始めに
青果店やスーパーに行くと、多くの野菜が販売されています。また、家庭菜園や農家経験者であれば、小さな種から多くの野菜が栽培されていることもご存知かと思います。
私たち食生活の中で当たり前のように食べられている野菜ですが、これらの野菜は、私たち人間が長い年月をかけて野生の植物から作り出したものです。野菜の祖先である野生の植物は、実が小さい、毒があるといった食べるには適さないものがほとんどと言われています。
そんな中でも、栽培を続けているうちに性質が変化したものが育つことがあります。例えば、実が大きくなったものを選び、その種子を採り栽培することを繰り返すうちに、大きな実を付ける品種ができます。このようにして新しい品種ができることを「品種改良」や「育種」と言います。
少し余談が長くなりましたが、今回はこの「品種改良」・「育種」に着目した記事を書き進めていきたいと思います。
この記事のキーワード
そこで、今回注目したいのが「ゲノム編集」という言葉です。「ゲノム編集」と聞くと少し難しいイメージを持つかもしれませんが、今回の記事でも順を追って下記のような順で「ゲノム編集」についてまとめていきたい思います。
- 「ゲノム編集」とはなにか
- 農業場面において「ゲノム編集」はどのように活用されているのか
- 実際に行われている「ゲノム編集」による品種改良の事例
また「一般社団法人みんなで農家さん」では、今回紹介しているような農業に関するニュースや栽培方法などの記事を多数読むことができます。是非この記事を通じて、様々な記事を読んでいただければと思います。
ゲノム編集について
まず最初は、タイトルにもある「ゲノム編集」とは何かについてまとめていきたいと思います。「ゲノム」と聞いてもあまり想像つかないかもしれません。なので、まず「ゲノム」とは何か簡単にまとめていきたいと思います。
ゲノムとは
ゲノムとは、それぞれの生物が「誕生して成長し、次世代に子孫を残す」ために必要な最低限の設計図(生物が持つDNA全体)のことをゲノムといいます。
ここでは、ゲノムには「誕生して成長し、次世代に子孫を残す」という意味があるということを抑えておきましょう。
では、ここからは「ゲノム編集」という言葉になると、どのような意味になるのかについてまとめていきたいと思います。
ゲノム編集とは
ゲノム編集とは、酵素の「はさみ」を使ってゲノムを構成するDNAを切断し、遺伝子を書き換える技術のことを言います。
ゲノムは「次世代に子孫を残す」という意味がありましたが、その子孫を残すための「DNA」を酵素の「はさみ」を使い切断し、遺伝子を書き換える技術をゲノム編集といいます。
従来の遺伝子組み換えと比較して、安全に、そして狙った遺伝子を編集できる技術として、農業や水産業で応用が進んでいます。
【一部引用】
ゲノム編集と似た意味を持つ言葉に「遺伝子組み換え」という技術があります。ここからは「ゲノム編集」の比較として「遺伝子組み換え」について少しまとめていきたいと思います。
遺伝子組み換えとは
「遺伝子組み換え」は、生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質を持たせることを言います。「ゲノム編集」との違いとしては…
ゲノム編集は、遺伝子を書き換える技術
遺伝子組み換えは、遺伝子を組み込む技術
といった比較ができるのではないでしょうか。「ゲノム編集」の説明の後半で、「ゲノム編集」は従来の「遺伝子組み換え」と比較して、安全に、そして狙った遺伝子を編集できる技術として、農業や水産業で応用が進んでいる。といった説明をしました。
ここからは具体的に、農業や水産業の場面でどのように「ゲノム編集」が使われているのかについて見ていきたいと思います。
農業における「ゲノム編集」の活用場面について
ここからは、ここまで説明してきた「ゲノム編集」が農業場面でどのように活用されているのかについてまとめていきたいと思います。
農業場面における「ゲノム編集技術」
農業場面では「ゲノム編集」の技術が以下のように活用されています。
「ゲノム編集技術」とは、狙った遺伝子を意図的に変化させることにより、品種改良のスピードを速め、従来では困難であった品種を開発できるものとして期待されている育種技術となっています。
