農業で融資を受けるなら「アグリファイナンス」

農業は、新しく始めるには多額の初期費用が必要です。かつ、継続して続けていくにもランニングコストがかかってしまいます。

トラクターなどを始めとする高価な機械類、ビニールハウスやスプリンクラーなどの設備費用と維持費、人件費もバカになりません。

それらの費用をすべて自己資金で賄おうとすると、それはなかなか至難の業。

そんな中、某業従事者の強い味方になってくれるのが「アグリファイナンス」です。

今回は、「アグリファイナンス」について詳しく解説していきましょう。

アグリファイナンスとは?

そもそもアグリファイナンスとは何か?

一言で言うと、農業界に対する融資機関の総称です。

アグリとは農業のこと、ファイナンスとは金融、財政、資金調達などのことを意味します。

金融財政と言うととても難しいように感じるかもしれないですが、実は私たちの生活にとても身近にあるものなのです。

農業を続けるうえで資金調達をすることがアグリファイナンスと言えます。

現役農家の方の中でも、「すでに融資を受けている」という方も多いのではないでしょうか。

農業を始める人がスムーズに始められるように、また規模を拡大したいと考えている人が必要なお金と設備を準備できるように。

アグリファイナンスを活用することでお金の流れを活性化することができるのです。

例えば「ダイエットで10kg減量」という目的がある人が独学で始めるとなかなか結果が出てきにくいものです。

食事や運動の専門家に相談したり、ダイエット器具を使って効率的に全身の筋肉を動かすことで目的達成は近くなりますね。

初期費用はかかりますが、その方が最終的な目的達成時間は短くなり資金効率も良くなります。

農業の場合は、初期投資や維持費用が高額になることが多いです。

早いうちに最初から融資してもらえれば、10年後20年後の売上は間違いなく変わってくるでしょう。

なのでアグリファイナンスを活用して時間をかけずに農業を開始、拡大することは自身のことだけでなく国全体として農業の活性化のために、今まさに必要とされているのです。

アグリファイナンスの活用事例

では、実際にアグリファイナンスを活用してスタートダッシュに成功した、若き農業従事者たちの事例を紹介しましょう。

食用牛繁殖 青木さんの事例

北海道在住で食用牛繁殖業を営んでいる青木さん(30歳、仮名)は、アグリファイナンスを活用して約3000万円を融資受け。

その資金を基にして約30頭の繁殖雌牛を購入しました。他にも、新品の大型トラクターを購入する等大胆な改革を積極的に行っていました。

その甲斐あってか、今では繁殖用雌牛は100匹を超え、就農5年目で地元の青年部長を務めるにまで成長しました。

青木さんは今後、60歳までには繁殖用雌牛6000頭を揃えるという壮大な夢に向かって突き進んでいます。

稲作 藤村さんの事例

秋田県在住で稲作を営んでいる藤村さん(28歳、仮名)は、アグリファイナンスを活用して約1800万円を融資受け。

その資金を基に、大胆にもトラクターやコンバインを買いそろえました。

当初は1haしか無かった農地も、就農5年目には20倍の20haまで激増。

今では、その地域内ではトップクラスの収益を上げています。

今後は、さらに倍の40haを目指していくそうです。

施設野菜栽培 近藤さんの事例

佐賀県在住で施設野菜栽培を営んでいる近藤さん(38歳、仮名)は、就農3年目で約1000万円の融資受け。

その後も、毎年連続して融資を受けていき、その額は合計4000万円に上ります。

近藤さんは、その資金を基にハウスの増築を行っていき、10棟から始まったハウスは44棟にまで増加。

「儲かる農業経営」を目標に掲げながらお、ハウス数100超えを目指して猛進中です。

アグリファイナンスの種類

続いて、アグリアグリファイナンスにはどのような種類があるのかを紹介しましょう。

農業近代化基金

農業近代化基金は、民間金融機関が融資する最も一般的な長期資金です。

対象者:認定農業者、認定新規就農者、主業農業者
限度額:個人1800万円、法人2億円
償還期間:7~20年以内
金利:変動(金利負担軽減措置あり)

日本政策金融公庫資金

日本政策金融公庫資金は、民間の金融機関で対応が困難になった場合に国が融資する資金のことで、以下の4つがあります。

農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)

対象者:認定農業者
限度額:個人3億円、法人10億円
償還期間:25年以内
金利:変動

経営体育成強化資金

対象者:認定新規就農者、主業農業者
限度額:個人1億5000万円、法人5億円
償還期間:25年以内
金利:変動(金利負担軽減措置あり)

農業改良資金

対象者:事業計画、貸付資格の認定を受けた者
限度額:個人5000万円、法人1億5000万円
償還期間:12年以内
金利:無利子

青年等就農資金

対象者:認定新規就農者
限度額:3700万円
償還期間:12年以内
金利:無利子

融資を受けるには

では、アグリファイナンスの融資を受けるにはどうすればいいのでしょうか?

