CSFウイルス、豚熱についてご存じでしょうか。
実はこのCSFウイルス、とても恐ろしい家畜伝染病になります。
昨今では家畜として豚を育てるのではなく、ペットとして家族に迎え入れる人も増えてきています。
家族として迎え入れる豚はマイクロブタやミニブタが主だと思いますが、家畜の豚とは違うから感染しないと考えている人も多いかもしれせんが、それは違います。
豚の種類こそ違いますが、マイクロブタやミニブタも例外なく感染してしまいます。
そこで今回はそのCSFウイルスについて詳しくご紹介致しますので、ペットとして迎え入れている人たちも、ぜひ最後までお付き合いください。
CSFウイルス(豚熱)とは?
CSF(Classical swine fever)は、CSFウイルスの感染による豚とイノシシの病気です。
旧名『豚コレラ』と言います。
強い伝染力と高い致死率が特徴で、家畜伝染病予防法において家畜伝染病に指定されています。
このため、発生した農場では、飼養豚等を対象に防疫措置を行うこととしています。
豚熱(CSF)は、豚やイノシシの病気であって、人に感染することはなく、感染した豚の肉が市場に出回ることもありません。
仮に豚熱(CSF)に感染した豚の肉や内臓を食べても、人体に影響はありません。
また、豚熱(CSF)ワクチンを接種した豚の肉を食べても、人の健康に影響はありません。
と畜場法に基づき、全頭、都道府県等のと畜検査員(獣医師)が異常や疾病がないか検査し、合格したものだけが市場に流通することになっています。
ですので、人の健康に影響がなくとも、畜場で豚熱(CSF)であると確認された肉や内臓等については、検査不合格となり、市場に流通することはありません。
〜豚肉(CSF)の症状〜
発熱、元気消失、食欲不振、便秘に続く下痢などの症状から始まり、中には眼結膜の出血、皮膚の紫斑、震え、起立困難など多様な症状を示し、感染した豚の多くは3週間以内に死亡します。
農場では、複数頭に元気がなく、豚房の片隅に集まる、同居豚が複数死亡するなどの異変によって気づくことが多いようです。
唾液、涙、糞尿中にウイルスを排泄し、感染豚や汚染物品等との接触等により感染が拡大しますので注意が必要です。
!ワンポイント豆知識!〜『と畜場法』とは〜
と畜場法は、と畜場の経営及び食用に供するために行う獣畜の処理の適正の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講じ、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする日本の法律になります。
豚熱(CSF)とアフリカ豚熱(ASF)の違い
症状は似ていますが、原因となるウイルスが異なる違う病気です。
豚熱(CSF)の原因ウイルスは、フラビウイルス科ぺスチウイルス属に分類されますが、アフリカ豚熱(ASF(African swine fever))の原因ウイルスは、アスファウイルス科アスフィウイルス属に分類されています。
なお、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスも、人には感染しません。
〜アフリカ豚熱(ASF)とは〜
アフリカ豚熱(ASF)は、ASFウイルスが豚やいのししに感染することによる発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病です。
ダニによる媒介、感染畜等との直接的な接触により感染が拡大します。
有効なワクチンや治療法はなく、 発生した場合の畜産業界への影響が甚大であることから、我が国の家畜伝染病予防法において「家畜伝染病」に指定され、患畜・疑似患畜の速やかな届出とと殺が義務付けられています。
日本は本病の清浄国であり、これまで本病の発生は確認されておりませんが、アフリカでは常在的に、ロシア及びアジアでも発生が確認されているため、今後とも、海外からの侵入に対する警戒を怠ることなく、本病の発生予防に努めることが重要です。
なお、アフリカ豚熱は豚、いのししの病気であり、人に感染することはありません。
CSFワクチン
令和元年10月15日に豚熱(CSF)に関する特定家畜伝染病防疫指針が改正され、豚へのワクチン接種が認められました。
これにより、豚熱(CSF)の発生を防ぐため、国内の複数県で豚へのワクチン接種が進められています。
CSFワクチンは、豚に豚熱(CSF)を引き起こさせないよう病原性を弱くした豚熱(CSF)ウイルスと添加剤が含まれています。
含まれている添加剤は、食品又は食品から通常摂取されている成分(塩化ナトリウム、精製水、乳糖)及び食品衛生法に基づく食品添加物として使用されている成分(ポリビニルピロリドン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム)ですので、ワクチンに含まれている添加物の量であれば、ワクチンを接種した豚を食べても、人の健康に影響はありません。
