「セーフガード」とは?メリット・デメリットまで解説!

はじめに

「セーフガード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?筆者はこれまで全く知らなかったのですが、今回調べてみて、国内の生産者等が自発的に声を上げることができる取り決めなのだと知ることができました。ただ、発動するにあたってメリット・デメリットが色々とあり、慎重に検討することが必要そうです。

この記事では、セーフガードについての解説と、発動する場合のメリット・デメリットについて詳しくお伝えしていきます。

セーフガードって何?

セーフガードとは、日本語で「緊急輸入制限」と呼ばれるものです。特定の農産品や工業品の輸入が急増したことにより、日本国内の同じ商品が壊滅的な被害を受けているときに、外国産品に対して一時的に関税を引き上げるなどして輸入を抑制する措置のことを指します。国内産業への打撃を避ける手段として、世界貿易機関(WTO)協定で認められており、日米貿易協定や環太平洋連携協定(TPP)などで導入されています。

例えば、あなたがトマト農家だったとしましょう。通常は市場にトマトを出せば、1個あたり50円で購入してもらえます。ですが最近、外国産のトマトが急増してみるみると相場が下がり、1個20円にまで下がってしまいました。このままでは事業を継続していくことは困難でしょう。

そこで、日本政府に対して「外国産のトマトがもう少し高くなるようにして!」と訴えます。具体的には、日本に入る時の関税率を引き上げるのです。被害の訴えを受けた政府は、国内のトマト市場の相場の下落と外国産品の流入との因果関係を調査し、必要があれば外国産品に対して高い「関税」を発動します。これがセーフガードです。

このように、セーフガードは日本の国内産業を保護するために、きわめて重要な関税制度です。これまでに、セーフガードが発動した商品として次のものがあります。

・ねぎ

・生しいたけ

・畳表など

・牛肉

なお、米国産牛肉については、2021年3月にセーフガードが発動されたことから日米両政府が見直しを協議し、米国産が基準を超えても米国とTPP加盟国を合算した輸入量が基準内に収まれば、セーフガードを発動せずに関税を据え置く新しいルールが23年1月にスタートしました。

セーフガードの発動条件は?

自国の産業を保護するために、関税を高くするのがセーフガードです。よって、このセーフガードの発動を求められる人は、対象の商品が輸入されることにより甚大な被害を受ける利害関係者となります。これらの関係者が日本政府に直訴することにより、初めてセーフガードの検討がなされます。

しかし、国内関係者からセーフガード発動を希望する訴えがきたとしても、日本政府はすぐに発動するわけではありません。なぜなら、セーフガードの発動は貿易相手国に不利益を与えるため、非常に難しい判断を求められるからです。そのため日本政府は、セーフガードを発動するかどうか調査を進める上で、まずは次の4つの条件全てに当てはまるのかを確認します。

セーフガード発動の4つの条件

1. 輸入の増加が確認できること

2. 国内産業に甚大な被害があること

3. 輸入品の急増と甚大な被害に因果関係があること

4. 経済上、緊急に必要があると認められること

日本政府は、これらの4つの観点から指定期間調査を行い、必要と判断したときにセーフガードを発動します。もしもセーフガードが発動されると、外国産品に最大で4年間、通常よりも高い関税率を適用します。最大4年のため、これよりも短い期間で終了することもあります。また、延長は可能ですが、最大でも8年となっています。

では、セーフガードのメリットとデメリットはどのようなものなのか、ここから解説していきます。

セーフガードのメリット

まずはメリットについてですが、セーフガードは世界貿易機関(WTO)において認められている制度であり、ルールに基づいて比較的容易に輸入制限ができることが挙げられます。

また、その発動までの手続きは明確なルールに基づいており、透明性が高いです。そのため、基準を満たさなければ発動されないこともあります。

また、発動後の自由化の義務を負う点や、輸出国による対抗措置が認められている点からも濫用しにくいことが挙げられます。

セーフガードのデメリット

対してデメリットですが、手続きは明確なルールに基づいて入るものの、輸入増大と国内産業の甚大な被害の因果関係の立証に恣意的判断が入る余地があるということが挙げられます。特に、輸出国との関係もあるため、慎重な調査による客観的な判断が要求されます。

また、セーフガードの発動によって、輸入が急増したそれ以外の様々な品目での発動の要望が多発することが危惧されています。さらに、セーフガードの発動は諸外国の反発を招き、対抗措置に繋がる可能性があります。対抗措置は世界貿易機関(WTO)で認められており、場合によってはセーフガードを発動した商品以外のものにまで貿易上の深刻な影響を及ぼしかねません。

また、政治問題とのリンクが起こる可能性もあります。実際のところ、2001年に発動された、ねぎ・生しいたけ、畳表のセーフガードによって教科書問題、靖国神社問題等の政治問題とリンクが起こりました。このように場合によっては問題がより複雑化する可能性があります。

