知っていますか?農家・農業の事業継承と税金のこと

収入があるのであれば、農家・農業をしていても避けられないのが後継者への事業継承と税金です。 農業の事業継承、いわゆる跡継ぎの有無で発生する税金。
この税金については、農家や農業を営んでいるのであれば絶対に、無関心・無知ではいけません。

事業継承への備えはいずれやらなれけばいけないことですが、自身が働ける状態、現役では先送りしてしまうこ方が大多数なのではないでしょうか。
しかし、御自身の急病・事故などで働けなる可能性は低くはありません。
その場合になってしまうと、御家族や後継者に多大な負荷をかけたり、農作物を仕入れてくださる業者、その業者から先の販売店にも影響が少なからず出てくるため、将来の経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。

そのためにも、現役中に事業継承についてある程度決めておく必要があることを本記事でまとめました。

事業継承に向けた準備

準備の前に、まず大きく以下のことを認識しておきましょう。

  1. 円滑な事業継承をするために早めの準備をする
  2. 事業継承税制などの支援を活用する

円滑な事業継承をするために早めの準備をする

事業継承をスムーズに行うためには、おおよそ10年くらいのスパンを見て計画的に組み立てていきます。

ポイントとなりそうな部分を分類してみました。

【事業継承のポイント】

  • 経営状態の現状確認
  • 経営の方向性、継承方向の認識合わせ
  • 事業継承をする後継者の選定
  • 事業継承対象となる後継者の育成
  • 組織作り
  • 関係者への周知
  • 株の分配について

■経営状態の現状確認

まずは現状確認からです。大まかに以下のように分類・整理してみましょう。

▫️有形経営資産

  • 農地
  • 施設
  • 農業機械
  • 資金等

▫️無形経営資産

  • 経営理念
  • 権限
  • 人脈
  • 生産技術
  • 培ったノウハウ等

■経営の方向性、継承方向の認識合わせ

数年先に至るまでの継承計画と合わせて、中程度の期間での経営計画を考えます。
これは例えば、事業の方向性、売上高、経常利益の目標などです。

■事業継承をする後継者の選定

自分1人だけの独断や、同じような思考の人同士での選定は避け、様々な方向から後継者を見極めましょう。

■事業継承対象となる後継者の育成

規模の大きい農場や法人経営などでは、下記について段階的・計画的に取り組みます。

・何を教育するのか。
・いつまで(時期)にどのような権限とどのような責任を与えるか。

■組織作り

例えば10年後を目標として設定し、後継者の役職・現経営者の役職を計画事務ます。
代表権や経営権の移行時期をあらかじめ確定させておくことが大事です。

■関係各所への周知

以下のように関係各所を書き出して、いつ・どのタイミングで周知するかを整理しておきます。

・親族
・従業員
・取引先
・金融機関
・同業者など経営関連に関わる人物

■株の分配について

後継者と現在の経営者等が持つ株式所有割合を確認し、継承後までのイメージを掴んでおきます。
これは例えばですが、後継者 現行:25% → 5年後:50% → 10年後:65%などです。

事業継承税制などの支援を活用する

行政機関の税金に関する支援があります。

農業経営に対する支援 法人

以下の場合において、継承する株式の贈与税・相続税の納税猶予・免除を受けることが出来ます。

・自社の株式を後継者に引き継ぐ場合

こちらは平成30年度からの特例措置で、平成30年1月1日~令和9年12月31日までの期限が設定された措置となっています。

以下が条件となります。

    1. 後継者が贈与・相続により取得する贈与税・相続税の100%が猶予・免除となります。
      非上場株式等に係るもので、従来は約53%でした。
    2. 後継者が1人→最大3人までが相続税・贈与税の納税猶予・免除の対象となりますが、複数人で承継する場合は、
      各後継者が代表権及び議決権の10%以上を有し、同族関係者(上位3位)である必要があります。
    3. 雇用要件

・3 種類の変形労働時間制

    1. 1ヶ月単位
    2. 1年単位
    3. 非定型的1週間単位

フレックスタイム制

■主な要件・条件

これらにも要件・条件があります。

まずは、非上場の中小企業であること。
こちらは、農業法人の場合資本金3億円以下または従業員300人以下であることが要件で、農事組合法人は対象外となります。

そして資産管理会社では無いこと。
こちらは、資産に占める賃貸用不動産や有価証券等の割合が70%以上の会社、もしくは、これらからの運用収入が全収入に占める割合が75%以上の会社ではないことを指します。

最後に、事前に「特例承認計画」という、会社の後継者や承継時までの経営見通し、承継後の5年間の事業計画などについて記載をした「方針を立てて物事の処置を定めること」を決めて都道府県庁(知事)に提出し、知事の確認をうけること。

