日本を代表する果物として人気があるりんご。
近年、りんごの病気の1つ黒星病が深刻な被害となり問題となっています。
りんご黒星病は農薬では防ぐことができなくなっていると言われ、早急な原因の究明と対策を行う必要があります。
本記事ではりんご黒星病について、原因や対策について詳しく解説していきます。
りんご黒星病とは?
りんご黒星病とは「黒点病」とも言われ、その名の通り葉や果実に黒っぽい褐色の病斑を形成する病害です。黒い斑点の多くは葉っぱと果実に出来始めることが多く、放っておくと他の果実や葉っぱにも浸食していく病気です。
りんご黒星病は果実がなる木に被害をもたらすこともなく、果実が腐敗することもありませんが外観が大きく変わりますので販売することは難しくなります。
更に近年では黒星病に高く効果を持っていた農薬の主要成分に対して黒星病が耐性も持ち始め、甚大な被害をもたらし始めています。
りんご黒星病が発生する要因とは?
りんご黒星病の原因は、Venturia inaequalis(ベンチュリア イネクアリス)という糸状菌(カビ)の一種です。
この病原菌は、感染源となる植物や枯れた葉や果実、さらに休眠期を土壌や樹皮などで越冬します。
冬季や涼しい時期には休眠しており、気温が上昇し湿度が高まると活動が活発化し、感染リスクが増します。
感染の主な経路は風や雨です。病原菌が感染源から放出され、風や雨によって散布されたりんごの葉や果実に接触することで、病原菌は植物に侵入します。
また、剪定や収穫時に生じた損傷や傷口からも侵入します。
感染が進むと、リンゴの葉には小さな黒い斑点が現れ、果実にも同様の斑点が生じ、腐敗してしまうことがあります。
りんご黒星病の見分け方
次にりんご黒星病の見分け方について「葉っぱ」と「果実」の2つの視点から解説します。
りんご黒星病の見分け方は、葉っぱと果実において異なる特徴が現れます。まず、「葉っぱ」の特徴から見てみましょう。
【葉っぱの特徴】
感染したリンゴの葉には、黒い斑点が現れます。
これらの斑点は通常円形で、直径は1〜5ミリ程度です。
斑点の周りには黄色い輪が形成されることもあります。重度の感染では、斑点同士が合体して大きな黒い領域となり、葉の黄化や落葉が進行します。感染が進むと、葉全体が黒ずんでしまうこともあります。
次に、「果実」の特徴を見てみましょう。
【果実の特徴】
感染したリンゴの果実にも、褐色または黒色の小さな斑点が現れます。これらの斑点は通常、果実の表面に不規則に広がります。感染が進行すると、斑点が合体して果実全体を覆い尽くし、表面がくぼんでしまうことがあります。果実は腐敗し、見た目や食味が損なわれます。これにより、商業価値が低下し、収穫量が減少します。
見分け方のポイントは、黒い斑点がリンゴの葉や果実に現れることです。特に葉に黒い斑点と黄色い輪が見られれば、りんご黒星病の可能性が高いです。また、果実に斑点が生じている場合は、感染を疑うべきです。定期的な観察と早期発見が重要で、感染が確認された場合は速やかに対策を講じて被害を抑えることが大切です。
りんご黒星病の殺菌剤の使用と注意点
りんご黒星病の防除において、殺菌剤の使用は効果的な手段の一つです。殺菌剤は病原菌を殺すか抑制することで感染を防ぎ、農作物を保護します。
りんご黒星病の殺菌剤の使用と注意点を詳しく説明します。
【殺菌剤の使用】
予防的な散布:感染リスクが高い時期に、予防的に殺菌剤を散布します。病原菌の発生や拡散を抑える効果があります。
感染初期の対応:感染が確認された場合には、早急に感染部を特定し、殺菌剤を適用します。早期対応で感染拡大を防ぐことが重要です。
適切な殺菌剤の選定:りんご黒星病に対して効果的な殺菌剤を選びます。専門家のアドバイスを仰ぐか、農薬のラベルに記載された指示に従って使用します。
【注意点】
過剰な使用の回避:適切な用量を守り、過剰な使用を避けます。過剰な残留農薬は環境への悪影響や抵抗性菌の発生を引き起こす恐れがあります。
投与タイミングの守り:散布のタイミングは病気の発生状況と気象条件に合わせて決定します。正確なタイミングで散布を行うことで、効果を最大限に発揮します。
抵抗性菌の対策:同じ殺菌剤を連続して使用すると、抵抗性菌の発生リスクが高まります。複数の殺菌剤を交互に使用したり、ローテーションを行うことで抵抗性菌の発生を防止します。
