有機JAS規格とは?認定取得するメリット・デメリットから設定手順を徹底解説
有機栽培を始めたい農家さんの中で「有機JAS規格」という言葉をよく見かけると思います。
ただ、有機JAS規格について基準がよくわからず悩んでいる人もいるかもしれません。
「有機JAS規格の基準はなに?」
「認定を取得するメリット・デメリットは何?」
本記事では有機JAS規格を取得するメリットデメリットを徹底解説。
また、有機JAS規格の基準やよくある質問を紹介していますので参考にしてください。
デメリット③|農薬が使えないため、病害虫の対策に力を入れる必要がある
有機JAS規格とは?基準を満たすポイント
ここでは有機JAS規格とは何かについて解説していきます。
有機JAS規格の認定を申請するまでに特徴について学ぶ必要がありますので参考にしてください。
有機JAS規格とは?
画像参照:農林水産省
有機JAS規格とは簡単に説明すると、JAS法に基づいた生産方式を第三者機関に審査して、認定されれば農産物にJASマークを表示して販売ができます。
画像のようなマークを見たことがある方もいるかもしれません。
有機JASマークを取得している作物や製品は、化学的に合成されて農薬や肥料などに頼らず栽培していると証明されています。
そのため、消費者に安心・安全な作物や製品だとアピールできるため、新しい顧客を獲得できるなどのメリットが豊富です。
例えば、スーパーなどで見かける「有機」「オーガニック」などを製品に表示できるため、食に関しての「安心・安全」が証明できます。
有機JAS規格の認証を取得するには登録認証機関から審査を受けなければなりません。
JAS法に適合した生産方式が行われている生産者や事業者には認証取得が可能です。
有機JAS規格は下記の4つの種類に分けられます。
- 有機農産物JAS規格
- 有機加工食品のJAS規格
- 有機畜産物のJAS規格
- 有機飼料のJAS規格
各有機JAS規格にはそれぞれ基準が設けられています。
ここでは、農家さんに向けて「有機農産物JAS規格」について詳しく解説していきますので参考にしてください。
有機JAS規格は何のための制度なの?
有機JAS規格の認定を申請するには、何のための制度なのか理解するのが大切になります。
有機JAS規格は2つの事情によってできた制度と言えます。
この制度がスタートしたのは2001年です。
それ以前は、農林水産省が定めた「有機農産物に係る青果物等の特別表示ガイドライン」で有機農産物の表示がルール化されました。
ただ、このガイドラインは基準や強制力がありません。
そのため、「有機」や「減農薬」とスーパーや農産物売り場で不適切な表示などがあり、消費者が混乱したという事情です。
また、海外ではコーデックス委員会が有機食品に関するガイドラインの作成検討の事情があります。
日本はこのガイドラインと消費者の影響を受けて1999年にJAS法の改正を行い、2001年には「有機」や「オーガニック」などの紛らわしい表示が規制され「有機JAS」の表示が必要になりました。
有機農産物JAS規格の基準
有機農産物JAS規格は基準を満たさないと取得できません。
有機農産物の生産は基本的に化学肥料や農薬を使用せずに栽培を行います。
農産物の生産にはできる限り、環境に負荷を掛けないのが原則です。
有機農産物JAS規格の基準を満たす生産方式のポイントは下記の通りに挙げられます。
ほ場の基準
- 種や苗の植え付けを行う2年前から原則として農薬、化学肥料を使用しない。
- 多年生の植物から収穫される果物などの農産物でも最初の収穫前の3年以上は農薬、化学肥料は使用しない。
- 農地周辺から使用禁止の化学肥料や農薬などが流入しないように対策を講じること。
- 使用する用具や資材に禁止されている農薬や化学肥料の混入がないこと。
種子又は苗等の基準
- 種子または苗等は、有機農産物の生産に合うものを原則として使用すること。
- 遺伝子組み換えの種子や苗は使用しないこと。
- 入手困難な種子や苗の場合でも、化学肥料を使用せずに自然の資材で培養すること。
肥料の基準
- 使用する農地の自然に由来する堆肥で土作りを行うこと。
- 農作物が十分に育成しない場合は、有機JASが認可する肥料等を使用すること。
有害動植物の基準
- 病害虫防除は化学的に合成された農薬には頼らないこと。
- 物理的防除、生物的防除、耕種的防除の適切な取組みで有害動植物の防除を行うこと。
- もし、農薬を使用する場合は有機JASが認可している農薬を使用すること。
有機栽培と無農薬栽培は違うの?
