【畜産農業】農業と周辺環境によるにおいの変化

畜産農業ではどうしても臭いが発生しやすくなります。

動物を相手にするので仕方がないことですが、

尿や糞など悪臭に繋がりやすいためこまめな清掃をしないと近隣にも迷惑をかけてしまいます。

そのため、悪臭防止法というものがあります。

農林水産省ではこの畜産農業の悪臭の現状と対策、悪臭とはどのようなものかを定義しています。

この記事では、わかりやすくまとめてポイントごとに抑えるべき点を紹介していきます。

畜産農業で悪臭防止にどうするべきか、またどのレベルまでを対策しないと行けないのかについて知って頂ければと思います。

畜産農業は日本の食としても無くすわけにはいかない大事な農業になります。

食料自給率の向上に生産性の向上にも欠かせない仕事ですし、何よりも日本国産の牛や豚、鳥などは世界からみても非常に品質の良い物が多いです。

これからも国産品を守っていくために悪臭防止についてはしっかりとした対応を行なっていきましょう。

悪臭の現状

農林水産省では悪臭の現状について取りまとめたデータがあります。

そのデータを見ると悪臭の現状は苦情の件数は下記のようなデータとなっています。

引用元:農林資産省https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/02_shigeoka.pdf

苦情発生率をみる限りでは平成17年度から平成28年度までのデータですが基本的に横ばい状態になっていることがわかります。

苦情発生戸数は減少しているように見えますが苦情の発生率は基本的には変化していないのです。

畜産農業以外の全産業もせっかくなので見てみましょう。

引用:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/02_shigeoka.pdf

全産業のデータからみて取れるのはデータを集計している最新の年から10年間では苦情の件数は減少しているのがわかります。

つまりこの両方のデータからみて何が言いたいのかと言うと苦情発生戸数は減少傾向ではあると言うのがわかる点です。

しかし、先ほど言いましたが苦情の発生率は畜産農業では減少はしていない!