安全な取り扱い:農薬の取り扱いには十分な注意が必要です。指示に従って正しく使用し、必要な防護具を着用して安全性を確保します。
適切な殺菌剤の使用と注意点を守ることで、りんご黒星病に対する効果的な防除が実現できます。病気に対する理解と継続的な取り組みが、りんご栽培の安定と健全な収穫につながります。
りんご黒星病の問題点
りんご黒星病の1番の問題点は、効果的な農薬が効かなくなっているということです。
2016年までりんご黒星病は重大な病気であったものの、特効薬のようなものがありすぐに対処することが可能でした。
しかし、2016年以降は従来使用していた農薬の主要成分に対して、黒星病の病原菌が耐性を持ち始め各地で大きな混乱を招きました。
そのため現在は従来使用されていた農薬を撒いてもまるで意味がないと言われています。
現状では、「SDHI剤」(コハク酸脱水素酵素阻害剤)や「AP剤」(アニリノピリミジン)の使用を進めている産地もありますが、これらも同様に連続使用することで耐性菌の発生が懸念されています。
耐性菌の発生を防ぐためには、農薬を1種類に限定して使用せず多くの種類を使用し耐性をつけさせないことや厳重な管理をすることが大切と言われています。
りんご黒星病の対策について
りんご黒星病の対策方法は、病気の予防と制御に重点を置いて実施することが重要です。
詳しく解説していきます。
耐病品種の選定:耐病性の高い品種を選ぶことで、感受性を低減させることができます。ただし黒星病が一度発生すると侵食されていくのであまり効果的な対策とは言えないでしょう。
適切な剪定:枝間の通気性を確保し、湿度を低減させるために適切な剪定を行います。これにより、病気の発生リスクを抑えることができます。
ただし、黒星病の多くは雨や風などにのり感染する確率が高いと言われています。
感染源の除去:収穫後や剪定時に発生した落ち葉や枯れた果実を迅速に撤去し、感染源の除去を行います。
農地の衛生管理:農地を清潔に保ち、病原菌の拡散を防ぎます。定期的な土壌消毒や機械・農具の清掃が重要です。
殺菌剤の使用:感染の予防と制御に効果的な殺菌剤を適切に使用します。効果的な殺菌剤の選定と正しい散布方法が必要です。
早期発見と除去:定期的な観察を行い、初期の感染を見逃さないようにします。感染が確認された場合は、早急に感染部を切除・除去することが必要です。
地域間の情報共有:地域農家や専門家と情報を共有し、感染状況を把握し合うことで、効果的な対策が可能となります。
これらの対策を総合的に実施することで、りんご黒星病の発生を最小限に抑え、健全なリンゴ栽培が実現できます。ただし、対策は孤立して行うのではなく、持続的な取り組みと地域全体の協力が不可欠です。
りんご黒星病との向き合い方について
りんご黒星病に効果的な対策方法や病原菌を完全に殲滅することは現状、難しいと言われています。
常に発生する要因があると考え、発生した際には早急な処置を行い他の果実に2次被害を及ぼさないようにすることが大切です。
また、風や雨に病原菌が乗ってくることもあり特に主要農産地では情報共有を行い、他農家で発生した場合にはすぐに対策を行う必要があります。
常に科学技術が進歩しており、特効薬を作るまでに長い期間はかからないと言われていますが、対策を常に練り万全な状態で経営をしていくことが大切です。
万が一、りんご黒星病にかかった際には専門家に相談することも1つの手段と言えるでしょう。
まとめ
本記事ではりんご黒星病の原因、対策について詳しく解説しました。
りんご黒星病は農業経営に甚大が被害をもたらすものというのはわかっていただけたかと思います。
特に重要なポイントとしては、同じ農薬を使用し続けないことです。
同じ農薬を使用し続けることでVenturia inaequalis(ベンチュリア イネクアリス)は耐性を持ちまるで効果がなくなります。
定期的に農薬を変え、耐性を持たれないようにしていくことが大切です。
ぜひ、りんご黒星病が発生した際には本記事を参考にしてみてください。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
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