農家の皆さんが大切に育てたフルーツはどうやって消費者のもとに届くのでしょうか。どのように卸売されているのか知っていますか?
「卸売」と聞くと、市場で魚をせりで売っている情景をイメージする方も多いかもしれません。今回は、フルーツの流通の流れを、卸売業者の仕事内容や卸売市場の仕組みとともに紹介します。
フルーツが消費者に届くまで
そもそも、野菜やフルーツなどの農産物は、基本的に【生産者(農家)→出荷団体(農協など)→卸売市場→小売業者(スーパー、八百屋など)】というように、様々な経路をへて、消費者に届けられています。
最近では、卸売市場を通さずに生産者や出荷団体から直接スーパーや生活協同組合へ出荷したり、生産者から直接消費者に届けるルートも増えてきていますが、フルーツは約47%が卸売市場をへて流通しています。
2.そもそも卸売市場ってどんなもの?
卸売市場とは
卸売市場とは、全国の生産者や商社などから集められた生鮮食品を消費者に提供する流通経路の基幹的な拠点といわれています。
取引内容によって、食肉、水産、青果、花きなどに分けられ、それぞれ異なる組織が存在します。
そのうちの青果市場では、各地の農家やJA、商社などから入荷した様々な野菜や果物を扱い、スーパーや八百屋などの小売店や加工業者、外食業者などに販売しています。
青果市場があることにより、様々な産地、品種、階級(サイズ)、等級(品質)の農産物を一ヶ所に揃えることができます。そして、様々な需要を持つ小売業者や外食業者などの需要者が集まることにより、迅速・効率的で公正な取引を可能としています。
青果市場の仕組み
卸売市場内の青果市場は、農産物流通の基幹的な施設でありながら、その仕組みや機能については多くの農家や消費者にあまり知られていないことが多いでしょう。
以下で、農産物が入荷されてから小売店などの需要者に出荷されるまでの流れをご紹介します。
集荷・分荷
まず、各地の農家やJAなどの出荷者は様々な農産物を品種や階級、等級ごとに選別後、青果市場に入荷します。
出荷者農地の半数以上は農協系統団体ですが、商社や各産地の出荷業者、任意組合があり、農家個人が直接出荷することも可能となっています。
青果市場に集まった野菜や果実などの農産物は、まず卸売業者が仕入れます。
この時、卸売業者に委託手数料を支払って販売を委託する場合と、卸売業者が買い取って販売する場合があります。
次に卸売業者によって、農産物は買い手の注文通りに仕分け(分荷)されます。
価格決定
次に、集荷された農産物は卸売市場での取引で価格が決められます。
青果市場で取引できるのは、市場開設者に認められている卸売業者や仲卸業者、売買参加者だけであり、信用が確保されています。
取引の方法には「せり」と「相対」があります。
「せり」は【競り】【入札】ともいい、売り手に対して、購入を希望する複数の買い手が競争しながら価格を決めていく方法です。
「相対」は売り手と買い手が一対一で交渉しながら価格を決める方法です。
従来青果市場での取引といえば、せりのイメージが一般的でしたが、近年は7〜8割が相対に変化してきています。
これは、昔は八百屋が多かったため値段を競い合う競売が当たり前でしたが、今はスーパーなどのバイヤーが増えたことで、せりを行わずに商談という形が増えてきているのが理由です。
いずれの場合も、毎日の取引結果を公表し、市場内では誰でも価格や取引数量がわかるようになっています。こうすることで、公正な価格形成が可能になっています。
販売・出荷
次に卸売業者は、価格の決まった農産物を仲卸業者や売買参加者などに卸していきます。
仲卸業者は、小売業者や外食業者などの注文を受けて仕入れに来ていることが多いため、注文に合うように仕入れた農産物を小分けにし、パッキングしてから販売先に配送していきます。
また、仲卸業者は仕入れた農産物を青果市場内の店舗で小売店や飲食店から来ている買出人に対して販売することもあります。ここまでが、青果物の流通における青果市場の役割です。
青果市場を販路にするメリット・デメリット
メリット
多くの生産者が利用している卸売市場。ここでは農業従事者が青果市場を販路とする主なメリットを3つ紹介します。
【全量引き受け】で在庫リスク軽減
市場流通において、卸売業者が出荷者から委託出荷をしている場合、受託した農産物の全量を引き取らなければいけない【全量引き受け】という原則があります。
これは、仮に農家が作物を作りすぎた場合でも、必ず全量出荷できるという仕組みです。
ただし、この仕組みを利用する場合、農家は価格決定に参加できないことになっており、希望の価格で売れないというデメリットもあります。とはいえ、生産量のコントロールが難しい農産物においては、全量引き受けの原則により在庫を抱え処分するリスクが軽減されることは、大きなメリットといえるでしょう。
また、全量を引き受けてもらえるため、売上がゼロになることはなく、最低限の利益は確保できます。
コスト削減
市場流通において、農家は農産物をまとめてJAに出荷するのが一般的です。JAを通さない場合でも、他の任意組合や商社を通して卸売業者に託しています。
