【鳥獣害対策】ビリビリっと危険な罠!電気柵設置の注意点

農業において、厄介な存在の一つに「鳥獣による被害」があります。
食い荒らされたり、病気が拡大してしまったり…。

被害防止をするためにはいろんな方法がありますが、
比較的簡単に設置もできて効果が高いのが「電気柵」です。

とても便利な「鳥獣害対策」なのですが、
用心しておかないと思わぬ事態を招く可能性も有るのです。

今回の記事では、「電気柵設置」についての解説です。

目次
1.電気を使った鳥獣害対策「電気柵」

1-1.電気柵の設置
1-2.電気柵に人が触れてしまうと?
2.電気柵設置のポイント

2-1.柵の高さ
2-2,最適な設置場所
2-3.チェックはこまめに行いましょう
3.事故防止!要注意ポイント
4.法律上の扱い

5.電気柵を設置時と設置後の注意点
5-1.電気柵、使用上の注意
5-2.通電時間は臨機応変に
6.まとめ



1.電気を使った鳥獣害対策「電気柵」

電気柵

1-1.電気柵の設置
電気柵の基本的な設置方法は、
支柱を立て、その支柱に碍子(※)をつけ、電柵線を張るという方法です。

電気を発する電柵器本体の出力端子に出力線を、アース端子にアース線を接続。

※碍子(がいし)は、電線(電流を通して送るための金属線)と
その支持物(電気柵の場合、支柱が該当)とのあいだを、
絶縁するために用いる器具のことを言います。

碍子の役割につきましては、こちらのサイトがわかりやすいです。
「がいし」ってなに? – 日本ガイシ

電柵線には一定の間隔で電流が流れています。
動物が電柵線に触れてしまうと、電気が電柵器から電柵線、
そして動物の体を通って地面に抜け、アースを通じて戻る…。

このような閉回路ができるわけです。
その結果、動物は電気ショックを受けてしまうというわけです。


1-2.電気柵に人が触れてしまうと?
さて、動物には電気ショックを与えることができる電気柵。
万が一、人間が触れてしまうとどういうことになるのでしょうか。

正しく設置された電気柵であれば、電気柵に触れることで「死亡」ということはありません。
市販されている電気柵は、万が一触れても命に関わらないように設計されているのです。

人間はもちろんのこと、動物の命にもかかわるような仕掛けではないのです。
安全に考慮した設計がちゃんとされているのです。

より安全性の高い電気柵を選ぶのであれば、電気柵には常に電気を流すのではなく、
1秒毎など定期的・断続的に電気を流すものを選びましょう。
常時通電をしているものよりは安全性が高いのが理由です。

通電間隔が1秒毎に流すものであれば、
「通電する間隔があいている」おかげで、万が一電柵線を握ってしまったとしても、
瞬間的に手を離すことができます。

もし電気が「常に流れている」状態であれば…

万が一、人が誤って電柵線を握ってしまった場合には、
電気ショックにより筋肉が硬直し、電柵線から手が離れなくなるのです。
大量の電気が体に流れ続け、命が危険な状態になってしまいます。

後述もしますが、「電気柵の事故」などが報道される事もあるでしょう。

しかし、電気柵や電気が流れる仕組みを理解し、市販されている電気柵を正しく設置。
また、家庭用電源から引く場合においても、専用の機器を用意して正しく設置。

これらを守れば、電気柵は安全に活用することができます。


2.電気柵設置のポイント

鳥獣害対策において、極めて有効な対策である「電気柵」。
どの動物においても、効果的な設置の方法は共通しています。

予期せぬ事故などを防ぐためにも正しい設置方法を知っておきましょう。


 2-1.柵の高さ
動物が電気柵に触れることで電気ショックを与えることはできます。
しかし、確実に電気ショックを与えるためには、
ターゲットにする動物が電気ショックを感じやすい部位を知っておく必要があります。

