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農業を行う上で「害虫や病害菌の存在」は大きな課題です。
駆除するための手段として、農薬を使うのは一般的ですが、
あまりにも頼りすぎれば、作物の栄養価にも影響があります。
可能な限り、有機・無農薬農業を行いたい人にとっても、
農薬に対して「どこまで使っても良いのか」など向き合う必要があります。
食の安心・安全志向などの意識も向上している現代において、
消費者の化学農薬に対する不安感や不信感が大きくなっているのも確かです。
本記事では、消費者の志向も受け入れ、
健全に農薬を利用することができるように、
おすすめな農薬や使い方のコツを解説していきます。
これからの循環型農業のためにも、ぜひご一読ください。
目次
1.農薬の現状とは?
1-1.コスト削減の課題!
1-2.ジェネリック農薬とは?
2.有機栽培でもOKな農薬とは?
2-1.有機栽培で農薬を選ぶ基準
2-2.有機栽培で使いやすい農薬
3.小さな畑なら酢とアルコールで予防
4.薬剤耐性との向き合い方
5.まとめ
1.農薬の現状とは?
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1-1.コスト削減の課題!
さて、まずは現代の農薬の現状について解説いたしましょう。
世界情勢の影響により、農業においても農業資材の価格高騰が起きています。
農家の課題として、農業を行うためのコスト削減を図っていく必要があるのです。
農業にかかるコストの中でも、
農機、肥料、農薬、飼料といった資材の価格について、
見直しが図られています。
JAグループでは全国農業協同組合連合会(全農)が中心となって、
これらの資材価格を引き下げる取り組みを行なっています。
その中でも、特に開発に膨大な費用が掛かるといわれる
「農薬」のコスト削減は真っ先に着手すべき課題と言えます。
農薬の開発には、一つの新しい農薬を実用化するために、
なんと10年以上の長い時間と膨大な開発費を必要とするのです。
例え優れた薬効を示す有効成分が発見されたとしても、
そのうち実用化され、実際に使われる様になるものは、わずかなのです。
農薬はその薬効の開発だけで使えるようになるわけではありません。
人間や家畜に無害であるか、作物へ薬害は起きないかなどなど…。
様々な影響への実験をクリアしてから、実用化に至るのです。
そんな中、現代注目されている農薬が「ジェネリック農薬」です。
1-2.ジェネリック農薬とは?
農林水産省も2016年度内に農薬取締法の運用を見直して、
ジェネリック農薬の普及に乗り出す方針を明確にしました。
まず、ジェネリック農薬とはどういうものでしょうか。
医薬品の世界では「ジェネリック医薬品」がかなり身近な存在となっていますが、
それと同様に特許が切れた有効成分を使った農薬のことです。
後発メーカーが作ることが多いため「後発農薬」などとも言われています。
有効成分や効能は先発品と同じですが、
開発費のコストを下げられるため、コスト削減に役立つと注目を浴びています。
全農もこの「ジェネリック農薬」を農薬のコスト削減の切り札としてみています。
力を入れて、調査、研究を行なっています。
肥料農薬部では、「開発費のコストが低く、価格を安く抑えられるため、
オリジナルの農薬に比べて30%ほど価格を下げれる可能性がある」と見ています。
一つのジャンルでジェネリック農薬が実用化されると、
そのジャンルで競合する農薬の価格も下がる可能性があるのです。
JA全農では「ペンコゼブ」と「ジェイエース」という、
二種類のジェネリック農薬を開発したという実績があります。
前者の「ペンコゼブ」は国内第一号のジェネリック農薬。
1995年に発売された果樹・野菜など園芸作物用の殺菌剤です。
オリジナル品の有効成分は「マンゼブ」。
当時のオリジナル品に比べて約17%の価格引き下げを実現しました。
後者の「ジェイエース」は園芸作物用の殺虫剤。
2003年に発売されたものです。
オリジナル品の有効成分「アセフェート」。
こちらもオリジナル品よりも約15%安く抑えることに成功しました。
どちらも競合製品の価格引き下げにつながったのです。
ジェネリック農薬が同じジャンルの農薬全般に対して、
コスト削減効果を持つことは過去に実証済みというわけなのです。
今後のジェネリック農薬の開発に期待がかかりますね!
2.有機栽培でもOKな農薬とは?
