就農に興味があったり、新規就農者や農業をこれから始めようと思っている方は、おそらく「お金」や「経費」、「収入」「利益」について考えたり調べたりしているかと思います。
調べていくうち、または現役農家の知り合いから「儲からない」や「生計を立てられない・難しい」という言葉を見たり聞いたりして、不安になることも多いのが農業という業界となっています。
今回は野菜や果物の卸売での利益率ついての事例や一覧を解説したいと思います。
卸売とは?
卸売は、卸売業者が多彩や果物などの商品を業者に販売(卸す)ことを指し、販売対象が一般消費者になると小売となります。
野菜や果物の他にも、多種多様な商品や品物が私たちのもとにくるまで、さまざまな業種の方がいることは理解されていると思います。
私たち消費者が必要とする消費のための野菜や果物や、企業が必要とする業務用・販売用の野菜・果物を取り扱うのが卸売業
そして、卸売をするためには卸売業者という業者がおり、卸売業者には卸売業者と仲卸業者とがあります。
農家に関わる卸売業者の場合は、農家から野菜や果物の販売を委託され、市場で仲卸業者などに「競り」をしたのちに販売し、小売業者へと卸されます。
卸売をする場合は卸売業者として営業する「市場開設者」からの許可が必要となります。
日本全国各地や海外から大量の野菜や果物を含む青果などの商品を集め、仲卸業者などの買い手に、せり・相対取引などを行い、取引する数量や取引価格などを決めます。
仲卸業者は、上記の卸売業者から「競り」をしたのち野菜や果物を購入し、市場内にある店舗で飲食店や小売業者に販売し、仲卸業者は別名「仲卸」ともいいます。
野菜と果物の卸売一覧
野菜や果物などは、個人生産者やJA、出荷組合、輸入業者などの生産者から出荷されて、青果卸売市場にて取り引きされています。
下記は野菜や果物を取り扱う業者の一覧です。
■仲卸業者
市場開設者の許可が必要です。
市場開設者の許可を受けてから、市場の取り引きに直接参加でき、市場内に店舗を構えています。
この業者の特徴としては早朝6時前後から開店していて、鮮度・品質はともに最良なため多数の飲食店・小売店が買い付けにきます。
他にも店頭販売のみならず、配送サービスを行っている店舗もあります。
■業務用卸
最初から業務用として販売するのが目的で、市場や産地から直接買い付け、飲食店などへ卸します。
ロット数や配達する地域、オーガニック野菜や果物、和野菜や果物、輸入野菜や果物、カット野菜や果物など、業者によって多種多様に揃えています。
■小売店
私たち消費者の手に届けられるための業者です。
地域密着型の店舗が多いのが特徴といえるでしょう。
次は野菜や果物の一例です。
■スイカ
時期的なものがあり、一般的な栽培では天候に大きく左右されたり連作障害がでやすい。
■ほうれん草・小松菜
複数回作付けすることで収量も上がるが、肥料や人件費がかかる。
■きゅうり、なす、ピーマンなど
収穫時期を逸したら商品価値がなくなり、植え付けを一度にすると収穫に必要な人件費がかかる。
■トマト
収穫時期を逸したら商品価値がなくなり、植え付けを一度にすると収穫に必要な人件費がかかるうえ、曇りが三日続いてしまうと収穫自体が難しくなる。
■イモ類
農業機械での収穫ができるが、農業機械自体の費用や燃料費がかかる。
■ネギ、タマネギ
生育に適した気候があるため、大量に栽培する場合は生産地が限定される。
■いちご、メロン
初期投資が必要になる。
■果樹
サクランボをはじめとする果樹は植えてから数年間は無収穫であるため無収入となる。
栽培面積の確保や肥料、人件費がかかり、収穫時は品質の良いものだけが出荷対象となる。
卸売においての野菜と果物の利益率って?
