【限界突破】ネバーギブアップ!納豆が畑をアップデート【3つの効果】

農業において、農作物の病気はなかなか厄介なものです。
病気を防ぐための手段として、農薬が考えられます。
しかし、便利な反面デメリットも当然存在します。

SDGsでも持続可能な農業を提唱されている現代。
農薬も控えていこうという国際的な動きもあるのです。

そんな中、意外な存在が農作物を病気から救ってくれるかもしれません。
それは「納豆」です。

今回は、納豆の農業活用について解説します。

目次
1.畑まで健康に?納豆菌の力!
1-1.納豆菌とは?
1-2,納豆菌の貢献!
2.納豆菌で病気を予防!
2-1.キュウリ農家の事例
2-2.リンゴ農家の事例
2-3.炭疽病を抑える
2-4.納豆菌の秘密
3.灰色かび病抑制効果とは?

3-1.イチゴ葉上での実験
3-2.イチゴ植物体上での実験
4.納豆菌への期待
5.まとめ



1.畑まで健康に?納豆菌の力!

納豆菌の力

1-1.納豆菌とは?
身体に良い食べ物として有名な納豆。
その納豆を作るために必要な納豆菌は、農業にも役立つのです。

納豆菌は学名Bacillus subtilis var. nattoと呼ばれる微生物。
バチルス属と呼ばれる枯草菌の仲間です。

枯草菌は、稲藁や枯草に棲みついていることからその名称で呼ばれます。

ワラに自然発生し、納豆という食品に貢献したからこそ
「納豆菌」という名称で親しまれています。

納豆菌は日本において安全性が認められている菌です。

ちなみに、微生物がもたらす「発酵」と「腐敗」の定義。
微生物によってもたらされた生成物が、「人に益があるか害があるか」の違いです。
だからこそ、納豆菌は益のある微生物として評価されています。

バチルス属は非常に生育力の強い微生物である上に、
カビなどの糸状菌を抑制する働きがあるのです。

そのため、古来より農作物の病害対策や生育のために活用されてきたのです。


1-2,納豆菌の貢献!
納豆菌は非常に生育力の強い微生物。
そして、納豆菌の効果はその生育力の強さだけに留まりません。

カビに対しては、その胞子に取り付き発芽を抑制する働き。
さらに、生長ホルモンのサイトカイニン様物質を作り出す働きもあり、
植物の生長にも貢献します。

地球環境への効果への期待も高まっているのです。

納豆の特徴的なネバネバとした糸。
土壌が乏しい地域への農業への貢献も期待されています。

納豆の糸はポリグルタミン酸という高分子物質。
この糸に対してガンマ線を照射すると、寒天のようなゲル状の物質へと変化するのdす。

その物質を凍結乾燥させると、白い粉末状の樹脂が完成。

この樹脂は「吸水性」「可塑性」「生分解性」に優れた素材です。
砂漠のような地域に活用することで、農業への貢献が期待されているのです。



2.納豆菌で病気を予防!

納豆菌

納豆菌を農業に活用することにより、減農薬にもつながります。
ここでは、納豆菌の活用により病気の抑制につながった事例を見てみましょう。


2-1.キュウリ農家の事例
納豆と米ヌカを使った「ぼかし肥料」のおかげで、
防除の回数を月イチに減らしても灰色かび病やべと病が発生しない、との報告があります。

〈ぼかし肥料の材料〉
・米ヌカ15kg
・納豆1パック
・水2リットルだけ

〈手順〉
①漬物用の樽に全ての材料を入れて手でかき混ぜる
②蓋をして暖かい場所に置いておく
③朝晩に1回ずつ切り返す
④1週間ほどでパラパラしたぼかし肥料が完成
※15kgで約10a分になります
⑤作ったぼかし肥料を、キュウリを定植後にウネ間に振る
⑥その後は月に1度10aに30kgほど米ヌカだけをウネ間に振るだけ

この方法による、病害予防の効果は納豆菌だけでなく米ヌカも関係している可能性はあります。
しかし、納豆菌も米ヌカも灰色かび病の抑制効果が知られています。
(米ヌカの場合は、米ヌカを地表面に散布した施設内のキュウリ花弁や散布土壌から分離したFusarium属菌の灰色かび病に対する抗菌性が報告されている)。


