食糧危機の救世主【ジャガイモ】栽培方法と成功するコツを徹底紹介!

ホクホクとした食感がおいしく、おかずにもおやつにもなる「ジャガイモ」。

ジャガイモは海外では主食として食べられており、炭水化物が多く含まれているイメージが強いですが、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6も豊富に含まれる栄養価の高い野菜です。

日本でも人気が高く、一年を通して常に需要があります。

ジャガイモはやせた土地でもよく育ち、飢饉のたびに人々を助けた救世主でもあります。

栽培のしやすさや収量の多さから、現在も人口増加による食糧危機を救う作物として、ジャガイモは注目されています。

魅力が多いジャガイモですが、野菜の栽培経験がない方でも簡単に栽培することができる、初心者におすすめの野菜のひとつです。

しかし、ジャガイモ栽培に合った環境を整えてあげないと、小さいイモになってしまったり、イモが割れてしまったりと、失敗する可能性も十分にあります。

この記事では、今後ますます需要が高まる「ジャガイモ」の栽培方法について紹介します。

上手に育てるコツや、初心者におすすめの品種などについても知ることができますよ。

「初心者におすすめのジャガイモを育ててみたい。」

「ジャガイモの栽培で失敗したので成功するコツを知りたい。」

「いつか収入につなげるために稼げる野菜を栽培したい。」

という方は、ぜひ参考にしてください。

ジャガイモは食糧危機の救世主

ジャガイモは、アンデス地方を原産とするナス科の野菜です。

17世紀のはじめにインドネシアのジャカルタから日本へ渡り、「ジャカルタからきたイモ」が「ジャガイモ」の名前の由来だとされています。

やせた土地でも育ち、栽培期間が短い上に収穫量も多いため、江戸時代に何度も起きた飢饉の際に飢えをしのぐための作物として日本中に広まり、戦時中に食べ物が不足している時にも非常に役に立ちました。

また、ジャガイモは近年においても世界中で注目されている野菜です。

世界的にみても食糧価格の高騰や人口増加にともなう食糧危機は大きな問題ですが、低コストで栽培可能な上に高い栄養価をもつジャガイモを活用することが解決策のひとつになるといわれています。

今では国連を含め、世界各国の政府がジャガイモの栽培やジャガイモの活用に力を入れており、今後もジャガイモの需要は高くなりそうです。

ジャガイモの大きな魅力はそのおいしさにあり、ホクホクとした食感が魅力で、じゃがバターやポテトフライなどのシンプルな味付けから、カレーやコロッケなどのメインのおかずまで、幅広く楽しむことができます。

一般的に店舗にあるジャガイモは貯蔵庫にて熟成されたものであり、一年中購入することが可能ですが、ジャガイモの旬は春から夏です。

収穫したてのジャガイモは「新ジャガ」と呼び、熟成していない分多くの水分を含んでおり、実も皮も柔らかいので皮つきのままおいしく食べることができますよ。

ジャガイモの栽培難易度とは

栽培難易度★★☆☆☆(簡単)

ジャガイモの栽培難易度は低く、栽培経験が浅い初心者でも可能です。

その理由として、基本的にあまり手がかからず、病害虫被害も少なく、栽培期間も90日間と長くないことがあげられます。

学校や保育園などの栽培実習でジャガイモが選ばれる理由も、失敗が少なく育てやすいためです。

ジャガイモ栽培には春に植え付けをする「春作」と、夏の終わりに植え付けをする「秋作」の2種類ありますが、高温に弱い特徴を持つため春作のほうが失敗しにくく、初心者におすすめです。

