東京オリンピックを契機に注目度アップ!

より良い農業への取り組みの新基準「JGAP認証」とは?

東京オリンピックで使われる食材の基準のひとつとして

導入された「GAP認証」をご存じでしょうか?

農業の持続性を向上させるための取り組みであり、

日本独自の「JGAP認証」も注目を集めています。

今回はJGAP認証がどんな制度なのか、

そのメリットや事例も解説していきます。

目次

GAPとは?

GAP認証とその種類

JGAP認証とは?

JGAP認証に取り組むメリット

JGAP認証の事例

まとめ

GAPとは?

GAP とは、GOOD(適正な)、AGRICULTURAL(農業の)、

PRACTICES(取り組み)のことを言い、

農林水産省では下記のように定義しています。

「農業生産の各工程の実施、記録、点検

及び評価を行うことによる持続的な改善活動であり、

食品の安全性向上、環境の保全、労働安全の確保等に資するとともに、

農業経営の改善や効率化につながる取り組みです」

GAPは単に農薬の使用回数を減らしたり、

化学肥料を使わないという内容のものではありません。

農業による環境負荷や働く人の安全管理や労務体制など、

農業に関わる生産工程管理全般における取り組みを指しています。

GAPは第三者機関の認証を受ける必要があり

審査は比較的厳しいとされていますが、

認証取得にはさまざまなメリットがあるため、

農林水産省やJA、民間機関が連携しながら

国内での普及活動に力を入れています。

農水省が策定したGAPのガイドラインには、

「食品安全、環境保全、労働安全、全般」という

大きく4つの項目から工程管理が説明されています。

作物によって内容は異なるものの、

それぞれの項目について以下に簡単にまとめます。

食品安全

これは至極当然な項目ですが、

具体的には下記のような内容が含まれています。(一部抜粋)

<農薬の使用>

無登録農薬及び無登録農薬の疑いのある資材の使用禁止

<機械・施設・容器等の衛生管理>

トラクター等の農機具や収穫・調製・運搬に使用する

器具類等の衛生的な保管、取扱、洗浄

農薬の使用に関するガイドラインだけに留まらず、

使用する容器や農薬散布後の処理に至るまでの管理や、

収穫した農作物のパッキングを行う際の清掃計画など、

生産から流通に至るまでの

全ての過程における基準が策定されています。

環境保全

この項目は農業が環境に与える影響についての内容です。

農薬や肥料を使用することによる土壌汚染、

堆肥を使用する際に発生する可能性のある草本の流出など、

生態系に与える影響についても詳細に記されています。

そのため、直接的な農業生産技術だけでなく、

生態系についての基礎的な知識も必要とします。

労働安全

これは主に生産者の労働環境についての項目です。

労働時間や休憩時間、勤務日数などはもちろん、

努力項目として更衣室や貴重品の保管場所の設置にまで触れています。

また、農業従事者の怪我を防止するための設備点検や着衣、

保険への加入についても記載があります。

今や農家も一般的な企業のように

適切な労働基準を守ることが求められており、

もともと家族経営が主で従業員も収穫時期に限った

パート雇用などが多かった日本においては

非常に新しい考え方と言えます。

全般

これは全体の取りまとめ的な項目でもあり、

各項目の記録をしっかり残しておく意味合いのものです。

例えば、野菜の流通に関する記録

(品目、出荷量、出荷先、流通業者名など)を

最長で3年ほど残すこととされています。

これらは記録を残すことで農作業のPDCAを回して

生産効率を上げるという目的もありますが、

第三者から必要に応じて情報開示を求められた際に、

情報の透明性を担保するという意味合いが大きいです。

引用:農林水産省 国際水準GAPガイドライン

GAP認証とは?

