いま日本の農家さんの多くは、悩みを抱えています。
「農地を貸したいが、貸す相手がうまく見つけられない」
「自分が農業が出来るうちはやるが、後継者がいなくて、その後のことは決まっていない」
「農業の規模拡大をしたいが、なかなか上手くいかない」
「農地が分散しているので、まとめたいが方法がわからない」
このように、農家さんは様々な悩みを抱えています。
農業者の皆様、農業に関する悩みの解決への取り組みを推進している、ある仕組みをご存知でしょうか?
そこで今回は【農地中間管理機構】の活用法を詳しくご紹介したいと思います。
【目次】
①日本農業の現状について
・農業生産者の高齢化・担い手不足問題
・耕作放棄地の増加
②農地中間管理機構とは
・3つの受け皿
・「農地中間管理事業」と「農地売買支援事業」
③農地集積・集約のメリット
④農地中間管理機構を活用して、農地を貸したい方、借りたい方へ
⑤まとめ
①日本農業の現状について
いま日本農業はいろんな問題や課題を抱えています。
簡単に見ていこうと思います。
・農業生産者の高齢化・担い手不足問題
日本農業は長い間、「高齢化問題」「担い手不足」が指摘され続けてきました。
これまで様々な政策を講じて来たにも関わらず改善が見られないのが現状なのです。
また、農業を自営にされている「基幹的農業従事者」の減少もあり、平均年齢も年々上昇し続けています。
これらの主な原因は、農業の機械化や農薬利用などによる生産技術向上で農作業にかかる時間が短縮されて規模の小さい農家では、以前よりも人手を必要としなくなりました。
一方で日本の農地面積の約4割が傾斜地の多い「中山間地域」になります。
中山間地域では大区画化や大型機械の導入などが難しく、なかなか効率化が出来ないのが現状です。
そのような理由で、地域農業の担い手を育てたくても育たないといった地域もあります。
そして、地域の人口減少により、少子化による学校の統廃合や、商店や会社などでの働き口の減少などで、若い世代はなおさら都市部へ出てしまいます。
このように地域の高齢化も進み、残って農業を続けていた人が高齢になり、農業を続けられなくなり、辞める人が年々増えてきているのが現状なのです。
・耕作放棄地の増加
そして近年、作物が育てられなくなった土地が長期間放置されるといった「耕作放棄地問題」が深刻化しています。
耕作放棄地とは、国際連合食糧農業機関(FAO)の「農林業センサス(調査)」で定義されている用語で、「1年以上作物が育てられておらず、今後数年間も育てる予定がない土地」を指します。
このような耕作放棄地は、周辺の環境や景観にも様々な影響を及ぼします。
増えている大きな原因は、農家の高齢化や担い手・後継者不足により増えていることが指摘されています。
その他にも「農業に携わったことのない土地所有者の増加」「農作物の低価格化による離農」など理由がいくつか挙げられていますが、依然として日本では高齢化問題と後継者不足問題が長年問題となっています。
こうして高齢化が進み、若い労働力が減り続けていくと、いずれは農地を放置せざるを得ないのが現状だと言えます。
そして、耕作放棄地が引き起こす問題として「食糧自給率低下」「雑草、害虫等の発生」「野生生物の侵入」「ゴミの不法投棄」「防災機能の低下」といった様々な問題も引き起こすのです。
これらの課題を解決する一つの仕組みがあるのをご存知でしょうか?
②農地中間管理機構とは
冒頭でも名前に触れました「農地中間管理機構」を見ていきます。
これは平成26年度に全都道府県に設置された「信頼できる農地の中間的受け皿」のことです。
「農地バンク」とも言われています。
この受け皿は様々な時に活用ができます。
大きくまとめますと、以下の3つとなります。
①リタイアするので農地を貸したいとき
②利用権を交換して、分散した農地をまとめたいとき
③新規就農するので農地を借りたいとき
(農林水産省HPから引用、参照;https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/kikou_ichran.html)
農地中間管理機構は農地の借り受け、貸付、管理、簡易な整備等の利用条件の改善を行ったり、また農地の売買も行います。
農地中間管理機構の具体的な役割は主に「農地中間管理事業」と「農地売買支援事業」の2つです。
「農地中間管理事業」とは
何らかの事情で離農したり、規模を縮小したい農家から農地を借り入れて、管理し、その農地を担い手の農家に再配分(貸付け)する事業です。
もう一方の「農地売買支援事業」とは
農地中間管理機構が、離農農家や経営規模を縮小する農家等から農地を買い入れて、その農地を希望の農業者に対して農地を売渡す事業です。
規模拡大により経営の安定化を図ろうとする農業者にはとても助かる仕組みです。
どちらの事業も農地の有効活用、経営の規模拡大と効率化、農地の集約化を促進することを目的にしています。
公的機関である農地中間管理機構が仲介することにより、農地を貸したい人、借りたい人の双方をマッチングすることで安心して農地の貸借や売買の取引きが可能となります。
農地を相続したが、すぐに農業ができず農地を活用できない人がいる一方で、農地を借りて経営規模を拡大したいと考えている個人や法人もたくさんおられます。
このような状況をいかに解決し、マッチングするか
借りたい人、貸したい人の双方が安心して活用できます。
その橋渡し役が今回の農地中間管理機構です。
貸した人は、農地が無くなるわけではなく、使いたい人に良いように活用されながら守ってもらえる安心があります。