イノシシやシカの体毛は電気を通しにくいのです。
体が柵に触れただけでは十分なショックを与えることができないのです。

この場合は、鼻先や口唇など体毛のない部分に触れさせるのがポイントです。

イノシシやシカは、「初めてみるもの」を鼻先で触れて確認する習性があります。
電気ショックを与えるために、このような習性も利用します。

柵線の高さは動物の鼻の位置を目安に設置しましょう。
成獣のイノシシの場合であれば、
立ち姿勢(四足歩行)の時の鼻の位置は地面から約40cmの高さにあります。

鼻先で触れて確認する習性もふまえ、
地面から20cm、40cm、3段張る場合には60cmに設置すると良いでしょう。
ですが、鼻先が触れるだけでは不十分なのです。

電柵器から動物、地面へと電気が抜けなければ、
十分なショックを与えることができません。

まず電柵器に付属しているアース線はしっかり深く埋め込みましょう。
短い棒が複数繋がっているタイプの場合であれば、約1m間隔をあけましょう。
その上で深く埋め込みます。

長い金属棒が1本だけのタイプは、できる限り深く打ち込みましょう。


2-2,最適な設置場所
設置場所は電気が抜けやすい「土の地面」を選ぶようにしましょう。
「コンクリートやアスファルト」は電気が通りにくいため、避けましょう。

舗装された面に設置された電気柵に動物が触れても、
動物の足が舗装された面にあると電気が地面を抜けにくく、
電気ショックの効果が薄くなります。

動物の前肢だけでも土の上に立つような場所に設置することをオススメします。

碍子は動物側に向けて設置するようにしましょう。
動物が電気柵の支柱を押し倒す可能性があります。
しかし、支柱は通電していないので、電気ショックを与えることができません。

しかし碍子を動物側に向けて設置すれば、支柱を押し倒す最中、
碍子や碍子につながる柵線に、動物が触れる可能性を高くすることができます。

50〜100cm間隔で上下の柵線をつないでおくことも大切です。
もし、一部の柵線が切れてしまっても、上下をつなげることで電気が流れ続けます。


2-3.チェックはこまめに行いましょう
雑草などが柵線に触れてしまうと漏電してしまいます。
電気柵を設置したら、草刈りをするなど雑草のお手入れもこまめに行いましょう。

伸びてくる雑草を柵線に触れさせないため、地面にマルチを敷くのも効果的です。
しかし、この際は電気を通しやすい素材を選んでください。

電気柵の地面に敷く通電性の防草シートを使うようにしましょう。

定期的に電圧のチェックが大切です。
電気が通っているかを確認するテスターはアース棒のついたものを使いましょう。

横向きにしたアース棒を地面に押し付けて測定することで、
実際に動物が触れる地面での通電状況を確認することができます。


3.事故防止!要注意ポイント


電気柵は、自分で見張らなくても獣を追い払ってくれる便利な鳥獣対策です。
しかし、この電気柵によって痛ましい事件がありました。

2015年7月19日、静岡県西伊豆町。
「不適切に自作された電気柵」が破損によって電線が水に浸かった状態になり、
川で遊んでいた7人が感電し、そのうちの2人が死亡したのです。

この電気柵には安全装置がなかったとのことで、
予期せぬ加害者となってしまった男性は罪の意識に耐えられなかったのか、
後に自害するという悲しい事件が起こりました。

電気柵は、常に自分が見張ることのできない場所に設置する仕掛けです。
しかも常に電気が流れているのです。

見張りがないため「誰が電気柵に触れるか」がわかりません。
いつ自分が加害者になるのかわからないのです。

設置する際はもちろんのことですが、
破損があれば前述のような事故の原因となりかねません。

もっとも、この事故は「自作した電気柵」だったことも災いしました。
市販されている電気柵は前述の通り、安全装置が設計されてはいます。
…とはいえ、機械なので故障や破損をしてしまえば、誤作動を起こす可能性はあります。