GAPは直訳すると「適正な農業の取り組み」という意味になります。

農業経営の改善及び発展、

また農作物の生産競争の強化が期待できることから、

農林水産省は生産者にGAPの導入を推奨しています。

生産者がGAPを正しく実践していることを

第三者機関に審査してもらう制度が「GAP認証」です。

GAP認証の取得により、生産者が適正な農業経営を行い、

持続可能な農業に取り組んでいることを可視化する狙いがあります。

〜GAP認証の種類〜

世界には運営母体や基準が異なるGAP認証制度がいくつかあり、

主に日本で知られているGAP認証は以下の3つです。

GLOBALGAP:運営元「FoodPlusGmbH(ドイツ)」

ASIAGAP:運営元:「一般財団法人日本GAP協会(日本)」

JGAP:運営元:「一般財団法人日本GAP協会(日本)

GAP認証は、どこの運営機関で受けた認証かによって内容が異なります。

日本国内においてはJGAPが主流のため

「GAP認証=JGAP認証」を指すことが多いですが、

正確にはGAPは各GAP制度の総称であり、

実際は「〇〇GAP」というように複数のGAPが存在します。

JGAPやGLOBALGAPでは重視されている部分が微妙に異なり、

JGAPは比較的、農作物の質に重きが置かれています。

JGAP認証とは?