借りる側は、農地を安心して一定期間借りられるので経営計画も立てやすい上、圃場(ほじょう)のやりかえや、区画を大きくすることができれば、もっと色んな作物にも挑戦できます。
今後の日本農業を救う重要な仕組みの一つです。
また、登記などの手続きも機構が行うため煩わしさが無いので、農家さんにとってもメリットが大きいのです。
さらに、中間管理機構が複数の方から借り入れ・買い入れた農地をまとめて担い手農家に貸し付け、売り渡すこともできますので、担い手の農家は効率的な規模拡大が図れます。
この場合、担い手の農家は複数の方と個別に契約することなく、機構との契約だけで済みます。
機構を通じた農地の貸借には、国や県の交付金等の対象となる可能性もありますので、相談すると良いでしょう。
農地中間管理機構のこういった取り組みのお蔭で、農家さんは安心できます。
「農地中間管理事業」と「農地売買支援事業」を活用するメリットは現代の日本農業が直面している様々な問題を解決する糸口となるでしょう。
③農地集積・集約のメリット
機構の仕組みは「貸したい人・借りたい人」にはもちろんメリットですが、農地の集積・集約のメリットにも触れてみたいと思います。
農地バンクでは農地の集積・集約化も進められています。
従来、日本の農業形態の基本は「零細分散錯圃(れいさいぶんさんさくほ)」というものでした。
これは江戸時代から続く形態で近年までは当たり前でした。
山間地の多い日本では、河川の反乱や土砂崩れなどの自然災害と折り合いながら、農業を営む知恵が磨かれてきました。
零細分散錯圃は、ひとつの農家の圃場(ほじょう)を一箇所に集約せずに、分散させることによって自然災害による全滅を避けて来たのです。
しかし、圃場が分散していることで機械化が進まず、圃場と圃場の移動に時間を要したり、大きな労力が要ることがデメリットでもありました。
そしていま、日本農業は高齢化や担い手の不足、耕作放棄地の問題、国際競争や省力化・効率化と、今の時代に合わせたやり方が求められる段階に入っています。
そこで時代の変化とともに、従来の零細分散錯圃のやり方を新しくする必要に迫られています。
農地所有者が異なる農地を、次世代の中心となる担い手へ受け渡すため、農地集積・集約が農地バンクを中心に進められています。
農地の所有者と借り手の中間に機構があり、借り手にとっては農地の地権者との交渉や契約は必要なくなります。
そして、所有者は煩雑なやりとりである、地代の請求や管理も代行してもらえるので、利用する心理的ハードルも低くなります。
このような時代に合わせた取り組みによって、農地の集積が進むことで、耕作放棄地問題の減少、生産者の経営効率の改善など、農業もグローバル時代を迎えた今、激しくなる国際競争にも生き残るための起爆剤に繋がることでしょう。
④農地中間管理機構を活用して、農地を貸したい方、借りたい方へ
農地を実際に貸したい方は各都道府県の機構に問い合わせる必要があります。
農林水産省のHPに、各都道府県別の連絡先が載っているのでご活用ください。
次に、農地を借りたい人はどのようにしたら良いのでしょうか?
農林水産省のHPを引用します。
① 農地中間管理機構から、農地を借りたい方は農地中間管理機構が実施している借受公募に応募する必要があります。各都道府県の公募状況については各都道府県農地中間管理機構のホームページをご覧ください。
②また農業の経営規模の拡大や新規参入を考えている方など、農地を借りたい方は「全国農地ナビ」を活用して、希望する地域の農地や機構が借り手を探している農地の情報 などが確認できます。
農業の経営規模の拡大や新規参入を考えている方など、農地を借りたい方は、「全国農地ナビ」を活用して、希望する地域の農地や機構が借り手を探している農地の情報などが確認できます。
「全国農地ナビ」はパソコン・スマートフォンなどを利用して、いつでも・どこでも・誰でも閲覧可能です。
(農林水産省HP参考・引用;;https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/kikou_ichran.html)
過去の具体事例や経験者の声も、今はインターネットでたくさん見ることができます。
ぜひ、そういった情報もいくつか見て、ご参考にされてみてください。
⑤まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「農地中間管理機構」をみてまいりました。
今や農業は個人に任せる時代から、国や地域と一緒に取り組んで次の時代に進む必要性に迫られていると思います。
農業が衰退し、農地が荒れるということは。地域が荒れて人が住めなくなることにも繋がります。
そういうことにならないために少しでも農業を元気にし、高齢化で困っている農家さん、そして、これから後継者になっていく若者に活用してもらえる「農地中間管理機構」という仕組みは、日本という国の今後の運命にも関わってくるでしょう。
きちんと手入れ・管理された農地は米や野菜や果物を生産するだけではなく、豊かな環境や文化を育むなど、私たちにたくさんの恵みをもたらしてくれます。
これからも今後の日本農業を応援しています。
まだまだ農業の世界は広いです。
「農業」という分野は、他にも様々な取り組みを行っています。
【みんなで農家さん】では農業に関する様々な情報が掲載されていますので、ぜひご一読されてみてください。
ありがとうございました。
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