世界農業遺産とは?基礎知識から事例やメリットを徹底解説

みなさんは「世界農業遺産(GIAHS)」というものをご存知でしょうか?
世界農業遺産は日本で11地域の登録があり、世界では22カ国66地域にあります。
これらは何世代にも渡り継承されてきたものであり、伝統的なものです。
しかし世界では「環境汚染」「生態系破壊」など何らかの原因によって価値が失われてしまいそうな世界農業遺産は数多くあります。
これからも世界農業遺産を継承し続けるにはどういった取り組みを行ってけばいいのでしょうか?
この記事では「世界農業遺産」の基礎知識・問題・認定されるには?など様々な疑問について説明して行きます。
ぜひ日本の世界農業遺産について改めて考えてみてはいかがでしょうか?

世界農業遺産とは?

世界農業遺産(GIAHS)とは社会や環境に適応しながら何世代にも渡り継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドケース及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域であり、国際連合食糧農業機関(FAO)に認定されたものです。
引用:農林水産省

世界農業遺産の認定には目的があり、
伝統的な農業のシステムを周囲の環境や文化、技術、景観などを含めトータルで保全し次世代に引き継ぐことです。
世界各地には古くから土地によっての気候や地形を活かし周囲の生態系と共存しながら営まれ人々の生活に強く結びついています。しかし世界的な食糧難が危惧され、効率よく大規模な生産が求められる時代になり、伝統的農業は失われつつあるのです。
そういった農業を守るのことが目的です。

日本での世界農業遺産の始まり

FAOが世界農業遺産を提唱したのは2002年です。世界で初めて世界農業遺産として認定されたのは2004年であり「チリ」や「中国」が認定されました。
当初は発展途上国の農業を発展させ、伝統農業の維持の為に認定を行っていたので、認定地域は主にアジア地域が中心でした。

しかし2011年に先進国としては初となる日本で「トキと共存する佐渡の里山」「能登の里山里海」の2地域が認定されました。
日本では2021年の時点で世界農業遺産の数は世界2位となっており、日本各地の伝統農業が優れていることを世界に示しています。

世界遺産・世界農業遺産・日本農業遺産の違い

ここで世界農業遺産・世界遺産・日本農業遺産の違いについて解説します。
よくある間違いとして世界農業遺産に登録されている日本の遺産は「日本農業遺産」と同じと勘違いされる方もいますので注意しましょう。

まず世界遺産とは、人類にとって共通の財産として後世に伝えて行くために国際的に保護していくことを目的としており1972年にユネスコで「世界遺産条約」が採択されたのが始まりです。

そして日本農業遺産とは世界的、または国内的に重要とされる日本各地の伝統的な農林水産業システムを農林水産省が認定するものです。
日本農業遺産の中には世界農業遺産として登録があるものも存在します。

この3つの主な違いとして「認定基準・認定機関」が異なることです。
認定基準の例として、世界農業遺産は伝統的な農業システムの保全に取り組んで入れば認定されますが、日本農業遺産はすでに地域ぐるみで6次産業化の促進などで取り組みが行われているかを認定基準としています。
また、世界遺産に関してはこの2つと認定基準が特に異なります。

世界農業遺産への申請方法

世界農業遺産の認定には申請する必要があります。
ここからは申請の手順や認定基準について解説します。

申請の手順について

  1. 申請書作成には市町村や農林漁業団体などの協議会などが申請者となって行います。個人で申請することはできません。申請書作成には地方農政局などからアドバイスを受けることができますので積極的に活用しましょう。
  2. 申請書を提出すると農林水産省が「世界農業遺産等専門家会議」に相談などを行い1次審査、2次審査を行います。
  3. 農林水産省の認定を受けることができればFAOへ申請を行い、書類審査・現地審査を行い認定の合否が決まります。

認定基準について

世界遺産は農業だけでなく農林水産業全てが対象になります。
その産業システムが伝統的であることは当然であり現在でも経済活動として成り立っているのかなど持続的に活用できるかがポイントとなります。