ジャガイモ栽培の4つのコツとは

ジャガイモは他のイモ類よりも栽培期間が短く、育てやすい野菜です。

詳しい知識が無くても栽培することは可能ですが、栽培するコツを知ることで、よりおいしく、大きなジャガイモを収穫することができますよ。

ここでは、成功に導くジャガイモ栽培のコツを4つ紹介します。

土寄せと芽かきが重要

ジャガイモ作りでは、土寄せと芽かきが最も大切な作業です。

ウネの肩や通路の土を芽の周辺に寄せて盛り上げる作業を「土寄せ」、地上部に生えてきた芽を間引く作業のことを「芽かき」といいます。

ジャガイモは、芽から地中に伸びている地下茎の先にできますので、イモを大きく育てたいのであれば芽かきをしっかり行いましょう。

また、種イモは上の方向に新しい芽ができ、そこから茎が肥大してジャガイモになります。

そのため、土寄せによって土を被せてあげないと、肥料分が吸収できジャガイモも肥大しません。

また、イモが光に当たると緑化し、「ソラニン」という毒素が発生します。

ソラニンは大量に摂ると吐き気や嘔吐などの食中毒症状を起こすため、可能な限り避けたいところです。

土寄せによって緑化を防ぐようにしましょう。

適温で栽培できる時期を選ぶ

ジャガイモは暑さに弱い特徴があるため、適温で栽培できるような時期を選ぶようにしましょう。

特に、30℃を超えると発芽しにくくなり、肥大もしなくなるため、注意が必要です。

また、高温の日が続くと病害虫の発生も起こりやすくなります。

ジャガイモの発芽適温および生育適温は15~20℃です。

一般的な暖地では、3月に植え付ける「春作」と9月頃に植え付ける「秋作」がありますが、春作の方が高温になるリスクが低くおすすめです。

土壌がアルカリ性にならないように調節する

ジャガイモはアルカリ性に弱く、pH5.0~7.0が適切です。

日本は雨が多く炭酸ガスを多く含む雨水の影響で酸性になりやすい特徴があります。

栽培する土壌のpHが6.0以上であれば、石灰を混ぜこまないようにしましょう。

連作障害に注意する

ジャガイモは「連作障害」を起こします。

毎年、同じ場所に同じ科の野菜を栽培することを「連作」といいますが、連作をすると生育障害や病害虫が発生しやすくなります。

ジャガイモはナス科のため、ジャガイモはもちろん、ナスやトマトなどの野菜も3年以上連続して同じ場所で栽培しないように注意が必要です。

初心者におすすめのジャガイモの品種とは

ジャガイモといえば「男爵」や「メークイン」が代表的な品種ですが、他にも栽培しやすい品種が多く存在します。

色や味わいが異なるジャガイモも存在するため、さまざまな品種を育てて食べ比べをするのも家庭菜園ならではの楽しみ方といえます。

ここでは、初心者におすすめの育てやすい品種を紹介します。

ぜひ、自身で育てるジャガイモ選びの参考にしてみてください。

男爵

男爵

参照:Amazon | ジャガイモ・男爵薯(だんしゃくいも)の種芋 (1kg) | 用土

男爵は早生で育てやすく、収量も多いうえに種イモの入手もしやすいです。

ジャガイモといえば、男爵イモと答える人も多いほど有名な品種です。

ゴツゴツした形が特徴的で、ほくほくとした肉質なので、コロッケやサラダに適しています。

貯蔵性も高く、収穫したものを上手に貯蔵すれば、長く楽しめます。

メークイン

メークイン

参照:Amazon.co.jp: ジャガイモ・メークインの種芋 (1kg) : 食品・飲料・お酒

種イモの入手が簡単なメークインは、栽培期間は男爵よりも長い中早生種で、収穫量が多い品種です。

ホクホク系の男爵に対し、メークインはしっとりとした粘質タイプで、煮物やシチューなどの煮込み料理でも、煮崩れしにくいです。

とうや

とうや
参照:Amazon.co.jp: ジャガイモ・とうやの種芋 (2kg) : 食品・飲料・お酒

とうやは病気に強く、人気が高まっている品種です。

ジャガイモYウィルスに耐病性がありジャガイモシストセンチュウに耐虫性があります。

早生で栽培期間がやや短く、追肥は不要の育てやすい品種です。

男爵やメークインほどの知名度は無いため、インターネットでの購入がおすすめです。

男爵と似たホクホク系の食感なので、コロッケやサラダに適します。

ニシユタカ

ニシユタカ

参照:Amazon | 【種ジャガイモ・種いも】ニシユタカ 約500g入 | 野菜

ニシユタカは暖地向きの品種で、収穫量が多く、初心者におすすめの人気の品種です。

ねっとりとした食感で煮崩れしにくため、煮込み料理に適しています。

グランドペチカ・デストロイヤー

グランドペチカ デストロイヤー

参照:じゃがいも・デストロイヤー(グラウンドペチカ)| 種・苗・ガーデニング用品の【タキイネット通販】 (takii.co.jp)

グラウンドペチカは、表面が紫色で、目の周りだけ色が薄くピンクに近い色になり、マスクをかぶったような姿をしています。

見た目が珍しいだけではなく、ほくほくとおいしいため、人気が高まっている品種です。

店舗での取り扱いが少ないため、種イモはインターネットの予約で入手するのがおすすめです。

インカのめざめ

インカのめざめ

参照:じゃがいも・インカのめざめ| 種・苗・ガーデニング用品の【タキイネット通販】 (takii.co.jp)

