農業業界の衰退はすでにニュースなどの各メディアに取り上げられているためご存知の方も多いと思います。
業界の衰退の要因として少子高齢化による影響が非常に強くなっています。
農業では特に高齢化が進み、就農者として65歳以上の占める割合は約70%となっています。
新規就農で若者が就農しても5年以内に離農する人は約35%となっています。
この数字から見てもわかるように農業業界は従事者の世代の割合バランスが非常に悪いことがわかります。
農林水産省では、農業の業界衰退を減少するべく色々な政策をとっています。
そこでこの記事では企業参入に注目して、農業に参入する企業と農林水産省が企業参入のための緩和制度について紹介していきます。
農業に参入を検討している企業や農業に興味がある人にとっては企業参入のメリットについても知るきっかけになると思います。
ぜひ最後まで一読して見てください。
農業業界の衰退
まず企業参入するための改正がなされた経緯として農業の衰退が大きな原因です。
農業の衰退がなぜ企業参入のための改正に至ったのかについてですが、
1、新規就農者の増加のため
2、農業の生産性を高めるため
大きくはこの2つが改正に至った要因と言えます。
1、新規就農者の増加のため
これは農業の従事者が少子高齢化によって従事者が高齢化しているのに対して若者の新規就農者が少ないことが挙げられます。
企業の参入によって得られる効果として就農場所の確保に繋がります。
そもそも農業業界が衰退しているため就農するための場所が少なくなっている傾向があります。
そのため、若者の就農者が農業業界に就農するためにも働くための場所がなくてはいけません。
農業業界は企業が参入するためにはこれまで厳しい条件があったため企業もその条件をクリアするのが難しいため参入はしてきていませんでした。
しかし、農業業界の衰退を抑制するためには企業などの法人参入が衰退の抑制に繋がるため企業が参入しやすくなるための改正に繋がりました。
2、農業の生産性を高めるため
農業では2つの大きな課題があります。
1、食料自給率の増進
2、生産性の向上
この2つが現在の農業業界での大きな課題となっています。
日本は先進国の中でも食料自給率が非常に低いのが現状です。
そのため日本は輸入に多くを頼っている状態です。
輸入は物によっては安く大量に仕入れることができますがその反面でリスクももちろんあります。
一つとしては輸入は他国の情勢で仕入れることが困難になる場合がある。
為替変動による価格変動が大きい。
近年だとわかりやすいのはウクライナ戦争による輸入制限です。
ロシアとウクライナ戦争によって近隣の国でもそれぞれから輸入が制限されたことによって別の他国から代わりの輸入を行うようになり物の需要が高まり価格が高騰する自体になりました。
このように戦争などの影響は戦争を行っている国だけではなく他国にも影響があります。
食料自給率が低く多くを輸入に頼っている場合の影響は非常に甚大な影響を受けます。
次に生産性の向上ですがこれは食料自給率の向上とリンクした課題です。
食料自給率を向上させていくためには生産性を向上させていくしかありません。
そのため、生産性を向上するためには農業従事者を増加させること、農作土地を増やしていくことが急務になります。
どちらも簡単にいく問題ではありませんが、この問題を解決するためには個人の農家だけでは限界があります。
そこで、経営力がある企業、法人が参入することで放牧土地の活用と農業従事者を受け入れることができる体制を確保するために参入しやすいように改正が行われました。
企業参入『農地法』
それでは、実際企業が参入しやすくなった改正とはどんな内容なのかについて見ていきましょう。
まず改正に伴い呼称が変更になりました。
改正前は農業生産法人でしたが改正後は農地所有適格法人と変更になりました。
これは農地を所有できる法人の要件であることを明確にするために変更となっています。
法人形態と事業要件については改正後も内容の変更はされていませんが、内容としては下記のようになっています。
・株式会社(非公開会社に限る)、持分会社又は農事組合法人
・売上高の過半が農業(販売・加工などを含む)
構成員、議決権要件と役員の要件の改正が企業が参入しやすくなった大きな要因となります。
改正前
農業関係者
・ 常時従事者、農地を提供した個人、地方公共団体、農協等の 議決権が、総議決権の3/4以上
農業関係者以外の構成員
・ 保有できる議決権は、総議決権の1/4以下
・ 法人と継続的取引関係を有する関連事業者等に限定
役員の過半が農業(販売・加工等含む)の常時従事 者(原則年間150日以上)
・更にその常時従事者である役員の過半が農作業に従事(原則年間60日以上)
改正後
農業関係者
・ 常時従事者、農地を提供した個人、地方公共団体、農協等の議決権が、総議決権の1/2超