有機栽培と無農薬栽培の違いは基準や認可してくれる機関の有無です。
有機JAS規格の認定を受けたい人の中には、有機栽培と無農薬栽培の違いを知らない方も多いでしょう。
有機栽培の特徴は、土づくりから化学肥料や農薬を使用せずに2年間経過した農地で栽培を行います。
有機JAS規格の基準を満たさなければ「有機農産物」と呼ぶこともできません。
ただ、有機栽培は無農薬をイメージする人もいますが、有機JASが認可した農薬なら使用できます。
認可されている農薬の中には化学合成も含まれていますので、無農薬とは言えません。
もちろん、農家さんの中には有機JAS規格の基準を満たし、無農薬で栽培している方もいます。
一方、無農薬栽培は生産する間は農薬や化学肥料を使用しない栽培方法です。
無農薬栽培は農薬が一切使用されておらず、安心・安全と認識する人もいます。
しかし、無農薬栽培には、有機JAS規格のように基準や認定してくれる機関はないため、土壌に農薬が残ったり、農薬が他の田畑から飛んできたりするかもしれません。
そのため、農産物には誤解を招く「無農薬」とは表示ができませんが「特別栽培農産物」という表記が定められています。
認定を受けたい方は、有機栽培と無農薬栽培は異なるので理解するのがおすすめ。
有機JAS規格の認定を取得するメリット
ここでは認定を取得するメリットについて紹介していきます。
認定の審査が難しい部分もありますが、認定されれば販路拡大などのメリットは豊富です。
有機JAS規格の申請を検討されている方や他農家と差別化したい農家さんは参考にしてください。
メリット①|有機やオーガニックがアピールできる
有機JAS規格の認定を受けた農産物は「有機」や「オーガニック」としてアピールが可能です。
認定を受けた農産物はJASマークが貼れます。
JASマークを貼ってスーパーや市場に出品すれば「有機」や「オーガニック」の農産物としてアピールが可能です。
健康志向が高い消費者は「有機」や「オーガニック」に関しての農産物や食品などに注目しています。
有機やオーガニックをアピールすることで売上が大きく上昇するかもしれません。
メリット②|有機農産物として販路が拡大できる
有機JAS規格の認定された農産物は有機農産物として販売でき、新規顧客の獲得も可能です。
有機JAS規格は農林水産省が安心・安全の農産物として証明しています。
そのため、他の農産物よりも付加価値があり、多くの人にアピールが可能です。
例えば、インターネットに出品したり、マルシェなどのイベントに参加したりすれば、これまでとは違う新規顧客の獲得ができます。
また、JAS制度は海外でも認められているため、欧米諸国に有機産物として輸出も可能です。
日本の農産物は海外でも注目度は高いので、有機農産物を輸出することで大きなビジネスも獲得できるチャンスがあります。
メリット③|消費者から信頼を獲得できる
有機JAS規格の認定された農産物は消費者からの信頼も獲得できます。
農林水産省が定めた基準なのでJASマークが表示された農産物の信頼度は高いです。
消費者も国からのお墨付きであれば、信頼して商品を購入する人も多いです。
例えば、何も表示されていない野菜と国が安心・安全と認定した野菜とでは後者の方が売れます。
有機JAS規格の基準は厳しく、簡単に審査が通らないため、一定基準を満たした農産物は価値が高いです。
安心・安全な農産物と国から証明されるため、消費者から信頼を獲得できます。
信頼を獲得することは売上が上昇、販路拡大などにも繋がりますので、農業ビジネスを拡大したいと検討されている方にもおすすめ。
メリット④|他の農家との差別化できる
有機JAS規格の認定された農産物は他のライバル農家との差別化ができます。
他の農家と差別化できることで、新規顧客が獲得できたり、新たな販路が拡大できたりが可能です。