インカのめざめは極早生せ収穫が早く、栽培期間が短い育てやすい品種です。

甘味が強く、揚げたり蒸したりといったシンプルな調理方法でもおいしく食べられることから、非常に人気があります。

他にも、インカのひとみ、インカルージュといった品種も同じような特徴があり、おすすめです。

種イモも早くになくなることがあるため、インターネットで予約することをおすすめします

ジャガイモの栽培時期

参照:これで失敗しない! プロに教わる、ジャガイモの育て方~大きく育てるコツを紹介します~【前編】|マイナビ農業 (mynavi.jp)

ジャガイモは種イモを植え付けて栽培します。

ジャガイモの植え付けは春が基本。暑さを嫌うので、2月下旬~4月上旬に植え付け、梅雨明け前には収穫します。

温暖な地域では秋植えも可能で、その場合は8月下旬~9月中旬に植え付け、11月下旬~12月頃に収穫できます。

種イモの準備

種イモ、カット方法

参照:タキイのジャガイモ栽培マニュアル | 野菜栽培マニュアル | 調べる | タキイ種苗株式会社 (takii.co.jp)

種イモは、栽培時期になると種苗店やホームセンターで販売されます。

種イモのサイズによっては下の表を参考にカットし、腐敗を防ぐために数日間乾燥させてから植え付けましょう。

ただし、夏ごろに植える「秋作」の種イモは腐ってしまうため、切らずに植え付けます。

【種イモのサイズとカットの方法】

サイズ重さの目安カット方法
30~70gそのまま
70~120g2等分
120~190g3等分

ジャガイモが茎とつながっている部分は「ストロン」と呼ばれています。

ジャガイモを観察すると、凹んでいる部分があり、ここがストロンです。

このストロンを中心に下に向かってらせん状に芽ができており、ストロンの反対側へ行くほど強い芽がでます。

そのため、カットする際は、強い芽が必ず入るように、ストロンを中心にして等分しましょう。

植え付け準備

【土づくり】

堆肥は入れずに元肥として10:10:10の化成肥料を100g/㎡と過リン酸石灰で25g/㎡施します。

もしくは、「イモ専用化成」などの10:15:15を100g/㎡施しましょう。

【ウネづくり】

ウネ幅約90㎝、株間30㎝、高さ15㎝のウネを作ります。

さらに、イモを植え付けるため、中央に23~25㎝程度の溝を作りましょう。

植え付け

種イモの植え付け

植え付け前後の水やりは不要です。

イモは貯蔵栄養を蓄えているため、完全に土がカラカラになっていない限りは水はあげないようにしましょう。

ウネの溝の部分にイモを植え付けます。

植え付けは株間30㎝で植え付け、両サイドのウネから土を削り寄せて、ウネ幅90㎝、高さ10㎝程度になるように整地します。

イモをカットした場合は、切り口が下になるようにセットしましょう。

低温には弱いため、春先の霜が不安な場合は、マルチ、不織布、敷きワラなどで対策をしておきます。

手入れ

栽培途中のジャガイモ

ジャガイモの手入れは「芽かき」「追肥」「土寄せ」であり、収穫までに2回行ないます。

1回目:植え付け後1ヵ月以内に発芽し、その芽が長さ10㎝以上になった頃に行ないましょう。

芽かきをして芽を2本残し、ウネの上面の肩側に追肥として10:10:10の化成肥料で約50g/㎡(2握り)振ります。

ウネの肩と通路の土を削りながら5㎝程度の土寄せをします。

2回目:植え付け後2か月前後に芽が30㎝程度伸びた頃に行ないます。

1回目と同じ量の追肥を通路とウネの肩口に施します。

肩を削り落とし、溝を削り上げるようにして高さが25~30㎝のかまぼこ型のウネに整地しましょう。

収穫

ジャガイモの収穫

【収穫方法】

ジャガイモは、植え付けから収穫までは約4ヶ月以上かかります。

葉が黄色くなる頃が収穫適期です。

収穫作業は外部に着く腐敗菌を最小限にするために、晴天を選ぶようにしましょう。

被元から20~30㎝離れたところをスコップで掘り起こし、手で株を引き上げます。

一株でM~Lサイズが6~7個ぐらい収穫することができます。

【貯蔵方法】

ジャガイモは貯蔵して長期間保存できます。

表皮を乾かし緑変しないように冷暗所で貯蔵しましょう。

ただし、温度が高くなると、休眠が解けて芽が出るので注意が必要です。

また、ジャガイモはウイルス感染しやすく、感染した種イモを使うと収穫量が減ってしまいます。

収穫したジャガイモを翌年の種イモとして活用することは可能ですが、ウイルス感染してしまっている可能性もあるため、市販の検査済みの種イモを使うことをおすすめします。

病害虫とその対策方法