それ以外にも、経済面ではセーフガードの発動によって輸入品と市場原理に基づいた自由な競争が阻害されることになります。また、これにより消費者の選択の幅が狭まり、低価格な外国産品を購入できなくなることもデメリットの一つと言えるでしょう。

生産者に及ぼす影響としては、外国の生産者にとっては輸入拡大の可能性が広がる場面での規制となり、甚大な被害を被ることになるでしょう。日本の生産者にとっては、保護される面ももちろんあるが、一定期間を過ぎれば撤廃となるため、撤廃された時に外国産に対抗できるだけの基盤強化がなされていなければセーフガードの本来の目的を達成したことにはならず、非常に問題であると言えるでしょう。

では、セーフガードはどのような流れで発動されるのでしょうか?流れをみてみましょう。

セーフガードが発動されるまでの流れ

セーフガードは、外国から入ってくる商品に対して、一時的に関税率を上乗せして、国内産業を保護する仕組みです。では実際、このセーフガードが発動されるまでは、どのような流れになるのでしょうか?主な流れは以下の通りです。

1. 利害関係者による申し立て

2. 調査

3. 暫定発動

4. 認定(通報)

5. 関係各国と協議

6. セーフガード発動

7. 相当する関税往復関税

では、順番に解説をしていきます。

1. 利害関係者による申し立て

まずは、日本国内の利害関係者による申し立てが行われることからスタートです。申し立ては、以下の省庁が担当しています。申し立て方法や書類の書き方などは、以下の期間に問い合わせをします。

問い合わせ先:

経済産業省貿易経済協力局

貿易管理部 特殊関税等調査室(本館14階西7)

電話番号:03-3501-3462

E-mail:qqfcbk(アットマーク)meta.go.jp

2. 調査

申し立てが行われると、上級行政庁に回っていき、申し立ての内容が正しいのかを調査していきます。具体的には対象の輸入品が流入することにより、同種の国内産業品がどのような影響を受けているのか?などを、約1年程かけて調査します。

3. 暫定発動

調査期間の間にもどんどん状況が悪化していることが明らかな時や、国内経済の保護について緊急の必要性がある時には、最大日数を200日にした上で、暫定的なセーフガードを発動します。暫定発動をした上で、調査は継続されます。

4. 認定(通報)

調査期間が終わり、やはり輸入品の流入と国内産業への悪影響に因果関係があれば「事実認定」をします。(通報)

5. 関係各国と協議

事実認定をしたら対象の商品を輸入している関係各国と協議を行い、何かしらの解決策がないのかを考えます。

6. セーフガード発動

競技の結果決着しなかった場合には、最大4年を目処にして、正式に対象商品のセーフガードを発動します。

7. 相当する関税往復関税

セーフガードを発動する時は、その分を他の物から譲許することが通例です。例えば、日本側がセーフガードを発動することで500億円分の関税収入が増えるのなら、その分、他の貨物にかかる関税を引き下げて帳尻を合わせます。セーフガードは急な輸入増加による国内産業の保護が目的であって、関税の増収ではないためです。

特別セーフガードとは?

ここまで説明をしてきたのは、「一般セーフガード」とも呼ばれるものですが、実は「特別セーフガード」というものも存在します。

一般セーフガードは国内産業に重大な損害が生じた場合に限り認められるもので、調査に時間がかかり、また、利害関係国に補償措置をとるよう努力しなければならない等の条件がついています。

それに対して特別セーフガードは、定められた基準を超えた輸入の急増や輸入価格の低落時に自動的に発動する事ができ、輸入国が対抗措置をとることができないのが特徴です。

この特別セーフガードは、ウルグアイ・ラウンド合意において輸入数量制限等の「非関税措置」を関税化した農産品について、関税化の代償として認められている緊急措置です。また、対象品目はウルグアイ・ラウンド合意において関税化した農産品であり、具体的には米、小麦、大麦、乳製品、でん粉、雑豆、豚肉等となっています。

特別セーフガードは一般セーフガード併用することはできず、以下の要件を満たした場合に自動的に発動します。

①数量ベース

4月からの輸入量の累計が「輸入基準水量」を超えた場合に、この要件を満たした翌々月から当該年度末まで、通常関税の1/3が追加関税されます。

②価格ベース

船荷毎の輸入価格が発動基準価格の90%を下回る場合に、この要件を満たした船荷毎に、発動基準価格と輸入価格の差に応じて、最大で発動基準価格の52%が追加課税されます。

まとめ

いかがだったでしょうか?セーフガードという手段やメリット・デメリットを知っておく事が、生産者を保護していく上でも重要ではないかと筆者は感じました。「みんなで農家さん」では農業に関する様々なニュースなどについてもお伝えしています。ぜひこちらも覗いてみてください。

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