例えば、有機JASマークは目で見てわかるように認証マークを農産物に貼ります。
認証マークを見れば安心・安全な農産物とすぐに判断できるため、消費者にも目が止まりやすいです。
他のライバル農家との差別化ができるため、競合相手との価格競争を回避できたり、自身の農産物の付加価値を高めてブランディングもできたりします。
他の農家と差別化を図りたい方は有機JAS規格の認定を検討してみてはいかがでしょうか。
メリット⑤|地球環境に優しい
有機JAS規格で認定された農産物は地球環境に優しいです。
有機栽培は土づくりから農薬や化学肥料に頼らず、環境への負荷を限りなく減らす方法で行っています。
例えば、化学肥料や農薬を使いすぎると土壌が汚染されるため、周囲の植物、動物、昆虫などに危害が及び生態系を破壊するかもしれません。
有機JAS規格は化学肥料や農薬を使用しないため、地球環境に優しいと言えます。
また、最近は世界的に「SDGs」などが注目されていますので地球環境にやさしい農産物として重要視されるでしょう。
有機JAS規格の認定を取得するデメリット
ここでは認定を取得するデメリットを紹介していきますので参考にしてください。
デメリット①|収穫量が少なくなる
有機JAS規格を認定された農産物は、通常の農産物より収穫量が少なくなる可能性があります。
有機農産物は土づくりから農薬や化学肥料を頼らず栽培するため、成長がゆっくりです。
化学肥料を使用する一般的な農産物は成長スピードも早くなるため、多くの収穫量が確保できます。
収穫量が少なくなると収益にも影響が出るかもしれません。
デメリット②|コストが高くなる
有機農産物の栽培はコストが高くなる傾向があります。
有機JAS規格は原則として農薬や化学肥料を使用しない栽培方法です。
農薬などが使用できないため、雑草や害虫対策には多額の費用が必要になります。
例えば、一般的な農地であれば雑草対策として除草剤の散布が可能ですが、有機農産物の栽培では農薬は原則として使用できません。
有機JASが認可している除草剤もありますが、通常の除草剤よりも価格は高いです。
また、除草作業を手作業で行うこともできますが、人手が必要になるため、人件費が掛かります。
有機農産物はコストが高くなる傾向があるため、農家の方で工夫をしながら栽培するのがおすすめ。
デメリット③|農薬が使えないため、病害虫の対策に力を入れる必要がある
有機農産物の栽培は原則として農薬が使用できませんが、有機JAS規格が認可している農薬は使用できます。
ただ、一般的な農薬よりも害虫に対する効果が期待できません。
そのため、収穫時の農産物に虫が食われた跡などが目立ち、見栄えは悪くなる可能性もあります。
有機農産物の栽培は一般的な栽培とは違い、病害虫対策に力を入れることが必要です。
しかし、農薬を散布しても虫が食べるのは安全な食べ物とも言えるかもしれません。
デメリット④|申請書類や手続きに手間がかかる
有機JAS規格の申請を受けるためには、申請書類や手続きがあるため手間が掛かります。
農産物は人が食べるものなので生産者もしっかりと書類作成が必要です。
使用した資材のチェックや回数など細かく記録しなければなりません。
第三者が見てもわかりやすいように書類を作成するのがおすすめ。
一般的な農業と比較しても詳細な記録が必要になるため、手間が掛かります。
有機JAS規格の認定を受ける手順
ここでは有機JAS規格の認定を受ける手順を簡単に説明していくので参考にしてください。
登録認定機関から認定を受ける必要がある
生産した農産物に有機JASマークを表示させるためには、農林水産大臣が登録した認定登録機関から「認定事業者」として認定が必要です。
申請者は有機JAS規格の認定を受けるために、申請する認定登録機関を選びます。
登録認定機関によっては認定する品目や地域が異なりますので確認が必要です。
下記のリンクから有機登録認証機関一覧が見られますので、参考にしてください。
