農業でより早く生産性を高めるためにはどうしたらいいでしょうか。
方法はいくらでもあります。
単純に生産するための土地を増やす。
労働者を増やす。
化学的肥料を使用する。
他にも細かいことをいえばいくらでもあります。
それでは、農業の中の畜産ではどうでしょうか。
家畜を飼育するために化学的飼料などを使用し成長を促したらより早く家畜を成長させていくことができるため生産性が向上するとは思いませんか。
しかし、ここで多くの人は化学的に作られた物を使用するのはどうなのだろうとマイナスのイメージを持つのではないでしょうか。
実際私たちは健康を意識する習慣がここ数年で高まってきたことによって農業でも有機栽培などの化学物質を使用していない物を好むようになっています。
そのため、人工的につくらた物に対して不安感が生まれて来るのは仕方がないことだと思います。
今回の記事では畜産業の中で家畜を飼育するために使用されている肥育ホルモンについて紹介していきます。
肥育ホルモンとはなんなのか、使用するメリットはあるのか、使用の現状などについて飼育の面からと私たちが肥育ホルモンを使用された家畜を食したときに問題ないのかにつてわかりやすく説明していきますのでぜひ最後まで一読ください。
肥育ホルモンとは
まず肥育ホルモンとは、牛や豚などの肥育促進を目的に使用される動物用医薬品等です。
日本国内では、農林水産大臣による動物用医薬品としての承認はなく、また飼料添加物としても指定されていないため、使用されていません。
上記のように農林水産省では記載がされています。
つまり肥育ホルモンはあくまでも肥育を促進するための医薬品であり、日本国内では承認されていないことから家畜に使用することはできません。
日本では使用されていないのになぜ肥育ホルモンについて農林水産省に記載があるのでしょうか。
それは海外では、肥育ホルモンを使用した家畜の飼育がされているためです。
海外で使用されているということは肥育ホルモンによって飼育された家畜の肉などを日本も輸入しているということから肥育ホルモンについて知っておく必要があります。
肥育ホルモンの種類
肥育ホルモンには大きく分けて2つの種類があります。
1、天然形ホルモン剤
2、合成型ホルモン剤
この2つのホルモン剤にはそれぞれ大きな違いがあります。
1、の天然型ホルモン剤では生物が元々持っているホルモン剤を使用して製剤されており「17β-エストラジオール」「プロゲステロン」「テストステロン」などがあります。
次に2、合成型ホルモン剤は生物が元々待っていないホルモンを人工的に合成して製剤された物になります。
それぞれの肥育ホルモン剤を使う効果としては、2つあるとされています。
1、成長が促進される。
2、赤身肉が増える。
成長が促進されることがなぜそこまでいいのかあまりイメージしにくいと思います。
畜産業を行っている農家からすると成長が早まることで早期に出荷することができます。
つまり、飼料を少なくすることができます。
生産のサイクルも早めることが可能なため畜産農家にすれば経済的なメリットが大きいのです。
次に赤身が増えることで一頭あたりから採取することができる量が増加することになります。
一頭だけでは大した量にはならないかもしれませんが、これが数が増えてくれば赤身の量が増えることでの採取量は必然的に高くなります。
肉の需要と供給
そもそもなぜ、肥育ホルモンなどを使用する必要があるのでしょうか。
これは昔から現代にかけて肉の需要と供給が変化してきているからです。
日本でも肉の消費量が昔に比べてここ数十年で一気に変化してきました。
そこでこの需要と供給のバランスを維持するためにはより優れた飼育方法が必要となり、その中の一つとして肥育ホルモンも使用されるようになりました。
現在、日本では肥育ホルモンの使用は認められていませんが海外ではアメリカ、カナダ、オーストラリアなどで肥育ホルモンが使用されています。
アメリカ、カナダ、オーストラリアなどは日本のお肉の輸入量が多いことはご存知でしょうか。
スーパーなどでも出産国を見れば大体あるのがこの辺の国だと思います。
肉の需要が高まり供給を満たすためには大国であっても生産するためのサイクルと経済的な面を考慮するとこういった肥育ホルモンの使用は大きなメリットがあるのです。
肥育促進剤の人体の影響
肥育促進剤(肥育ホルモン剤)を使用した家畜の肉を食べて人体に影響はあるのか気になるところだと思います。
結論からいえば残留基準以下であれば食肉から摂取したとしても人の健康には影響がないとされています。
この残留基準を決めているのは国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議 (JECFA)が定めています。
また、残留基準値は科学的根拠に基づき定められており、一日当たりの摂取許容量を下回る範囲内で肥育促進剤の残留基準を設定。
基準を超える食肉については輸入や販売を禁止することで食品の安全性を確保しています。
※一日当たりの摂取許容量とは人がある物質を一生涯食べ続けたとしても、健康に悪影響を生じないと推定される一日当たりの摂取許容量のこと
つまり人体に影響が出る量の肥育促進剤を使用している場合には市場にまず出回っていないため、一般的に食肉として食べている物に肥育促進剤が使用されていたとしても人体には影響がないといえます。
肥育ホルモン使用肉は輸入禁止?
