農業を営む上では様々な道具のお世話になります。パッと思い浮かぶのは農薬でしょう。
もちろん便利な道具ですが、過剰に使えば弊害も生まれますし環境負荷にも繋がります。
有機栽培を目指す人にとっては代用品が欲しいところでしょう。
そこで便利なのが「お酢」です。
調味料としてもお馴染みですが、農業においても活躍してくれる便利な道具です。
今回は農業におけるお酢の活用方法を解説していきます。
ぜひご一読いただき、農業にお役立てください。
1.農業の強い助っ人「お酢」
近年は、環境保護の観点からも有機栽培に挑戦しようとする方も増えています。
有機栽培は、化学的に合成された肥料や農薬の使用を控えていく必要があります。
とはいえ、農業をする上では病害予防などの様々な対策をしなければいけません。つまり、農薬代用として使用できる資材が必要となります。
その代用できる資材のひとつとして、作物を元気にする「酢」の効果が注目されているのです。
最近は世界中で異常気象が起きています。
ゲリラ豪雨なども増えていますし、雨続き、曇天続きになれば、作物の生長の上で大きな弊害が起きてしまい、光合成がうまくできなくなります。
そんな時にこそ、酢の出番になります。光合成の代わりしてくれるのです。
根が弱った野菜への散布、葉が黄色くなってしまった野菜への散布に有効です。
人間でも、「毎日小さじ3杯飲めば疲労回復の効果があり、体調が良くなる」と健康に効果があると言われている酢。
作物に対しても良い効果をもたらしてくれるのは嬉しいですね。
世界的に環境への負荷軽減への取り組みが広がってきています。その流れで、有機栽培が各国の政策としても導入され始めています。
科学的な手法は必ずしも悪とはいえませんが過剰に使えば、当然弊害が起きてきます。
特に有機栽培を目指していない人にとっても上手に活用すれば、多くのメリットを得ることができます。
「酢(酢酸)」は、安全性が確認されていますし、夏場の乾燥に強くする効果もわかっています。
2.有機栽培、異常気象にも大活躍!
2-1.注意の信号!葉っぱが黄色になると…?
世界中で異常気象が起きており、予想外の天候不順が続くことも珍しくありません。
特に日本は梅雨シーズンもありますし、長雨になることも多い国です。
長雨や曇天続き、台風などで作物の葉が黄色く変色してしまうことがあります。これは「根傷み」「根腐れ」と呼ばれる症状です。
台風や豪雨で圃場に水が溜まることで毛細根がダメージを受けることが原因で起こります。
弱った根は死に絶えたり、簡単に微生物に分解されてしまいます。
根が痛んだり腐ったりすると、植物は水はなんとか吸い上げることができても、ミネラル分が吸えなくなってしまうのです。
作物の生長のためには、光合成や葉緑素の生成を助けるマグネシウムや鉄、マンガン、ホウ素など、様々なミネラルは必須になります。ですが、根が傷んでしまえば、これらを吸う力を失ってしまうのです。
2-2.病害虫の餌食!窒素過多にご用心
先ほど解説したように、葉っぱが黄色く変色してしまい、根が傷んでも水はなんとか吸うことができます。
…しかし、水に溶けやすい窒素ばかりを吸い上げれば「窒素過多」に陥ってしまうのです。
葉緑素を保つには窒素以外にも、葉緑素の生成や光合成を助けるマグネシウムや塩素といったミネラル分が必要になります。
ですが、天候が回復して蒸散が開始すれば、ダメージを受けた根は水ばかり吸い上げてしまいます。
窒素ばかりになってしまえば、光合成がうまく行われなくなります。
光合成の産物である炭水化物も作ることができなくなるのです。必要なミネラルの吸収が出来なくなった作物は細胞壁も弱くなります。
その結果、軟弱なひょろひょろとした生育になります。
緑も薄くなり、病害虫にも弱い、軟弱な作物になるのです。
2-3.酢で光合成産物を直接与えよう!
天気予報などで、曇天長雨の予報が出たら、事前に酢を散布すると効果的です。
光合成で作られる炭水化物を、酢を散布することにより、直接葉面から補給することができるようになるのです。
農業は自然を相手にする仕事。天候は人間の力では太刀打ちできない面がありますが、対策を打てば作物の生長への弊害を少なくすることができます。
3.意外なお酢の効果
3-1.酢が作物を元気に!
さらに、酢には作物を元気にする効果があります。
2020年9月に刊行された『現代農業9月号』によれば、酢がエチレンやアブシジン酸のように栄養成長を一時的に抑制するとの記載があります。
栄養成長は、根から水や養分の吸収が活発になり、枝や葉が伸びて光合成が始まる時期の成長を指します。この際、植物の細胞分裂が活発になります。
細胞壁を作り出すためにたくさんの炭水化物が消費されますが、お酢を与えることでそれを一時的に抑制することで、炭水化物の消費量は減少します。
植物は元来、栄養に乏しい厳しい環境では根が発達するのです。
栄養成長を抑制し、細胞壁生成に消費されていた炭水化物が根の修復に回ることで回復が見込めるというわけです。
この処置を行う場合には、酸度4.5%の食酢を30〜50倍に薄めたものを葉面散布します。
3-2.濃度を薄くすれば植物活力剤?