  1. 食料及び生計の保障
    対象の農林水産業が地域経済や人々の食料・生計を保障していること
  2. 生物多様性および生態系
    農水産業の持続可能性の観点からも地域の自然環境を活かし生物多様性を維持するシステムであること
  3. 地域的、伝統的な知識システム
    保全すべき地域の伝統的な知識や独創的な技術が受け継がれること
  4. 文化・価値観および社会組織
    地域の文化的な価値を生み出し維持する仕組みがあること
  5. 優れたランドスケープおよび土地と水資源管理の特徴
    水や土地などの環境資源を生活の中で活用し優れた景観を維持していること

引用:農林水産省

前提として世界農業遺産に認定されたからといって大きな効果が得られるわけではありません。
認定を受けてどうアピールして行くかがポイントなってきます。

世界農業遺産に認定されるメリット

次に世界農業遺産の認定のメリットについて解説して行きます。

農作物のブランド化や地域の活性化に繋がる

世界農業遺産の認定において最大のメリットと言ってもいいのが、農作物のブランド化や地域の活性化に繋がることです。
具体的に説明をすると世界農業遺産に認定されたからといって大きなメリットはありません。
認定されそれを武器にすることで大きなメリットが生じます。

例えば世界農業遺産に登録された地域のシンボルマークなどを作り地域で1つのシンボルマークなどを使用する事やその地域特有のマスコットなどを作り売り出すこともできます。
もちろんそう言った取り組みを積極的に行い観光客が増えれば地域の経済の活性化にも繋がります。

また観光客が増えると世界農業遺産だけでなく、その地域でしか収穫できない農産物などを使用した料理などを提供することでリピーターなどを作ることもできます。

世界農業遺産への登録を行うことは日本人だけでなく他国の観光客も誘致できるのもポイントです。

農業の人手不足問題や高齢化問題に貢献できる

世界農業遺産の認定を受けることができればより多くの人の関心を集めることができます。
特にその地域の学校などの授業の一環として世界農業遺産について触れてもらうことができれば若者の農業の関心を高めることができます。

世界農業遺産に認定された地域は世界遺産を次世代に継承していく義務が生じます。
こうした継承をして行くためには必然的に今の学生などに世界農業遺産を知ってもらうことが条件となってきます。
認知してもらい農業への関心を持つ者が1人でも多く増えれば農業の人手不足や高齢化問題の解決にも貢献することができます。

世界農業遺産の事例を紹介

最後に日本にある世界農業遺産の事例について紹介します。
紹介するのは新潟県にある「トキと共生する佐渡の里山」です。

この地域では絶滅危惧種にも指定されているトキの増殖を行なっています。
日本ではかつて「稲を踏み荒らす害虫」として美しい羽根や肉を目的として乱獲されていました。
しかし生息数が減少すると「保護鳥」となりました。


佐渡ヶ島では平成11年から中国から譲り受けたトキを増殖させ2018年時点で353羽のトキがいます。
またトキを守る取り組みとして農薬や化学肥料の削減を行い、水田とその周囲に生息する生き物のために生育環境を作り出す農法をに取り組んでいます。

佐渡市では「トキと暮らす郷づくり」が積極的に行われ独自農法による佐渡産コシヒカリのブランドである「朱鷺と暮らす郷」が生産されています。

こうした取り組みは地域の経済活性化や動物などの保護による環境問題への貢献となっています。

まとめ

世界農業遺産に解説しました。
日本では世界農業遺産に登録されていなくても継承していかなければいけない多くの自然があります。
その自然を守ることは環境問題や人間と動物の共存のため必要なことです。

農業を行う上で地域に継承するべき自然などがあればぜひ世界農業遺産への申請を検討してみてはいかがでしょうか?

また「みんなで農家さん」では農業に関する様々な情報が掲載されています。
今回紹介した世界農業遺産に登録はされていなくとも様々な特徴のある農業の栽培方法など見ることができますのでz日ご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後まで閲覧いただきありがとうございました。

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