マイカ線を使いこなそう!特徴や使用例を知ればビニールハウスはもっと丈夫にできる

施設栽培をされている方にとっては、ビニールハウスの補強は重要な作業です。

特に風の強い地域では丈夫な柱やシートに加え、マイカ線と呼ばれる資材がハウス設置にはとても大事な役割を果たします。

この記事では、これからビニールハウスで本格的な施設農業を始めようと考えている方に向け、マイカ線の役割やメリット、使い方などについて紹介していきたいと思います。

マイカ線ってどういうもの?

マイカ線は、ハウスバンドと呼ばれる資材の一つです。

ハウスバンドとは、ビニールハウスが風でばたつかないように、上から押さえて補強する樹脂製ベルトのことを言います。

ハウスバンドはいくつかのメーカーから発売されていますが、その中でも先駆者である石本マオラン株式会社の登録商標が「マイカ線」と呼ばれています。

そのため他社製のハウスバンドのことをマイカ線と混同して呼ばれることもありますが、商品名としては別物です。

一般的なビニールハウスはアーチ状の柱を繋いでかまぼこ型に組んだ骨組みに、ビニールシートを被せて組み上げます。

その際、屋根部と腰部(壁面部)のビニールシートの間や、ビニールハウスの裾回りと地面の間に隙間ができてしまうので、風が吹き込みやすくなります。

ビニールシートと柱は、紐をハトメに通してくくりつけたり、スプリングをかませるだけだと、ビニールが強風によって飛ばされたり、張りが次第に緩んでしまいます。これを防ぎ、ハウスを囲うようにして押さえるためにマイカ線が使われます。

マイカ線の構造

マイカ線は、幅が9〜15㎜のポリエチレン製の細長い帯です。よく見るとこの両端にはそれぞれ20本の糸を合わせた芯が通っており、柔らかいながらも高い強度で、切れることなくビニールハウスを押さえることができます。

他社製品のハウスバンドの中には、両端だけでなく、数本の芯が通してある製品もあり、その分柔軟性や強度の面でマイカ線とは若干使い勝手が変わってきます。

また石本マオランでもマイカ線ではない「ハウスベルト」を販売しており、こちらには3〜5本の芯が入っています。

マイカ線の種類

市販のマイカ線には使われる条件や用途に応じていくつかの種類があります。

類似のハウスバンド製品も数多く出ていますが、ここでは石本マオランから販売されている「マイカ線」のみを取り上げます。

スタンダードなタイプ

標準的なマイカ線は、10㎜幅を基本としてそれぞれ500m/10巻(黒・白)、300m/16巻(黒・白)、200m/24巻(黒・白)のラインナップで販売されています。この他

  • マイカ線ハイパー:幅11㎜/400m/10巻/黒
  • ニューマイカ線:コンパクト規格で幅9㎜、500mで10巻と200mの24巻の2種類。色は黒と白

という商品があります。

マイカ線フレックスシリーズ

マイカ線にはもう一つ、農PO(「農業用ポリオレフィン系特殊フィルム」)という素材のビニールハウスに適したフレックスシリーズがあります。フレックスシリーズは、スタンダードなマイカ線に比べて滑りが良く、農POフィルムを傷つけないのが特徴です。

ただし普通のマイカ線でも農POフィルムに使うことはできます。

フレックスシリーズのラインナップは

  • マイカ線フレックスS:幅10㎜、500m×8巻、色は黒のみ
  • マイカ線フレックス10N:幅10㎜、500m×8巻、透明
  • マイカ線フレックスHG:幅14㎜、300m×8巻、黒
  • マイカ線フレックス18N:幅18㎜、300m×8巻、透明
  • マイカフレックス45N:幅45㎜、150m×5巻、透明
  • マイカフレックス50N:幅50㎜、100m×5巻、透明

という、バリエーションに富んだ品揃えになっています。

またフレックスシリーズでは、幅の広い製品は透明になっています。これは、太いベルトによってハウスに影を作らないようにするためです。

マイカ線の選び方

このようにマイカ線にはいろいろな種類があり、使う時はまとまった量で購入することが多いため、どれを買うか困る方もいると思います。ここではマイカ線を選ぶ際のポイントをあげていきましょう。

選び方①ハウスの大きさによって選ぶ

マイカ線は同じ商品でも幅が異なります。基本的にはビニールハウスの大きさに合わせた幅のマイカ線を選びます。

スタンダードなマイカ線の場合、小型ハウスには9㎜幅の「ニューマイカ線」を使い、通常よりも大きな超大型ハウスには幅11㎜の「マイカ線ハイパー」が推奨されています。

選び方②ハウスの素材によって選ぶ

もう一つの選び方は、ビニールハウスのフィルム素材です。

農業用のビニールハウスは、主として農ビ(農業用塩化ビニルフィルム)と農PO(農業用ポリオレフィン系特殊フィルム)の2種類があります。ハウスに使われている素材がどちらかで、使われるマイカ線の種類も変わってきます。

両者の特徴としては

  • 農ビ:穴があくとそこから裂けやすい

表面がべたつく/パイプに密着しやすく気密性・保温性に優れる/伸縮性があるので張りやすい

  • 農PO:表面がべたつかずホコリを寄せ付けない/流適性があり水滴がボタ落ちしない/丈夫で破れにくい/こすれ・摩擦に弱い

といった特徴があり、水稲育苗時のみといった時期を決めて使う場合は農ビ、ずっと張りっぱなしにする場合は農POという使われ方をすることが多いです。

農ビの場合には、スタンダードなマイカ線を使いますが、農POは摩擦に弱いのでマイカ線で傷をつけたり、こすれて裂けることがあります。

このため、農POフィルムのハウスにはより柔らかく滑りが良い、マイカ線フレックスシリーズが推奨されます。マイカ線フレックスには最大で50㎜という幅の広い商品が揃っているので、滑りやすさに負けず確実にフィルムを押さえることができます。