酸度4.5%の食酢を100倍以上に薄めたものの葉面散布は栄養成長を促進してくれます。
千葉県野田市ではお酢がもつ植物活力剤としての効果を利用して、市内産の玄米を原料とした玄米黒酢を水稲に散布する米作りを行っているのです。
一般的な食酢よりもアミノ酸やミネラルが豊富とのことらしいです。酢によっても効果の違いがあるのですね。
3-3.雑草対策にも便利!
酢は雑草対策にも大活躍してくれます。
強い酸性やアルカリ性は植物を枯らすのに有効なのです。
お酢を濃い濃度で用いれば、その強い酸性成分が雑草を根から枯らしてくれるのです。
『現代農業9月号』では、濃度を調節することで選択的に除草する実験の概要が掲載されています。
農薬を使用していない、雑草が優勢な圃場で、酢酸を濃度別に複数回噴霧し、イネと雑草がどのように影響を受けるか、という実験が行われたのっです。
酢酸は酸度15%、10%、5%、2.5%で、酸度10%以上だとイネにも被害が出てしまいましたが、2.5%ではコナギやホタルイなどの雑草は枯れてもイネに被害はありませんでした。
もちろん、散布時間帯や希釈倍率によって効果にも変化があったり、草種の葉齢によっても効果が異なるため、噴霧すればいいというわけではありません。
しかし、酢酸に耐性がある農作物であれば、噴霧するだけで選択的に除草できるというのは便利な除草方法おですよね。
ちなみに、原液〜50倍程度のお酢はコケの除草にも有効なのです。
〈酢酸除草を行う時の注意点〉
散布時間帯や希釈倍率によって効果に変化がある…と先述しました。
散布した後に雨が降ってしまうようだったり、朝や夕方など露がある時間帯、曇天時は効果が薄くなります。
また先の実験では、圃場環境が15℃以下であれば、酢酸が低濃度であってもイネに障害が出たとありました。
イネの開花期に散布すると不稔が発生しやすいともありましたので、実際にお酢を活用する場合には、除草目的であっても薄い濃度から開始することにしましょう。
4.使用上の注意
4-1.早く修復するには?
根の弱りがひどい場合、早く回復するためには、30〜50倍(酸度4.5%の酢の場合)の濃いめの散布するのが良いでしょう。
濃いお酢の散布で、2〜3日後にはもう葉がピンと張り始めます。成果が目に見えて現れてくるはずです。
さらに、濃度が濃いと、弱った作物に病原菌がとりつくのを防止することも可能です。
この高濃度倍率では、作物の生長が一時的に抑制されるためです。
栄養生長を一時的にストップすることで、細胞分裂、細胞壁(セルロース)形成に使う炭水化物を、根の修復の方に使うことができるのです。
4-2.薄い散布ならアミノ酸の液肥
100倍以上(酸度4.5%の酢の場合)の薄めの希釈の場合、酢酸がチッ素と結びついてアミノ酸を形成して生長を促進してくれます。
この倍率であれば、栄養成長をストップすることはありません。
反対に、1〜5倍程度(酸度4.5%の酢の場合)の濃すぎる酢は、植物にとっては有害になります。
その濃度であれば、植物を枯らせてしまう除草剤ほどのマイナス効果が出るので注意しましょう。
葉面散布には「えぐみ」を消す効果もあります。作物が元気になる、弱った作物が復活する…という効果のほかにも、酢には、葉に蓄積した硝酸を消化する働きもあります。
これにより、「えぐみ」が減少します。ほうれん草や春菊などの独特のえぐみが苦手だった子供たちが、「美味しい!」と食べるようになったという報告もあります。
4-3.注意しよう!酢の種類
酢にはいろいろな種類があります。
一般的な調味料として使う酢には、アミノ酸、ミネラル、旨味成分など、いろいろな成分が混じっているのです。
これらの酢でも効果はあります。
しかし、修復を早めたいときには、とにかく炭水化物を与える方が大切です。純粋なアルコールに近いものから作った醸造酢のほうが効果的です。
使い分けをしてきましょうね!
農業に活用できる資材として米ぬかもあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【畑をアップデート】畑の助っ人!米ぬかの効果 三選
5.まとめ
今回は、「酢の活用方法」についてでした。
有機栽培をはじめとして幅広く活用されている「酢」の力。農薬は過剰に使えば弊害を起こす可能性はあるので、「酢」などをうまく活用して農業を発展させていきましょうね。
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