縁の下の力持ち!微量要素の役割と目で見てわかる欠乏症と過剰症の見分け方

「農薬を使わずに生物の多様性を尊重しながら、自然と人間が調和し農作物を作る」

といった新規就農者が年々増えています。

農業とは人間が生きていくうえで欠かせない”衣食住”のうちの一つである”食”を生み出し続けることです。

なぜ命あるものは”食す”のでしょうか?

それは「栄養素を得るためです」

人間の栄養源であるのが農作物であり、農家さんは人間の生きる源を栽培している大切な存在です。

また栄養ある農作物を生育するために大切と言われている「土壌づくり」に必要となるのが栄養素である必須元素であり、多量要素・微量要素・有用元素の3つに分かれています。

それぞれバランスが大切で欠乏しても・過剰でも病気になりますし、栽培する農産物によって要求量は異なるため見極める力が必要です。

ですが元素と聞くと「理科の授業で覚えるのに苦労した」や「何が欠乏で、何が過剰なのかわからない」など苦手意識を持つ方も多いのではないでしょうか。

今回は必須元素のなかでも微量要素について欠乏症と過剰症を解説、健康な土壌つくりのポイントをご紹介いたします。

必須元素とは

必須元素とは植物の生育に不可欠な元素であり、17種類存在します。

植物が必要とする量から体内に約0.1%以上存在している状態を「多量要素」、体内に0.01%以下の場合を「微量要素」と分けます。

多量要素はさらに要求量の違いから「多量一次要素」と「多量二次要素」に分けられます。

ここでは必須元素である多量要素、微量要素、有用元素が農作物にどのような役割があるのかを紹介します。

多量要素

農作物が構成される元素になるもので多く必要とします。

(O、 H、C、N、P、K )多量一次要素

酸素(O)、水素(H)、炭素(C)は大気中の二酸化炭素(CO2)や水(H2O)から供給されるため、肥料として与える必要はありません。

(Ca、Mg、S )多量二次要素

元素名(記号)農作物への役割
窒素(N)タンパク質構成するための核酸の働きを良くする元素・葉緑素の働きをよくする
リン酸(P)遺伝子の元になるDNA(核酸)であり、細胞膜の構成成分・糖類と結合し呼吸作用などの働きをつくる元
カリウム(K)炭水化物やタンパク質の合成に必要な元素・水分の蒸散を調節・根の発育を促進・耐性や抵抗性を高める・日照の不足による成長速度の低下を抑える
カルシウム(Ca)細胞組織を強化・根の生育を促進・窒素過多や水分不足はカルシウム欠乏症の原因になる
マグネシウム(Mg)葉緑素を構成する元素・植物体内のリン酸の移動を助ける・タンパク質や脂肪の合成に必要な元素であり酵素の活性化につなげる
硫黄(S)タンパク質、アミノ酸、ビタミンの合成に必要な元素・葉緑素の生成を助ける・刺激のある香りや辛みである「含硫化合物」を作る

微量要素

多量要素と微量要素の関係性は代謝酵素と補酵素として働きます。

酵素は補酵素がないと働けないため、微量要素は吸収量は微量であるものの大切な役割をもっています。

元素名(記号)農作物への役割
塩素(Cl)植物の必須元素として確認されたのは1954 年で比較的新しい
光合成を行う際にマンガンと共に必要となる元素・細胞液の pH 調整を行う・病害抵抗性を高める働き
鉄(Fe)葉緑素の生成を助ける・呼吸や光合成を行う
銅(Cu)葉緑体の合成・酸化還元酵素の原料となり呼吸作用に関わる
亜鉛(Zn)成長促進・酸化還元酵素、タンパク質、でんぷんの合成に必要
マンガン(Mn)光合成を行う際に塩素と共に必要となる元素・葉緑素の生成・生長促進・葉緑素、ビタミン類の生合成必要な元素
ニッケル(Ni)尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素の構成元素
ホウ素(B)葉緑素の形成・細胞壁の補強や構造維持・根や花つきの生育促進
モリブデン(Mo)各種タンパク質の合成に関わる・根粒菌の生育を助ける(空気中の窒素をアンモニアや硝酸塩に変化させ利用しやすようにする菌)

有用元素

必須元素ではないが、特定の農作物を「大きく育つように促進する」や「環境耐性を高める作用」があります。

元素名(記号)農作物への役割
ケイ素(Si)ケイ化細胞が農作物の体内に増えると病害虫に強くなり、倒れにくくなる
特定の農作物:イネ科
ナトリウム(Na)どのようにが不明
特定の農作物:サトウダイコン・甜菜・春菊など
コバルト(Co)根粒菌が窒素を取り込み、農作物が根から吸収できる形へ変換する重要な役割を担う
(「窒素固定」と言う)
特定の農作物:マメ科