2-2.リンゴ農家の事例
納豆菌を散布することで褐変病の抑制につながっているとの報告があります。

〈納豆液の材料〉
・納豆6パック
・水

〈手順〉
①ミキサーに納豆を6パックを投入
②ミキサーに納豆が浸かるくらいの水を投入
③1分ほど攪拌し、網目の細かい洗濯ネットで濾せば、納豆液の原液が完成
④スピードスプレーヤー(果樹園などで用いられる薬剤散布用の噴霧機)のタンクに投入
⑤1000リットルに薄めてから使用

同じような事例としてイチゴ農家では、うどんこ病抑制にもつながっている報告があります。
イチゴ農家の事例でも納豆液に使う材料は納豆と水だけ。
非常にシンプルな材料です。


2-3.炭疽病を抑える
炭疽病という病気があります。
カビの一種である病原菌が原因で発生する病気です。
多くの果樹や野菜に発生することが知られています。

果樹では、マンゴーやアボカド、バナナなど。
さらに、野菜でもキュウリやゴーヤーなどのウリ科植物、イチゴ、その他ほとんどの野菜。
他にも、芝や雑草など、あらゆるものに感染していく病気です。

炭疽病に感染すると、果樹であれば、収穫後に果実表面に黒い病斑が現れます。
次第に大きく発達し、最終的に腐敗させてしまうのです。

野菜であれば、生育不良だけではなく、果実品質の低下、
ひどい場合は、株を枯らすだけではなく、畑の野菜を全て枯らせてしまうのです。

納豆菌には、炭疽病を抑制する働きも報告されています。
〈材料〉
・市販の納豆1パック
・300mlの水

〈手順〉
①市販の納豆1パックに対し300mlの水を加える
②ミキサーにかけてストッキングで濾す
③それを希釈して100lにしたものを農薬に混用して散布

この方法により、炭疽病を抑えることができたという報告がありました。


2-4.納豆菌の秘密
枯草菌のグループに属する納豆菌。
枯草菌は特徴として、熱への強さがあるのです。

納豆菌をはじめとした、枯草菌。
生育が難しい状況下になると耐熱性に優れた胞子(芽胞)を作り、
外的ストレスを耐え抜きます。

そして温度が下がり、生育に適した温度になると胞子から発芽して増殖スタート。
この芽胞を殺すには121℃、20分以上の加熱が必要となるのです。

そこそこの時間を長時間、高温の状態にしなければ死滅しないのです。

納豆菌は他にも、酸などにも強い耐性を持っています。

たとえば人間の胃の中は非常に強い酸性(pH2.2)の胃液で満たされています。
多くの微生物やウイルスは胃液によって死滅するのです。
しかし、納豆菌の胞子は胃酸に負けないのです。腸まで運ばれていきます。

つまり、納豆菌はかなりタフな微生物ということになります。
そんな納豆菌を病原菌より先に植物体上に定着させることができれば、
病原菌が必要とする生息場所や栄養を納豆菌が奪うことになります。

これにより、病原菌が定着・増殖を防止できます。

納豆を使ったぼかし肥料でも納豆液でも、あらゆる事例や圃場の広さなどによって、必要となる納豆パックの量は異なります。

農業に使えそう!と思った人は納豆菌を取り入れてみましょう。


3.灰色かび病抑制効果とは?

灰色かび病

3-1.イチゴ葉上での実験
納豆菌には、イチゴ葉上での灰血かび病に対する抑制効果も確認されています。
引用元:橋本俊祐『納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)によるイチゴの灰色かび病に対する抑制効果』(日植病報78: 104-107、2012年)

実験では、市販されている「5種の納豆」からそれぞれ単一コロニーを分離・培養。
検査用キットによって同定された納豆菌5株(No.1〜5)が使われました。
灰色かび病菌は薬剤感受性の異なる3つの菌株が用いられています。

〈実験の流れ〉
①灰色かび病菌の懸濁液を培地に広げ、そこへペーパーディスク※1を載せます。
②(①)の上にNo.1〜5の納豆菌を懸濁した液を滴下
(対照区には納豆菌ではなく滅菌水を滴下)
③2日間培養した後、ハロー※2の大きさを測定

※1 ペーパーディスク法:ペーパーディスク法:寒天培地に試験対象微生物を全面塗抹し、その上に抗生物質や抗菌物質を浸み込ませたペーパーディスクを載せ、一定温度、時間で培養。
その後、ペーパーディスク周囲の微生物の発育阻止帯 (ハロー) の大きさから、定性的に抗菌物質に対する感受性/耐性の確認、抗菌物質の効力を評価。(引用元:抗菌性試験 – 株式会社テクノスルガ・ラボ – ペーパーディスク法・MIC法