融資をする側としても、融資したお金が回収できる見込みが無ければ軽率に融資をすることはできません。

就農者も、何も考えずに農業を行っているだけでは、融資を渋られてしまうことも考えられます。

ここで参考になるのが、農林中央金庫が発行している「バリューレポート」です。

ここには、今後の農業が目指すべき目標が書かれています。

バリューレポートが掲げる目標を達成できるよう国の農業に貢献することが、融資を受けるための近道といえるでしょう。

バリューレポート2020

例えば、「バリューレポート2020」には、2024年以降の農業に求められる要素として以下のようなことが書かれています。

国産供給力の強化

文字通り、国産農作物の強化を狙っていきます。

例えば、日本で使用される化学肥料はそのほとんどを輸入に頼っています。

しかし、現在の日本では、海外の科学肥料が少なくても成長可能な新品種開発の助成を進めています。

それから、外来雑草を検疫で侵入防止できるような法整備をしている最中でもあります。

こういった背景は、輸入品が高額になっていることもありますが、何より国内供給を増やし国内産の消費を促す狙いがあります。

国際競争力を強化するため、敢えて自給率の低い作物を栽培を狙ってみるというのも戦略としては有りなのかもしれませんね。

販売力の強化

販売力が掲げられた背景には、日本の人口減という社会現象があります。

トラック運転手の不足はすでに始まっており、また労働環境改善のため、朝早くに稼働できるトラックも減ってきます。

生鮮食品、採れたて野菜を配達する量が今後限られてくるでしょう。

元々季節物は売れる時期とシーズンオフの時の波が激しく、全く売上がない期間もあると思います。

そういった中でお勧めなのが、加工して時期をずらして販売することです。これは、廃棄ロスも大きく貢献することができます。

また、加工食品製造の機械性能の向上は目をみはるものがあります。

今後は、加工食品の充実により一年を通して安定した収益を見込めるようになるとされています。

また新型コロナウイルスの影響や、生活費の高騰で外食離れから、家で調理して食べる家庭が増えました。

「少しでも良いものを食べたい」という気持ちから、高単価の野菜の需要が増えるのではないかという期待も高まっています。

その影響があってか、惣菜や冷食の開発に力を入れる会社も増えました。

購入者たちは、銘柄、ブランド、作り手のこだわりなどを基準にして食材を購入するという時代になったのです。

高単価にすることで利益率が良くなり、販売力の強化に繋がります。

女性の農業従事者を増やす

現在、農家では深刻な嫁不足に喘いでいます。

特に地方の農村では、良くも悪くも”古い日本”の文化を引き継いで生活をしているところは少なくありません。

そうすると、嫁だけに家事負担を求めたり、「跡継ぎとなる男子を産め」と強要したりなど、今の時代と乖離した夫婦生活を送らざるを得なくなります。

そのような理由から、農家に嫁ぐ女子は現状の一途を辿っているのです。

ただし、女性の情報発信力やコミュニケーション力、細やかな作業ができる強みは地域に根をはって農業を行っていくにあたって非常に有利に働きます。

学力、就業経験を活かし、農業ビジネスを一緒に盛り上げるべくカムバックしてほしい。

農水省は「農業女子プロジェクト」を積極的に勧めています。

今後もさらに女性就農者を増やす為には、重労働の軽減や経営計画を共有してビジネスモデルを確立させられる環境整備が必要になってくるでしょう。

スマート農業のススメ

以上のような背景があり今進められているのが、スマート農業というものです。

「スマート農業」とは、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」のこと。

今までの農耕機にロボットのような学習機能が搭載されたものもあれば、全く新しい形、例えばドローンが農業を助けてくれることもあります。

大まかに分類すると、 人の動きを助けるもの、見廻りを代行してくれるもの、データ収集してくれるもの、空から農薬散布してくれるもの…色々な機械が出てきました。

どのタイプも、私達人間を助けてくれます。

作業効率を上げ時間短縮、労力削減などが期待できます。

実用している農家の具体例としては、ロボットトラクタの導入で作業時間平均32%削減できた例や田んぼの自動水管理システムによりなんと80%も時間短縮できたという報告もあります。

また、長年の日本の農業を支えてきた先輩方の勘や知識をデータ化して分析して活かすことで、今後の農業を守っていく役割もスマート農業にはあります。

農林水産省も推奨している分野の1つですね。

導入にあたってはもちろん高額になるので、購入前に持っている土地の個性と適正をよく考える必要があります。

しかし、スマート農業によって人件費の削減、収穫量増加ができるのであればこれは活かせる借金になるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、農業の金融「アグリファイナンス」について紹介してきました。

もちろん、考え方は人それぞれですので、融資を受けずに農業を始めるというやり方もまた正解でしょう。

しかし、融資を受けて先行投資をした場合に生じるメリットもたくさんあります。

そして、仮にアグリファイナンスを利用するのであれば、どの融資先を選択すべきか、何に先行投資すべきかをよく考えてから行いましょう。

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