EUなどでは肥育ホルモン剤を使用した食肉の輸入を禁止しています。
これはなぜなのでしょうか。
日本ではアメリカや、オーストラリアなどの肥育ホルモンを使用した食肉を輸入しています。
これはEUでは安全性を評価するデータなどが不十分であり、人の健康に影響する評価ができないと主張しているために肥育ホルモンの使用や肥育ホルモン剤が使用された食肉の輸入を禁止しています。
しかし、国際的にはEUの措置は科学的根拠に裏付けされた物ではないとされています。
そのため、EUのように使用の禁止と輸入の禁止をしている場所もあれば日本のように使用は禁止されているが輸入はOKとしている国など、国によって様々な対応がされています。
肥育ホルモンが乳がんの原因?
肥育ホルモンについて調べていくと肥育ホルモンの使用禁止によって、乳がんの死亡率が減少したという情報が出てきます。
しかし、この情報は正確な物ではありません。
農林水産省でも下記のように記載があります。
WHO のデータベースを元に 1989 年以降、EU の多くの国において、乳がん による死亡率が減少したとの研究報告がありますが、肥育ホルモン剤の使用禁止と 乳がん死亡率の減少を関連付けるものではありません。
この報告の中では、乳がんによる死亡率の減少については、検診率の増加や、新たな治療法が採用され容易に 治療を受けることが可能となったことなど、様々な要因によるとされています。
また、WHO のデータベースによれば、肥育ホルモン剤が使用されているアメリカ においても、同時期の乳がんによる死亡率が減少しています。
引用元:農林水産https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000150442.pdf
つまり、肥育ホルモンの使用が乳がんなどの死亡率に関連するような研究報告はない。
乳がんの死亡率が減少したのはその他の治療法や検診からの治療が容易に受けることが可能になった。
こういった様々な要因によるものではないかとされています。
現に肥育ホルモンを使用しているアメリカでも乳がんによる死亡率がWHOのデータから減少している結果がでています。
そのため肥育ホルモンとの関連はないといえます。
肥育ホルモンにはこのように研究データが少ないことから色々な憶測が飛びやすいですが、国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議 (JECFA)は科学的根拠を元に基準を定めていますのでそこまで心配する必要はありません。
まとめ
肥育ホルモンとはあくまでも牛や豚などの肥育促進を目的に使用される動物用医薬品等です。
日本では飼料としての使用は禁止されていますが、医療目的として天然型ホルモン剤を家畜の繁殖障害の治療など獣医療として使用することはあります。
肥育ホルモンを使用するメリットとしては2つ
1、生長の促進
2、赤身の増量
この2つによって畜産農家では家畜の早期出荷から採取できる量の増加などから生産性を高めることができるため経営面としても有効であるといえます。
肥育ホルモンを使用することで人体に影響があるのかですが、結論からいえば基準値をきちんと下回っていれば人体に影響はないとされています。
この基準値は国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議 (JECFA)が定めています。
定められている基準値についても科学的根拠を元に出されているため市場に出回っている食肉を食しても人体に影響はありませんのでそこまで心配する必要はありません。
肥育ホルモン剤にはメリットがありますが、やはり自然に成長させるのではなく強制的に成長させているため色々な憶測があります。
今回紹介した乳がんの死亡率の関係なども関連した研究報告がないですが情報としては出回っています。
今後も肥育ホルモンの使用がどういった影響があるのかは研究されていくためきちんとした情報かどうかを判断していただければと思います。
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