あなたは農業の持続性を向上させるための取り組みである「JGAP」をご存じでしょうか?
JGAPを取得することで、あなたの農業経営の助けとなったり、あなたの農家としての信頼度が向上したり、様々なメリットが受けられます。
今回の記事では、JGAPの概要やJGAPを受けるメリット、JGAPを受ける方法について解説していきます。
JGAPとは
JGAPとは「Japan Good Agricultural Practice」の略で、訳すると「日本での良い農業の実践」です。
JGAPはあくまで「日本での」取り組みのことで、世界的な取り組みであるGAPの基準をもとに作られています。日本の生産・社会環境に合わせた、実践的な農業生産工程管理への取り組みです。
そして、日本で農業を実施する農家がJGAPの規範に沿って運営し一定の要件を満たしていることを申請して証明されると、「JGAP認証」が受けられます。。
JGAPは最終的な目標として「農産物の安全を確保して消費者を守り、地球環境を保全し、同時に持続的な農業経営を確立すること」を掲げています。
その実現のため、農家が取り組むべき事項を7つの項目として提唱しています。以下の7つが農家が取り組むべき事項です。
- 農場管理・運営
- 食品安全
- 環境保全
- 労働安全
- 人権の尊重
- 家畜衛生
- アニマルウェルフェア
このような事項を、農家や団体の経営者に示して適切な経営管理の実現を推進すること、そしてその実践に取り組む農場や団体を評価・認証して消費者や社会にわかりやすく示すことが、主なJGAPの取り組みです。
GAP認証の種類
世界には他にもGAP認証制度があります。日本で普及しているGAP認証制度は以下の3つです。
- JGAP
- GLOBALGAP
- ASIAGAP
JGAPは日本で最も広く認証されており、2021年3月末時点で認証農場数は5,020にまで上ります。
有機JASとの違い
農業において有名な認証として有機JASというものがありますが、JGAPは有機JASとはまた別のものとなります。
有機JASは、特に環境に対する負荷について適切な生産をしている生産者に付与される認証です。そのため、定める基準が違い、JGAPは有機JASの上位互換ということにはなりません。
有機JASは生産工程における環境負荷に対して認証を与える制度で、GAPは生産工程における労働環環境など比較的広域に対する認証制度となります。
農家がJGAPに取り組むメリット3選
JGAPは認証取得をすることで、農家の方々は多くのメリットを受けることができます。ここからは農家がJGAPに取り組むメリットについて解説します。
消費者や実需者の信頼が向上する
JGAP認証を取得すれば、信頼できる農場であることを消費者や実需者へ視覚的に示すことに繋がり、信頼が向上します。
JGAPは最終的な目標として「農産物の安全を確保して消費者を守り、地球環境を保全し、同時に持続的な農業経営を確立すること」を掲げています。
農家がJGAPに取り組むということは、このようなJGAPの目標・目的や理念などの規範を農業経営に導入することを意味します。
この目標・目的や理念などに基づいて農業を行っているということから、消費者や実需者の信頼に繋がるのです。
市場での競争力を上げたり、農産物に付加価値を付けたり、といったことに繋がるので、経営戦略に活用できるでしょう。
経営が上手くいく
前述したように、農家がJGAPに取り組むということは、JGAPの理念や実践の規範を農業経営に導入することを意味します。基準書などをチェックし、基準に沿って自分の農業経営を改善していきます。
そのため自らの農業経営にあたって、基準となるJGAPの基準書があり、基準書に適合した農業経営を行えば、持続可能な農業の実現や経営効率の向上、職場環境の改善などが期待できます。
また、JGAPでは、農業生産の仮定を後から見直せるように、管理の情報をすべて記録することを推奨しています。しっかりとデータを記録していれば、記録のデータを活用することでより良くするための改善点などを把握することができ、次の計画も立てやすくなります。
職場環境の改善に繋がる
JGAP認証農場として基準を満たす職場環境が実現できれば、職場環境の改善にも繋がります。
持続的な農業経営を確立するということは、働いている人たちも不自由なく農業に取り組めていることが重要です。
持続的な農業経営を確立することを目的としているJGAPに取り組むことは、働いている人たちにとって働きやすい環境になることに取り組むということです。
またJGAPに取り組むことによって、働いている人たちの意識向上にも繋がります。
JGAP認証取得のために従業員全員でリスク管理などに取り組むため、農場運営に携わっている意識が高まり。さらに積極的に仕事に取り組むことに繋がります。
ただ働いているだけでなく、当事者意識を持って農場運営に関わろうという気持ちを持つことができるのです。
JGAP認証を受けていくには
様々なメリットが受けられるJGAP認証ですが、では実際にJGAP認証はどのように認証に向けて進めていけば良いのでしょうか?
