんどではないでしょうか?
2021年の調査によれば、親の5割近くが子どもが野菜を嫌うと答え、偏食に悩む声が多いことが示されました。
そもそも、なぜ子どもは野菜を食べないのか、その原因を探ってみました。
本能的に野菜を避ける
実は、子どもが野菜を避ける理由は、本能的なものであり、生きる上で必要なことだといわれています。
その中でも野菜を避ける理由の大きな理由は野菜の『味』にあります。
人間の味覚は「甘味・塩味・旨味・苦味・酸味」の5つに分けられます。
甘味や塩味、旨味は生きるために必要な栄養素であり、母乳にも含まれる重要な成分です。
一方で、苦味や酸味は毒性物質や腐敗物を避けるための防衛本能とされています。
つまり、子どもたちが野菜の苦味や酸味を避けるのは自然な反応です。
本能的に未知のものは避ける
人間は新しい食べ物や見たことのない物に対して警戒心を持つ傾向があります。
「新奇恐怖(ネオフォビア)」と呼ばれるこの傾向は、生存を守るための本能であり、子どもが食べ慣れていない野菜を避ける反応もこれによるものです。
子どもの野菜嫌いは、本能的な反応であり、新しい食べ物に対する警戒心が関与していることが考えられます。
これを理解し、子どもの食育に焦点を当てながら、子どもが野菜を理解し、受け入れ、野菜と仲良くなる経験を増やしていくことが大切だといえるでしょう。
家庭菜園はなぜ食育効果があるのか
家庭菜園は、食育の中でも特に効果的な手段の一つとして注目されています。
ここでは、家庭菜園がなぜ食育に効果があるといわれているのかについて紹介しましょう。
野菜と関わる機会が増える
家庭菜園をすると、無理なく野菜と関わる機会を子どもに与えることができます。
忙しい日々の中で、自然に野菜と触れる時間を作るのは難しいです。
しかし、家庭菜園では朝の水やりや収穫など、子どもたちが自然と野菜と関われる瞬間が生まれます。
お世話をすることで自ら興味を持つ
家庭菜園を通じてお世話をすることで、子どもたちは野菜に対する興味を持つようになります。
種から発芽し、実をつける過程を見守ることで、野菜についての理科的な知識や、育てる楽しさを知ることができるのです。
そして、子どもたちが育てた野菜は、子どもにとって特別な存在となります。
お世話を通して、「どんな味がするんだろう」と、食べることに対する興味が育まれるのです。
偏食の改善につながったという調査結果がある
さらに興味深いのは、家庭菜園が偏食改善に効果をもたらすことが示されていることです。
保育園での実践では、子どもたちの食べ物への関心が高まり、偏食が改善されたという報告もあります。
農林水産省もこれを受け、学校や保育の場で家庭菜園を積極的に取り入れるよう推進しています。
食育だけではない家庭菜園の魅力
家庭菜園の魅力は、食育だけではなく、親子のコミュニケーションや子どもの自己肯定感を高める点にもあります。
さらに、無農薬の野菜を栽培し、食費の節約にもつながる点は、子育て中の親にとって嬉しいメリットと言えるでしょう。
家庭菜園は、食育だけでなく、家族全体の健康的な食生活を守るきっかけとなるのです。
子どもと家庭菜園をやるポイントとは
家庭菜園には高い食育効果があるものの、ただやればいいというわけではありません。
ここでは、子どもと一緒に家庭菜園をやるときの、うまくいくポイントについて紹介します。
親が楽しんで行なう
家庭菜園を子どもと一緒に始めるときに、最も重要なことは「親の楽しむ姿を見せること」です。
子どもにとって一番影響力があるのは、やはり一緒に暮らしている親です。
親が楽しそうにしている姿を見せることで、子どもが「なんだか楽しそう」興味を持ってくれますよ。
無理のない規模で行なう
家庭菜園に慣れていない初心者は、大規模な畑から始める必要はありません。
手入れが難しくなったり、世話が面倒くさくなると、長続きせずに途中で投げ出してしまう可能性があるからです。
まずは、小さなプランターや鉢、または一部の庭のスペースなど、無理のない規模から始めることをおすすめします。
野菜の種類を絞る
新しいことをはじめるときは、ついついあれもこれもと手を出してしまいがちです。
しかし、手入れをする手間を減らすためにも、栽培する野菜の種類は1〜2種程度に絞りましょう。
初めのうちは気負わず、手軽に始めるのが大切です。