そのため、細かく仕分けしたり、パッキングしたりするというような作業は不要なので、それらの作業にかかる経費や遠方に配送する際の物流費を抑えることができます。
コストや作業が軽減されることで、その分農作物の生産に専念できるのも大きなメリットといえるでしょう。
商品価値情報の発信強化
卸売市場では、日々の卸売数量や価格といった取引結果を公表するだけでなく、需要と供給に関わる様々な情報を出荷者と販売先、双方に伝達する役割もになっています。
具体的には、農家から得た産地や生産状況を販売先に伝えたり、地場特産品の商品特性をアピールし、価格を引き上げたりすることができます。
また、反対に小売店から得た、売れ筋商品の情報や消費者の反応などを出荷者に伝えることも可能です。卸売業者は複数の取引先を持つので、多くの売り先から幅広い情報を得られる点も、市場流通だからこそ実現できるメリットといえるでしょう。
デメリット
次に青果市場を販路とする上でのデメリットも2つ紹介します。市場流通の理解を深めるためにも、把握しておきましょう。
商品の質が差別化されにくい
市場流通では、出荷された農産物は品目ごとに集められ、品種や階級、等級ごとに分けられるので、他の農家との区別がつかなくなります。
こだわりを持って育てた作物であったとしても、農家が込めた思いまでは伝わりません。
こういった点から、均質で大量生産を目指している場合には効率的で良いですが、付加価値を持って他との差別化をはかりたい場合には、市場流通は向かないといえるでしょう。
ただし、買参権をもった買い手の場合は目利き力をしっかり持っているので、商品としての正当な評価はしてもらいやすいです。
価格の決定権がない
前述しましたが、多くの場合は卸売業者に委託販売をしているため、農家に価格の決定権はありません。
販売価格は、需給バランスによって決められてしまうので、農作業にかかったコストなどは考慮されません。
そのため、たとえ収量が多くても安値がつき売上が伸びない場合もあれば、市場に少ない時期には少量でも高値がつくなど、価格が不安定になりがちです。
ですが反対に、市場の動きを読むことで高値のつく時期を見極めて収穫を合わせることができれば、高収益を得ることも可能です。
不安定さを逆手に取った経営戦略を立て、デメリットをメリットに変えることも可能でしょう。
卸売業者の一日の仕事内容について
卸売業者は、生産者から品物を仕入れて、主に市場内にある「仲卸業者」に販売をする仕事です。
イメージがつきにくいかもしれませんが、卸売業者の仕事は、市場になくてはならない仕事です。
前述で卸売市場の仕組みについても触れていますが、ここでは卸売業者の一日の仕事内容にスポットを当ててご紹介します。
入荷、分荷
前日深夜から早朝にかけて、全国各地から大型トラックや保冷車で品物が運ばれてきます。
品物は日本国内のものだけでなく、海外産のものも運ばれてきます。
到着した品物を受け取り、卸売場に並べていきます。
販売
どこの市場でも6時頃から卸売場で仲卸業者に販売をします。
せりか相対によって価格がつけられます。価格決定後は、毎日取引結果を公表します。
片付け、翌日準備
販売先が決まれば、品物は運び出されていきます。その後、後片付けや清掃を行います。
また、出荷者と連絡を取り合い、翌日の準備も行います。
事務処理
値段の報告や電話対応などの事務作業も行います。
また、人によってはここから産地に足を運ぶ人もいるようです。早朝から始まった卸売業者の仕事ですが、業務が終わる頃には暗くなっていることも珍しくないほど、忙しい毎日を送っています。
卸売業者にとって大切なこと
農作物への豊富な知識と目利き力
商談を成功させるためには、産地の情報をしっかりと得て、作柄を見極めることが必須となってきます。
フルーツは時間をかけて花が咲き、実がなります。育ち具合は天候などによっても左右されるため、作柄は毎回同じという訳ではありません。
目利き力がつくことで、信頼関係も構築しやすいでしょう。
コミュニケーション力
卸売業者は人と人との橋渡し役です。
「この人だからお願いしたい、この人だから買おう」と思われるような信頼関係が大きく影響してきます。
このような人間臭さを楽しんでいける気持ちとコミュニケーション力が非常に大切だといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
卸売業者の世界はあまり馴染みのない世界かもしれませんが、卸売市場での様々な仕組みや信頼関係のもと、フルーツは適正な価格を設定され、消費者の手元に届いています。
消費者として美味しくいただいている農産物の裏には、様々なエピソードやたくさんの熱い思いが隠れているかもしれません。
「みんなで農家さん」では、現役農家さんだけではなく、これから農家を目指す新規就農の方々へ役立つ情報を幅広く紹介しています。
有益な情報ばかりですので良ければ他の記事もご覧ください。
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