■特例承認計画について

事業承継税制という制度があるのですが、この制度は手続きが多く複雑で使い勝手が悪く、
さらに事業承継5年間の適用要件が厳しいということがあります。

そして、適用要件を満たさなくなってしまった場合には、納税猶予が取り消されてしまうというデメリットがありました。

2018年度に税制改正され、一般措置+10年間の時限措置として、従来の厳しい要件が緩和された「特例措置」が創設されました。

この措置を申請するものが「特例承認計画」です。

■必要となる手続き

一つ目は、特例承継計画の確認等があります。

順序としては

  1. 『特例承継計画(会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載したもの)』を作ります。
  2. 税理士、商工会、商工会議所等の支援機関(認定経営革新等支援機関)の意見を書き、3月末までに都道府県庁に提出・確認を受けます。
  3. 先代の経営者から後継者へ株式の相続などを行います。
  4. 相続を受けた後、都道府県庁に申請し、会社・後継者の要件を満たすことについて認定を受けます。
  5. 認定書の写し・その他申請書類等を税務署に提出します。
  6. 相続税、贈与税の納税猶予に見合った額を担保として提供することになります。
  7. これで、相続税・贈与税の納税が猶予されます。

二つ目は納税猶予中の報告をします。
猶予後5年間は、毎年下記機関に書類を提出する必要があります。

  1. 都道府県庁:「年次報告書」
  2. 税務署:「継続届出書」
    ※5年経過後は、3年毎に1度、税務署に「継続届出書」を提出します。

最後に三つ目。猶予税額の免除・減免事由があります。
以下に該当した場合は猶予されていた税額が免除・減免されます。

・ 後継者の方が、更なる後継者に事業承継をした場合や、死亡、経営環境の悪化によって事業を譲渡・廃止した場合です。

農業経営に対する支援 個人

■農地等にかかる税制特例について

贈与なのか相続なのかによって変わります。

要件を以下にまとめました。

1⃣贈与の場合

先代の経営者が、農業の用に供している農地の全てを後継者に一括して贈与した場合に、
後継者に課税される贈与税の納税が猶予されます。

■先代の経営者の要件

・農地等を贈与した日まで、3年以上農業を営んでいる個人であること。

■後継者の要件

贈与者の推定相続人であることが第一要件です。

推定相続人とは、現状のまま相続が開始された時、すぐに相続人となる人のことです。

第二要件は次の要件の全てに該当することを、農業委員会もしくは市町村長に証明してもらう必要があります。
・農地を相続した日の年齢が18歳以上で、3年以上農業に従事している。そしてすぐに農業経営を行うこと。
・農業委員会もしくは市町村長への証明時に、責任者になっていること。

■贈与の要件

農地に関することです。
・農業用の土地全てを一括して後継者に贈与すること。
・放牧地の3分の2以上であること。

2⃣相続の場合

農地等がそのまま農業に使われる場合に、一部の相続税が猶予されます(猶予されるには要件があります)。

■先代の経営者の要件

・死亡時まで農業を営んでいて、生前に一括贈与した。
・死亡時までに特定貸付などを行っていた。

■後継者の要件

・相続税の申告期限までに特定貸付などを行い、先代経営者からの一括贈与を受けて、農業の経営を開始・経営し続ける。

■対象の農地など

・相続する人が、特定貸付などを行っていた土地で、遺産分割・贈与税の納税猶予・先代経営者からの一括贈与を受けてあることです。

さらに、減価償却等にもかかる特例もあります。
対象資産は、青色申告に計上されている以下の土地や建物、資産などです。

  • 畜舎など(土地は400㎡、建物は800㎡の制限があります。)
  • トラクター、コンバイン、計量器などの機械や備品。
  • トラックなどの車両。
  • 乳牛、柑橘樹などの生物。
  • その他。

要件は特定の期限までに「個人事業承継計画」を提出・確認を受け、対象の資産全てを贈与・相続して農業を続ける等があります。
詳細は農林水産省サイトの8Pをご参照ください。

税金に関する手続きの流れ

税金の手続きって書類の作成や申告などの手間や、審査までの時間もかかってしまいます。
簡単にまとめたのでご参考としてください。

■贈与税の猶予

1⃣都道府県庁で以下の順に申告します。

・個人事業継承計画の申請⇒贈与⇒認定申請

2⃣税務署で以下の順に申告します。

・認定書の写しと贈与税の申告書を申請⇒申請後、継続届出書を三年に一度提出します。

■相続税の猶予

1⃣都道府県庁で以下の順に申告します。

・個人事業継承計画の申請⇒相続等⇒認定申請

2⃣税務署で以下の順に申告します。

・認定書の写しと贈与税の申告書を申請⇒申請後、継続届出書を三年に一度提出します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

会社勤めでは会社側が税金の業務を担当してくれているので、普段は見えなかった仕事が多いことがわかります。
面倒くさがったりすると後々余計な税金がかかってしまう可能性が高いので、しっかりと準備できるように心がけておきましょう。

これから農業を始めたり、農家・農業の事業継承をするときのための参考になると嬉しいです。

参考サイト

農林水産省
経理COMPASS 事業継承税 特例措置を受けるための「特例継承計画」
内閣府 支援措置(コロナウィルス)

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