家庭菜園に慣れたら規模や種類を増やしてみましょう。
栽培が簡単な野菜を選ぶ
野菜は種類によって難易度が変わります。
張り切って育てても、失敗してしまってはモチベーションが下がってしまいますよね。
まずは、栽培が簡単な野菜から育ててみましょう。
初心者におすすめの野菜は、コマツナ、ほうれん草、ラディッシュです。
これらの野菜は栽培期間が短く、通年に渡って栽培が可能で、失敗しにくいです。
栽培しやすい野菜については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
子どもが飽きずに楽しむ家庭菜園とは
じつは、家庭菜園経験者の約8割が子どもと関わっているという調査結果があります。
しかし、同時に約2割の子どもが関わっていないということ。
その理由として、「子どもが飽きてしまった」ということが挙げられます。
子どもは新しいものに興味を持ちやすい反面、飽きやすい傾向があるため、飽きずに楽しむ方法を意識することが重要です。
ここでは、子どもが飽きずに家庭菜園を楽しめる方法について紹介します。
子どもにお世話を強要しない
家庭菜園を飽きずに楽しめる方法のひとつは、子どもにお世話を強要せず、親が楽しんでいる様子を見せることです。
子どもにとって親が楽しそうな様子は、自然と興味を引きますよ。
イベントには参加させる
家庭菜園のイベントには積極的に参加させましょう。
たとえば、種まきのときの水やりや収穫は、子どもと一緒に楽しむことができる大切な時間です。
種から何が育つのかワクワクする気持ちや、一緒にかごをいっぱいにする楽しさを共有することで、子どもたちも積極的に参加してくれますよ。
土づくりや草むしりなど、手入れが必要な作業では、子どもの自主性を尊重し、無理に参加させる必要はありません。
定期的な手入れは子どもに声をかけながら行い、気楽に楽しむことが家庭菜園を長続きさせる秘訣です。
最後に、収穫した野菜を家族で味わう喜びも大切です。
家族全員で収穫した野菜を食卓に並べ、共に食べることで「自分でもできた!」「みんなが喜んでくれた!」と、子どもに達成感や喜びを与えます。
この経験が子どもたちの家庭菜園への関心を高め、次回の参加意欲につながることでしょう。
実際に子どもと家庭菜園をやってみた
筆者も10月から子どもと家庭菜園をやってみました。
実際にどんなお世話をさせたのか、子どもは嫌がらずにやったのか、食育の効果はあったのかについて紹介させていただきます。
どんな条件で行なったのか
家庭菜園を行なった条件は以下の通りです。
家庭菜園を始めた時期:10月種まきの秋まき野菜を栽培
子どもの年齢:2歳と4歳
お世話の頻度:週末のみ
栽培した野菜:ラディッシュ・コマツナ・ホウレンソウ・タマネギ
子どもに参加させたお世話の種類
- 種まきのときの水やり
- 間引き
- 成長したかの観察
- 収穫
子どもには上記の4つを参加させました。
無理やり連れていくことはせず、「ママ畑行くけどくる?」「今日お野菜取れそうなんだけど手伝ってくれるかな?」などの声をかけるだけにして、子どもの自主性に任せました。
子どもは家庭菜園に参加したのか
約3か月間家庭菜園をしていますが、ほぼ毎週参加してくれています。
断られることもありましたが、無理強いはしないよう気を付けています。
野菜がどんな風に育つのかすら知らない子どもなので、野菜を踏んだり、抜いてはいけない作物を抜いてしまったりなど、小さなトラブルはありました。
しかし、少しずつ子どもの方からやってはいけないことを学んで「これ取っても良い?」などの声をかけてくれるようになりました。
家庭菜園に食育効果はあったのか
家庭菜園を始めて3か月経ち、数種類の野菜を収穫しました。
その結果、食育効果はあったと感じています。
店舗で購入した野菜は食べないことも多いですが、自分で育てて収穫した野菜は絶対に口に入れてくれます。
野菜が食卓に出ていると
「これ、○○ちゃんが育てたやつ?」
などと確認をとるようになり、畑の野菜以外も興味を持って食べるようになりました。
いきなりもりもり野菜を食べるような大きな変化はありません。
でも、家庭菜園を通して野菜に関する知識や経験が増え、『野菜と仲良く』なっているようで嬉しい限りです。
親子のコミュニケーション手段にも