認定審査の手順
ここからは有機JAS規格の認定を取得する手順を紹介していきます。
有機JAS規格の認定手順①|申請書類の作成と提出
登録認定機関が定めた申請書類を作成し、提出します。
有機JAS規格の認定手順②|書類審査
登録認定機関が指名した検査員によって書類審査が行われます。
JAS規格の基準を満たしている場合と改善の見込みがある方は次の実地検査に進めます。
有機JAS規格の認定手順③|実地検査
実地検査では、ほ場や保管倉庫などが認定基準を満たしているか確認されます。
申請書類の内容と事実に相違がないか確認するため、検査員が出向いて実地検査が行われます。
実地検査の中で改善や指摘事項が行われますので、申請者は是正する必要があります。
有機JAS規格の認定手順④|審査の判定
審査の判定は登録認定機関が設置している判定委員会が行います。
検査員が提出した書類や実地検査の結果に基づき、認定基準に満たしているか判断します。判定結果は、結果にかかわらず申請者に通知されます。
不適合の場合でも理由は記載されています。
有機JAS規格の認定手順⑤|認定証の交付
判定結果が「適合」の場合は認定機関から認定書が交付されます。
農産物にJASマークの表示が認められます。
有機JAS規格についてよくある質問
ここでは有機JAS規格の申請についてよくある質問を紹介していますので参考にしてください。
有機JAS規格の認定にかかる料金はどのくらい?
有機JAS規格の認定に掛かる料金に関しては、登録認定機関によってさまざまです。
登録認定機関は申請者に対して料金の情報を公表していますが、申請者の品目や農地の規模などで条件が異なるため、登録認定機関へ直接相談するといいでしょう。
また、電話のやり取りだけでは詳細に料金を提示するのが困難ですので、申請書を提出するなどで概算の見積もりを提示してくれるところもあります。
認定取得すると管理記録などの手間が増えますか?
有機JAS規格の基準は厳しいため、日々の作業の詳細な記録が必要です。
有機JAS規格のルールに則って栽培したことを証明するために、管理記録を行います。
苗や種子以外にも使用した資材は証拠になるので残しておきましょう。
管理記録は手間ですが、農産物の品質管理の向上にも繋がるので大きなメリットです。
有機JAS規格の認定取得した後に注意することはありますか?
有機JAS規格の審査で確認された規定に従って生産、格付を行います。
生産の実態が規定と異なる状況になった場合は規定を見直すか、変更を登録認定機関に届け出する必要があります。
認定取得後も年次計画や格付け実績などを登録認定機関へ報告します。
また、定期的に登録認定機関から調査を受けなければなりません。
不適合の場合は認定を取り消されるので注意してください。
有機JAS規格の認定を取得するメリット・デメリットまとめ
今回は有機JAS規格の認定を取得するメリット・デメリットについて解説してきました。
有機JAS規格とは、農林水産省が定めた基準を満たした農産物に対してJASマークが貼れます。
JASマークが貼れると消費者からの信頼度も上がり、売上が上昇する可能性も高いです。
農産物にJASマークを貼ることで他の農家との差別化も図れて、販路拡大にも繋がります。
ただ、一般農業と比較しても手間や収穫量が減るかもしれませんが、生産者の工夫次第で対策は可能です。
有機JAS規格で認定を受けた農産物は付加価値が付き、大きなビジネスチャンスが獲得できる可能性があります。
収益が伸び悩む農家さんや新たなビジネスを広げたい農家さんには一度、有機JAS規格について検討してみてはいかがでしょうか。
また、新規就農で有機栽培を始めたい方もいるかもしれません。
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