・ 農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体を通じて法 人に農地を貸し付けている個人 【追加】
農業関係者以外の構成員
・ 保有できる議決権は、総議決権の1/2未満
・ 役員又は重要な使用人(農場長等)のうち、1人以上 が農作業に従事(原則年間60日以上)
参照、引用元:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_seido/pdf/nouchi_taihi.pdf
改正による具体的な利点
改正については上記のようになります。
それでは、もう少し具体的になぜ企業や法人が参入するのに利点となっているのか。
ここについてピックアップしていきます。
まず農業関係者以外の構成員の
役員の過半が農業(販売・加工等含む)の常時従事 者(原則年間150日以上)
更にその常時従事者である役員の過半が農作業に従事(原則年間60日以上)
とされていた内容から
役員の過半が農業(販売・加工等含む)の常時従事 者(原則年間150日以上)
役員又は重要な使用人(農場長等)のうち、1人以上 が農作業に従事(原則年間60日以上)
と変更になったことが一番参入しやすくなった点と言えます。
これについては、改正前の場合役員の過半が農業に従事というのが企業にとってはネックとなるものでした。
例えば元々別の事業を行っていた企業が新規で農業をスタートしよう!
と思った場合に役員として任命された人の過半が農業に従事させられるかというとそういう訳にもいきません。
つまり、プラスαでスタートしようと思っても条件がクリアできないため難しかったのがあります。
しかし、改正後1人以上が従事すればとなったため過半の従事からの条件がかなり緩和されました。
企業としては役員の配置を調整できるようになったのが農業に参入しやすくなったわけです。
また、改正前の議決権と構成要件として農業関係者以外の者は、関連事業者(法人と継続的取引関係を有する者等)に限定されていました。
しかし、6次産業化など経営発展を目指す場合、 資本増強の必要性が発生したために、農業関係者以外の者の構成員要件を撤廃 (法人と継続的取引関係がない者も構成員となることが可能)とされたことも大きな利点となりまし。
もう少し噛み砕いて説明すると
農業関係者以外の者が総議決権の4分の1以下から農業関係者以外の者の総議決権が2分の1未満のこの項目に影響があるためです。
まず総議決権が農業関係者以外での箇所に着目して頂くと、農業関係者以外の者は関連事業者(法人と継続的取引関係を有する者等)に限定とされていました。
要するに継続的な取引関係を有していないとこの項目に該当しないため条件をクリアするハードルが高くなります。
農業の規模が小さければ、いくら企業や法人としても継続的な取引を確約することができないためです。
何よりも農業は農作物によって変動が起きやすいため不安定な要素があるためです。
しかし、改正後には農業関係者以外の者の構成員要件を撤廃 (法人と継続的取引関係がない者も構成員となることが可能)となり、農業関係者以外の者の総議決権が2分の1未満とかなり緩和されたことによって企業として条件がクリアしやすくなったのです。
貸借であれば全国どこでも参入可
他にも農地法の改正によって変化したことがあります。
企業や法人が農業に参入するにあたって貸借であれば、企業や法人などのリース法人であっても全国どこでも参入可能になった点です。
このリース方式によって
農地を利用して農業経営を行うリース法人は令和2年12月末現在で3,867法人となっています。
平成21年の農地法改正によりリース方式による参入を全面自由化し、改正前の約5倍のペースで増加しています。
このように農地法の改正は農業に参入しやすくなり今後も企業や法人が増加していくことが予想されます。
まとめ
農地法の改正によって企業がなぜ参入しやすくなったのか、そのきっかけについて知って頂けたと思います。
農業業界は今後も業界の衰退と食糧自給率の向上、生産性の向上を何とかして行かなければいけません。
何よりもこういった課題は短期間でどうこうなる問題ではありません。
長期的に計画して少しずつ改善していくしかありません。
そのため、農地法のように規制の緩和によって農業事態に参入する機会が増えることは非常に大きな利点になっていると結果からみてもわかります。
農業に企業や法人が参入することがなぜメリットがあるのかについても農業の衰退で紹介しましたが、これら以外にも色々な面で企業や法人が参入するのにはメリットがあります。
リース方式だと放牧地などの利用や活用にも繋がってきたりします。
今後も農業に参入を考えている企業や法人については参入がしやすくなっているためぜひ農業業界に参入していって頂ければと思います。
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