※2 ハロー:発育阻止帯とも呼ばれ、細菌の発育がない透明な部分。
この実験の場合、納豆菌が灰色かび病の生育を抑制する力の強さを測ることができます。

実験結果は、薬剤感受性の異なる3つの灰色かび病菌を広げた、培地すべての納豆菌を滴下したものにおいて、明瞭なハローが生じたのです。


3-2.イチゴ植物体上での実験
次に納豆菌がイチゴ植物体上でも灰色かび病を抑制するのかについて実験がされました。

使用したのは前述でも登場した薬剤感受性の異なる3つの灰色かび病菌、
培土でポット栽培された2〜3週齢のイチゴの2番目に新しい複葉、そして納豆菌懸濁液。

〈イチゴ植物体上でも灰色かび病を抑制実験〉
①イチゴ複葉に納豆菌懸濁液を噴霧
②24時間後に葉の上に灰色かび病を接種
③4日後に病斑径を測定。
(対照区は納豆菌懸濁液ではなく、滅菌水が噴霧されています。)

実験結果は、No.2株に強い抑制効果が認められました。

たとえば灰色かび病の3菌株のうちの1つの病斑径が対照区では9.8土 0.5mm。
No.2株を噴霧したものの病斑径は5.3土 0.3mmとなりました。
これは灰色かび病の残り2菌株でも同様の傾向が認められました。

さらに、イチゴ植物において灰色かび病の主要な感染部位であり、
発病後に第二次感染源となる分生子※3が大量に形成される花器においても、

納豆菌は灰色かび病の発病、
さらに分生子の形成を抑制する効果があると判明したのです。

※3 分生子:菌類において,出芽や分裂などの方法によって無性的に形成される胞子のうちで,鞭毛をもたず細胞壁が比較的薄いもの(出典元:株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版)


4.納豆菌への期待

納豆への期待


納豆菌の効果は、病原菌抑制作用だけありません。植物の生育と保護にも効果的なのです。

植物の栄養供給を改善させたり、植物ホルモンの恒常性の変化に寄与したり…。
このような効果もあったと報告があります。

オープンアクセスの学術雑誌『Molecular Plant-Microbe Interactions®』に掲載されたレビュー論文『Molecular Aspects of Plant Growth Promotion and Protection by Bacillus subtilis』には、B. subtilis属の植物の生育促進と保護への効果が解説されました。

B. subtilis属による栄養供給の改善について書かれた項目〉
・大気中の窒素を固定
・他の細菌による根粒形成を促進
(すでに植物と共生している根粒菌のコロニー形成を改善)
・様々な有機酸を生産
(植物の生育に必要なリンを可溶性の形態に変化させる)

これらの効果が挙げられているのです。

さらには、植物の干ばつや塩害への耐性アップの事例も報告されています。

シロイヌナズナとアブラナに枯草菌(枯草菌GOT9株)を接種したところ、
これらの植物の干ばつと塩害への耐性を向上させた、とあります。

今後気候変動の影響により、干ばつが激化していく心配があります。
干ばつは作物の収穫量に大きな悪影響を与えます。
さらに、干ばつによって引き起こされる土壌の塩分化の進行も懸念されます。

B. subtilis属の効果を応用することができれば、
将来の農業分野に立ちはだかる課題解決につながる可能性があるのです。

しかし、これらの効果を農業分野に応用する…というのは壁があります。
この研究の序論において、「枯草菌を広範囲に接種しないと植物や根圏に定着しない」ため、
たとえ試験管上では成功できたとして、
圃場で行う実験では失敗することが多いことも示されていたのです。

今後、さらに植物と微生物の相互作用についてより深く理解していくことができれば、
農業分野での活用も進む可能性はあります。

自然界にはまだまだ未解明の部分がたくさんあるのです。

今後、少しずつ研究が進行していけば、
納豆菌をはじめとした微生物資材が農業分野で活躍する日も来るかもしれません。


5.まとめ

まとめ

今回のテーマは「納豆と農業」についてでした。
納豆菌は工夫次第で様々な病気から農作物を守ってくれます。

心強い味方ですよね!
農薬を極力控えたい農家さんにも便利な農業の裏技と言えるのではないでしょうか。
上手に活用して、畑を元気にしましょうね!

当サイト「みんなで農家さん」では、農業関係者に役立つ情報を発信しています。
「納豆の効果」以外にも「お金の裏技」「農業裏話」「最新テクノロジー」などなど。

国産バナナFCを通じた「新規就農支援」も展開中です!
一人では心細い新規就農も手厚いサポートがあれば心強いですよね!

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。