肥料の価格が高騰!?助成金と申請方法を解説!

近年、世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵略等の影響により、化学肥料原料の国際価格が大幅に上昇し、肥料価格が急騰しています。

 このような状況に対して、農林水産省は海外原料に依存している化学肥料の低減や堆肥等の国内資源の活用等の取組を行う農業者に対し、肥料のコスト上昇分の一部を支援する事業を始めました。

 それでは、肥料の助成金に関する解説と各自治体が実際に導入している助成金の詳細を紹介していきたいと思います。

肥料価格高騰に対する助成金制度

助成金制度について

 世界的なエネルギー価格、穀物価格、肥料価格の高騰を受け、岸田首相は6月21日の第1回物価・賃金・生活総合対策本部で「農産品全般の生産コスト1割削減をめざして、グリーン農業と肥料高騰への大胆な支援を組み合わせた新しい支援金の仕組みを創設し実施する」と発言しました。

 これを受けて農林水産省は、化学肥料2割低減の取り組みを行う農業者の肥料コスト上昇分の7割を補てんする仕組みを創設することを明らかにしました。

 農産物の生産コストのうち肥料費は1~2割を占めています。そして、その肥料費は6月からの秋肥価格で春肥対比でプラス55%の値上げとなる一方、前年比ではプラス70%程度の値上げとなっています。このことから肥料価格の高騰が伺えます。

 新たな支援金の仕組みは、化学肥料の使用量の2割削減に取り組んで肥料代を削減し、肥料コストの上昇分の7割を補てんするというものであります。

 参加条件は以下のとおりです。

 ①化学肥料の2割低減を実現するため、以下の中から2つ以上を実施します。 

  ・土壌診断による施肥設計 

  ・生育診断による施肥設計

   ・堆肥の利用、下水汚泥の利用など国内資源の利用 

  ・有機質肥料の利用 ・緑肥作物の利用

   ・局所施肥(側条施肥、ドローンの活用等)の利用 

  ・地域特認技術(都道府県協議会が認める技術)の利用 など

 ②取り組みは令和4年度から2年間を実施します。

 ③これまでの取り組みも考慮し、同じ取り組みについては、拡大・強化も対象となります。

 支援額は、本年の肥料費に対して前年からの価格上昇率や使用量低減率(化学肥料低減の 取組)により、肥料費の増加額を算定し、その7割を補塡します。

 支援額 = 肥料コスト増加分 × 0.7

 肥料コスト増加分 = 当年の肥料購入費 ー (当年の肥料購入費 ÷ 価格上昇率 ÷ 使用量低減率)

  価格上昇率とは、当年と前年の農業物価統計から算出します。

  使用量低減率とは、 本年秋肥及び来年春肥の使用量低減率を1割(0.9)とします。 

 対象となる肥料は、令和4年の秋肥~令和5年の春肥として購入した肥料となります。 秋肥に限っては、本年6月まで遡って対象となります。

 事業の流れとしては、国から定額で都道府県へ、都道府県から農業者の組織する団体等に流れる仕組みとなっています。

 

申請方法などについて

 申請に必要なものについては、次のとおりです。

 ① 本年秋肥(令和4年6月~10月に注文)、来年春肥(令和4年11月~令和5年5月に注文)の 購入価格がわかるもの(注文票など)を準備して下さい。その際、 本年秋肥と来年春肥は、それぞれをまとめて、別々に申請をする必要があります。 また、注文票のほか、領収書または請求書が必要です。

 ② チェックシートを用いて化学肥料低減に向けた取組に2つ以上取り組むことを申告します。

 申請の方法については、農業者グループで申請を行います。

 申請先や申請期限は各自治体ごとにばらばらなため、00都道府県・市町村、またはお近くの農協、肥料販売店に確認をしましょう。申請する際には、 5戸以上のグループで申請します。これは農協や肥料販売店などでまとめてグループ申請することを想定しているためです。

 今後の申請に関するスケジュールは、概ね以下のとおり予定されています。

 令和4年8月 令和4年10月頃~業説明会 県段階の組織(申請窓口)の体制づくり

 令和4年10月頃~ 事農業者グループからの申請(秋肥分) 

 令和4年12月頃~ 農業者グループへの支援金の交付(秋肥分)

 令和5年2月頃~ 農業者グループからの申請(春肥分)

 令和5年3月頃~ 農業者グループへの支援金の交付(春肥分) 

 

各自治体への申請の一例

 肥料の助成金については、国から各自治体に補助金の交付を行い、国が示した事業内容に沿って各自治体が取組実施者である農業グループに対して支援金の交付を行うため、要件は同じです。しかし、各自治体によって条件が異なっていたり似たような支援事業を行っているため、いくつか例を挙げて紹介したいと思います。