まず、日本市場における野菜と果物の卸売業は多様な要因によって利益率自体が変動しますが、理由は仕入れ原価や物流費用、販売価格、品質管理、季節性などが影響を及ぼすためです。
野菜や果物の仕入れ原価は、品種や産地によって異なり、例えば、人気の高いトマトの仕入れ原価は1キログラムあたり100円、ブランド品のリンゴは1キログラムあたり200円といった具合で、これらの価格差は品質や産地の違いによるもので発生します。
次に、野菜や果物は鮮度を保つために迅速な物流が求められます。
輸送コストは距離や数量によって変動しますが、1トンあたりの物流費用は平均で15,000円とされています。これにより、物流費用は利益率に直接影響を及ぼします。
卸売業者は仕入れ原価に利益を上乗せして販売しますが、野菜や果物の種類や品質によって異なります、仕入れ原価の1.2倍から1.5倍程度で販売する場合が多く、例えば100円で仕入れたトマトを120円から150円で販売することで利益を確保します。
野菜と果物は傷みやすいため、品質管理とロス削減には労力とコストがかかります。
品質管理費用は月間100,000円程度が一般的で、これにより品質を保ちつつ利益率を確保するための対応が必要になり、さらに、季節や天候によっても野菜や果物の需要と価格は変動します。
夏場にはスイカなどの需要が高まり、価格が上昇することで利益率が向上します。一方で冬場など需要が低迷する季節は、価格競争により利益率が低下することがあります。
加工品やパッケージ化された商品は、通常の野菜や果物よりも高い利益率を持つことがあります。例えば、カットフルーツやサラダパックの利益率は通常の商品の2倍以上になることがあります。
儲かる野菜、果物
野菜栽培で一番安定した利益が上がるのはファミレスやファーストフード、菓子メーカーなどとの契約栽培とされています。
しかし、「契約」であるため気候の影響による収穫量や時期による変動については考慮されていないのが実態。かなり気づかいが大変なようです。
直売所で販売すれば儲かると聞くことはないでしょうか。これは販売するための手数料他最小限で済むため実際に正しいといえるようです。
例えば卸売の場合はすでに述べたように、生産者→卸売業者→小売業者といった商流がありますね。
そのため、商流を挟むたびに手数料がかかるので消費者へ届くときの販売価格には、手数料が上乗せされた状態となっています。
しかし、直売所では卸売業者など介する必要がないため、生産者は最小限の手数料で済みます。
そうすると、小売店での販売価格より安値での値段設定ができるため、野菜や果物の販売数自体を伸ばすことができます。
野菜と果物、それぞれ「10a当たりの農業所得と時給換算」で利益率のいいものをみてみましょう。
品種・品目 | 粗収益(万円) | 経費(万円) | 労働時間(時間) | 時給(円) |
キャベツ | 39.2 | 21.0 | 89.75 | 2,028 |
レタス | 47.6 | 24.2 | 133.39 | 1,754 |
ミニトマト | 407.1 | 204.3 | 1488.19 | 1,363 |
里芋 | 41.2 | 15.1 | 191.67 | 1,362 |
白菜 | 32.1 | 19.7 | 92.53 | 1,340 |
人参 | 35.6 | 20.2 | 118.17 | 1,303 |
メロン | 54.1 | 25.4 | 220.89 | 1,299 |
大玉トマト(施設栽培) | 259.5 | 136.9 | 946.73 | 1,295 |
大玉トマト(露地栽培) | 154.0 | 63.7 | 709.06 | 1,274 |
次は施設もしくは露地、畑作、水田による比較です。
経営業態 | 粗収益(万円) | 経営費(万円) | 所得(万円) |
露地野菜 | 1073.7 | 867.8 | 205.9 |
露地花き | 849.3 | 652.4 | 196.9 |
施設野菜 | 1718.3 | 1331.6 | 386.7 |
施設花き | 1777.8 | 1555.6 | 222.2 |
畑作 | 1183.8 | 1011.9 | 171.9 |
水田作 | 345 | 327.1 | 17.9 |
果樹作 | 682.8 | 479.6 | 203.2 |
農林水産省が令和2年に調査した「農業経営体の経営収支」を比較してみると、粗収益から経費を差し引いた所得がもっとも多いのは、「施設野菜」となります。
粗収益と所得がもっとも低い農業の業種は、「水田作」で経費は最安値ですが、粗収益345万に対して所得は17万円と少なめの結果となりました。
卸売の事例
高収益になりそうな野菜はそれらの需要がある時期やその時代のブーム・動向によっても左右されます。
もつ鍋がブームだった時は「にら」が高値で取引されたりといった事例があります。
他にも、下記のように事例があります。
仕入れ原価の交渉 とある野菜卸売業者の事例:トマトの仕入れ原価を1キログラムあたり100円から90円に交渉することに成功しまし、これにより、利益率を向上させ、競合他社よりも優位な価格で商品を提供できるようになりました。
物流効率化 果物卸売業者の事例:物流ルートを見直し、トラックの輸送コストを1トンあたり15,000円から10,000円に削減しまし、効率的なルートプランニングにより、商品の迅速な配送と物流費用の削減を実現しました。
顧客への付加価値提供 野菜卸売業者の事例:がカットフルーツやサラダパックを新たに導入しまし、これにより、通常の野菜と果物とは異なる高付加価値商品を提供することで、利益率を向上させるとともに、顧客のニーズに応えました。
品質管理とロス削減 とある果物卸売業者の事例:が品質管理に力を入れ、品質管理費用として100,000円を月間予算に組み込み、新鮮な商品の管理と徹底したロス削減策により、品質を維持しつつロスを最小限に抑えました。
季節性への対応 野菜卸売業者の事例:が夏場のスイカ需要に対応し、価格を上昇させることで利益率を向上させ、冬場など需要の低い季節には在庫を抑えることで、ロスを減らし利益率を維持しました。
まとめ
日本市場における野菜と果物の卸売業の利益率は多様な要因によって変動します。仕入れ原価、物流費用、販売価格、品質管理、季節性、付加価値商品の提供などが重要な要素です。卸売業者はこれらの要因を適切に把握し、戦略的な経営と効率的な運営を行うことで、利益率の向上と安定的な成長を実現できるでしょう。
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