農業には農作物を育てる以外に畜産というものがあります。
畜産の主なものとして牛、豚、鳥などの家畜を飼育して乳製品や肉、卵、皮革などに加工して生活に役立てる産業です。
畜産業を営む農家を畜産農家と呼び、地方では農業と畜産業を兼業で行う兼業農家も少なくありません。
動物の飼育が好き、生産に関わる仕事がしたいなどの人にとっては畜産農家は職業の選択肢の一つだと思います。
日本は現在農業の新規就農者が少子高齢化の原因もあり減少傾向にあります。
畜産農家においても同様なことが言えます。
また、農業に新規就農した人が離農するのも5年以内に約35%と定着率がそこまで良いわけではありません。
その理由として仕事に対する理想とギャップがあることが要因としてあります。
この記事では畜産農業に新規就農を目指している人に向けて仕事に対する理想とギャップが理由で離農しないように畜産農業ではどんなことを行うのかについて紹介していきたいと思います。
これから畜産農家を目指す人にはぜひ仕事の内容やどんなことをするのかを知って頂き畜産農家を目指してほしいと思います。
畜産とは
冒頭でも言いましたが畜産とは牛や豚、鳥などの家畜を飼育して乳製品や肉、卵、皮革などに加工する産業です。
畜産は日本の食を支える大事な産業の一つと言えます。
畜産には遊牧型と定着型があり、海外では広大な土地があるため遊牧型の畜産タイプもありますが日本では定着型が一般的です。
家畜を育てるのに飼料を自分の農家で栽培して家畜を育てることが日本の畜産農家では多いです。
畜産では食肉として加工するだけではなく動物から取れる毛皮や骨なども副産物として様々な物として加工されています。
そのため畜産では、無駄なところを出さずに全てがきちんと利用されるようになっています。
次に畜産農家とは具体的にどんなことを行っているのかについてです。
畜産農家の仕事
畜産農家の仕事は牛や豚、鶏を飼育することです。
これは畜産としては当たり前のことですが、この飼育にも色々な種類があります。
例えば牛においても繁殖牧場や肥育牧場、酪農と飼育の仕方がかわります。
つまり動物を飼育するにしても目的や用途が違えばベースの飼育は変わらなくても内容等は少しずつ当然変わってきます。
自分が動物を育てる仕事がしたい、関わりたいと考えているのであれば具体的にどんな飼育をしたいのかについて仕事に対するギャップを減らすためにもきちんと知っておく必要があります。
特に新規就農者が離農する原因として多い、将来不安(収入)、労働環境については特に知っておく必要があります。
1日の労働時間
まず初めに農業に人気がない理由としての一つに労働時間の長さが含まれていることを知っておいて下さい。
一般的な企業に所属している場合は8時間労働で週休2日、残業代や色々な手当などがありますが、農業ではそうはいきません。
畜産農家はそれこそ動物を相手にするため時間に制限なんてありません。
労働基準法でも農業の業界は
【自然条件に労働形態が影響を受ける農業は「労働時間・休憩・休日」の規定は適用除外】とされていることから一般的な労働基準ではなくても問題がないとされています。
まず、ここの労働時間についてはそれなりに覚悟しておく必要があります。
ただ、勘違いしないで頂きたいのは365日ずっと働くというわけではなくもちろん企業や職場によって交代制や就業する際に労働時間などについて記載がされていることが殆どですので就農する場所によって違いはあるというところです。
それでも一般的な企業に比べれば朝は早く、労働時間は長いことに変わりありませんが…
それでは具体的にどれくらいの時間働くことが多いのかですが、いくつか例を上げていきます。
牛肥育の場合
7:00〜9:00 牛舎を見回り、えさやり
9:00〜12:00 牛舎の掃除
(10:00 獣医師の検有り診)
12:00〜13:00 昼休み
13:00〜15:00 牛舎の見回り、肥え出し
15:00〜17:00 子牛の様子を見る
※子牛はえさではなくミルクを与えます。また、生育するまでは状態をよく確認してあげないと
異常を起こしやすいので注意が必要です。
17:00〜20:00 えさやり
2回目のえさやりを行い、特に異常がなければ仕事を終えます。
20:00 終了
酪農の場合
6:00〜9:00 牛舎清掃、搾乳、餌やり
※8:00ごろに搾乳した物を業者に引渡しのことが多いためどうしても朝が早くなります。
9:00〜10:00 休憩
10:00〜17:00 肥料などの畑作業 (合間に休憩不定期)
17:00〜18:00 夕食
18:00〜20:00 餌作り、搾乳、牛舎清掃
牛は1日に約25〜30kgの生乳を生成します。
搾乳しないと乳房が炎症を起こしやすいため1日2回搾乳作業を行うのか基本です。
養豚 繁殖農家の例
08:00~10:30 分娩確認、給餌
10:30~12:00 母豚の発情鑑定、種付け、豚舎の清掃・消毒
12:00~13:00 休憩