家庭菜園を子どもとするメリットは、食育効果だけではなく、親子のコミュニケーション手段になったという点です。
「畑どうなったかな?」
「野菜おいしいね」
「野菜食べられたよ!」
など、家庭菜園に関する会話が増え、褒める機会が増えたように感じます。
また、家で遊ぶよりも、外で子どもと畑仕事をするだけでストレス解消にも役立ちました。
子どもと育てるのにおすすめの野菜
実際に子どもと家庭菜園をやってみると、受けが良い野菜と悪い野菜はあるのだと知りました。
また、栽培しやすい野菜か、子どもが飽きずに食べられるのかも、子ども一緒に育てるにあたって非常に重要なポイントです。
ここでは、おすすめの野菜を3つ紹介させていただきます。
ラディッシュ
ラディッシュは別名『二十日大根』と呼ばれる野菜です。
その名の通り、成長が早く、栽培期間が短いのが特徴です。
10月に種まきをする秋まき栽培でも2か月程度で立派に育ちます。
3月頃に種まきをする春まき栽培であれば、1か月程度で収穫が可能です。
場所をとらないのでプランターでも栽培可能です。
ぐんぐん育つので、見に行くたびに大きく変化する様子は、飽きやすい子どもでも楽しめます。
また、害虫被害や病気も少ない野菜なので、初心者でも失敗しにくく、手間もかからないので子どもと一緒に育てやすい野菜だといえます。
実際に筆者も栽培しましたが、今回栽培した野菜の中で一番喜ばれました。
形がカブに似ていることから、「絵本の『おおきなかぶ』と同じだ!」と喜び、スライスしてサラダにしたものは、子どもたちで取り合いになるほどでした。
通年にかけて栽培が可能なので、また春になったら種を播こうと決めています。
コマツナ
コマツナも栽培期間が短く、病害虫や病気に強く、手入れが少なく済む初心者向けの野菜です。
種まきと間引きをしたら収穫するだけなので、本当に簡単です。
プランターでも栽培することができますよ。
また、栄養価も高く、子どもに必要な『鉄分』が豊富なので、食べてくれたら嬉しいですよね。
チャーハンや混ぜご飯、お浸しやナムル、お味噌汁、スムージーなど、調理の幅が広いので、子どもが飽きずに楽しめます。
収穫してから一緒に料理することより興味を抱いてくれますよ。
失敗いらずでどんどん育つので、食べきらないほど収穫できることもありますが、冷凍して長期保存も可能なので、節約にも一躍買います。
コマツナの栽培方法についてはこちらで紹介しているので参考にしてみてください。
ミニトマト
とにかく子どもが喜んでたべるのが「ミニトマト」です。
種から育てるとなると大変ですが、苗からであれば簡単に育ちます。
栽培期間は苗からなら1か月半程度と短く、5月から6月に植え付けて、7月から収穫ができます。
養分がトマトの実ではなく余分な葉に行かないように行なう「芽取り」は親が行ない、苗の植え付けと水やり、収穫を子どもと一緒にやるのがおすすめです。
プランターでも栽培可能ですし、畑に植えればどんどん育ってくれますよ。
ポロポロ取って、そのまま洗ってパクっと食べられるので、子どもに喜ばれます。
サラダにしてもおいしいですし、たくさん取れたら冷凍して保存も可能です。
普通の大玉のトマトは初心者には難しいので「ミニ」トマトであることが重要です。
まとめ
子どもと家庭菜園をやってみた筆者が、家庭菜園が食育に良い理由と実際の効果について紹介しました。
子どもの野菜嫌いはどの親も一度は悩むことかと思います。
子どもが野菜が苦手なのは本能によるものであることが多く、無理に食べさせる必要はありません。
しかし、家庭菜園を通して子どもが野菜を知り、興味を持って自分の意思で食べてくれるようになったら、親としては嬉しいですよね。
家庭菜園は食育としての効果が高いだけではなく、親子のコミュニケーションの方法としても有効であり、始めるメリットは非常に多いと感じています。
ぜひ、今回紹介した内容を参考に、子どもと一緒に家庭菜園を楽しんでみてくださいね。
また、「みんなで農家さん」では、農業に関する情報だけではなく、家庭菜園に関する記事も多く紹介しています。
今回紹介した簡単にできる家庭菜園についても紹介していますので、興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。
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