ここからはJGAP認証を受けていくための流れについて解説します。
JGAPを受ける際に確認しておくこと
まずJGAPの認証には以下のようなことが必要となってきます。
- 基準書を入手し、理解をする
- 基準に適した農場にしていく(設備投資など)
- 時間をかけて基準に適した取り組みを行う
- 認証に必要な費用を準備する
結論から申し上げると、簡単にできるものではなく、手間はかかります。
また費用的な面でも、費用は少ないものではありません。農場によっては、基準に適した農場にするため、整備費用がかかったり、設備費用がかかったりと、様々な面でコストがかかります。さらには認証を維持するための毎年維持費用が必要となります。
しかし、そのコストをかけるだけのメリットは多く、農家にとってはコストパフォーマンスの高い認証制度だと言えます。
ですので、JGAPの認証はタイミングを考えることが重要です。「農場を全国の人に評価してもらえるようにしたい」「国内外の取引をさらに多くしたい」など規模拡大を目指す際など、認証が本当に必要になった際に取得することがおすすめです。
まずは準備として、JGAPの認証を意識した農場運営を自分で取り組んでみましょう。
JGAP指導員の指導を受ける
JGAPの認証条件の1つとして「取組むGAPを十分に理解したものによる自己点検/内部監査の実施」が必要となります。
個別認証の申請をする場合は、まず日本GAP協会が実施している研修を受けるか、またはJGAP指導員から直接指導を受けるなどして、JGAPについての理解を深めることが必要なのです。
研修を受講する場合はホームページから申し込みます。基礎研修や認証に関する研修を受けることができます。
JGAP指導員の指導を受けるには、全国各地にいる指導員をJGAPのホームページで検索して指導可能エリアの指導員を探しましょう。もしくは、指導を行っている日本GAP協会の会員に直接依頼をします。
研修や指導を受けたら「JGAP農場用 管理点と適合基準」に基づいて自身の農場経営をチェックします。基準を満たしていない点があれば改善が必要なので、どのように改善を実施すればよいか指導員などにもアドバイスをもらいながら、改善を行いましょう。
最終的に、該当する必須項目には100%適合し、重要項目には95%以上適合している状態になるまで、適合基準のチェックと経営改善を繰り返します。
審査を受けようとする日から3ヵ月以上前には、「JGAP農場用 管理点と適合基準」に適合する農場運営を構築し、帳票類もそろえて運営の記録を残します。
それから審査を受けますが、一度だけで合否が決まるわけではありません。審査の結果は「適合」「不適合」「該当外」で示されます。不適合の項目は審査後4週間以内に直し、是正報告書を認証機関に送ります。
審査の判定は、是正報告書も含めて認証機関が判定を行います。合格基準を満たした農場には認証書が送られますが、認定後は、毎年更新審査を受けなければなりません。
団体認証も視野に入れる
JGAPには、個人農家や農業生産法人など1つの経営体の農場を認証する「個別認証」と、複数の農業経営体が集まった団体や企業の農場を認証する「団体認証」があります。
団体の認証手順は個別経営とは異なり、まず団体で共有しているルールについて確認します。そのうえで「JGAP農場用 管理点と適合基準」に沿ってどの農場がどの管理点を担うかを決め、管理点を分担しましょう。
さらに、「団体事務局用 管理点と適合基準」にも適合するよう団体用の農場管理マニュアルを作り、現状のルールを改善していく必要があります。
審査をする日の3ヵ月以上前にこれらの準備を整え、団体のルールを構築して運営し、帳票類もそろえて運営の記録を残します。また、内部監査を準備し、実施します。
団体認証の場合は、管理点や費用を構成農家で分担するため、経営体当たりの負担が少なくなります。運営も効率化でき、役割分担によって認証基準を満たすことが容易になるなど、さまざまなメリットがあります。
また、取得した認証を活かす場合にも、個別の農家よりもスケールメリットがあるため、商品展開や販路開拓の可能性が広がります。このようなことから、今後は団体認証がJGAP認証の主流になっていくと考えられています。
まとめ
今回はJGAPの概要やJGAPを受けるメリット、JGAPを受ける方法について解説しました。
農家がJGAPに取り組むメリットをまとめると以下の通りです。
- 消費者や実需者の信頼が向上する
- 経営が上手くいく
- 職場環境の改善に繋がる
JGAPを認証すると、農場経営が効率的に行えたり、更なる事業規模の発展ができたり、様々な点でメリットがあります。農業経営におけるリスクをより軽減することにも繋がるので、JGAPへの取り組みは非常に意義があると言えます。
ただ、JGAP認証はタイミングを計らうことも重要です。時間やお金など様々な点でコストをかかることを把握したうえで、「農業経営をさらにより良くして、さらなる発展をし、地蔵可能なものにしていく」と考えている人たちはぜひJGAP認証を実践してみましょう。
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