13:00~15:00 子豚のワクチン接種、豚舎の清掃・消毒
15:00~16:00 飼料調達
16:00~17:00 休憩
17:00~19:00 給餌、分娩確認
※お出産や病気・ケガがあった場合は、時間を問わず対応
養豚 肥育農家の場合
08:00~10:30 豚の状態観察、給餌、豚舎の温度・換気管理
10:30~12:00 豚舎の清掃・消毒、出荷
12:00~13:00 休憩
13:00~15:00 給餌、豚舎の清掃・消毒
15:00~16:00 飼料調達
16:00~17:00 休憩
17:00~19:00 給餌
※病気やケガがあった場合は、時間を問わず対応
養鶏農家 採卵用例
05:00~12:00 給餌・集卵・鶏舎清掃
12:00~13:00 休憩
13:00~16:00 選別・出荷
16:00~17:00 鶏舎の見回り・鶏の健康管理
養鶏 食肉用例
08:00~12:00 給餌・鶏舎清掃・雛の受け入れ
12:00~13:00 休憩
13:00~17:00 鶏舎の見回り・鶏の健康管理・ケージ移動
上記の例をみてわかるように畜産農家の朝は早く終わる時間は遅いことが多いことがわかります。
これは動物に合わせて作業を行なっているためです。
豚は睡眠時間が8時間程度に対して牛は睡眠時間が4時間程度のため管理する作業時間は必然的に長くなります。
また、通年を通して基本的な作業は変わりません。
しかし、四季に合わせて環境を整える作業などが発生してくるため基本的な作業にプラスしての作業がその都度あります。
このように一般的な企業と比べても労働時間は長くなってしまいます。
畜産農家年収
将来不安の中の一番離農に繋がっている項目として金銭面です。
農業は安定的な収入確保が難しいところもあり新規就農者の収入が低い傾向にあります。
畜産農家では実際どれくらいの年収が見込まれているのか、将来不安の解消になるようにそれぞれの項目ごとに紹介していきます。
畜産農家の平均年収は380万〜1880万となっています。
これだけ幅があるのは畜産のなかでも何をするかで収入が大きく違うためです。
まず法人の場合ですが下記のようになっています。
酪農 1463万
養殖牛 376万
肥育牛 801万
養豚 1876万
採卵養鶏 781万
酪農と養豚が1000万を超えてきています。
養殖牛は376万と日本の平均収入より少し低い額となっています。
次に個人経営の場合はどうでしょうか。
酪農 1360万
養殖牛 374万
肥育牛 898万
養豚 1069万
採卵養鶏 336万
大きく収入に変化があったのは採卵養鶏が半分程度になっています。
これは卵の販売経路や規模の差が法人よりも少ないため出ている結果です。
しかし、逆に他の項目を見てみるとそこまで大きな差はありません。
これだけを見てみると個人経営でもそれなりの収入にはなっていることがわかります。
参考、引用元:農林水産省(営農類型別経営統計)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou/index.html
畜産農家でどの畜産をやりたいかにもよるとは思いますが、全体を見た時に日本の平均年収かそれよりも高い畜産もあるため将来不安が金銭的な物であればこういった年収別から検討してみるのも一つの選択肢です。
畜産農家やりがい、大変なこと
なんだかんだといっても畜産農家はやはりやりがいももちろんあります。
何よりも動物を相手にすることが好きな人にとってはとても楽しい仕事です。
生まれた時から自分の手で丁寧に育てる楽しさは他の業種と違いやりがいの感じ方が違います。
また、自然の中での生活になるため体や精神面においてもいい効果があります。
もちろんその分大変なことも多くあります。
機械化が進んでいるといってもやはり肉体労働なところはありますので、体力勝負になってしまう点や、休みを自由には取ることが難しいのが難点です。
まとまった休みをとろうにも人手がなければ動物の世話が365日毎日あります。
そのため長期休暇というのが取りづらくなってしまうのです。
また、尿や糞の片付けに土の上での作業が殆どのため汚れやすく気にする人には向いていない仕事になります。
まとめ
畜産農家では、ここまで紹介してきたように何をやるかで仕事内容も収入も大きく変わります。
新規就農を目指している人にとっては離農する原因となる仕事の理想とギャップ、将来不安(金銭面)については就農する前に色々と調べておく必要があります。
自身の将来設計を考えた時金銭的問題に自分の時間をどうするのかは非常に大事になってきます。
今回の記事では一般的な仕事のスケジュールと年収について紹介しています。
企業や個人経営での誤差はあると思いますので就農前に確認しておきましょう。
新規での参入を検討している人は
畜産農家で何を選ぶのかの一つの参考になればと思います。
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