冒頭で、品種改良の始まりは、自然の中で育つ植物から人間の口に合う植物を見極めていくというものでありましたが、「ゲノム編集技術」を活用することで、効率よく品種改良ができるようになり、従来では困難であった品種を開発できるようになりました。
では、ここからは「ゲノム編集技術」によって実際に開発されている作物を見ていきたいと思います。
「ゲノム編集技術」による農作物
ゲノム編集技術が使用されている農作物には以下のようなものがあります。
- 血圧を下げる成分が多いトマト
- アレルギー物質が少ない卵
- 収穫量の多いイネ
- 食中毒を起こさないジャガイモ
- 褐変しないロメインレタス
上記のように「ゲノム編集技術」を活用して栽培された農作物には、どれも驚きの特徴があります。なぜこのような驚きの特徴を持った農作物ができるのか、気になると同時に「本当に食べて大丈夫なの?」といった不安や疑問も出てくるのではないでしょうか。
ここからは、上記で紹介した農作物の具体的な特徴やゲノム編集技術を活用した農作物の課題などについてまとめていきたいと思います。
ゲノム編集トマト
ゲノム編集されたトマトは、ストレス緩和、血圧上昇抑制に効果のある「GABA」を、通常のトマトの5~6倍も含んでいます。
ゲノム編集のニワトリ・鶏卵
食用の鶏卵に対してもゲノム編集が行われています。ゲノム編集が行われた卵には、アレルギー物質の少ない卵が開発されています。
また、食用ではなく研究用では、バイオ医薬品などの開発に必要な「有用たんぱく質」を豊富に含んだ卵が開発されているようです。
ゲノム編集イネ
施肥(肥料を与える)により、イネの穂数が増える分子機構を明らかにし、その鍵となる遺伝子をゲノム編集技術によって改良することで、少ない肥料で収穫量を上げることが可能になりました。
また、現在イネがかかりやすい疫病の1つである「いもち病」に耐性のあるイネの開発が進められているようです。
ゲノム編集ジャガイモ
ジャガイモによる食中毒の原因となる「天然毒素(ジャガイモの芽)」を減らしたジャガイモがゲノム編集により可能になりました。
ここまでの「ゲノム編集」について、ゲノム編集が農業場面でどのように活用されているのかについて説明してきましたが、ここまでの説明で「ゲノム編集」のメリットは知ることができたのではないかと思います。
しかし「ゲノム編集」へ対する不安や疑問も多いのではないでしょうか。ここからは「ゲノム編集食品」のデメリットについて少し紹介していければと思います。
ゲノム編集食品のデメリット
ゲノム編集食品のデメリットとしては、新しい技術が出てくると必ずと言ってもいいほど起こることではありますが、「消費者に安全性を認知させることが難しい」という最大のデメリットがあります。
消費者の不安をとるために、ゲノム編集食品の安全性を周知させていくことが必要になってきます。そのためにも、「ゲノム編集食品」とはどのような品種改良なのかといった安全性をPRしていく必要があるのではないかと思います。
しかし、なかには「ゲノム編集食品」に反対している団体もあります。「ゲノム編集食品」に対して「怪しい」「不安」という気持を持って手を出さないことも選択肢の1つかもしれません。
最後に
今回は「ゲノム編集」という言葉に注目して、農業場面において「ゲノム編集」がどのように活用されているのかについてまとめてきました。
この記事の冒頭で「私たち食生活の中で当たり前のように食べられている農作物は、私たち人間が長い年月をかけて野生の植物から作り出したもの」というところから始まったと考えると、現在「ゲノム編集食品」が誕生しているという事実は技術力が年々高まっている証拠であると言えます。
現在、日本で栽培されている農作物は品質や味にもこだわっていて、充分美味しくいただけますが、「ゲノム編集」が加わることで、より体に有効な成分が入った農作物ができる時代が今後来るのかもしれません。
この記事を通して「ゲノム編集」に興味を持った人がいるのであれば、今後の「ゲノム編集食品」の動向について調べてみてはいかがでしょうか。
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