ジャガイモは病気の心配はほとんどありませんが、害虫被害にあいやすいため、注意が必要です。

ここでは、ジャガイモ栽培の上で注意すべき病害虫と対策方法について紹介します。

【病害】

低温多湿だと「疫病」が、高温乾燥だと「そうか病」が発生しやすくなります。

疫病は葉に褐色の病斑ができ、葉の裏には白い霧状のかびが見られる病気です。

進行すると、イモの表面や内部が黒く変色してしまいます。

対策としては、多湿環境にならないように風通し・水はけを改善しましょう。

そうか病は、イモの表面に赤褐色の斑点が発生し、拡大しながら淡褐色や暗褐色に変色してぼこぼこと盛り上がります。

対策としては、感染していない無病の種イモを使用する、輪作をしない、pHを中性に近づけるなど、土壌環境を改善することが大切です。

【害虫】

ジャガイモにつく害虫として、ヨトウムシ、ニジュウヤホシテントウ、ムシダマシ、アブラムシなどがあげられます。

晴天や高温状態が続くと害虫の発生がひどくなります。

害虫被害によって葉がなくなると、光合成ができなくなり、枯れてしまうため、害虫を発見したら早めに薬剤散布をするなどの対策が必要です。

ジャガイモの魅力と楽しみ方とは

ジャガイモといえば「炭水化物」のイメージが強いですが、他にも多くの栄養素が含まれています。

フランスではその栄養価の高さから「大地のリンゴ」と呼ばれており、ビタミンC、ビタミンB6、ナイアシンなどの水溶性ビタミンを多く含んでいます。

特に、ジャガイモにはビタミンCが豊富に含まれており、その量は100gあたり35㎎と、ミカンと同程度です。

ビタミンCには皮膚や細胞が生まれ変わりを助けたり、抗酸化作用もあるため、美と健康のサポートする働きがあります、

食物繊維も多く含まれているため、毒素を排出し腸内環境を整えるなどの効果も期待できます。

食物繊維は水溶性であるため、ジャガイモの煮汁には多くの栄養素が溶け出しています。

ただ煮るだけで捨ててしまわず、スープなどに活用して丸ごと口にするようにすると、より多くの栄養素を摂る事ができます。

また、食物繊維は皮に多く含まれています。

ジャガイモの芽や緑色になっている部分は「ソラニン」という食中毒症状を引き起こす毒素が含まれているため、これらを大量に摂取しないように気を付ける必要がありますが、皮ごと食べることでジャガイモの栄養を丸ごといただくことができますよ。

まとめ

食糧危機を救う作物として世界的に注目されている「ジャガイモ」の栽培方法や成功するコツについて紹介しました。

ジャガイモは栽培期間が比較的短いうえに手がかからない、初心者におすすめの野菜です。

ただし、ジャガイモが苦手な高温な環境にならないように「秋作」で栽培することや、土寄せや芽かきをしっかりとすることなどのポイントを押さえることが重要です。

はじめて家庭菜園に挑戦するという方も経験者の方も、今回紹介した内容を参考にジャガイモの栽培にぜひチャレンジしてみてください。

また、ジャガイモは今後も需要が高まることが予想される人気の野菜でもあります。

ジャガイモ栽培に慣れたら自分で販売し、収入を得ることも検討してみてはいかがでしょうか。

みんなで農家さん」では、家庭菜園についてさらに詳しく知ることができるだけではなく、もっと大きな規模でやってみたいという方や、収入につなげてみたいという方にとって、必要な情報を知ることができます。

興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。

参考文献:

市川啓一郎著「タネ屋がこっそり教える 野菜作りの極意」一般社団法人 農山漁村文化協会発行,2021年 

林重孝著「有機農家に教わる もっとおいしい野菜のつくり方」社団法人 家の光協会発行,2011年

参考サイト:

ジャガイモが大きく育たない・・・育て方のポイント | 植物とあなたをつなぐPlantia (hyponex.co.jp)

タキイのジャガイモ栽培マニュアル | 野菜栽培マニュアル | 調べる | タキイ種苗株式会社 (takii.co.jp)

ジャガイモ 人気品種|春作 | ジャガイモ栽培.com (jagaimo-saibai.com)

世界各地で食糧価格が高騰、見直される「ジャガイモ」の魅力 | Reuters

【管理栄養士監修】じゃがいもの栄養素!じゃがいも料理の栄養価も! | 食・料理 | オリーブオイルをひとまわし (olive-hitomawashi.com)

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