マイカ線のメリット

マイカ線は、次のようなメリットと使い勝手のよさを有しています。

  • 耐水性が高くすぐに千切れてしまうケースは少ない
  • 絶縁性に優れている
  • 耐候性:直射日光に晒される環境でも劣化しにくい
  • 柔軟性に長けているため結びやすく解きやすい

など、農業資材として望ましい条件を満たしているため、ビニールハウスのフィルム交換などでもスムーズに作業を進めることができます。

マイカ線の使い方

マイカ線は構造がシンプルなうえに上記のような特徴をもっているので、ビニールハウスの補強以外にも幅広い用途に使うことができます。主な例としては

  • パイプなど他の農業資材や荷物の結束
  • 作物を支える支柱の固定
  • 作物の誘引

などに使うこともできます。

ビニールハウスへのマイカ線の張り方

一般的なビニールハウスの場合は

  • ビニールを張ってから地面に固定してある杭、またはすその直管にマイカ線を結ぶ
  • マイカ線をハウスの屋根越しに反対側へ回す
  • 緩まないようにしっかり引きながら同じように結びつける

という手順で結んでいき、同じ要領で入口から端まで等間隔にマイカ線を張ってビニールハウス全体を補強します。

またハウスの構造によっては、全体を囲うのではなく、ハウスのすそから腰回りまでを補強する方法もあります。その場合にはハウスの肩の部分に取り付けたフックやハトメ穴に通し、すその直管と山型を形作るように通していきます。

ビニールハウスのフィルムは、夏に伸び、寒い冬には縮んでしまうため、春や秋に作業を行い、張り直しはこまめにするようにしましょう。

結び方のポイント

マイカ線の結び方は各農家ごとに思い思いの方法があり、どれが正しい結び方というのは一概に言えません。しかし、多くの農家で共通している上手な結び方のポイントとして重要なのは

  • 引っ張っても緩まないように、横と斜め方向からマイカ線でマイカ線を押さえる
  • 簡単にほどけるように一つだけ輪っかを作るように結ぶ

という2点になりますので、しっかりと覚えておきましょう。

マイカ線の結び方は新規就農の研修でも教えてもらえるほか、YouTubeでもいろいろな結び方が説明されています。いくつか試してみて、自分がやりやすい方法を見つけるとよいでしょう。

マイカ線の使用事例

【事例①花徳マンゴー】マイカ線と巻取り器具を併用した台風対策

鹿児島県徳之島にあるマンゴー農家の例では、マイカ線による風対策だけでなく、簡易な巻取り器具で緩んだマイカ線の締め直しを行い、台風への備えを行なっています。

マイカ線やハウスバンドは、ハウス設営の際にしっかりと締めても、月日とともに伸びて緩んできます。何本もマイカ線の締め直しが必要になる大きなビニールハウスでは、一度結んだ所をほどいて、再度締め直す作業は労力を要します。

この農家では、「クルクルバンド」という器具をマイカ線と併用することで、簡単な巻き取り作業で楽に早く締め直しができています。

【事例②香川県農業試験場】マイカ線を使った止水シートと盛り土による補強

香川県農業試験場で行われた効率的なミカン用ハウスの補強技術として、土を盛ったおもり補強が紹介されています。

出典:パイプハウスの強度診断・ 補強マニュアル|農林水産省

図のように直管パイプの外側に止水シートを垂らし、シートの上に十分な量の土を盛ってからマイカ線で巻き上げるようにパイプに結びつけます。

土を盛るスペースが限られたり、土を入れるシートを埋めるのが難しい地盤などではこうした方法で、強風による引き抜きを防止することができます。

【事例③菱沼農園】縦にも横にもマイカ線を張り巡らしてより丈夫に

こちらのさくらんぼ農園では、より強固な風対策として、マイカ線を上下に張るだけでなく、横方向にも張り渡しています。

ここでは屋根のフィルムを張る時に最も風の影響を受けやすい、アーチパイプの下部にマイカ線を横に張ります。次に通常通りマイカ線を縦に渡し、横に張ったマイカ線に縦マイカ線を十字に巻きつけて補強します。

まとめ

マイカ線は、最も手軽で安価なビニールハウスの風対策です。使用にあたっては用途に合った適切な製品を選び、基本的な使い方を覚えれば、初めての方でもビニールハウスを風に強い丈夫なものにすることができます。

補強以外にも、工夫次第ではいろいろな用途に使えるマイカ線。上手に使いこなして、より安全で効率的な施設農業を目指しましょう。

参考資料

ハウス用資材 | 農業資材 | 製品案内 – 石本マオラン株式会社

ハウスバンド(ハウスベルト)マイカ線 | NISHIKAWAZEN 西川善株式会社

どんな農業用フィルムをお探しですか? | NISHIKAWAZEN 西川善株式会社

[徳之島]に住むマンゴー農家がビニールハウスの効果的な【台風対策】を紹介するよ! | 花徳マンゴー (kedokumango.com)

ハウスバンド【厳選3選】マイカ線 結び方の知識不要!使い方も解説 | 超野菜ya人 (kagayakiboyblog.com)

ビニールハウス マイカ線の結び方① | 菱沼農園の『おいしいをよりおいしく』 

ビニールハウス マイカ線の結び方②本締め | 菱沼農園の『おいしいをよりおいしく』 

パイプハウスの強度診断・ 補強マニュアル|農林水産省

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。