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2-1.有機栽培で農薬を選ぶ基準
コスト削減の対象となっている農薬。
ですが、もちろんコストの安さのみで選ぶわけにはいきません。
世界的に、消費者の食に対する安心・安全志向が向上しています。
それと同時に、化学農薬への不安感も高まっています。
さらに、有機・無農薬栽培への関心が強くなってきているのです。
ちなみに消費者が勘違いしやすいイメージのひとつに。
「有機栽培は無農薬である」というイメージがあります。
実際には有機栽培には一定基準の農薬ならば使っても良いことになっています。
「化学的に合成された物質」ではなく
「生物または天然物由来」の認可のとれた農薬であれば、使用可能なのです。
つまり、有機栽培において、農薬を利用する場合には、
「消費者の不安を取り除きやすい農薬」を選ぶことが大切です。
2-2.有機栽培で使いやすい農薬
有名な農薬に「天然無機物」を利用したものがあります。
自然界にある硫黄や銅を利用した農薬です。
代表的な「石灰硫黄合剤」は特徴的な硫黄臭があります。
香りが強いのが難点ですが、殺菌・殺虫作用があります。
硫黄の香りに抵抗をもつ消費者のことを考えると、
食品原料の農薬も良いでしょう。
消費者側から見ても「無害な農薬」としてイメージしてもらいやすく、
納得してもらえる農薬と言えるのではないでしょうか。
代表的なものは「気門封鎖型薬剤」と言われているものです。
これは海藻のネバネバしている成分やなたね油、でんぷんなどを利用した薬剤。
虫の呼吸器官である「気門」を塞ぎ、窒息死させる効果が期待できます。
これは病害虫予防というよりは、害虫が発生した時の対策として利用します。
また土壌に棲む微生物由来の農薬も登場しています。
細菌の1種であるバチルスチューリンゲンシスの持つ、
殺虫性結晶タンパク質を活用した殺虫剤。
土壌中に存在する糸状菌トリコデルマ菌の殺菌力、
および病害菌との競合力を利用した農薬などもあります。
バチルス属であれば、
私達にもおなじみの「納豆」を利用した微生物肥料も存在しているぐらいです。
畑における納豆の利用はこちらの記事もご覧ください。
(【限界突破】ネバーギブアップ!納豆が畑をアップデート【3つの効果】)
消費者の農薬への抵抗感をなくすことができる重要な存在と言えるでしょう。
3.小さな畑なら酢とアルコールで予防
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比較的規模の小さな農園で農作物を栽培しているのであれば、
害虫などの対策自体も小規模で済むでしょう。
その場合は、有機栽培に利用できる農薬の他にも利用できるものがあります。
市販されている食用米酢とアルコール度数35度以上の焼酎。
これらを活用して、病害虫予防をしましょう。
酢にもアルコールにも殺菌作用があります。
これらをそれぞれ300倍になるよう希釈して、葉にまんべんなく噴霧しましょう。
これで、病害虫予防を行なうことができます。
消費者の志向に徹底的に寄り添った農業をするのであれば、
食品由来というより食品そのものを利用した防除方法なども取り組むと良いでしょう。
4.薬剤耐性との向き合い方
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農薬の利用は非常に便利です。
しかしながら、デメリットもあることを覚えておきましょう。
農薬の使用タイミングを誤ったり、多用しすぎはNGです。
薬剤体制をもつ病害虫が発生するということもあります。
このような事態に陥らないためには、
病害虫が発生する初期段階で防除することを心がけましょう。
病気が多発してからの散布は、耐性菌発生リスクをアップさせます。
そのため農薬散布はあくまで予防として活用しましょう。
化学的防除以外の方法でも病害虫を発生防止することなど、
知恵と工夫を働かせて対策しましょう。
もし農薬を利用する場合には、散布時期にも配慮しましょう。
夕方の散布は散布ムラが出来やすく防除率が低下するとも言われてます。
農作物に対する薬害リスクも向上します。
ですから、気温の低い朝方に散布しましょう。
気温が高くなってきた時に薬剤が早く乾くようにすることが大切です。
朝方の散布によって薬害発生リスクを低く抑えることができます。
農業従事者にとって農薬は、病害虫対策にはなくてはならない存在です。
それと同時に、コスト削減のために抑えておきたいという悩ましい存在です。
近年ではコスト削減に対して「ジェネリック農薬」の存在も出てきました。
しかし、まだまだメジャーな存在ではないのです。
消費者側の志向に合わせた農業をする上で、
その商品数の少なさがネックになっている面があります。
有機栽培において「自然または天然物由来」であれば、
認可された農薬を使用することはできます。
明確な知識をもって農薬を利用して、
消費者に農薬に対し問い合わせを受けた時も
真摯に応えることができれば、信用も下がることはないでしょう。
「農薬=悪」という誤ったイメージも払拭できるのではないでしょうか。
農薬に対して真摯な姿勢で向き合えば、非常に便利な道具です。
循環型農業を実現するためにも、
化学的な防除に対しても正しい知識を持つことが必須になってきます。
5.まとめ
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今回の解説は「有機栽培における農薬の使い方」でした。
農薬は非常に便利な道具ですが、「誤ったイメージが横行していること」が残念です。
農薬を忌み嫌って農業を行なっても、農作物が実らなければ本末転倒です。
正しい知識を身につけて、農業に役立てていきましょう。
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