ときたまニュースや新聞を見ていると「売買同時入札(SBS)」という言葉やキーワードを聞いたりすることもあるかと思います。
「売買同時入札」という言葉から「輸出入」に関連する用語ではあるとは推測できるのですが、「売買同時入札(SBS)」って正直なんのことやら、いったいどういう内容なのかがよくわかりませんね。
そのため、本記事では「売買同時入札(SBS)」について、なるべくわかりやすく解説してみようと思います。専門用語が所々に入りますが、補足でご説明いたします。
売買同時入札(SBS)とは?
売買同時入札(SBS)について、まずはざっくりと解説しようと思います。
売買同時入札は別名称で「売買同時契約」とも言います。
外国の精米業者、輸入資格を持った商社、日本国内の卸業者の三者連名で、農林水産省総合食料局に対して買い入れや売り渡しを申し込むことで、SBS(Simultaneous Buy and Sell)制度とも言われます。
通常の取引では国が輸入業者から買い入れし、それを国内の買い手に売り渡すのですが、SBSでは売り手と買い手の直接取引が認められています。
難しく書くと、「売り手(商社等の輸入業者)と買い手(製粉会社等の買受会社)が連名で外国米の「政府への売渡」と「政府からの買受」に関する申し込みを行い、価格が決定されるという仕組みです。
補足:実需者(じつじゅしゃ)とは、食品製造事業者(加工などを行う)のほか、輸出を代行する輸出事業者などを指します。
輸入差益(またはマークアップ。輸入を行う国家貿易企業が徴収する「買い入れ価格と販売価格の差」のことで、関税に当たります)で入札し、輸入差益の大きいものから順に「農林水産省総合食料局」と契約する輸入米の適正な市場評価を得るための方式で、約10万トン(年)がこのSBS方式で輸入されています。
米を輸入することになった経緯
稲作が盛んなのは日本だけではなく、中国・インド・タイなどのアジア各国、アメリカ・オーストラリアなどでも稲作が行われています。以前は「米は輸入しない」と言われた日本も、現在では外国産米の輸入を受入れています。
米の輸入をめぐる流れについてご説明します。
米の輸入を認めていない時代
食糧管理制度が始まったのは1942年から。
その時代は、日本国内で生産された米は政府が原則全てを買い入れていました。
米価や流通ルートも政府の管轄で決められていたおかげで、米を生産する農家はお米づくりに専念することができていたのです。
しかし、その結果、消費しきれない米が生産されても少しずつ余剰となる状態になっていき、政府主導でのコメの管理という方法は限界となりました。
米の輸入開始
食糧管理制度によって日本の米価は手厚い保護を受けていて、その時代の世界でも高い水準になっていました。
当時は米の輸入は認められいなかった影響で、安価な外国産米は日本国内に入ってこなかったため、米の価格競争がありませんでした。
しかし、アメリカなどの諸外国は日本の米政策に批判を強め、輸入を認めるように要求しはじめたのです。
1993年に日本で起こった米不足騒動の際には日本はタイ・中国、アメリカなどから緊急輸入を行ったこともあり、米の輸入というものを受け入れざるを得なくなっていき、1994年のガット・ウルグアイ・ラウンドという貿易交渉をきっかけに、日本も外国から米を輸入することを認めました。
ガット・ウルグアイ・ラウンドとは?
ガット(GATT:関税および貿易に関する一般協定)とは、自由貿易の促進を目的とする国際協定のことです。
様々な国家間で貿易について話し合うもののうち1994年に南米ウルグアイで開催された交渉を「ウルグアイ・ラウンド」といい、この「ウルグアイ・ラウンド」で日本の米の輸入が始まることになりました。
これは、2000年まで一定の比率で増加する米の輸入義務を受け入れる協定で、これにより後述するミニマム・アクセス米へとつながります。
現在では輸入米については高い関税がかけられているため外国産米を目にする機会は少ないと思いますが、この関税についても下げることが決められているため、やすい輸入米がスーパーなどの店頭に並ぶことになるでしょう。
ミニマム・アクセス(MA)米とは?