微量要素の欠乏症と過剰症

極酸性でも極アルカリ性でも農作物は病気になります。

微量要素は堆肥に多く含まれていますが、近年は堆肥を施用しない農地が増えています。

長年化成肥料に頼ることにより土壌本来の力が発揮できず欠乏症・過剰症が発生しやすい環境を作り出しています。

ここでは葉や茎の症状から欠乏症・過剰症の見分け方を表で紹介します。

欠乏症過剰症
塩素(Cl)植物全体が萎縮する・新芽が黄化する・
葉の先端が枯れる
リン酸の吸収を妨げる・土壌の酸性化を手助けする
鉄(Fe)生育が阻害され、葉脈の間が黄化や白化になり根が黄変する下葉から葉脈間に褐色の斑点がでる
銅(Cu)葉に黄白色の斑点がでる・新芽が枯れる上位の葉色が薄くなる
亜鉛(Zn)葉の黄化や褐色の斑点がでる・茎が寸づまりになる・生育障害を引き起こす
生育障害を引き起こす
マンガン(Mn)葉脈以外の葉が黄化する・病気にかかりやすくなる生育障害を引き起こす・葉に黒点症状が発生する
ニッケル(Ni)発芽不良が起こる・葉脈の間が黄化や白化になるしおれるように表側に巻き上がる・葉脈の間が黄化や白化になり赤い斑点がでる
ホウ素(B)上位葉の黄化する・奇形が生じる・新芽が枯れる・根の発育が阻害される下位葉から枯死する
モリブデン(Mo)葉に黄色の斑点が生じる・表側に巻き上がる葉が黄化し白色の斑点がでる

微量要素欠乏

微量要素欠乏とは、本来土壌中に含まれているため微量要素を改めて肥料とし、与える必要はありません。

しかし連作や化成肥料の多用により土壌中の栄養バランスが悪くなることで、土壌中の微量要素が徐々に欠乏し必須要素を吸収や分解ができず農作物の体内に足りなくなる状態の事です。

他に考えられる原因は?

  • 日照不足や高温環境により作物が弱っている
  • 土壌微生物の活動が停滞や減っている
  • 土壌内がアルカリ性(pHが高くなる)と溶解度が低下(モリブデンは酸性に傾く(pHが低くなる)と溶解度が低下する)

当たり前を疑ってみるのも大切!

生産者は「化学肥料や化学農薬を使用して栽培するしかない」や「草花や野菜を育てる時には肥料を購入して与える」と言う”現代の当たり前”の中で生活しています。

ですが!本当にそうでしょうか?

本来、草花や野菜は土中微生物と共生ネットワークの中で育ち、何世代も命を受け継ぐ環境を自ら作るメカニズムを持っていることがわかっています。

ですが「消費者の希望や生産者の収入安定のため」といい現代は化学肥料と農薬を多用することで、需要と供給のバランスが取れていると、思われがちですが植物本来の生存戦略を無視しているがために、植物が何千年もかけて培ってきた豊かな土壌の地力を弱めています。

そして「弱めてしまうから新たな化学肥料を購入して土壌を強くしましょう!」と言われるがまま購入する。

本当に得しているのは誰でしょうか?

消費者が「冬でも夏野菜が食べたい」「形がきれいなものがいい」「色が濃い方が美味しそう」を求める以上慣行栽培も大切な存在ではありますが土中微生物が活性であれば農作物自身が必要とする85~90%は、微生物を介して吸収できる力をもっているため”現代の当たり前”を疑ってみるのも、これから農業始める方には”どの様な農法で生計たてていくにか”を決めるポイントの一つではないでしょうか。

自然の“サイクル”が未来につなぐ土作り

土は初めから土ではなく岩と微生物たちの自然のサイクルにより生み出されているのです!

岩は、長い年月の間に自然の力でくだかれたり、けずられたりして、細かくなっていき風化

していくと岩石の溶出物を養分としコケ類の植物や微生物が住み始め、命を終えます。

プラスして動物や植物の死骸が合わさることで砂が土に変わっていきます。

この自然の力により出来た土の上に木や作物が育ち、それを食べた動物のふんや枯れた葉が土に落とされます。その葉を微生物が分解し、作物が吸収できる栄養をつくります。さらに、微生物を食べに集まった小さな虫やミミズが土を耕し、土壌に酸素や水を蓄える力を強くしていく。こうした多様な生物の相互作用により、自然の”サイクル”が次の世代へと受け継がれ健康な土が維持されます。

健康な土壌づくりとは

  1. 化学性:多量要素、微量要素、有用元素、pH、ECなど
  2. 物理性:透水性、保水性、通気性、団粒構造など
  3. 生物性:微生物、大小のミミズ、甲虫類、多足類、昆虫、幼虫、小動物

全てのバランスがとれてこそ健康な土壌づくりとなります。

まとめ

土・農作物・動物・人間は極酸性でも極アルカリ性でも病気になってしまいます。

必要な栄養素の量は違えど元素はほぼ同じであり自然と共生することの大切さを改めて理解できました。

同じ思いの農家さんが一人でも多くなることを願っています。

そして今回最後まで読んでいただいた農家さんの”どの様な農法”の決めての一つになれば幸いです。

人間は3歳までに育った土地の水・農作物が体に合うと言われています。

私たち「みんなで農家さん」では離乳食の時から食べているバナナですが、外国産が当たり前で生活しているなかで、国産バナナの流通量を0.01%から1.00%に引き上げることに挑戦しています。

完全なる無農薬農法で安心安全な国産バナナを様々なサポートを受けながら農業が出来る企業です。

ご興味ありましたらのぞいてみてください。

参考資料:新しい「農」のかたち
植物の必須元素 | 肥料雑学
eグリーンコミュニケーション「肥料ナビ症状から探す」
植物の必須元素 | 肥料雑学
未来のために、まずは健康な土づくりから

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。