設置した後も破損などがないか?と言うのは日々チェックが必要です。

新規就農をした人が、鳥獣対策として比較的気軽に設置できるのが電気柵。
しかし、日々の点検や周辺のお手入れなどを怠れば、
事故につながる可能性だって高くなります。

常に電気が流れている柵である以上、
自分が加害者になる可能性が常につきまとう鳥獣対策ということを肝に命じておきましょう。



4.法律上の扱い

法律上の扱い

電気柵は、法律ではどのように定義されているのでしょうか。
法律的には、「屋外において裸電線を固定して施設した柵であって、
その裸電線に充電して使用するもの」と定義されています。

つまり使用できるケースも限定されているのです。

〈電気柵の使用ができるケース〉
・農地や牧場などにおいて、野獣の侵入防止
・牧場などにおいて、家畜の脱出を防止するために施設
・上記2つの場合に限り、感電や火災のおそれがない用に施設

この様に定められています。
農地や牧場以外で使ってはいけません。
さらには、人間の泥棒対策等の目的で設置することもNGです。

あくまで害獣対策で設置する対策です。
通電することでテレビやラジオ等の電波に影響を与える目的があってもダメです。

もちろん、感電や火災の危険性があるのは論外といえます。
それを理解した上で、電気柵における細かな法律上の扱いを解説しましょう。

通常の商用電源(AC100ボルトまたは200ボルト)を直接電気柵に使用は不可です。

上記のような電源を使う場合やACアダプタを使う場合であれば、
電源には漏電遮断器を接続する義務が法令で定められています。

また、商用電源を使用する機種には電気柵を製造したメーカーが、
「PSEマーク」を表示する法律上の義務が課せられているのです。

もっともこれは、メーカー側の義務ですが、
実際に使用する設置者の方でも、このマークがあるかどうかはチェックしましょう。

さらに、電気柵には周囲から見やすいように、
電気柵が設置していることや危険である旨を明記した「表示板」を設置する必要があります。

表示板を設置した後も、周囲の農作物や雑草などで
隠れてしまわないように配慮しましょう。

せっかく設置しても見えなくなってしまっては意味がありません。


5.電気柵を設置時と設置後の注意点

設置後の注意

5-1.電気柵、使用上の注意
電気柵は、まず設置する場所に気をつけましょう。
人から視認しにくい場所に設置してはNGです。

前述のように警告用の表示版を掲示しなければいけません。
このことからも、電気柵の存在がわかる場所にしましょう。

さらに、水路や川の周辺は避けましょう。

設置した後であってもメンテナンスは必要です。
電気柵は、柵の頑丈さで鳥獣の侵入を防ぐものではありません。
大きな動物が激突すれば、破損して漏電してしまいます。

定期的に破損箇所がないかの点検は必須ですs。


前述の警告表示が雑草などに隠れては意味がありませんし、
電気柵の通電部分に下草などが接触していれば、電気が地面に逃げてしまいます。

設置の際にはきれいに下草などは刈り取っておきましょう。
見回りの際にも下草の伸び具合を要チェック。
お手入れをして刈り取っておきましょう。

前述しましたが、電気柵には常に電気を流すのではなく、
1秒毎など定期的・断続的に電気を流すタイプを選びましょう。
常時通電をしているものよりも、安全性が高いのが理由です。


5-2.通電時間は臨機応変に
電気を流す時間帯の設定にも気を配りましょう。
ターゲットである鳥獣の活動時間を考慮して活用しましょう。

害を与える鳥獣の活動時間帯を見極めることが肝となります。
ターゲットとなる鳥獣が夜行性の動物のみであれば、夜のみ通電でも良いでしょう。

しかし、日中も活動する鳥獣がいるのであれば、日中も通電した方が効果はあります。

日中に通電していないことで「この電気柵は安全」と学習されたら、
侵入をみすみす許してしまうことにもなります。


6.まとめ

まとめ

今回の記事は「鳥獣対策、電気柵について」の解説でした。

比較的簡単に設置できるのが電気柵ですが、
注意をして活用しないと期待した効果も出なければ、事故につながる恐れもあります。

便利な反面、使い方を誤れば思わぬ事態を引き起こしてしまいます。
正しい設置法や使い方を守って、鳥獣被害から農地を守りましょう!

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