売買同時入札(SBS)方式ではミニマム・アクセス(MA)という輸入の一部として、毎年およそ10万トンほどの米が輸入されています。
次はミニマム・アクセス(MA)についても少し説明をしたいと思います。
ミニマム・アクセス米(MA米/年間77万玄米t)は1986年から1995年にかけて行われたウルグアイ・ラウンド協定という、関税及び貿易に関する一般協定において、農産物への適用が義務づけられたものです。最低輸入量とも言われ、高関税率による輸入禁止をなくす目的で作られ、初年度は国内消費量の4%、6年間で8%まで拡大することが義務付けられていて、国産米に影響を極力与えないようにするため、国が一元的に輸入して販売します。
販売は入札により決定した輸入業者を通じて行われますが、ミニマム・アクセス(MA)米77万トンのうち最大10万トンおよびTPP11協定で設定された豪州枠(2018年度2,000トン、2019年〜2020年度6,000トン、以降毎年240トンずつ増加、2030年以降は8万4,000トン)については、輸入業者と実需者の実質的な直接取引(売買同時入札(SBS)輸入)が認められ、主に主食用に販売されています。
2020年度はコロナ禍による外出自粛などの影響があり、外食産業での需要が大幅に減ったため、売買同時入札(SBS)入札も低迷していました。
日本ではウルグアイ・ラウンド協定で、例外のない米の関税化を延期する代わりに、1995年からミニマム・アクセス(MA)米を42.6万トンを輸入し、毎年0.8%ずつミニマム・アクセス(MA)米の輸入枠を強制的に増やし、1999年に、米の関税化へ方針を変えました。
精米の枠外関税を、2000年に341円/キログラムに設定し、関税を払うのであれば誰でも米を自由に日本へ輸入出来る様にしたのです。
これによって、ミニマム・アクセス(MA)米の輸入量は、2000年には本来85.2万トン(8パーセント)であるところを、2000年に76.7万トン(7.2パーセント)を免税(関税がかからない)で受け入れることになりました。
1993年のウルグアイ・ラウンド協定の合意以来、ミニマム・アクセス(MA)米は年間76.7万トンの輸入枠が設定され、2008年のミニマム・アクセス(MA)米の輸入元は、アメリカ合衆国・タイ王国・オーストラリア・ベトナム産となっていて、中華人民共和国産は、そのうち約1割を占めています。
2009年4月3日には、2007年度に輸入された加工食品用のミニマム・アクセス(MA)米である「政府保有輸入米」のタイ産もち砕精米から「カビ状の異物」を発見し、それを検査した結果、猛毒のカビ毒である「アフラトキシン」という物質が0.80ppm検出されたことも問題となりました。
この「アフラトキシン」は、本来であれば検出されてはならない物質のため、安全管理が非常に気になってしまいますね。
ミニマム・アクセス(MA)米と売買同時入札(SBS)米の違いですが、ミニマム・アクセス(MA)米は主に「加工原料」・「発展途上国向け輸出」に使用されるため、中粒種や長粒種が主となります。
売買同時入札(SBS)米は選択の自由があるため、短粒種であるカリフォルニアのこしひかり・あきたこまち等の日本人の味覚にあう品種が輸入され、そのほとんどはブレンド米として販売されています。
売買同時入札(SBS)方式の導入によって
売買同時入札(SBS)方式を導入したことによって以下のようになりました。
- 2000年以降も継続して入札の競争率、米の国際相場、国内相場がマークアップの要因となっている。
- マークアップは入札競争・国際相場の影響による上昇よりも国内の米相場からの影響を強く受ける。
- 売買同時入札(SBS)枠での期待指数はいい値が得られなかった。
- 中国米のほうがアメリカ産米よりも国内米価格弾力性(価格の変化に対する、需要量変化率の比率)が高い。
- 低価格米への需要が高まり売買同時入札(SBS)枠が増加するなら、アメリカ産米よりも中国産米が国内市場に入ってくる可能性が高い。
個人的にはどちらの米に対しても農薬や衛生管理などでの不信感がぬぐい切れないので選択したくはありません・・・。
さて、そもそもの「売買同時入札(SBS)輸入の目的」は、「外国産米の、国内での適正価格を見出すこと」です。
売買同時入札(SBS)輸入での課題もわかりました。
- 政府の予定価格が未公表
- 売買同時入札(SBS)枠が固定されている。
- 売買同時入札(SBS)輸入でタイ米のシェアがふえているため、これも考慮する。
- トレーサビリティ法案という米の原産地表示が義務化されることによって、中国産米の売買同時入札(SBS)輸入シェアに変化が起こる可能性がある。
売買同時入札(SBS)で輸入された米は主に外食などで主食用として販売され、国産米の価格が大きく下がった2014年度では落札数量1万2000トン、2015年度は2万9000トン、2017年度は契約予定数量の10万トン全量の落札、2018年度から2020年度までで6~7万トンとなっています。
売買同時入札(SBS)輸入米の落札数量が低い場合でも、WTO協定で合意したミニマム・アクセス(MA)米約77万トン(玄米)と、TPP11豪州枠最大8400トンの輸入は全量行われため、売買同時入札(SBS)輸入量が少なければ一般輸入米を増やすということとなります。
まとめ
売買同時入札(SBS)米は「外国の精米業者、輸入資格を持った商社、日本国内の卸業者の三者連名で、農林水産省総合食料局に対して買い入れや売り渡しを申し込む」という制度であることがわかりました。
日本の米農家を守るために輸入米を拒み続けた結果、米が過剰生産となりまた米騒動が起き、米を輸入する流れから輸入米の認可となりました。
食の安全性という観点からすると、トレーサビリティ法案というものがあったとしてもやはり国産米を選び続けていきたいですね。
しかしながら、国産米の中に外国産米を混ぜ込む業者もいます。こういう業者はとことん追及し厳罰化していってほしいと思います。
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