この結果が畜産の悪臭に対して現状では改善仕切れていないことがわかります。

においの定義

においは色々なものがありますがどういう風に定義されているかまでは意外と知らないのではないでしょうか。

悪臭について説明していくのですが、少しでもイメージがつきやすいようににおい協会が定義している物について少しだけ紹介しておきます。

そもそもにおいとは漢字で表しても様々な漢字があります。

・香り

・薫り

・匂い

・臭い

・臭気

・悪臭

 などがあります。

これらをまとめて表現するときににおいと表現されます。

イメージの部分でもありますがにおい協会では、

香りや薫り、匂いはfragrance

臭い Smell

臭気、悪臭を Bad Smell

としています。

また、悪臭は誰かがイヤだと感じる物を悪臭となるが、この判断は個人の体験によっても変化するため難しいともしています。

具体的には

好きだとされる匂いとして、石鹸やコーヒーの匂い、森林や果実の匂いは好きとされています。

しかし、これらの匂いについても年齢や個人差があるためコーヒーの匂いが嫌いな人がいたりもしますが大半が好きであるとされているため悪臭とはされません。

嫌いな匂い(悪臭)とは基本的には見の危険を感じるにおいを指すことが多いです。

具体的には腐敗臭、ふん尿臭、有害物を連想する臭いこれらなどが該当します。

腐敗臭は食べたら腹痛になることや、ふん尿臭は汚い、有害物を連想する臭いとしては硫黄などがありますが体にとって有害であるため悪臭として認識がされます。

このようににおいの中でも定義としてこのようにされているので畜産の悪臭は人にとって害があるため悪臭であると認識されていることがわかります。

畜産農家の変化

そもそもになりますが、畜産農家の苦情が一定率であるのはなぜなんでしょうか。

これは畜産農家の変化だけではなく周辺環境の変化も大きく関係してきています。

畜産農家の変化としては、畜産は他の農業と比較しても利益を上げやすく農業を行うのに新規参入する人が昔に比べて増加してきている傾向があります。

このため、元々その土地に住んでいた人からすると急な畜産による動物臭やふん尿などの臭いが気になるようになり結果として苦情に繋がっているケースもあります。

また、畜産農家の周辺の変化としては農村地域の都市化も要因の一つです。

地方に住んでいる人は感じたことがあるかもしれませんが、昔と比べて住宅や道路の整備などが進み、地方でもかなり発展してきています。

私の地元も田舎ですが幼少期は家の周りが畑が殆どでしたが現在は居住地にと変わっています。

つまり、元々畜産を行なっていた地域から居住地になった場所ではにおいに対する耐性がないために苦情となっているということです。

そのため、畜産農家は作業としては何も変化していなくても急に苦情が増えるようになり対策が追いついていないのも現状です。

畜産業の臭気発生源

畜産業の臭気発生源として大きく3つの発生源があります。

1、畜舎からの発生

2、ふん尿処理時の発生処理

3、サイレージから発生する悪臭

大きく分けるとこの3つになります。

1、畜舎からの発生

畜舎では新しいふんや尿、飼料や粉塵などが発生しやすい環境にあります。そのため、畜舎から換気する際ににおいが拡散しやすくなります。

畜舎自体からのにおいとしてはふん尿処理時に発生する悪臭と比較すると低濃度でがありますが季節や気温などの影響条件によってにおいが変化しやすくなります。

また、においを捕集することが難しいです。

2、ふん尿処理時の発生処理

ふんや尿を処理する際にふん尿に含まれている有機物が各微生物に分解されると高濃度のにおいを発生させます。

においの発生源が特定しやすいためにおいを捕集することが比較的容易に可能となります。

3、サイレージから発生する悪臭

畜産業を行う際には飼料などをサイレージすることがあります。

このサイレージからのにおいも悪臭としての発生源になり安いため非常に注意が必要になります。

特にサイレージでは独特な香りがするため調整が失敗すると不快な腐敗臭を発生するようになります。

※サイレージとは牧草や飼料作物など高水分の飼料を適度な水分を保ったまま密封し、乳酸発酵を主とする嫌気的発酵(サイレージ発酵)を行うことで貯蔵性を高めた飼料のことをいう。

臭気対策

悪臭としての苦情を解決するためには基本的に3つのことができれば悪臭を防ぐことができるとされています。

1、においを発生させない工夫

2、大気拡散による希釈

3、脱臭装置の設置

基本的にこの3つの対策を行うことで臭気対策はできるとされています。

においは人によって感じ方が大きく違いますがにおいの目安としての臭気指数を低くすることで苦情を減少させることができます。

1、においを発生させない工夫としてまずは畜舎は常時ふんや尿があるためにおいが充満しやすい環境です。

そのため、このふんや尿をできるだけ素早く清掃してにおいを蓄積させない。

また、畜舎特有のにおいを抑えるためにきちんとして断熱、換気、餌の腐敗を防ぐ、床を乾いた状態を保つことも非常に大切になってきます。

実際の対策事例としてフラッシングというのがあります。

フラッシングとは豚の特性を生かして排水溝を設置して中水を再利用して畜舎内の水路に流してふん尿を処理する方法です。

仕組みとしては非常に単純なものでタンクに水がたまるようになっており、ある程度溜まった段階でししおどしのように傾きふん尿を洗い流す仕組みです。

これにより人力だけの清掃ではなく常時綺麗な状態を保てるようになります。

2、大気拡散による希釈では、基本的ににおいを発生させない工夫をしていることが大前提となります。

いくら大気に拡散したとしても元が強烈なにおいを発生させていればどうしても希釈するまでにはいかず苦情になります。

また、大気拡散による希釈の方法として排出口の高さには注意が必要となります。

排出口の高さが周辺最大高さの2.5倍以上の場合は着地濃度が低く、1.5倍未満の場合は、建物に巻き込まれた着地濃度が高くなります。

そのため、単純に換気をして薄めるのではなくこういった排出口の高さなどにも十分注意する必要があります。

3、脱臭装置の設置では一つはオゾン脱臭の設置をする方法と排出口にフィルターを設置する方法などがあります。

オゾン脱臭については飲食店や最近では家庭などでも実施している人が多くなってきているため、脱臭効果があることをご存知の人も多いのではないでしょうか。

畜産農業では、におい対策として約25年前から実施している農業があるほど効果があるため脱臭装置の設置としては非常に高い効果を得ることができます。

また、排出口にフィルターを設置することもにおいを脱臭するのには非常に効果があります。

イメージしやすいものとしては空気清浄機などがあります。空気清浄機は何層ものフィルターを通して脱臭してクリーンな空気に変える仕組みです。

そのため、清掃などは必要となりますが、こちらも脱臭効果は十分に発揮します。

まとめ

畜産農業の悪臭の現状と対策、悪臭の定義について紹介してきました。

においは人によって感じ方が違うために苦情を100%抑えるのは難しいものです。

しかし、畜産農業を行うにはこのにおいに対してきちんと向き合っていかなくてはいけません。

また、畜産農家の変化でも記載しまいたが畜産農家の増加と近隣周辺の住宅化なども時代と環境の変化も大いにあります。

今後もこういった農業だけではなく周辺環境の変化に対応をしていかなくてはなりませんが、悪臭防止法などがあるように農家はきちんとルールにそった対策は継続していただければと思います。

参考元:https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/02_shigeoka.pdf



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