青森県三沢市

 助成金の対象者は、市内に住所を有する農畜産業者または農業法人で、次のいずれにも該当する方を指します。

・令和3年分確定申告において農畜産物の販売金額が100万円以上ある方または令和4年新規就農者

・令和4年においても営農を継続している方

・市税等の滞納がない方

 助成金額は、令和3年分確定申告における農畜産物の販売金額が100万円以上200万円未満を1万円とし、これを助成金額の基準とします。

 そして販売金額が100万円増加するごとに助成金額を1万円加算します。助成金額の上限は100万円とする。

受付期間

 令和4年8月8日月曜日~令和4年10月31日月曜日 ※消印有効(申請は原則、郵送となります)

問い合わせ先

三沢市 農政水産課 農政係

電話:0176-53-5111(内線268・269・511)

静岡県裾野市

 助成金の対象者については、以下の基準を全て満たした方に限ります。

・令和3年に農業申告している裾野市に住んでいる人

・令和4年に新規就農した農業収入がある裾野市に住んでいる人

・農業経営している裾野市内の法人

 助成金の交付額については、令和4年6月から令和5年1月の間に購入した肥料価格の1/3

(1経営体(農家世帯)当たり上限20万円)となります。(現在補助制度は調整中のため、制度内容が変更になる場合があります。)

 助成金の申請にあたっては、肥料購入時の領収書やレシート、税務申告書の写し等が必要になります。

 また、新規就農の場合は、農業収入があることや農業収入を得るための支出があることを証明できる売上伝票や領収書等の書類が必要となります。

 問い合わせ先

 農林振興課 農政係

 〒410-1192 静岡県裾野市佐野1059 裾野市役所2階

 電話:055-995-1823

 ファクス:055-995-1864

滋賀県米原市

 支援対象者は、次に掲げる要件の全てに該当する農業者となります。

  ・市内に住所を有する者(法人や集落営農組織にあっては、本店もしくは主たる事務所  を市内に有する者)または市が認める認定農業者もしくは認定新規就農者

  ・令和3年度分までの市税等を滞納していないこと。ただし、市税等の徴収猶予を受け  ている場合を除く。

  ・米原市暴力団排除条例(平成23年米原市条例第36号)第2条第2号に規定する暴力団  員(以下「暴力団員」という。)または同条第1号に規定する暴力団員もしくは暴力団  員と密接な関係を有していないこと。

 支援対象経費については、土地利用型作物の栽培と土地利用型作物以外の栽培があります。支援対象経費を基に、支援金の額が決定します。

 土地利用型作物の栽培

 水稲(主食用ほか):10アールあたり1,700円

 水稲(飼料用):10アールあたり200円

 麦:10アールあたり1,400円

 大豆:10アールあたり1,000円

 土地利用型作物以外

 野菜、花き、果樹等:令和4年1月1日から令和4年10月31日までの期間に購入した肥料費(税抜き2万円以上)に10分の1を乗じた額

 支援金の金額は支援対象経費の4分の3以内(千円未満切り捨て)の上限100万円となります。また、申請期限は、令和4年12月15日(木曜日)までとなります。

 問い合わせ先

 〒521-8501

 米原市米原1016番地(米原市役所本庁舎3階)

 まち整備部 経済振興局 農政商工課(農政第2グループ)

 電話番号:0749-53-5141 

長崎県佐世保市

 対象者は、市内に住所を有する認定農業者または認定新規就農者で市税の滞納がない方となります。

 対象経費は肥料と粗飼料となり、補助額は肥料・粗飼料の購入費の10%となります。

 期間は令和4年1月1日~令和4年12月31日に購入したものとなります。

 補助の上限額は以下のとおりです。

 (1)肥料

  露地…耕作面積×50,000円/10a×10%

  施設…耕作面積×100,000円/10a×10%

 (2)粗飼料

  酪農…飼養頭数×91,032円×10%

  繁殖…飼養頭数×126,618円×10%

  肥育…飼養頭数×41,481円×10%

 受付期間は令和5年の2月28日までとなります

 問い合わせ先

 農林水産部農政課

 電話番号 0956-24-1111

 ファックス番号 0956-25-1710

まとめ

 いかがでしたでしょうか。肥料高騰に対処するため国や自治体が補助金を交付して農家の安定的な運営を維持する取り組みが垣間見えたと思います。

 今回紹介した自治体は一部ではありますが、他にも様々な支援事業を行っているので自身が農業を営んでいる地域の補助金制度を活用することをおすすめします。

 対象者についてはほぼ同じで、補助金や上限、受付期間などが若干異なるので各自治体に問い合わせると良いでしょう。

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