次に、日本で推奨されているJGAPについて解説していきましょう。

JGAPは一般財団法人日本GAP協会が運営母体で、

前述したGLOBALGAPが国際的なGAP認証とするなら、

JGAPは日本独自のGAP認証と言えます。

JGAPとは「Japan Good Agricultural Practice」の略で、

世界的な取り組みであるGAPの基準をもとに、

日本の生産状況や社会環境に合わせた

より実践的な農業生産工程管理への取り組みを指しています。

そして、JGAP認証とは、

日本で農業を営む農家や団体がJGAPの規定に沿って運営し、

一定の要件を満たすことで認証が受けられる制度として

2005年に設立されました。

JGAPは日本で最も広く普及しており、

認証農場数は2017年3月末時点で3,530だったのに対し、

2021年3月末時点では5,020と大きな伸びを見せています。

JGAPは他のGAPと基本的に同じ要素を持っていますが、

「農作物の品質」だけでなく

「労働者の人権」をより重視している点が特徴です。

これからの農業には、安全な農作物の提供はさることながら、

同時に環境保護や健全経営が求められています。

JGAPを導入することで農家が社会的な信用を高め、

より良い経営を行うことが期待できます。

〜GLOBALGAPやASIAGAPとの違い〜

GLOBALGAPは国際的に最も知名度の高いGAP認証で、

ドイツにある「Food PLUS GmbH」が運営母体です。

高い信頼性があるため農作物を海外輸出する場合は取得した方が有利ですが、

認証の基準はかなり厳しく、海外から審査員を招くため費用もかかります。

それでも、日本では2019年度で702の経営体が認証を得ています。

ASIAGAPは、JGAP同様に「一般財団法人日本GAP協会」が運営母体で、

もともと同協会で「JGAP Advance(ジェイギャップアドバンス)」と

「JGAP Basic(ジェイギャップベーシック)」とされていたものが、

2017年にそれぞれ「ASIAGAP」「JGAP」に改称されています。

JGAPと同じ理念や要素を含み、

さらにGFSI(Global Food Safety Initiative)(※1)の承認により

国際的に必要とされる基準を満たし、

今後はアジア地域におけるGAP認証の

プラットフォームとなることを目指しています。

ASIAGAP認証を取得することで

アジアをはじめとした国際的な信頼度は上がりますが、

認証を受けるにはJGAPよりも厳しい国際基準を満たす必要があり、

費用も高額になります。

(※1)食品安全管理の承認を行う民間団体。

GFSIが策定した基準を満たしているのは、

現在までのところGLOBALGAPとASIAGAPのみ。

引用:農林水産省「農産物の輸出に求められるGAPの概要」

JGAPに取り組むメリット

JGAP認証を取得することで市場での競争力を上げたり、

栽培する農作物に付加価値を付けるなど、

さまざまな形で経営戦略に活用が可能です。

具体的なメリットとしては以下が挙げられます。

1.販売先からの信頼確保

JGAP認証取得で得られる最大のメリットは「信頼獲得」です。

実際にJGAP認証農場を対象にした販売面の改善についてのアンケートでは、

「販売先への信頼が改善した」と感じた農場が56%を占めています。

2.経費削減と収益増加

農家がJGAPの理念や実践の規範を農業経営に導入し、

基準に沿って従来までの農業経営を改善していくことで、

持続可能な農業の実現や経営効率の向上に繋がります。

その結果として、経費削減や収益増加を期待できます。

3.従業員の意識改革

JGAP認証を取得した農場では、

約70%が従業員の自主性や責任感の向上が実感できたと回答しています。

これは認証取得のために組織全体で検討を重ねることで、

自分も農場運営に関わっているという意識が強まり

一人一人が積極的に仕事に取り組むようになったからです。

また、JGAP認証農場であることで、

人材募集の際にも働きやすい環境というアピールにもなります。

JGAP認証の事例

それでは、実際にJGAP認証を取得した農場をご紹介します。

家族で安心して食べられる農産物を

有限会社田園(三重県)

「豊かな自然に感謝し、

未来の子供たちに安全な食べ物を作れる農地を守るために努力する」

という企業理念を掲げ、

厳しい栽培基準をクリアした農作物の生産販売をしています。

子供のアトピーがきっかけで無農薬野菜作りをスタートし、

2012年にJGAP認証を取得。

農薬は通常の50%以下に減らすことはもちろん、

肥料は100%有機のものを使用するなど

環境保全のためさまざまな工夫を重ね、

特別な栽培を行っています。

また、子供たちに農業の大切さや食の重要性を知ってもらう取り組みとして、

田植えや稲刈り体験、農業社会見学、食育体験なども開催しています。

公式サイト

http://komikado.com/

生き物にやさしい安心安全なお米作りを

エコファームHOSOYA(鳥取県)

化学肥料を極力使わず

「天のめぐみ、海のめぐみ、山のめぐみ」を活かした

お米作りにこだわり、

全国のコンテストで上位入賞の経験もある稲作農家。

農場としてルールを統一しておくことが、

次世代の経営にとって必ず「資産」になると考え、

JGAP認証の取得に取り組みました。

改めて組織を見直した際に、

人材育成、作業記録の管理や効率化、組織内での意識統一など、

たくさんの課題と向き合うことに。

経営改善・次世代に受け継ぐ仕組み作りのために

時間もお金も投資する覚悟で認証取得にのぞみ、

より安全で品質の良いお米づくりの実現を目指しています。

JGAP認証は毎年のように審査が行われるため、

審査員からの指摘やアドバイスを元に

毎年改善を重ねて体制を整えたいと意欲的です。

公式サイト

https://ecofarmhosoya.com/

地域と働く仲間を豊かにする

上村農園(静岡県)

静岡県西部で2009年に独立就農した代表の上村氏。

上村農園を屋号としてひとりで農業を始め、

現在では多くの仲間と共に東海地方の静岡県磐田市で農業を営み、

法人化するに至りました。

野菜を育てながら自らも成長し、

そして自らの成長が仲間や地域を豊かにし、

農業の未来を照らし続けるとの思いを掲げています。

よい循環を生み、皆で豊かになる正のスパイラルを作りたいと願い、

2021年にJGAP認証を取得。

新鮮な野菜を消費者に食べてもらう、

関わる人々が豊かになって幸せを感じる、

シンプルに「皆で良くなる」をミッションとして

真摯に農業に取り組んでいます。

公式サイト

https://passios.jp/

まとめ

いかがでしたでしょうか?

持続可能なより良い農業への取り組みを目指して

JGAP認証を取得することはとても意義があり、

今後ますます認証農場は増えると思われます。

JGAP認証を取得するには時間もコストもかかりますが、

経営の効率化や労働環境の整備など

実践することで得られるメリットは確かなものです。

表面的な理解で終わらせるのではなく、

日々の現場の仕事に落とし込んで、

日本の農業発展に繋げて行ってもらいたいと思います。

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