CSFワクチンを接種した健康な豚は、体内で豚熱(CSF)に対する免疫を獲得します。
人の予防接種のように免疫を獲得すると、ワクチンに含まれている豚熱(CSF)ウイルスは体内から消失します。
このため、ワクチンに含まれている豚熱(CSF)ウイルスが豚肉に残留することはないと考えられます。
家畜伝染病予防法
家畜伝染病予防法は、家畜の伝染性疾病の発生の予防とまん延の防止により畜産の振興を図ることを目的とする法律です。
法律ですので、調べてみるとかなりの分量で書かれているため、簡単に内容をご紹介します。
・家畜の伝染性疾病の発生を予防するための届出、検査等
・家畜の伝染性疾病のまん延を防止するための発生時の届出、殺処分、移動制限等
・家畜の伝染性疾病の国内外への伝播を防止するための輸出入検疫
・国・都道府県の連携、費用負担等
・家畜の所有者が遵守すべき衛生管理方法に関する基準(飼養衛生管理基準)の制定
・生産者の自主的措置
等について定められています。
愛玩用豚(ミニブタ、マイクロブタ等)へのワクチン接種
豚熱(CSF)は家畜の豚、愛玩用豚関係なく感染します。
ですのでCSFワクチンの接種は、家畜伝染病予防法第6条第1項の規定に基づく都知事命令により接種が義務付けられています。
もし、命令に違反した場合、同法第66条第2号に基づき罰せられますのでご注意ください。
CSFワクチンを接種するタイミング
CSFワクチンは、初回接種から約半年後に2回目の接種をし、その後はおおよそ1年ごとに接種します。
接種時期が近付いたら、家畜保健衛生所へご連絡下さい。
また飼養者は接種について記録することが義務付けられています。生年月日、生産農場(購入店)、導入日(購入日)、ワクチン接種日を記録し、保存して下さい。
動物病院でCSFワクチンの接種を
農林水産省の豚熱防疫指針改正により、動物病院の獣医師を知事認定獣医師に認定することで、動物病院での豚熱ワクチン接種が可能となりました。
この制度を活用し、都内動物病院に勤務する獣医師を認定しています。
原則、愛玩用豚飼養者の方は、動物病院でのワクチン接種をしてください。
他のワクチン(豚丹毒、日本脳炎等)との間隔
CSFワクチンは「生ワクチン」という種類のワクチンです。
生ワクチンは病原体となるウイルスの毒性を弱めて病原性を無くしたものを原材料としたワクチンで、接種された体内では免疫機能により抗体が作られます。
複数の生ワクチンを同時に接種したり、接種間隔が短いと十分に抗体が作られず、ワクチンの効果が弱まる可能性があります。
そのため、他の生ワクチンを接種する予定がある場合は、接種間隔を約4週間空けるようにしてください。
〜補足〜
豚丹毒……
豚丹毒菌の感染によって起こる豚の病気で、皮膚に特徴的な四角形の蕁麻疹が出たり、四肢の関節で炎症が起こり、関節周囲が腫れたりします。
また、心臓の弁に豚丹毒菌が定着し、カリフラワー状の塊が形成されることもあります。
この病気になった豚は臨床症状を示さないことが多いので、と畜検査で初めて発見されることが多くあります。
日本脳炎……
繁殖雌豚では異常産、繁殖雄豚では精巣腫大などを起こすウイルス病ですが、母豚は感染しても妊娠中は無症状なので多くの場合、異常産の発生により初めて本症の発生に気付くようです。
異常産は胎子ごとに感染時期が異なるため、ミイラ・黒子・白子などの死産胎子を娩出するほか、娩出直後から震え、痙攣、旋回などの神経症状を示して死亡する子豚が混在します。
妊娠早期に感染すると、初期胚や感染胎子は吸収されるため、産子数の減少や不妊の原因となります。
雄豚は精巣が腫大し、交尾欲減退、精子数の減少などにより不妊症となります。
外での散歩
CSFワクチンは、豚熱に感染する危険を低くする効果はありますが、絶対に感染しないわけではありません。
日本国内でも実際に、豚熱に感染した野生イノシシが確認されています。
特に、林に近い田んぼ、河川、キャンプ場などは豚熱ウイルスに接触する危険が大きい場所です。
そのため、散歩など屋外に出すことは控え、屋内で安全に飼うようにしてください。
与える食事の気をつけ方
食品から豚熱(CSF)に感染することもありえます。
専用のフード以外(特に肉を含む可能性のあるもの)を与えるときは、十分な加熱をしてください。
まとめ
豚熱(CSF)の怖さをわかっていただけましたでしょうか。
養豚に関わる業者だけでなく、ペットとして飼われている方にも関わっていることです。
これから愛玩用豚を家族に迎え入れる方は、必ずこういったことを勉強した上で、迎え入れてください。
今はまだ治療法がないため殺処分という方法しか取れませんが、いつか治療法が確立されて、殺処分ではなく治療という形が取れるときがくることを願うばかりです。
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